「田村・福太郎先生ね…。」
ソーナと別れた後、リアス・グレモリーは幾度目かになるかわからない呟きをこぼして、コピー用紙にプリントアウトされた日刊誌ほどの厚みの資料に目を通す。
資料は三か月前、ソーナが多少強引に手を回して福太郎を教員に迎え入れた際、個人的興味と土地の管理を任されている自負の念から作成させた調査書だ。ソーナの普段らしからぬ行動故に思わず行動した結果のモノだったが…。
「田村・福太郎。満二十七歳、
…出身は
読み返して思うのは、やはり平凡。しかし悩ませられるのは、現金な話だが親友の想いを聞いた後では随分と興味深いと思ってしまうことだ。…よくも悪くも…だが。
パラパラと紙面をめくり、とある項目を視認してその眼が細められる。
「多少変わっているけどあくまでも変わり者という以外では特筆すべきことはない…と思っていたけれど、そうでもないわね。所々の空白が多い、粗もある。大げさに言えば歪な経歴と言っても問題ないくらい。
…それに何といっても目に付くのがコレよね。正直ソーナに忠告を入れるべきか迷うところだけど…。」
でしゃばりすぎ、大きな御世話。百も承知だが、親友が関わるとなると無視できないのではないかと頭を悩ませられる。
その項目には…。
「過去九回、悪魔の眼から見ても「とんでもない」曰くつき物件への引っ越し…加えて
思わずこの調査書を作らせたことを後悔するような、重過ぎる
あんなにも楽しそうに絵を描く人間の経歴とは到底思えなかった。まして親友を虜にするほどの絵描きの経歴とは思い難かった。
「…乗り越えたということなのかしら。だとしたらとても立派なのだけどね…。」
読み終えた資料を、手元より立ち昇りし漆黒の「滅び」が
深々と息を吐き…自らの「女王」が淹れた紅茶が飲みたい、どうかこの気分を入れ替えたいと思う中。…やっぱり、調査は必要かなと再び想い悩むリアスであり。自分で思っている以上に彼女は若かったと言えた。
「…そういえば、変わった名前の場所に住んでいるのね…。ええと…?」
思い出そうとするも出ては来ず、最早抹消した資料は返ってこない。まあいいかと、大した情報ではなかったと判断した彼女の記憶はそれ以上の捜索を放置した。
尚、彼女が知りたい項目には、このようなことが書かれていた。
『現住所・駒王町○○××ー
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拝啓
みなさま、御元気ですか。
突然ですが私が教鞭取ってる元は女子高であったというこの学園には、珍妙な名物生徒が存在します。
三位一体さながらに常共に行動し、あまねく生徒に混沌をもたらす存在。何故かちょいちょい縁があるのが複雑な心境というトコロです。
名を兵藤・一誠。ならびに元浜、松田。
「変態三人組」と、人は彼らをヒネリも加えずにこう呼んだ。
覗きに始まり教室でのエロ本鑑賞、猥談乱舞。いっそ清々しいとまで言えるエロガキどもです。根っコからエロガキです。母さん、最近のエロガキってスゴイですよ。
さてそんな問題児以前の三人組ですが、今日も今日とて覗きを働きましたらしく。
絶賛死にかけていマス。
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「やべぇ、やべぇやべぇやべぇ!追ってきてるか!?まだ来てるか!?どうなんだ!?」
「うるっせぇぞ元浜ァ!見てる暇はねぇさっさと走れ、物理的に殺されかねねぇんだぞ!」
「———うおっ!?ウソだろオイ、
叫び、泣き、焦燥しながら駆け抜ける影が三つ。夕陽で茜に色好き始めた校庭の隅、校舎の裏手に差し掛かる道を怒声と泣き言が木霊する。
駆け抜ける影たちは一様に死に物狂いだ。肩で息をする体力さえ惜しいとばかりに走り続けてかれこれ一時間弱、体力の限界などとっくに迎えているにも関わらず、未だ彼らは止まる素振りを見せない。見せようとはしていない。
否、正確には「許されていない」のだ。他ならぬ「
「チクショウなんでいるんだよ!授業変更でもあったのか!?しかも二人そろってなんて!」
「今ンなこと考えてなんになるんだよ!なんに!チェックミス言及するにも後でいいだろ!」
「生きていられたらな!――でも正直眼福でした!」
「同意!」
「同意!!」
彼らのエロ塗れの脳髄にも後悔の二文字は確かに存在する。されど「覗いた」という行為にはその二文字が決して作用しないのが、彼らの恐ろしい所だ。反省の二文字もモチロン適用されないだろう。
故に彼らが絶賛後悔中なのは、チェック漏れによることの相手を間違えたというただ一点のみ。何よりも危険視していた、最近になってこの学校に転校してきた変態三人組にとっての文字通りの天敵。そしてソレは、女生徒たちにとっての文字通りの「
言うまでもないコトだが。
古今東西。「
「ムカツク。」
「待たンかぃボケェ!!!」
BANG!BANG!BANG! ――
「「うッぎぃいやぁぁあああああああああああッ!!?」」
「元浜松田ぁぁぁあああああああああッ!?」
二者二様・一念統一。
逃走の甲斐もなく鎮圧された二人、となれば残る「獲物」は一人となる。驚愕のあまり足を止めてしまった「
視線の先。沈みゆく日光を背に、
ソレはあまりにも両極端で、統一感のない二人組。最も警戒していた天敵。運悪く覗いた眼福。
「手コずらせよってからにぃ、こンクソ覗き魔どもがあ…!」
ゴキゴキッと拳を鳴らす、怒気と呼気を熱気に乗せた「正義の味方」。
駒王学園転校生その一。誰が呼んだか"浪花天使"「上池田・美奈歩」。
「ムカツク。」
右手に日傘、左手には照準を定めたコルト・パイソン357マグナム。死人のような顔色に青筋立てるのは、無類の「
駒王学園転校生その二。イギリスより謎多き留学生「ラウラ・
その邂逅に恐怖のあまり顔が引きつり、言葉は愚か声すら出せずに一誠は後ずさる。無論、意味のない行動だと理解はしている…何故ならば、彼らが彼女たちに追われるのは実に二度目だからだ。当然、「この後」どうなるかも彼はわかっていた。そして悟る、「足が止まった時点で自分も終わった」ということを。
「ヒーロー」が来た以上、結末は変わることもない。
はたして訪れる断罪の後に、少しだけでも「覗きとかしないようにしよう」と反省できたのか…その真相を知る者は、今はいないであろう。
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てなカンジでした。
その後なんでかボクが介抱しましたが、とりあえず生きてはいました。…あんま懲りてなさそやったけどな。
巻き込まれたくないし、はたしてコイツらは野放しにしといてエエのか今も首をひねりますが、とにかく私は元気に生きられています。でも便りが途絶えたらヤバイと思ってください。
————————————福太郎より
タノシイ。でも難しい、修正はいるかも
とりあえず。この二人はいますのです