地味で最弱なパーティは最強の勇者パーティを超える   作:スーパーかみ

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最新話です!
それでは、どうぞ!


第37話 氷の魔法

「う〜〜ん、美味しい〜〜♪」

 

「うおっ! うめぇっ!」

 

 勇綺がマシロからの視線を慌てふためきながら逸らしている最中、秋と龍哉はフォークを使って、テーブルの上に置いてあるフルーツケーキを口の中へと運ぶ。すると、頬張ったケーキのフルーツの甘酸っぱさと生クリームの甘さが口の中いっぱいに広がり、秋と龍哉の顔を綻ばせてゆく。

 

「ん? おい、勇綺! ケーキ食べねぇのか?」

 

 フルーツケーキの美味しさに顔を綻ばせた龍哉は何気に、テーブルの上に置いてある勇綺のケーキの方へと視線を移す。勇綺のフルーツケーキは、マシロがテーブルの上に置いた時から、量が全く減ってはいなかったのだ。気になった龍哉は、勇綺に問い掛ける。

 

「へ? あ……、う、うん! た、食べるよ! うん、美味しいね! これ! いくらでも食べられちゃうよ!」

 

「お、おう……。そ、そうか……」

 

(こいつ……。誤魔化してる……。まさか……、また、マシロに見惚れていたな……)

 

 突然の問い掛けに勇綺は、先程までマシロに見惚れていた事を龍哉に悟られないように、笑顔で誤魔化しながら返答すると、フォークを使ってケーキを急いで口の中へと頬張ってゆく。

 何かを誤魔化すかのように、わざとらしい笑顔で返答した後、ケーキを急いで食べる勇綺に、龍哉は戸惑いながらも納得する。

 戸惑いながらも納得した龍哉とは対照的に、秋はケーキを食べながら勇綺を睨みつけていた。どうやら秋は、笑顔で何かを誤魔化してる勇綺が、先程までマシロに見惚れていた事に気づいたようである。

 

「成神君、鉄君、そして紫堂さん。話の続きだけど……」

 

「「「!?」」」

 

 勇綺と龍哉がやり取りをしている最中、バニラが話を切り出す。

 話を切り出されて、勇綺と龍哉、そして秋は、バニラの方へと振り向く。

 

「今の私達は、園芸師の虫系特効のスキルストーンを集められないだけじゃなく、イッカク退治に協力してくれる園芸師達や仲間を多く集める事もできていない……。かなり苦しい状況なの……。できれば成神君達にも、イッカク退治の協力者を集めるのを手伝って欲しいんだけど……。駄目かしら? 成神君達が、イッカク退治に備えての準備や、強くなる為のレベルアップとかで色々と忙しいのも分かっているわ……。でも今は、協力者を集めるのに人手が欲しいの……。私達だけでは、協力者を集めるのも限界があるのよ……。レベル上げやイッカク退治の準備との両立は難しいと思うけど……。どうか……、お願いします……」

 

 今の自分達の状況を説明したバニラは、心苦しそうにしながら勇綺達に、イッカク退治の協力者集めを手伝って欲しいと頼み込む。

 

「お願いします!」

 

「お願いします……」

 

 協力者集めを手伝って欲しいと頼み込むバニラに続くように、チョコとマシロも勇綺達に頼み込んだ。

 

「龍哉、秋」

 

「「!」」

 

 バニラの頼みに勇綺は突然、龍哉と秋を呼び掛ける。

 呼び掛けられた龍哉と秋は、勇綺の方へと振り向く。

 

「僕は、イッカク退治の協力者集めを手伝おうと思うんだ……。確かにバニラさんの言うとおり、今の僕達は、レベル上げや情報集めとかで両立は難しいと思う……。でも、人手が多いほうが、協力者集めが捗り、戦力を多く増やす事ができると思うんだけど……。二人は、どうかな?」

 

「そうだな……。人が多いほうが、協力者を集めやすくなるだけじゃなく、戦力を増やせるかもな……。よしっ! 分かった! 俺も協力するぜ!」

 

「あたしも、協力するわ!」

 

 勇綺は、こちらを見据える龍哉と秋に、イッカク退治の協力者集めを手伝う事を提案する。

 勇綺の言うとおり、人集めを手伝えば、バニラが苦労していた、イッカク退治の協力者集めが今よりも捗り、戦力を増やす事ができるだろう。

 勇綺の提案に納得した龍哉と秋は、イッカク退治の協力者集めに手伝う事を賛同する。

 

「ありがとう……。成神君、鉄君、そして紫堂さん……」

 

 勇綺達が、イッカク退治の協力者集めを手伝ってくれる事に、バニラは顔を綻ばせながら感謝をすると……。

 

