兎意添変   作:悠畏

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【前回のあらすじ】

束「スタークからもたらされた情報。それは、愛しの妹こと箒ちゃんのピンチとスマッシュによって暴走するモノレールだった! にしても、まーちゃん良いなぁ、クーちゃんに姉呼ばれさせて! 私もお母さん呼ばれされたいよ~!!」

スターク《何なら、オレが呼んでやろうか? お義母さんってな?》

束「クーちゃんはあげないよ!!」

スターク《冗談だ。はてさせ、どうなる第5話。始まるぞ?》

束「クーちゃんが可愛くないっていうの!?」

スターク《誰もそんな事言ってなっての! まあ、美少女だとは思うが》

束「クーちゃんはあげな《ハイハイ、んじゃスタートっと》台詞盗られた!?」


【第5話】暴走するトレイン 弐

 IS運用協定―――通称【アラスカ条約】に基づき日本に設立された、IS操縦者育成用の特殊国立高等学校である人工島【IS学園】。

 一ヶ月後に行われる新入生達への入学式に向けて準備を進めていたその学園内は現在、混乱の最中にあった。

 基本的に、この学園へ向かうにはモノレールによる交通手段以外が存在しておらず、現在そのモノレールが謎の暴走を起こしている為であった。

 そして暴走が続けば、モノレールはそのままIS学園内の駅に衝突し、多大な事故を引き起こしてしまう可能性が非常に高いのである。

 その対処をする為、学園に所属している教師達へ指示を飛ばしつつ状況把握を努めている一人の女性が居た。

 その名は織斑(おりむら) 千冬(ちふゆ)。アラスカ条約に参加している21の国と地域が中心となり、IS同士での対戦が行われている世界大会【モンド・グロッソ】において総合優勝者に与えられる称号【ブリュンヒルデ】を持つ女性である。

 

「何故、この様な時期に……!!」

 

「織斑先生! 先生宛に通信連絡です!!」

 

 千冬宛に通信が着たと告げた教師、山田(やまだ) 真耶(まや)の言葉を聞き現在対応している暴走モノレールの関係者、又は暴走モノレールを引き起こした犯人による通信で、少しでも情報を得ようと考えて通信を受け取ると、千冬の目の前に半透明のウィンドウが出現する。

 そこには紫の長髪に機械の兎耳を頭に着けた千冬の親友を名乗っている女性こと篠ノ之束の顔が映し出された。

 

『やっほー、ちーちゃん』

 

「この馬鹿げた騒動はお前が原因か!? 束!!」

 

 千冬の声に辺りの教師が驚き、そして密かに様々な憶測の混じった会話をし始める。

 この騒動は篠ノ之博士による何かしらの妨害工作ではないか、篠ノ之博士が怨んでいる人物への復讐……等とアリもしないが確かめ様のない憶測である。

 そんな事に一々気にしていられる状況でない千冬はウィンドウ先の束へ鋭い視線をぶつけるが、束の真剣な表情で束が原因ではない可能性を内心抱き始めた。

 

「この際、説教等は後回しだ。いいからさっさと何とかしろ。今すぐにだ」

 

『そうしたいのは山々で、箒ちゃんが乗ってるから直ぐにでも何とかしたいんだけど、そうはいかない事情があってね? ちょっと時間が掛かるんだ。だから、何も為ずに待ってて欲しいんだ』

 

「何だと……!?」

 

 束からもたらされた情報で、千冬は三つ驚愕してしまった。一つ目は暴走しているモノレールには束の妹であり、自身の知り合いでもあるしののの箒が乗車している事。二つ目はこの騒動は束が起こしたモノではない事。そして三つ目は、何もするなという事。

 

「黙って見ていろ、という事か―――巫山戯るな!!」

 

『巫山戯てなんていないよ。この騒動に、ちーちゃんは何も出来ない。私でも、介入するだけで手一杯なんだから―――無責任だとは重々解ってるけど、耐えて。必ず何とかするから『たーさん、準備出来た』それじゃ、またね。ちーちゃん』

 

 思わず感情的に怒鳴った千冬に対し淡々と答えた束は千冬に用件を一歩的に告げると、通信を切った。

 千冬は何も映っていないウィンドウを見つめ続け、そんな千冬を心配した真耶が声を掛ける。

 

「織斑先生……」

 

 真耶に声を掛けられた千冬はウィンドウを見ながら、誰に言った訳ではないが、呟く様に言った。

 

「―――あの束が、男と一緒に居るだと!!?」

 

「そっちなんですか!?」

 

 

 

 △ ▲ ▽ ▼

 

 

 

「―――やれやれ、まさか面倒事に巻き込まれるなんて」

 

《ん? 一体お前さんは何かな?》

 

 倒れたスマッシュの後ろにある通路から、姿を見せた紅い刃の剣を持った外見年齢10代後半な少女に対し警戒しつつ、ロックフルボトルを装填したままのトランスチームガンの引き金に指を掛けておく。

 現在乗っ取られているモノレールは本来なら、妹さんと政府が用意した護衛、後は車掌2人しか乗車していない筈で、オレは車掌の片方に成り代わって乗車した。その際に、目の前の少女が乗車したのを見ていないし、途中駅などで停車してもいない中、どうやって乗り込んできたんだ?

