綾坂大将は、執務室で作戦の遂行を見守っていたのだが、パソコンの戦況マップには予想外が事態が表示されていた。
「なんだ……一体何が起きている!?」
佐世保鎮守府から次々と出撃するパペット部隊だが、少し前までは3kmより先に進撃出来ず、より攻撃的に進軍するように指示を下した。
しかし、パペット部隊の動きは完全に停止。それどころか、佐世保鎮守府から出撃する数より多くのパペットの数が減っていき、いつの間にか1km地帯まで後退し、更に後退を余儀なくされていた。
「バカな……! 愚民共に、反撃なんて出来る訳がない! それに、帝国軍が到着するにしても早すぎる!」
綾坂大将は苛立った様子で、パソコンを操作してUAVを飛ばすように指示を下した。
少しすると、パソコンの端にUAVからの映像が表示されて、綾坂大将は拡大表示した。
そして見たのは、破竹の勢いで進軍するスピリッツだった。数機ずつで行動していて、あっという間にパペット部隊を蹂躙し、確実に佐世保鎮守府に向けて進軍していた。
「まさか、こいつらが話に聞く傭兵部隊か!?」
綾坂大将からしたら、傭兵部隊に頼るというのは軍が弱いと認めたのと同義で、帝国軍は頼らないだろうと考えていた。
傭兵なのだから、金でしか動かないと綾坂大将は考え、障害にはならないと判断していた。
しかし、綾坂大将は知らなかった。
スピリッツは、確かに傭兵ではあるが、何より人の為に動く傭兵で、争いにより泣く人が居たら助ける為に動くという事を。
場所は変わり、海軍大本営たる舞鶴。
そこでは、祐輔から通信で伝えられた綾坂大将の計画を阻止する為に、急ぎ部隊の編成が行われていた。
「急げ! 今回は模擬弾じゃないぞ! 実弾だ!」
「ベテランで編成! 相手の数は膨大だぞ!」
格納庫では参謀が走り回り、更に整備士達が駆け回っては艤装に燃料や弾薬を補充している。
それを視界の端で見ながら、神林元帥は佐世保市の情報を見ていた。
やはり大きなニュースになっていて、各テレビ局の番組では特番として取り扱っている。
一部の反戦思想の政治家が、今回の事を理由に軍の予算を大幅にカットすべきと強い論調だが、神林は
「……責は背負うべきだな」
と呟き、端末の画面をテレビから佐世保市に入ったUAVに切り替えた。今佐世保市には、大本営から放たれた複数のUAVが入っており、その内の二機が佐世保鎮守府間近にまで来ていた。
そしてその二機からは、大群のパペット部隊に突撃するスピリッツの姿が表示されていた。
「……数を、モノともしていない……だと?」
たった四機、多くて9機編成の部隊が、夥しい数のパペット部隊を蹂躙し、進軍していた。
数というのは、単純な暴力だ。
質より量という言葉があるように、いくら質の良い兵士を多数用意しようが、圧倒的数の大群には抗えないのが通常だ。
特にパペット部隊は無数としか表現しようがない程に居て、地面が見えない。だが、神林元帥にも予想しようがない程に、スピリッツはパペット部隊を次々と倒して着実に佐世保鎮守府に接近していく。
「……誰か居るか!」
「は!」
神林元帥が呼ぶと、偶々近くに居た一人の参謀が駆け寄ってきた。その参謀に、神林元帥は端末を差し出して
「空挺部隊の用意もさせよ……急ぎ、佐世保鎮守府を制圧する」
と告げた。
参謀は最初、理解出来ないという表情だったが、端末の画面を見て
「こ、これは……! スピリッツが、押し込んでいるのか!?」
と驚きの声を上げて、それを聞いた他の参謀達も集まってきて、端末を見た。
そして、希望を見出だした。
「元帥! これならば!」
「艦隊の編成と艤装の準備をしつつ、空挺部隊の編成を急げ! 我々の失態、挽回する機会が無くなるぞ!」
『はっ!!』
神林元帥の指示を聞いて、参謀達は駆け出した。
そして神林元帥は、返還された端末を見て
「……彼らの印象を、大きく変えられる時だ」
と呟いた。