朝日からの話に、祐輔は頭を抱えた。
陸軍が深海棲艦を捕まえて、増やしている。
陸軍が何を考えて、そんな事をしているのかは分からない。しかし、やっている事は最悪国家転覆に繋がりかねない。
「……どうすればいいんだ……」
祐輔は悩みながらも、どうにか頼れる人が居ないか考えた。深海棲艦を捕まえて、増やしているという事は、海軍に協力している人物が居るという事で、人選を間違えたら自分が殺される事になる。
「…………」
祐輔は悩んだ挙げ句、少なくとも二人を思い浮かべた。一人は、元帥の神林十蔵。そしてもう一人は、自分の後釜として横須賀の提督になった後輩。
真面目で、祐輔と同じく元帥の肝いりで横須賀の提督になった。名前は、
「……吹雪ちゃん、元帥と横須賀鎮守府に通信を繋げてくれる?」
「わかりました!」
祐輔の指示を受けて、吹雪は通信室に向かった。
そして、数分後
『なんと……それは本当か?』
「は……朝日様から直接伝えられた情報です」
『ですが、信じ難いです……一体、どうやって……』
祐輔の話を聞いて、元帥だけでなく、若い女性。眼鏡を掛けたショートカットの黒髪が特徴の雪原涼華が顎に手を当てて唸った。
『朝日様からか……ならば、確実か……』
「申し訳ありません……自分だけでは対処出来ないと思いまして……」
『いえ、榊原先輩の判断は正しいです。下手したら、内紛に発展しかねません』
涼華は、祐輔のことを先輩と呼び慕っている。
「本土から遠く離れた自分では、情報収集にも限界があります……」
『分かった……そちらに関しては、こちらで引き受けよう』
『私も微力ですが、手伝います』
「感謝します……今から、朝日様から受け取ったデータを送信します」
祐輔がそう言うと、吹雪が機器を操作して、元帥と涼華にデータを送った。少しすると、二人は
『確認した……これは……』
『確かに、海軍内部に内通者が居ると断定出来ますね……』
朝日から渡されたデータというのは、朝日直下の諜報部隊が確認した陸軍が保有している深海棲艦の種類と個体数である。
祐輔も軽く見たが、通常級の大部分は保有していた。
そうなれば、最前線を担う鎮守府が内通している、と祐輔は考えている。
『榊原提督、涼華提督。今回の事は、内密に……同じ海軍でも、口外無用だ』
『はっ!』
「了解しました!」
祐輔と涼華が敬礼すると、元帥は頷き
『今回の事、この三名のみで事を進める……』
と言って、通信を切った。
そして祐輔は、涼華に
「ごめんなさい、涼華さん。こんな事に巻き込んでしまい……」
『いえいえ! 私が先輩の役に立てるなら、喜んで!』
実は涼華の方が二歳上であり、祐輔は士官学校で涼華の先輩だったという、少々面白い関係である。
「涼華さんも、気をつけてください」
『はい、先輩もお気をつけて!』
そこで、涼華との通信を終えた祐輔は、嫌な予感を覚えた。そして数日後、その嫌な予感は現実になった。
数日後、一隻の損傷したおおすみ型がパラオに到着した。その船籍番号を見た祐輔は、そのおおすみ型が涼華の船だと気付き
「涼華さん! どこですか!?」
急いでラッタルを駆け上がり、必死に涼華を探した。
涼華は、艦橋で見つけたのだが、重傷だった。
「医療班! 急いで搬送してください!」
「先……輩……」
祐輔の声で意識が戻ったのか、涼華は震える手で祐輔の襟を掴んだ。
「涼華さん!」
「気をつけて……ください……内通者は……」
「喋らないで!」
祐輔は制止するが、涼華は必死に
「陸軍に……内通していたのは……佐世保の大将です……!」
と祐輔に、血に汚れたメモ帳を差し出した。それを祐輔が掴んだ直後、涼華の意識が途絶えた。
「医療班!」
祐輔の指示を受け、医療班はすぐに駆け出した。それを見送った祐輔は、涼華が命懸けで渡してきたメモ帳を見て
「涼華さんの思い……無駄にはしません……!」
と通信室に向かった。