真白「沖兎さんが変身した姿【ビルド】の活躍により、敵を撃退する事に成功! その結果、私達は一人の少女と少女から抽出された小さなボトルを手にしたのでした!! それにしても沖兎さん、危ない事は」
響介「異形がこんな子供とは……人体実験か?」
真白「そんなの、許せませんね! 居場所が分かり次第、殴り込みです!! って、沖兎さん! 危ない事は」
響介「あの剣もだけど……もしかしてそういうのに手慣れてる?」
真白「……イエ、ソンナコトナイデスヨ?」
響介「まぁ、いいや……そんなこんなで」
真白・響介「「はてさてどうなる第3話」(!!)」
響介「始まるぞ……さて、そろそろ状況把握したいな」
ブラッドスタークの襲撃から1週間が経ち、俺と龍ヶ崎は結果的に助けた女性―――
なお、ラボや潜水艦の命名者は篠ノ之束本人で、その名前を知った俺と龍ヶ崎は驚き混じりの苦笑を浮かべた程だ。
1週間の内、改修工事に一日、龍ヶ崎の検査に二日、残りは俺の検査に今日まで費やされた。というか、一日で改修工事とか流石自称てぇん↑さい↓科学者。因みにこの呼び方はイントネーション含め結構言われた。普通に天才だとツマンナイらしい。
それから、俺が検査している間は、先に検査を終えた龍ヶ崎が最寄りの国の港町で買い出ししたり、衣食住の衣と食を俺達
そして今日も検査を受け終わると、龍ヶ崎が料理を作っているところだった。
「あ、響介さん! 検査お疲れ様です! 今日はウインナーと野菜の炒め物にポタージュ、後は名前はあんまり分かんないけど、柔らかくて美味しいパンです!」
「有難う、龍ヶ崎」
「もう、真白で良いって言いましたよね?」
龍ヶ崎がジトーッと擬音のしそうな目で此方を見てくるが無視して俺はそのまま席に着く。
余談だが、1週間前の戦いの後に検査を受けたら何故か篠ノ之束に名前で呼べと言われ、龍ヶ崎も便乗して名前で呼んで欲しいと言い、結果的に自己紹介を兼ねた事で俺は龍ヶ崎真白を『龍ヶ崎』と呼び、篠ノ之束を本人の希望と此方の希望の妥協点から『たーさん』と呼ぶ事になった。
また、龍ヶ崎は俺と篠ノ之束を名前呼び、篠ノ之束は龍ヶ崎を『まーちゃん』、俺を「きょーちゃん」って呼ぶ―――って、おい。
「ん? なにかな、きょーちゃん♪」
「いや、何でも……それで、たーさん結果―――ぁ?」
後ろから聞こえてきたたーさんの声に返事をし、検査結果を聞こうと振り返ると、思わず唖然となってしまった。
後ろには頭に機械のウサミミカチューシャをつけ、胸元が開いたデザインのエプロンドレスを着ている、さながら不思議の国の少女の様な恰好のたーさんと、白い着物に赤い袴もとい巫女服を着た、流れる様な銀髪の少女がたーさんの服の裾を掴みながら立っていた。
この銀髪の少女こそ、ブラッドスタークがボトルと一緒に渡してきた少女であり―――
「……たーさん?」
「あはは、無表情に返されると流石にちょっと困ったね……今クーちゃんが着てるのは、小さい頃に私が着てた物だよ! 簡単に言えば、お下がりかな♪ 今度、まーちゃんに服買ってきて貰うつもりだよ♪」
―――たーさんが義理の娘として【クロエ・クロニクル】と名付け、クーちゃんと呼ぶ少女である。
由来は判らないが、他には篠ノ之
因みに呼び名はたーさんはクーちゃん、龍ヶ崎はクロちゃん、俺はクーと呼んでいる。
クーは俺に顔を向けて小さく頭を下げると、料理をしている龍ヶ崎の方へ小走りで向かっていく。
どうやら、スマッシュという化物になってる間に僅かながら意識が残っていたらしく、ビルドに変身して自分を倒した俺に苦手意識があると思われる。
