首相官邸ではイギリス外務次官であるウィズリィ外務次官が本来なら公式文書を外務省に渡す筈だが、首相に直接とある公式文書を渡していた。
外務次官から渡されたイギリス王家の紋章入りの公式文書を読み、顔を真っ青にしながら皇族とも深い繋がりがあり、普通ならあり得ないだけに驚き叫んだのだ。
「イギリスはこれは本気か!?」
「はい、イギリスは前回も加えてですが、今回の分も併せて謝罪と賠償が無き場合、日本に対して宣戦布告致します。無論、イギリス王家は既にロイヤルガードを送り、横須賀、木更津、厚木、百里基地への攻撃並びに破壊による報復処置をする様にエリザベス四世陛下より勅命が下りましたが?」
総理は事の重大さが理解出来ず、宣戦布告とも同じ報復処置の執行宣告に絶望した様に椅子に落ちる様に座る。
総理は何故、イギリスから最後通牒を突き付けられなけばいけないのかが未だに理解出来ない。
判らないのは当然である。
事の発端は国家代表や代表候補生を束ねる防衛省が四世代機が開発出来ず、当時学生であり亡国機業の事件の解決の立役者だった織斑一夏に対して専用機である白椿を国家代表に使わせる為に渡す様に強要したり、卒業後に鈴音とタッグを組んでからは、鈴音の専用機にまで渡す様に強要を繰り返したのだ。他にも大会中の拠点として滞在していたホテルへ特殊部隊を使っての襲撃や大会参加中にも鈴音を襲撃したりと布団を叩けば埃が出るように完全な防衛省と隠蔽工作をする外務省の暴走であり、イギリスやドイツ更にはIS学園、更識家からの抗議などは外務省と結託して止めていたのだら判る筈も無い。
しかし、今回の織斑邸襲撃事件は防衛省と外務省は証拠隠滅が出来る訳が無く、メディアがヘリによるTV放送による緊急中継や更識に捕らわれた襲撃者達が自白などで更識家はメディアに全て公表し、今までの事が公表された事に防衛省と外務省は風当たりが強くなっていた。
今回の臨海学校中のIS学園への襲撃はイギリスとドイツに火に油を注いだに過ぎない。
そして、イギリスの外務次官と示し合わせた様に首相官邸に首相の秘書官がイギリス外務次官がいるのにも関わらず室内へと慌てて入って来たのだ。
「総理!!」
「外務次官が居るのだぞ!!」
「すいません!!
ですが、百里基地並びに横須賀基地、厚木基地の航空自衛隊所属のIS部隊約123機が防衛省の命により九十九里で臨海学校中のIS学園と訓練航海中のドイツ海軍の戦艦ビスマルクⅡを襲撃して来たとイギリス並びにドイツもですが、IS学園までもが抗議が殺到しています!!」
「なっ⁉
ウィズリィ外務次官!!
まさか、最後通牒の理由は…」
「イギリス王家からの警告の無視に加え、今回の織斑邸を加えた襲撃はイギリス王家に対する宣戦布告と同じですかな?」
「織斑邸を加えた?(まさか、TVで放送された半壊していたのは二代目ブリュンヒルデの織斑一夏の自宅だと!?私は、委員会からの忠告は厳守したが…まさか!?…)」
「それに、前もって首相官邸には今回の臨海学校には前女王のメアリー様も同行し視察する旨を公式文書で伝えましたが?」
「はっ、早過ぎる!!」
「いえ、いえ。
前回の織斑邸襲撃事件の際には織斑邸には下宿中のメアリー様がいらしたんですよ?
