涼華を医務室に送らせた後祐輔は、すぐに通信室に向かい大本営に繋いだ。
そして、祐輔の報告を聞いた長官は
『まさか、直接的な方法で来るか……しかも、佐世保の
と驚いていた。
そして祐輔は、その名前に覚えがあった。
綾坂家次期当主筆頭。
陸軍の名門の綾坂家から現れた異色の提督で、堅実な戦い方で大将にまで登り詰めた。
しかし、部下に求める基準が非常に高い為に佐世保に所属している者達はエリート意識が高く、他者を見下す傾向が強い。
少々孤立化している鎮守府だ。
大規模作戦でも他の拠点艦隊と足並みを揃える気がなく、独断専行も多々あり、煙たがられている。
『雪原提督の容態は……』
「怪我が酷く、出血もかなり多く有り予断を許さない状況と聞いてます」
祐輔からの報告に、長官は苦々しい表情を浮かべた。
「そして……雪原提督の艦隊は……壊滅しました……」
『バカな!? 雪原提督の艦隊は、君には及ばないが数人の改二と高練度だった!』
「損傷したおおきく艦内に倒れていた、改二の艦娘全員は保護しドックに連れていきました……しかし、その他の艦娘に関しましては……見つかりませんでした……艦内の簡易整備場にて見つけた艤装から、ブラックボックスを発見。今現在、何があったのかは調べている最中です。それと、今から雪原提督が調べたデータを送ります」
祐輔は雪原提督から預かった手帳をコピー機に読み取らせ、長官に送信した。数分後
『まさか、綾坂大将とは……!』
「自分も驚きました……まさか、綾坂大将が陸軍に深海棲艦を引渡していたとは……」
そう件の陸軍で増やしているという深海棲艦の出所は、綾坂大将だったのだ。それを雪原提督は特定したようだが、恐らくその時に見つかり、逃げてきたのだろう。
『重要なデータだ……私はこれから、綾坂大将を逮捕する手筈を整える……雪原提督の事は』
「お任せください」
そこで、通信は終わった。
そして祐輔は、執務室に向かいながら
「そういえば……スピリッツの皆さんは何処に?」
とここ数日、スピリッツの姿が見えない事を思い出した。場所は変わり、日本本土。長崎県佐世保市。
そこに、スピリッツは人間体で潜入していた。
実はスピリッツは、少し前から佐世保鎮守府の綾坂提督の口座を監視し、資金の動きが激しかった為に直接潜入していた。
日本本土でも有数の防衛拠点のある佐世保市は、かなりの賑わいがあった。
「戦時下だが……そうとは思わせない活気だな……」
「ええ……調べましたが、佐世保市は物価も他と比べてかなり抑えられています……」
小声で喋っているのは、フェニックスとハルファスの二人だ。
今回スピリッツは分隊単位で行動していて、それぞれが佐世保市全域に散会。何組かは佐世保鎮守府に潜入している。
フェニックスとハルファスは市場を回り、物価や市民の声から情報収集をしていた。
「しかし、この値段……どうやって……」
「聞いた限りだと、燃料も回しているようだが……それだけではなさそうだな」
特に二人が驚いたのは、野菜の値段だった。他の町等では平時の二倍から三倍が当たり前だが、佐世保では五割増し位で収まっている。
どうやったらそんな値段が可能なのか、二人には検討もつかなかった。
そして二人は、とりあえず居た喫茶店から離れて
「問題は……」
「佐世保鎮守府に潜入した方々ですね……」
と一際大きい建物。佐世保鎮守府を見たのだった。