 疑問と警戒を行っていると、目の前の少女が剣を持った手を自身の胸元に寄せる。すると、剣は紅い光の球体となり、少女の腹部へと消えていった。

 

「これで警戒は解けないか? この状況下で敵を増やしたくないんだ」

 

《その意見には賛成だが、こっちの質問に答えてもらってないぞ?》

 

「其方には関係の無い事、と言えれば良かったんだが―――この電車を乗っ取ってるヤツに用がある」

 

 少女は溜息混じりにこっちの質問に答えた。このモノレールと一体化して制御を乗っ取ったヤツ、即ち現在スマッシュになっているヤツ等の一人か。

 こっちは妹さんを護ってたから、どこで一体化してるのか検討がつかんな。

 にしても、この少女の顔どっかで……?

 

《生憎と、其奴が何処に居るかは解らないぜ?》

 

「それはこっちで把握してる。問題は、ヤツをこのモノレールから引き剥がす方法が知りたい。何か知らないか?」

 

「―――話を割く様で済まないが、お前は何者なんだ? 何で千冬さんに似てるんだ?」

 

 何気にこっちより情報もってそうな発言をしてきた少女に返事をしようとすると、蛇に護らせていた妹さんが恐る恐る少女へと(たず)ね、この言葉でオレの中で引っかかっていた事が判明した。

 目の前の少女の顔が、ブリュンヒルデとして名高い織斑千冬に似ているという事だ。それも、まるで織斑千冬の幼少期を見ている程に。

 

「よく言われるが、他人の空似だ。私自身、ブリュンヒルデと面識は一切無い」

 

「そ、そうか 済まない。話を続けてくれ」

 

 少女の言葉に妹さんが申し訳なさそうに返すと、蛇が妹さんの頬を舌で舐めた。まるで慰めているかの様に―――って、ちょっと待て!?

 

《お前なにしてんだ!?》

 

「わ、私か!?」

 

《妹さんじゃない! そこの蛇の事だ!》

 

 オレの言葉に蛇が首を傾げる。おかしいな、こいつはあくまでもエネルギー体の筈なのに、こんなフレンドリーというか、意志みたいのあったか?

 いや、今は考えるのは止そう。取り敢えず今は救助を待つ意味も込めて時間稼ぎをする必要がある。博士達の救助までの事を考えると、万が一に備えて目の前の少女とは敵対しない様にしなければ。

 

《さて、話を戻すがスマッシュから戻す方法だったな?》

 

「よく解らんが、スマッシュってのに変化しているのだな、ヤツは―――それで、その方法は?」

 

 少女との話で解ったが、スマッシュを知らないって事は此方の事情を知らないみたいだが、さっきから感じる少女から出ている気配がやけに気になってしょうが無い。まるで、光そのものと話している様にも感じられる。

 まぁ、今は実害出ないであろうから、そんな事はさておき、オレはエンプティボトルを3本取り出すと、一本目を最初に倒したヤツへと向けてからフタを開ける。

 すると、スマッシュの成分がボトルへと蒐集していき、成分を蒐集し終えるとスマッシュは妹さんの護衛だった人間へと姿を変えた。

 

《こうするんだ。試してみるか?》

 

 スマッシュから人間へと変わった光景を見て妹さんは驚愕しているが、オレは余っているエンプティボトルを一本少女に手渡すと、少女は礼をいってから自身が倒したスマッシュへとボトルを向けてフタを開けた。あの光景を見ても動揺せず、寧ろ淡々と蒐集するのを見て、少女への警戒を上げておく。

 そしてオレも二本目を同様に倒したスマッシュへと向けて成分を蒐集。オレが蒐集し終わる頃には少女の方も蒐集が終わった様で、ボトルをオレに投げ渡してきた。

 

《オレに渡しても良いのかい?》

 

「元々お前のを借りただけだ。それに、ヤツの分はあるな?」

 

《勿論。予備も大量に持ち合わせてるさ》

 

「では、こっちだ。着いてこい」

 

 少女はこっちの返事を待たず廊下へと歩き出した。オレは溜息を吐くと妹さんへと顔を向ける。

 妹さんは状況に着いていけず困惑顔だったが、蛇が妹さんの頭を器用に尻尾で撫でていた。

 というか、真面目にオレの知らない事が蛇で起きてる事にオレが驚かされてるんだが。

 

《んで、妹さんよ。此処で助けが来るまで蛇が護ってるか、一緒にあの少女を追い掛けるか、どっちにする?》

 

「わ、私は……!?」

 

 困惑顔を浮かべていた妹さんだったが、妹さんの前に蛇が動く。

 まるで、自分が護るという意思表示を示しているかの様に。

 オレは再び溜息を吐くと、妹さんに背中を向ける。

 