再度の襲撃くらい警戒します。
馬鹿な事を言っては行けませんよ」
涼しい顔で答えるウィズリィ外務次官。
そして、更に血相を変えた秘書官がバタバタと室内へ入り込み、イギリス並びにドイツや学園、更識家からの抗議内容とそれに対しての謝罪と賠償についても来たのだ。
「続いてですが、ドイツからは襲撃によりドイツ海軍の戦艦ビスマルクⅡは艦橋を破壊され大破漂流、司令以下艦橋に居た者は全員戦死した事に対する謝罪と賠償。それ等が無い場合は英独を主力とするEU連合軍による報復処置を発表。そして、学園からは生徒二人が重症を負った事に対して賠償と謝罪。更識家からは日本から撤退し、イギリスの傘下に入ると…」
「で、総理はこの様にイギリスとドイツ並びに学園を敵に回して如何様にしますかな?
おっと、忘れてましたがIS委員会も今回の襲撃に対して監察官の派遣もあり得ますな?」
ウィズリィ外務次官のわざとらしい発言に真っ白になる首相。
(あぁ、建造中の紀伊と尾張いや、柱島で浮揚して修理改装した陸奥をドイツに引き渡すしかないな…そして、委員会の監察官の受け入れて奴等を逮捕するしか道は無い…)
首相自身、既に手遅れだと気付き膝をついたのだった。
ウィズリィ外務次官が官邸から出て直ぐだが、総理は国会に緊急招致を発令し、イギリスからの最後通牒に対して宣戦布告された場合の防衛出動をしようとしたが、逆に内閣不信任案を与党と野党からも出されるとは知らない。
ウィズリィ外務次官が官邸に最後通牒の文書を渡した頃、メアリー達は木更津基地の近くの森林地帯で大使館からの合図を待ち待機していた。
無論、今回の襲撃は予想しており本国にいる妹でもあり女王のエリザベス四世から日英戦争になる可能性の事は既に知っていた。しかし、勅命が来たのは報復処置による基地の破壊と制圧で流石のメアリーもエリザベス四世の優しさに苦笑するしかない。
「セッシー、基地の破壊とはね…」
「仕方ありませんわ。ですが、陛下もイギリス海軍の極東方面艦隊の本拠地にしていますシンガポールの海軍基地からの連絡ですが、私達を心配してイギリスに待機中のロイヤルガードナイトを全部隊をシンガポールに送り、シンガポールから乗船させて潜水艦で送り届ける辺りはメアリーにそっくりですわね」
「流石に全部隊は過剰戦力だわ。
先程の二人は流石に…いえ。
私だって、あの一夏さんと鈴音さんのブチ切れた顔なんか怖くて見れなかったですよ?」
「私は遠慮致しますわ…」
無理もない。
学園からの連絡だったが、自分の娘である十夏が撃墜され殺されたと聞いた父親である一夏は真っ先にキレて近くにあった直径5mはある樹木を一撃て殴り倒し、鈴音に至っては一夏と同様に鉄塔の鉄骨に蹴りを入れて鉄塔を蹴り倒してしまったのだ。
卒業生でありロイヤルガードの副団長であるサラ・ウィルソンはメアリーから織斑夫妻の世話役を頼まれたが、電話を取り次いだ後に急に豹変し、携帯を握り潰して樹木を殴り倒した一夏と一夏から話を聞いた鈴音は泣きながら鉄塔を蹴り倒した姿を見て、後輩だったセシリアにキレた二人が余りにも怖いと泣きながら抱き着いて大泣きしたらしい。
娘を殺された怒りにより、復讐に燃えてしまった織斑夫妻は、木更津基地はメアリー達に任せるからと言い、リミッターを解除して本来の姿になった白椿と黒椿を展開して永田町に向かい、緊急招致で集まるだろう国会議事堂を襲撃し内閣をぶっ飛ばす算段で行ってしまったのだ。
私達の側にいるロイヤルガードの精鋭でも二人を見て止めようとしたが、キレた二人に恐怖して大泣きした副団長のサラを見て躊躇ってしまい、昔キレた鈴音を相手にした経験から、完全にキレた元世界最強の織斑夫妻を止めるのは自殺行為に等しいとセシリアとマドカは経験談を交えて諦めたのだった。
そして、イギリス海軍の潜水型空母であるユニコーンが東京湾内にて浮上して発光弾を打ち上げたのだ。
「メアリー!!」
「来ましたわね!!
