兎意添変   作:悠畏

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【前回のあらすじ】

スターク《トレインスマッシュの置き土産と言える暴走モノレールを止めるべく、俺はビルドへ【ハザードトリガー】を手渡す事にした。今はモノレールの上で使うかどうか悩んでる訳だが、俺も今の内に使える手札を確認しておくか。えっと……ガトリングにロケット、ロックにもう一つっと。後は持って帰って浄化しないと使い物にならんな……ん? 文書通信だと?》

?『何処で油を売っている。早く戻ってこい』

スターク《へいへいっと。作戦を無茶苦茶にしたから苛ついてやがるな……んじゃ、俺もさっさと上に上がるかね。まだ使ってなかったらどうしてくれようか……》

?『追伸、薩摩芋を使ったお土産を頼むぞ』

スターク《マジか……第8話、始めるぞ。てか、お土産如何するべきだ……?》


【第8話】暴走するトレイン 伍

【HAZARD ON!】

 

 スタークから渡されたハザードトリガーのボタンを押すと、ハザードトリガーから音声が鳴り響く。

 そして、腰に装着したままのビルドドライバーにあるフルボトルを装填する窪みとは別の長方形に近い窪みに装填すると、ハザードトリガーが綺麗に填まる。

 これにより、スタークの言っていた事が真実であった事が証明され、改めてビルドドライバーへラビットフルボトルとタンクフルボトルを装填する。

 

【ラビット! タンク! ―――スーパーベストマッチ!!】

 

【ドンテンカン! ドンテンカン!! ドンテンカン! ドンテンカン!!】

 

(うるさ)っ」

 

《諦めろ、仕様だ》

 

 スタークの言葉を聞き流しつつ、何時も聞こえていた音声とはちょっと違うのがドライバーから流れてきていた。しかも煩い待機音付きで。

 これも、ハザードトリガーを使ったからだろう。しかし、スーパーベストマッチか……以前たーさんに計測して貰っていた出力や様々な数値が本来のベストマッチと比べ段違い何だろうと想像しつつ、ドライバーのハンドルを握り締め、ゆっくりと回し始める。

 

【ガタガタゴットン! ズッタンズタン! ガタガタゴットン! ズッタンズタン!】

 

「煩っ」

 

《諦めろ、仕様だ……って、さっきも言ったが?》

 

 呆れながら答えてくるスタークとのやり取りをしながら、黄色と黒の警告ラインが入った鋳型という、いつもとは異なるスナップライドビルダー―――恐らく、名前としては【ハザードライドビルダー】であろう物体が俺の前後に展開される。

 

【Are you ready?】

 

「―――変身」

 

 そしてドライバーからの質問に答えると、前後に展開されている【ハザードライドビルダー】に挟まれ、  

 

【AnControl Switch! BlackHazard! ―――ヤベーイ!!】

 

 ビルドに変身した筈の俺の意識が少しずつ消え始めた。

 

 △ ▲ ▽ ▼

 

『なんですか、アレ……』

 

 通信先で狙撃銃のスコープを覗き込んでいたまーちゃんの呟きを、私は歯を食い縛りながら別画面に映し出されているきょーちゃんを見ていた。

 スタークがきょーちゃんに渡した赤い装置【ハザードトリガー】。それは私の持っていない【葛城データ】に記載されているであろう装置。

 もしスタークの説明通りなら危険過ぎる品物だったけど、きょーちゃんは受け入れ、ハザードトリガーを使いビルドへと変身した。

 その姿は私の知る赤と青の2色で構成された姿ではなく、複眼は変わらないけど全身が真っ黒に構成された姿だった。

 

「正しく、悪魔の引き金(ハザードトリガー)って事かな……」

 

『……警戒、続けます』

 

『《んじゃ、やるぞ。ビルド》』

 

 その姿に困惑する私やまーちゃんを置いていき、画面のスタークの言葉に頷いた黒いビルド(きょーちゃん)はモノレールの前に左右で飛び降り、モノレールの正面を押し込み始めた。

 黒いビルドとスタークの腕力が同一なのか、左右どちらか一方が傾く事はなく、平行したままモノレールは僅かだけど、確実にゆっくりとスピードを落とし始める。

 

『《こいつはちょっと厳しいかぁ……?!》』

 

『ッッガァ!!』

 

 そして数分後、僅かに余裕を見せるスタークと時折唸る様な声が漏れていた黒いビルドの協力によってモノレールは大きな被害を出す事無く、IS学園内の駅内に入る直前で脱線させる事無く止める事が出来た。