《蛇は置いてくから、大人しくしてる事だ。良いな?》

 

「え、あ、はい……」

 

《んじゃ、後は任せたぞ蛇》

 

 オレは蛇と妹さんを置いていき、この暴走モノレールを止めるべく先に廊下へと歩き出した少女をゆっくりと追い掛け始めた。

 

 

 

 △ ▲ ▽ ▼

 

 

 

『きょー君、それじゃ準備は良い?』

 

「俺は何時でも。後は龍ヶ崎が……」

 

 たーさんが何処かへ通信連絡している間に俺達で用意し、暴走モノレールの真上に到着した、たーさんお手製の超距離高速移動用飛行機【爆走ターボくん(命名、たーさん)】の貨物室で、俺は通信先から話し掛けているたーさんの言葉を聞きながら腰にビルドドライバーを当て、装着する。

 【爆走ターボくん(これ)】の操縦自体はクーが自身の内包しているISの機能と共有する事で可能としているらしく、360°で視界が確保出来るとはたーさんと操縦者であるクーの言葉。

 構造としてはシンプルで、それなりの広さがある操縦室とただ広いだけの貨物室のみ。貨物室の壁には収納式のシートベルト付き座椅子が幾つか内蔵されているが、今は俺との龍ヶ崎が座っていた2席分のみ壁から展開されている。

 俺は2席を壁に収納すると、片手でラビットフルボトルとタンクフルボトルを取り出すと、そのままカタカタと片手で振り始める。そして隣では龍ヶ崎が何も無い様に見えるが、本人には触れる事の出来るという自称収納結界に手を入れて何やら探していた。

 

「見つかったか?」

 

「ちょっと待って下さいね……っと、あった!」

 

 龍ヶ崎が取り出した?のは、3m程ある機械仕掛けの銃だった。形状は微かに狙撃銃の名残?とも呼べる何かを感じたが、明らかにサイズ感がおかしい。

 これなら、まだこの間の剣の方がファンタジー感あったから良かったが、これは流石にファンタジーというより、SF感がする。

 

「それが目的の物か?」

 

「はい! 透視スコープ付長距離狙撃銃です! これでサポートします!!」

 

 今回のたーさんから頼まれたのは、暴走モノレール内でブラッドスタークに保護されている妹さんを救助。余裕があれば、暴走モノレールを停止させて欲しいという事だった。

 そこで、たーさんが妹さんの携帯のGPS発信場所を指示して俺が突入、ブラッドスタークと妹さんを見つけて救助する。サポートとしてクーが【爆走ターボくん(これ)】の操縦、龍ヶ崎はクーに指示を出しつつ、ハッチから遠距離狙撃する事になっている。

 

「んじゃ、クー。ハッチ開けてくれ」

 

『分かりました。お気をつけて』

 

 俺の声にクーが操縦室から通信で返事を返してきた直後、ハッチが開いて雲一つもない青空が見えてくる。ISの機能とやらで風などは一切機内に入って来ないらしく、実際ハッチを開いても風が機内に入ってくる事はなかった。

 俺はたーさんの超技術の一つである【爆走ターボくん(これ)】の性能に無意識に溜息を吐いていた事に気付いて苦笑が零れるけど、気にせず振り続けていた2本のフルボトルのキャップをもう片方の手で閉める。

 そしてボトルを持っていた手でドライバーにフルボトルを装填していく。

 

【ラビット! タンク! ―――ベストマッチ!!】

 

 装填し終えると欠落していた【葛城データ】の一部を基にたーさんが作成した資料【補完葛城データin束】に記載されていたハンドルだと思っていたレバーを握り、回し始まる。

 そしてドライバーから俺の周囲に小型ファクトリー【スナップライドビルダー】が展開されていき、装填したラビットフルボトルとタンクフルボトルの能力を反映したハーフボディが前後に生成される。

 

【Are you ready?】

 

「―――変身!」

 

【鋼のムーンサルト―――ラビットタンク! イェーイ!!】

 

 ドライバーに返事する様に告げると、前後のハーフボディが俺を挟み込む様に結合され、俺はビルドへと変身する。

 そしてハッチの出口に立って下を見ると、真下で暴走しているモノレールの姿が見える。

 

「んじゃ、作戦開始っと」

 

 俺は龍ヶ崎に軽く手を振る様な仕草で合図を送ると、ハッチから跳び出して、暴走モノレールへ向かって一直線に飛び降りた。




 幾つもの思惑を乗せて暴走するモノレール。それが刻一刻とIS学園へ迫る中、その光景を見つめる者が居た。

「……ねぇ、本当に良いの? ■■さん」

『しょうが無いだろ、今の■■には■■■■■が無いからな。済まないが、俺はまだ休ませてもらうぜ? ■■■■』

「……うん。お休み、■■さん」

 ―――暴走モノレールがIS学園衝突まで、残り1時間。
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