エウクレイデスが手術をしている時、泊地のある一室では、アークエンジェル、特務憲兵隊隊長、大淀と加賀がある一室に集まっていた。
「私に話とは、なんですか?」
とアークエンジェルが問い掛けると、特務憲兵隊隊長は
「もう少し待ってほしい……」
と言いながら、パソコンを何やら調整していた。
すると、そのパソコンの画面に映像が映り
『もう大丈夫かね?』
と男性の声が聞こえた。
「は、お待たせしました。元帥」
特務憲兵はそう言って、パソコンの前から退いた。
するとそのパソコンの画面には、一人の白髪に白い髭が特徴の男性が映っていた。その男性は、先に捕まった元提督と同じ白い軍服を着ているが、襟に着いている階級章を見た加賀と大淀が
「つっ!?」
「元帥閣下!?」
と驚きの声を上げた。その男性こそが、帝国海軍元帥の
その神林元帥を見て、アークエンジェルは
「初めまして、元帥さん。私は、傭兵部隊スピリッツ旗艦のアークエンジェルです」
と名乗った。
すると、神林元帥も
『初めまして、アークエンジェル殿。私が、帝国海軍元帥の神林十蔵だ』
と名乗った。
この時、加賀と大淀は立ち上がって敬礼しており、それが見えていたらしい元帥は返礼しながら
『楽にしてくれて構わん……君達には、辛い思いをさせてしまった……我々に非があり、君達には非難する権利がある』
と言いながら、頭を下げた。それを見た二人は、困惑した様子で
「お辞めください!」
「悪いのは、捕まったあの提督です!」
と静止の声を上げた。
しかし、元帥は
『そう言ってもらって嬉しいが、まさかあの提督が主義者とは思わなかった……』
と俯いた。
主義者
正式名称は、人間主義者である。
そして人間主義者というのは、深海悽艦と戦う艦娘を化物と蔑み、捨て駒にしたり何らかの薬物の実験台にしたりするのを躊躇わない国際的テロリスト集団で、国連の名の下、国際指名手配されている集団だ。
『本当に、申し訳なかった……』
と元帥は、再び深々と頭を下げた。
そして、アークエンジェルを見て
『今回は、あ奴の逮捕に協力して頂き感謝する。それに、重傷を負った艦娘の治療までしてもらって……ありがとう』
と頭を下げた。
すると、アークエンジェルは
「私達は、依頼を受けて、完遂したまでです……」
と首を振った。
それを聞いた神林元帥は
『そういえば、傭兵部隊スピリッツと言っていたね……今まで一度も聞いたことない名前だが……』
と目を細めた。
それに、アークエンジェルは
「それも当然かと……我々は、異世界での傭兵です」
と告げ、それを聞いた一同は驚愕で目を見開いた。
「その証拠として、我々の艦を見たこと有りますか? 潜行能力を持つ戦艦を」
アークエンジェルのその問い掛けに、全員が首を振った。誰も、あのサイズで潜行する戦艦を見たことなど無かった。
「そして何より、私達の艦載機たるMS……人型機動兵器……そのような兵器を、知っていますか?」
アークエンジェルの再びの問い掛けに、全員は沈黙するしかなかった。
今も廊下に待機しているが、約2mサイズの人型機動兵器など、初めて見たからに他ならない。
「私達の世界では、MSを使った戦争が起きました……私達はその戦争を終わらせるために、様々な勢力の依頼を受けて、あらゆる手段を尽くして、果たしました……」
アークエンジェルのその声音に、一同はどのような戦場を駆け抜けたのか想像するしかなかった。
『しかしその戦争は、どのような規模だったのかね?』
「……地球圏全体です……下手すれば、地球が滅びかねない戦争も多々有りました……」
元帥の問い掛けに、アークエンジェルは俯きながら教えた。
この時アークエンジェルの脳裏には、地獄と呼べた戦場が思い出されていた。
コロニー落とし、コロニーレーザー、核ミサイル、中性子ミサイル、ガンマ線レーザー。そういった大量破壊兵器が数多く投入され、それらによる凶行を防いだり、無辜の民を救ったりしてきた。
『……君の雰囲気が、嘘ではない証だな……人の業も、見ただろうに……』
元帥のその言葉に、アークエンジェルは思わず頷いた。
確かに、幾多もの人の業を見てきたからだ。
『繰り返しになるが、今回は情報提供も含めて感謝する……礼になるか分からぬが、暫くの間は泊地に居てくれて構わない……ゆっくり休んでくれ』
「はい、ありがとうございます」
それを最後に、今回の会談は終わったのだった。