 その事に私は安堵して、まーちゃんからも安堵の溜息が聞こえてきた。

 しかし、それは直ぐに過ちだった事に気付く。

 モノレールが停止したのを見て、ちーちゃん達IS学園関係者達が駅内へ入ってくる。それを見ているまーちゃんの映し出している画面の端で、モノレールを止めた後、ずっと俯いていた黒いビルドの手がゆっくりとハザードトリガーへと伸びているのが見えたからだ。

 

「っ!? スターク、何をしたぁ!?」

 

『《ンア? ってマジでか!?》』

 

『【MAX HAZARD ON!】』

 

『【ガタガタゴットンズッタンズタン!】』

 

 私からの通信を聞いたスタークが黒いビルドを見て、慌てて近付くが、黒いビルドはハザードトリガーのボタンを押し、即座にレバーを回し始めた。

 そして何度か回してからレバーから手を放すと、黒っぽい紫色のエネルギーを纏って、スタークに向かって高速移動する。

 

『【Ready go! ―――オーバーフロー!!】』

 

『《チッ!? 暴走か!!》』

 

 スタークは足を止めてトランスチームガンにフルボトルを装填しようとするが、それより先にビルドがスタークの懐に入り、黒紫色のエネルギーを纏ったパンチを何度も繰り出す。

 それはフルボトルを装填しようとするスタークが全てギリギリで回避する程で、スタークが回避した後にジャンプして黒いビルドから距離を置くが、タイミング悪く改札口から入ってきたちーちゃんを背にする様な状態になってしまった。

 

『《おいおい、タイミング悪過ぎるだろうがッ!!》』

 

『【ヤベーイ! ―――MAX HAZARD ON!】』

 

 入ってきたちーちゃん達を見て怒鳴ったスタークだったけど、黒いビルドが纏ったエネルギーが消えた直後、即座にハザードトリガーのスイッチを再び押したのを見て見て盛大に舌打ちをする。

 同時に驚きから復帰したまーちゃんが狙撃銃のスコープを覗き込む。

 

『援護射撃、撃ちます!』

 

『《おいブリュンヒルデ! 邪魔だ下がってナァ!!》』

 

『【フルボトル! ―――スチームアタック!!】』 

 

 レバーへ手を動かそうとしていたビルドの手を狙撃して妨害し始めるまーちゃんの時間稼ぎを使い、スタークは改めてフルボトルをトランスチームガンに装填して銃口をビルドに向け、即座に引き金を引いた。

 トランスチームガンの銃口から放たれた幾つのもの金色の鎖が黒いビルドを縛り上げるが、黒いビルドが力を入れるのと同時に砕け散り、レバーへ手を伸ばす。

 まーちゃんが妨害する為に狙撃するが、それよりも早くレバーを掴んで回してしまった。

 

『【ガタガタゴットンズッタンズタン! ―――Ready go!】』

 

『チッ、トリガーさえ抜ければ……』

 

「トリガーを外せば止めれるの!?」

 

『それ早く言って!!』

 

 黒いビルドがエネルギーを纏ったタイミングでスタークから明かされた真実に私とまーちゃんはスタークへ怒鳴った後、まーちゃんは即座に狙いをハザードトリガーへ標準を合わせる。

 

『一瞬で良いから、動き止めて!』

 

『《おいおい、無茶言ってくれるなぁ》』

 

 まーちゃんの要望にスタークが困った様に答えながら、ちーちゃん達を含めたスタークに向かい、ゆっくりと歩き出した黒いビルドへ胸元から出した水色の蛇を迎撃させる。

 その間にスタークは新しいフルボトルをトランスチームガンに装填し、黒いビルドへ銃口を向ける。

 

『《しくじるなよ?》』

 

『【フルボトル!】』

 

『言われなくてもッ!!』

 

『【―――スチームアタック!!】』

 

 まーちゃんに合図を送ると、スタークは引き金を引く。

 そしてトランスチームガンの銃口からU字型の磁石が飛び出し、黒いビルドの足下へ着弾する。

 すると黒いビルドの足が止まり、足を動かそうとするけど動かない状態になった。

 その直後にまーちゃんの狙撃がハザードトリガーに当たり、ハザードトリガーがドライバーから外れ、スタークの足下へ飛んでいく。

 ハザードトリガーが外れた影響により、黒いビルドから紫色の粒子が紛失して、元の赤と青のビルド(ラビットタンク)に姿を変えてから前のめりに倒れる。

 スタークがフルボトルを抜いたスタークがトランスチームガンの銃口を真上に向けて引き金を引くと、銃口から煙が出てちーちゃん達はスタークとビルドの姿が見れず困惑している。

 

『《んじゃ、俺はトリガーを回収して消えるから。後は任せたぜ? Ciao♪》』

 

