地味で最弱なパーティは最強の勇者パーティを超える 作:スーパーかみ
よろしくお願いいたします!
プロローグ1
「成神最悪だな……」
「キモッ」
「な、何でこんな事に……」
黒髪の少年、成神勇綺(なるかみゆうき)は、教室の中のクラスメイト全員に陰口を叩かれつつ白い目で見られ、一人机の上で戸惑っていた。何故こんな事になったかと言うと、彼の目の前にいる三人の男女が原因だ。
「成神君、正直に答えてくれないかな? 君が愛鯉のアルトリコーダーを盗んだのかい?」
「嘘をついたりするんじゃねぇぞ? 糞オタ?」
「ま、正義君! 待って! まだ、成神君と決まった訳じゃ……」
まず、初めに勇綺に声を掛けた少年の名は聖正義(ひじりまさよし)。身長は百七十八センチメートル程で、イケメンと呼んでも間違いないほど容姿は整っている。さらさらで茶髪のミディアムヘアと優しそうな黒い瞳は、正義に爽やかな雰囲気を出させていた。優れているのは容姿だけではない。
困っている人に手を差しのべられる優しさと、警察官である父親譲りの悪を許さ無い強い正義感、そして勉強とスポーツと武道の両方を疎かにせず両立出来る程の高いスペックも持ち合わせている。容姿、性格、学力、身体能力のどれもこれも非の打ち所が無い、まさに《完璧超人》と言っても良いだろう。
そんな彼の超人スペックに惹かれる女子生徒は多く、更に男子生徒や教師にも支持され、学校内には正義のファンクラブまで出来る程彼は人気者である。
次に、背丈が百八十二センチメートル程あって、オタクである勇綺を馬鹿にしている態度の男子生徒は海道博孝(かいどうひろたか)という。
正義の幼なじみであり、金髪でオールバックの髪に鋭い目付きと強面の顔が特徴だ。
見た目は恐いが、意外にも彼は友情に熱く和を大事にする性格だ。
幼なじみや友達を傷付ける者が居たら、彼はプロボクサーの父親から習ったボクシングを使って、心の無い連中から大切な人達を守ったりしている。
彼のナイスガイな部分に支持する女子生徒は多いが、実は、男子生徒から圧倒的に多く支持されているらしい。
そして最後に、正義を止めようとしている女子生徒の名前は、桃条愛鯉(とうじょうあいり)。身長は百六十センチメートル程で、学園のマドンナと言われており、男子生徒だけじゃなく女子生徒からも凄まじい人気を得ている美少女だ。
綺麗な黒髪は腰まで届く程長く、左右の髪の毛は後ろ髪の方まで持っていって桃色のリボンで一つにまとめたハーフアップな髪型、やや垂れ気味な黒い瞳は優しげな雰囲気を出しており、薄い桃色の唇は彼女をより可愛くみせていた。
明るくて誰にでも優しく、オタクというだけでクラスの中で孤立していた勇綺にも、嫌な顔をしたりせず友好的に接してくれている。
その上、彼女は勉強もスポーツも万能であり家もお金持ちである。まさに《才色兼備》という言葉が相応しいといえよう。
全てに恵まれている彼女は、クラスメイトの男子生徒によく告白されているだけじゃなく、他の学年の生徒や下の学年の生徒からにも告白されているが、全て断っているらしい。
そんなリア充な三人に何故、勇綺は愛鯉のアルトリコーダーを盗んだ犯人として疑われてしまったかというと、それは数分前に戻る。
「ん? あれ?」
愛鯉が授業に使うアルトリコーダーを机の中から出そうと、その中にあるリコーダーが入ったケースに触れると違和感を感じた。彼女は違和感を感じたケースを徐に握ると、ケースの中に入っているはずのアルトリコーダーが無いことに気付く。
愛鯉は慌てながら机の中の奥を覗いてアルトリコーダーを探したが、やはり見つからない。
彼女はいつもアルトリコーダーを持ち帰らず、机の中に入れっぱなしにしていた。だから、机の中のアルトリコーダーが一人で何処かに消えるはずはない。昨日だって、愛鯉はアルトリコーダーの手入れをした後、机の中にアルトリコーダーを入れた事をはっきりと覚えている。
愛鯉は、これだけ探してもアルトリコーダーが見つからない事に、ほとほと困り果てていた。
そんな愛鯉の様子に異変を感じた幼なじみの正義は、同じ幼なじみの博孝と共に彼女の元へと歩み寄る。
「愛鯉、どうかしたかい?」
「お前、机の中を必死に何かを探してたけど……、なんか無くしたのか?」
「! 正義君……、博孝君……。えっとね……、机の中に入れていたアルトリコーダーが無くなってて……」
愛鯉は自分の様子が変だった事に、心配して来てくれた正義と博孝に事情を話した。
「何だって! リコーダーが無い!? まさか、盗まれたのかい!?」