「あの、バニラさん!」

 

「?」

 

 勇綺が突然、バニラを呼び掛ける。

 呼び掛けられたバニラは、勇綺の方へと視線を移す。

 

「協力者は、どれくらい集めれば良いのですか?」

 

「そうね……。イッカクの部下は、かなり多いわ……。それよりも多くの協力者が欲しいけど……。現実的に考えて、そこまで集めるのは難しいでしょうね……。出来れば、五百人位……。五百人が無理なら、最低でも、百人位の協力者が欲しいわね……。後、氷の魔法を使える人を、なるべく多めに集めて欲しいかな……。数で攻めてくるイッカクの部下に対抗するには、氷の魔法を使える人が多く必要になるわ……。イッカクの部下はイッカクと同じ虫系統だから、虫系特効のスキルに弱いだけじゃなく、氷属性の魔法や武器がよく効くのよ……。氷魔法が使える人を多く集めるのは大変だと思うけど……、お願いね……」

 

 呼び掛けた勇綺は、協力者をどれくらい集めれば良いのか、バニラに問い掛ける。

 問い掛けられたバニラは勇綺に、協力者をどれくらい集めるのか答えた後、更に、氷の魔法が使える人を多く集めて欲しいと頼み込む。

 

「なぁ、バニラのねぇちゃん? 虫系統の魔物に氷の魔法がよく効くんだったら、虫系統に強い園芸師や虫系特効のスキルストーンを、集める必要がなかったんじゃねぇのか? 氷の魔法が使える奴だけを集めれば良いのに、なんで、人を集めるのが難しい園芸師や虫系特効のスキルストーンを集める必要があるんだ?」

 

 虫系統の魔物が冷気に弱いなら、氷の魔法が使える人だけを集めれば良いのに、園芸師や虫系特効のスキルストーンを集める事に疑問を感じた龍哉は、バニラに問い掛ける。

 すると……。

 

「氷の魔法だけでは駄目なのよ……。氷の魔法は、魔法だから広範囲攻撃ができて、数で攻めてくるイッカクの部下に対抗出来るけど……。でも、イッカクには、氷の魔法を使ってはいけないのよ……。もしもイッカクに、氷の魔法で攻撃をしたら、イッカクは冷気を吸収して、氷属性に強くなってしまうだけじゃなく、ステータスがパワーアップしてしまうの……。だから、イッカクが無効化する事ができない、虫系特効のスキルが使える園芸師や虫系特効のスキルストーンを集める必要があるのよ……」

 

 問い掛けられたバニラは龍哉に、園芸師と虫系特効のスキルストーンを集める理由を話す。

 

「なる程ね……。良く分かったぜ! んじゃ、言われたとおり、氷の魔法が使える奴を探してみるよ! 勇綺! 秋! 早速、イッカク退治の協力者集めをするぞ!」

 

 バニラの話に龍哉は、イッカク退治の協力者集めをしようと、勇綺と秋を呼び掛けると……。

 

「うん、協力者集めもするけど……、レベルアップの為に退治する魔物の情報も集めたいかなと思う……。今の僕達は弱いから、少しでも戦闘を楽にする為には、魔物の情報が絶対に必要だと思うんだ……。だから、今日は、協力者と情報の二つを集めよう!」

 

 呼び掛けられた勇綺は、龍哉に、協力者集めと魔物を倒す為の情報を集める事を提案する。

 

「そっか……。確かに、そうだな! 分かった! んじゃ、イッカク退治の協力者集めと魔物を倒す為の情報を集めに行こうぜ!」

 

「あっ、こらっ! 待ちなさい! 龍哉!!」

 

 勇綺の提案に賛同した龍哉は、意気揚々と部屋から出てゆく。

 部屋から出ていく龍哉の後を、秋は急いで追いかける。

 

「あっ! 待って! 成神君!」

 

「?」

 

 龍哉と秋の後を追いかけようとする勇綺を、バニラが突然、呼び止める。

 呼び止められた勇綺は、バニラの方へと振り向く。

 

「お礼を忘れるところだったわ……。これ、イッカク退治に協力してくれたお礼の前金よ! イッカクを退治できたら更に報酬をだすから、部屋から出て行った鉄君と紫堂さんに、この事を伝えてね!」

 

「は、はい! ありがとうございます!!」

 

 呼び止めたバニラは、ソファーから腰を上げると、勇綺の方へと近付く。そして、目の前にいる勇綺に、バニラは、お金が入った袋を渡す。どうやらバニラは、勇綺に前金を渡す為に呼び止めたようである。

 前金が入った袋を受け取った勇綺は、バニラに感謝をするのであった。




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