クロスオーバーとは難しい。面白い。
辻褄合わせてクロスさせると、らしさを出すの難しい。
クロスさせたキャラは、「その世界キャラ」になるのが面白い。
それは、落ちるかの如く始まった。
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「彼女ができた?」
ことの始まりは、そんなささやかなサプライズ発言からだった。
「はい!そりゃあもう可愛いンですよ!」
デレデレと鼻の下を盛大に伸ばして報告するのは、先日ボッコボコにされてなし崩し的に面倒を見てやった三人組の一人、兵藤・一誠。
あの日より数日たった今日、屋外写生の授業の片づけをしていたところ、ヤケに嬉しそうにニヤケてもじもじしている一誠と遭遇した。ハッキリ言ってその様子見た時に
で、ソレ聞いたオレの反応はというと。
「あー、アー。そりゃまぁオメデトサンデスナー。」
とりあえず否定するのもなんなので、「信じてみる」ことにした。
ぶっちゃけ下手すれば近隣住民は愚かちょいと離れた他校にまで変態として知れ渡っているコイツに告白する猛者がよくいたものだと思っていた。我ながら失礼な気もするが仕方ないだろうと思う。
すると一誠がポカンとした後に唐突に涙を流し、盛大な男泣きを始めた。あまりにも突然だったので困惑していると、どうも「みんな信じてくれやしないンす!」「祝福されたの先生が初です」と涙ながらに語っていた。哀れである。でも当然やろなと頷いた。
「福ちゃん先生!俺、俺!絶対に夕麻ちゃんを幸せにしてみせます…!」
「イヤイヤ気ぃ早すぎやろ!なんでいきなり結婚宣言みたいになってんねん。ってかオレがオヤジかい!」
オンオンと泣きながら盛大な宣誓をたてる一誠をなんとかなだめて聞いたところによれば、わざわざオレに報告してきた理由は自慢したいというのもあるが、なんと今日は早速デートだという話だ。随分と急な話だが、まあ放課後デートなど定番の一つなんでしょうな(ボク知らんけど)。
で、その相談をオレにしたいという。因みに福ちゃん先生ゆーんはオレのアダ名らしいです。
「まあオレしか信じてへんゆーなら仕方ないけどな…。オレも経験ないからアテにならへんぞ?」
「え?福ちゃん先生って彼女とかいなかったンですか?」
さも意外そうに聞いてくる一誠に軽く笑いながら、手を顔の前にて振って否定する。
「ナイナイ、今までおったことあらへんよ。そもそもそない意外そうにすなや、オレそないモテそうにみえるか?あらぬ自信つけさせへんといてや。」
「いやモテそうっていうか…実際モテてるんじゃないすか…?」
「どこがやねん。オレ今までコクられたこともないへんぞ。」
その言ってやると一誠は雷から落っこちた雷獣のミイラみたいな顔をして硬直し…ワナワナ震えて、声を絞り出す。
「DONKAN…これが、これが伝説のDONKANスキル…!?っくそう、これが、これが今まで特にパッとしないのに俺たちとは違って女子たちにヒソヒソチョットイイヨネーされる片鱗だというのか!?数限りない生徒を虜にしてきた福ちゃん先生の48ある魅了テクだと…!?」
「オマッ、教師的にも最ッ悪に人聞き悪いコト抜かしてんねやないぞボケコラァ!だいたいなんや48の魅了テクって、そんな不思議ステキ面白技能持ってるワケないやろが!オレがぬっるいラブコメ好きやからって神様はプレゼントとかせえへんからな!日頃ン行い別によくもないしな!」
ぎゃいのぎゃいのと騒いでいれば、随分と時間がかかったように感じさせるチャイムが鳴り響く。聞き馴染んだ授業開始の合図に、一誠が血相を変える。
「や、やべっ。移動教室から戻る最中だってすっかり忘れてた…!?」
「あー…。エエよ、オレの片づけ手伝ってたことにしといて。とりあえずもう行っとき。」
「う、うす。あ!それであの…。」
「行けって。相談やろ?オレもよーワカランから、とりあえずオマエの好きな範囲で相手も好きそうな範囲のデートコース行けばエエんちゃう?人から教わるんも大事やけど、最初くらいは自分で選んだモン使っとけよ。」
「…はい!ありがとうございます!」
一度頭をこちらへと下げてダッシュで教室に向かう一誠の背中に、一応定番として「廊下走るなよー」と声をかけて置く。驚きはしたが、何はともあれ青春しているようで何よりだ。エロネタが酷すぎるという点を除けば…ああやって相手を想って真剣に悩める辺りは、そう悪いヤツでもないのかもしれないと、兵藤・一誠の人となりの一面を見た気がする(その欠点がヒドすぎるので評価はどうしようもない気がするが)。
まあ他人事ではあるが、この出逢いとイベントで少しは大人しくなるかもしれない。そう思い、オレはサッサと職員室へと向かった。
この時は、本当にそんな風にしか思っていなかったのだ。思えなかったのだ。
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それからの流れに、特筆すべきことは何もなかった。
放課後になり、私物の油絵一式を持って帰宅する。口々に挨拶を交わす生徒の中、遠目に二人組の変態にどつかれながら校門へと向かう一誠の姿を見た。その様子ははた目から見ても嬉しそうで、純粋にこの後の時間を楽しみにしている様子だった。何よりだと思う。残るは二人組…という展開にも、もしかしたらなるのかもしれない。
校門を出てしばらくすると、帰る方向が同じラウラと美奈歩らと偶然にもカチあったので特に疑問もなく共に帰る流れなる。その際、一誠に彼女が出来たというコトを教えると酷く驚いていた。気持ちはわかる。
家路につき。途中に美奈歩を、そして「家で」ラウラを見送って。
まだ少々早い時間ではあったのだが、家で「皆」と食事をした。
進みゆく「流れ」は、ここまでだった。オレはきっと忘れていたのだと思う。
「落ちる」とは唐突で、直前までおよそ見えず、気付けぬものだというコトを。
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夕食を終えた後、オレはタバコを買いに夜道を一人歩んでいた。
思えば昼休みに最後の一本を吸ってから吸う機会もなかったので忘れていた。しかし食後に一服…と思ってないコトに気付くと、なんだか無性に吸いたくなってしまった。そうなると人間とは弱いもの、メンドイ思っても、気付けば手近なコンビニへと足を向けていた。
愛飲の「joker」をちょっと贅沢にカートンで購入し、早速一本に火をつけて、馴染みのある温かな煙が肺を満たすささやかな幸福を味わい、人気のない暗がりを帰路についていた時だ。
不意に、タバコの煙が夜風に散らされ、「匂い」が鼻についた。
生臭く、鉄臭く、錆びっぽい。嗅ぎ覚えのある匂いだった。
足が動いていた。嫌な予感がした。それでもとにかく、急げという衝動に駆られて、夜風の方向へとオレは走って———。
血だまりに沈む、「兵藤・一誠」だったモノを発見した。
酷く「見覚えのある翼」を生やした女が、薄嗤いを浮かべていた。
平和は流れ、落ちていく。瀑布の中に砕けて消えた。
騒乱の始まりは、そんな唐突なモノだった。
お気に入りと評価をしてくださった方々、深く深く感謝いたします。
まだ、続きます。