まぁ、状況が状況だったとは言え、俺もスマッシュがクーに変わったのを見て困惑していたし、倒してしまった事で罪悪感があったから、致し方ない事と納得している。
「たーさん……体調は?」
龍ヶ崎と話をしながら料理の手伝いをし始めているクーを視界に納めつつ訊くと、たーさんは俺の隣の席に座ってから、困惑や期待、興味等様々な感情が混ざり合った表情を浮かべた。
「クーちゃんの身体自体はISコアのお蔭で何とかなってる。ただ、まだ体内に残ってる
クーの身体は、たーさんの言う
たーさん曰く、便座上【生体同期型IS】とか言っていたが、簡単に言えばクーは人造人間みたいな存在になってしまったのだ。
その影響か解らないが目を全く開けられず、現在はISの機能の一つである【ハイパーセンサー】という高性能センサーを経由して視界を確保しているらしい。
目を開けれない原因の究明はたーさんが行っているが、依然として不明との事だった。
「さて、改めてきょーちゃん。君の検査結果だけど、まーちゃん含めて話したいから、ご飯食べた後ね? 序でに改めて現状の説明とかしたいし」
「それは構わないけど……今更だが、今何時?」
「さぁ? そんなの気にしてたら禿げちゃうよ♪ まぁ、カレーじゃないから金曜日ではないのは確かかな?」
「海軍の曜日感覚真似てるのか……てか、今のところカレー食べた記憶ない……?!」
△ ▲ ▽ ▼
「さて、それじゃあきょーちゃんの検査結果と、これまでの現状についての復習についてね?」
私を含め皆様で真白様の作ったご飯を戴いた後、束様の一言によって、全員で会議室と呼ばれる部屋に集まりました。
私、クロエ・クロニクルにはあまり記憶がない。
現在は束様に救われ、目の見えない中、ISによる機能によって周りの状況を把握出来る様にして下さった事で、こうして直接ではないけど物が見え、食事も楽しいと感じながら戴いている。
そもそも、残っている記憶が赤い人型の化物―――ブラッドスタークによって化物にされる場面だった事。
そして、微かに残っている、ブラッドスタークの命令通りに動き、暴れ、そして束様を―――
「さて、先ずはこの図を観て欲しいんだけど」
束様の説明が始まり、私は直ぐに不快な考えを破棄する。結果的にと言えば、聞こえが良いかも知れないが、響介様のお蔭で私は人に戻れた……はず。
どうしても、私にない記憶が伝えてくる事がある。それが、私を人とは思わせてくれない。
「これは、きょーちゃんの変身中と変身解除後のデータを分かり易くしたもの。これを見て、どう思う?」
嫌な考えを振り払い、束様が空間ウィンドウに展開したデータを見比べる事に集中する。
恐らく右か変身中で、左が変身解除後のデータ。
左右見比べてみて、私はふと双方に赤と青の何か変なのが残っている事に気付いた。
それを言うべきか悩むけど、真白様は恐らく何か引っ掛かってるのだと思う。響介様は見比べているけど、多分理解出来てない。無表情なので確証は無いですが、ご本人の事だから気付けていないのかも知れないので。
なので、私が恐る恐る手を上げる。
「はい! クーちゃん!!」
「気のせいかも知れないんですが、変身解除しても一部の数値だけ体内に蓄積されてませんか?」
「だいっせーかい!!」
私の答えを聞いて束様は笑顔で私の頭を撫でて下さり、響介様は理解したのか納得顔をして、真白様は直ぐに束様へ挙手されました。
「何かな、まーちゃん?」
「束さん! この蓄積されてるのって、もしかしてフルボトルだっけ? アレの成分の一部じゃないの?」
「そのとーり! そして、今度は右に変身解除後のきょーちゃん、左に現在のクーちゃんの結果を出すよ」
束様は次に空間ウィンドウへ先程の響介様のデータと私の検査結果のデータを展開した。