 スタークの軽快な声が聞こえた直後、煙が晴れていくと、地面に倒れているビルドと困惑しつつもビルドにゆっくりと近付いていくちーちゃん達の姿が見えた。

 私はまーちゃんに頼んでビルドの元へ向かってもらい、私自身も【吾輩は猫であるMk-2(まだ改修が2回出来るヨ♪)】を自動操縦だけど目的地を設定して動かし始める。

 目的地である、IS学園へ向けて。

 

 △ ▲ ▽ ▼

 

《さて、想定してたより暴走が遅かった訳だが……いや、モノレールを止めてる間に既に意識は途切れたから暴走するのが遅くなっただけか》

 

 俺はハザードトリガーを軽く真上に投げては手元に落ちてくるのをキャッチする動作を片手でしつつ、もう片方の手にコンビニの袋を持って【組織】へと帰還した。

 そこで待ち受けていたのは、胸元と顔に金の蝙蝠が描かれている【ナイトローグ】だった。

 

《おう、戻ったぞ》

 

《遅い、土産を寄こせ》

 

 ナイトローグからの請求に呆れながらコンビニの袋を手渡すと、ナイトローグは即座に袋の中を確認する。

 

《ふむ、芋けんぴにモンブラン、更に薩摩芋を使ったプリンか……上出来だ》

 

《そいつは何より。それで、そっちは?》

 

 俺の質問にナイトローグは煙に包まれながら人間の男へと姿を変えると、芋けんぴの袋を開けて一本取り出して俺へと向けてくる。

 

「お前の勝手な行動で俺の【女性権利団体】へ借りを作る作戦は失敗した。本来なら奴等へ働きかけ、モノレールの暴走を停めた功績をくれてやる積もりだったが、よくよく考えるとIS如きがスマッシュに勝てる訳が無いから、作戦を潰してくれて感謝する。それと関係者を消そうとしたが、1人だけ外に運び出した少女が居たので関係者を消した後に始末する積もりだったが、面倒な妨害が入り殺しきれなかった」

 

《ほう? お前が面倒と言う位だ。どんな妨害だったんだ?》

 

 あの作戦、そんな事をする為の作戦だったのか……詳細はどうでも良いが、盲点を忘れてた事が証明され、どうにかナイトローグからのお叱りは受けなくても良くなった事については助かったな。

 にしても、外に運び出した少女って言うと、多分あの少女Tだよなぁ……彼女を助けたナイトローグが面倒と言った相手がとても気になるな。

 そしてナイトローグが忌々しそうに口にした言葉を聞き、俺は思わず口笛を吹いてしまった。

 

「―――生き残っている可能性が高かったが、中々姿を見せなかった存在……今で呼ぶ【ブラックサン】。奴だ」

 

 ―――此奴は面白くなりそうだ、と考えながら。

 




 ドイツ某所にある山中を1台のトラックが走っていた。
 トラックの運転席と助手席にはサングラスを掛けた黒服の男性が座っており、トラックは時折何度か曲がりながら進んでいた。
 そして暫く走っていくと、見るからに頑丈で出来ている壁に囲われた門の前に着き、トラックを認識したのか門が物々しい音を立てながら自動で開放される。
 壁の内側には幾つか大きな倉庫があり、その内の一つに入ったトラックは中心部に停車すると黒服の男性達はトラックから降りてトラックを離れていく。
 そして少ししてトラックが停車している場所を中心に床が円形で時計回りに回りだし、徐々にトラックが床へと姿を消していき、トラックの姿が完全に消えると、円形の床がスライドするかの様に動き出し、まるで初めからなかったかの様な状態になる。
 それを見届けた黒服の男性達はホッとしたのか、その場で雑談し始めた。

「今回の仕事は大変だったな」

「ああ、足が着かない様に3ヵ国を仲介したからな。しっかし、今回の荷物は本当に大変だった。あの男、今頃何も知らずに過ごしてるんだろうな。まさか、頼んでいた護衛が実は裏で人体実験の運び屋やってたなんてな」

「だが、久し振りにハードな仕事だった。何年か前の合同護衛任務に見せかけて誘拐したガキ以来の緊張感だったぜ」

 そんな雑談をしつつ倉庫から出ようとすると、突然背後で大きな音が聞こえたので男性達は即座に振り返る。
 すると、先程の床の円形が壊れており、その近くに一人の青年が床に拳を置いた状態でしゃがんでいるのが見えた。
 男性達は胸元に隠している拳銃を取り出そうとするが、青年が床の破片を広い男性へと投げる。
 破片は轟音を響かせながら男性達の胸元に直撃し、男性達はショックでその場で倒れ込む。

「ったく、まさかこんな山の中で人体実験してる研究所と、その実験体を運んでる奴等に出くわすとか……もしかして、早速目的を果たせそうか?」

 青年は自身が殴り破壊した床の円形―――地下の研究所へ続くエレベーターの穴を見てから、軽く穴に跳び込んだ。
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