「おいおい! 本当かよ!?」
「落ち着いて二人とも。まだ盗まれたと決まった訳じゃ……。それよりも、余り大きな声を出さないで。他の人達に聞こえちゃうよ……」
愛鯉の話を聞いた二人は大きく騒ぎ出す。
しかし愛鯉は、余り事を大きくしたく無いのか、二人を落ち着かせようとするが……。
「桃条さんのリコーダーが盗まれたって本当か?」
「マジかよ……」
「誰が盗んだの!」
「桃条さんを悲しませるなんて! 最低!!」
「俺達の学園のマドンナのリコーダーを盗むなんて! 犯人許さねぇ!!」
「犯人! 出てきなさい!!」
正義と博孝の声に、クラスメイト達も愛鯉のリコーダーが盗まれた事に気付いたらしく、クラスメイト達はリコーダーの犯人探しを始める。
(ど、どうしよ……、騒ぎが大きくなってるよ……)
「Zzz……」
血眼になってリコーダーの犯人探しをするクラスメイト達に、愛鯉はおろおろしていた。
そんな愛鯉とは逆に、クラスメイト達が犯人探しをしている最中、勇綺は机に顔を伏せてのんきに居眠りをしている。昨日、夜遅くまでテレビゲームしていたのが原因だろう。
「愛鯉、リコーダーを最後に見たのは、いつだい?」
「え? えっと……。昨日の放課後の時間辺りに、リコーダーの手入れをした時かな? 最後に見たのは……」
「ふむ……。昨日の放課後辺りまでは、リコーダーが有ったと……。ん? 昨日の放課後……? そういえば……」
正義は愛鯉に聞き込みをした後、顎に手をあてながら考え始める。すると、正義は何かを思い出す。
「昨日の放課後、愛鯉以外にも教室に残っていた人物がいたな……。確か……、成神君……だったかな?」
「あっ! そういえば居たな! 確か、糞オタは宿題を忘れた罰として、反省文を書かされてたな!」
正義と博孝は、勇綺が愛鯉と同じく放課後に残っていた事を思い出す。
「愛鯉、彼は君が下校する時には、まだ教室に残っていたかい?」
「え? う、うん……。確か私が下校をする時に、成神君はまだ居残りをしていたけど……」
「そうか……。じゃあ……、決まりだね……」
正義は愛鯉に、勇綺が一人で教室に居残りをしていた事を聞き出すと、ある結論を出し始めた。
「成神君がリコーダーを盗んだ犯人かもしれない!」
「えっ!? 成神君が犯人!?」
「糞オタが犯人!? 確かに糞オタならあり得るな!! 愛鯉が下校した後も居残りをしてたし、リコーダーを盗む事が出来るしな!!」
正義が出した結論に愛鯉は戸惑い、博孝は正義の言葉にすんなりと肯定する。
「成神君が桃条さんのリコーダーを盗んだ犯人……。あり得るかも……」
「桃条さんが下校した後も居残りしてたからなぁ……。盗むチャンスはいくらだってあるだろうな」
「それに、成神君はオタクだしね〜〜。桃条さんのリコーダーを絶対欲しがってそう」
「聖の言う通りだ! リコーダー泥棒の犯人は成神に決まってる!!」
正義と博孝の言葉に、クラスメイト達は次々と便乗して、勇綺を犯人扱いしていく。
「よ〜〜し! 犯人が分かったなら早速、糞オタを締めに行くか!!」
「……」
「ちょっと! 二人とも待って!!」
博孝と正義は、机に顔を伏せて居眠りしている勇綺の席に近付いて行く。
そんな二人に、愛鯉はあわてながらも博孝と正義の後を追う。
「おら! 起きろ!! 糞オタ!!!」
「ふえっ!? な、何!?」
博孝は寝ている勇綺に怒声を浴びせた。
博孝のでかい怒声に、勇綺はびっくりして目を覚ます。
「何? この状況……」
目を覚ました勇綺は周りを見ると、目の前にいる博孝と正義と愛鯉と三人の後ろにいるクラスメイト達が、白い目で自分を見ている。この異様な空気に勇綺は戸惑いだした。
そして、今に至る……。
「さぁ、はやく答えるんだ! 君が愛鯉のリコーダーを盗んだ犯人なんだろ?」
「さっさと答えろや! 糞オタ!!」
「ま、待ってよ! 僕は、桃条さんのリコーダーなんか知らないし盗んでもいないよ!!」
正義と博孝は、勇綺が犯人だと問い詰めるが、勇綺は自身が犯人ではないと二人に反論した。
……しかし。
「嘘をつくな! ゴミが!!」
「愛鯉が下校した後も、君は教室で居残りをしていたはずだよ。そんな君なら、愛鯉のリコーダーを盗む事が可能なはずだ!」
「そんな……」
博孝と正義は勇綺の言葉に耳を傾けようとはせず、勇綺をひたすら疑いだす。
勇綺は、そんな二人に呆れるしかなかった。
中途半端ですが、ここで終わります。
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