そこには、先程の響介様に出ていた赤と青の変なのが、私だとほんの少しだけど濃い赤紫色で描かれていた。
「私は皆を検査する傍ら、コレの正体について調べてみたけど、出て来たのはほんの少しだったよ。このきょーちゃんとクーちゃんの体内に蓄積されてる物はまーちゃんの言う通り、フルボトルの中身でもある物質【ネビュラガス】。そして、このガスが蓄積され耐久力が出来ると【ハザードレベル】って呼ぶ事。このレベルが一定の数値を達すれば、きょーちゃんみたいに変身出来るって事」
束様は図に1.0の数値毎に色で区切られたピラミッド型のグラフを表示すると、そこに私達の顔が可愛くなったアイコンを入れた。
響介様は先程の説明通り3.0の段で、束様自身と真白様は一番下の0段。
そして私のアイコンは、響介様の下である2.0の段に入った。
「スタークの言葉が本当なら、恐らく変身は3.0以上必要で、きょーちゃんは3.0以上、私とまーちゃんは判らないから都合上0扱いだけど、クーちゃんも少なからず2.0~2.9あると予想してる。じゃなきゃ、蓄積されてるガスに対しての耐久力に説明つかないからね♪ ま、クーちゃんの場合、耐性を内蔵してるISコアが補助してるからだけど、身体が出来てない事もあるし、検査は引き続き行っていくからね」
束様の言葉に私は恐怖を感じました。
それはつまり、私と響介様は得体の知れないガスに耐性があるが、見方を変えれば私や響介様はそのガスがあるから異形やビルドに変身していたという事なのですから。
その後に束様と真白様が何やら難しい会話をし始めましたが、私は着いて行けなくなりました。
私がそれどころじゃなかったのもありますが、お二方は相当頭が良いのだと思います。
何せ、束様はISの設計者であるのです。束様に会話を合わせられる時点で真白様も頭が良いに決まっています。
すると、響介様が私の頭を唐突に撫でてきました。
「如何しましたか?」
「心配かもだが……その時は何とかする」
響介様の言葉は時折足りなかったりしますが、恐らくこういう事なんでしょう。もし私が再び異形になっても、ビルドである自分が殺してでも何とかする、と。
残酷にも聞こえる言葉ですが、それが如何してか私の心に響きました。
そして気がつけば、私の中にあった響介様への恐怖心が少しですが、和らいだ気がしました。
「あ、最後に夕食はカレーでね?」
「リクエスト承りました!」
「……今日が金曜日か」
序でに、気苦労が絶えなさそうで不憫そうにも響介様を思えるようになりました。
……とりあえず料理、覚えるの頑張ります。
一週間前、ブラッドスタークによって襲撃を受けた篠ノ之束のラボがあった場所。
標高がそれなりに高いだけの山の奥地に存在していた場所に、不自然に立っている銀色の金属で出来た扉のみがあった。
その扉は存在そのものが不安定なのか、時折揺らめいており、一種の蜃気楼の様に感じられる。
扉の揺れが収まると、扉が唐突に開いて一人の青年が姿を見せた。
その青年が山の地面に踏み出すと、扉へと振り返る。
扉の奥はまるで近未来的な部屋が見えており、そこに一人の女性が立っていた。
「……おい。この姿は?」
「恐らくは、■■■■■という■■によって受けた■■の影響かと。なので、先程渡した力が、この世界において本来の貴方とはいきませんが、それに近いモノになるかと。では、宜しく御願いします」
「仕方ないが、やるか」
女性の言葉に青年は溜息を吐きながら答えると、女性と扉に背を向けて歩き出す。
青年の背を見て、女性は静かに頭を下げる。
そして自然に扉が閉まり、再び扉が揺らめいて、その内扉そのものが静かに消滅した。