総員、報復処置を執行する!!
木更津基地を奇襲し制圧。
木更津基地は九十九里への第二波の部隊が居る事は確実である。上がる前に落とせ!!」
だが、奇襲には成功するのだが、メアリーが持ち掲げる『血塗れの白百合の王国旗』を見た木更津基地の海上自衛隊と航空自衛隊の隊員達が白旗を掲げて全員が降伏して来たのだ。
旗の意味を知っていたのたろう。
意味が死か降伏の何方かを選べである為に降伏を選んだらしい。
永田町
日本の政治の中枢である国会議事堂があり、近くには様々な省庁が建ち並ぶ場所であり、横田基地所属の部隊が護衛していた。
以前の横田基地は米軍基地だが亡国機業の事件により日本へ返還され、航空自衛隊でも猛者ばかりの部隊が集まる基地でもある。そして、IS部隊も優秀な選りすぐりのパイロットばかりが集まる事で有名だった。
しかし、現実は…
「邪魔だ!!」
バッキィ
「グッハァ!?
なっ、生身で、我々をだと!?」
専用機すら展開しないで横田基地所属のIS部隊の打鉄参式改を相手にしても、普通にお玉で殴り倒す一夏。
「余所見してると、喰らうわよ!!」
鈴音は夫の一撃に呆ける他の打鉄参式改のパイロットの頭に回し蹴りを入れて沈黙させていた。
そして、打鉄参式改が解除され山の様に倒れ込む横田基地所属のパイロット達と二人の夫婦に恐れを成すが任務からは逃げられないパイロット達。
そう、修羅の如くに張り倒していく最強夫婦により戦意喪失していたのだ。
しかし、殴り蹴り飛ばれても死者が居ないのは夫婦からの温情だろう。
だが、それでも張り倒されてやられたパイロット達の山が出来上がって行く悪夢は覚めないだろう。
国会へと続く道は一夏と鈴音に張り倒され、樹木に打ち付けられ気絶した者や蹴り飛ばれ商店や雑居ビルに突っ込み、コンクリートの瓦礫類に下敷きに成りながら気絶した者など被害が絶えない。
そして、議員に緊急招集で集まっている国会では、イギリスからの最後通牒に議会は紛糾し、内閣総辞職すべしと騒ぎとなっていた。
だが、ここに涼しい顔でいる大臣。
防衛大臣の大田原防衛大臣と外務大臣の久方外務大臣だった。
二人は学生時代から織斑一夏の専用機である白椿を狙って来た黒幕であり、今回の襲撃も文書偽装によるものだった。
防衛大臣、大田原大臣はイギリスが宣戦布告する事を望み、宣戦布告すれば航空自衛隊が試作作製造した核無き国の擬似核弾頭であり、周囲400mを超高温の摂氏4000度で焼き尽くすサーモグラフィ爆弾の実験場にする腹積もりだった。
しかし、彼等の野望は届く事は無かった。
議事堂の議会室の扉が吹き飛び、二人の男女が乱入して来たのだ。
無論、国会中継で全国放送中である。
放送中にも関わらず、SPや警備員は二人に殴り蹴られて吹き飛び、一人の警備員は総理の真横を吹き飛びながら通過して壁へと激突したのだ。
突然の乱入に議員達は騒然となるが、二人は防衛大臣と外務大臣を見つけるなり
「束さんの言う通りだった!!
テメェが十夏を!!」
「ひっぃ!?
金なら幾らでも出す!!
だから、命だけは!!」
「うっせぇ!!
娘の仇だぁぁぁぁぁ!!」
一夏は防衛大臣大田原大臣の顔面を殴り飛ばし、鈴音は
「娘の恨み、喰らいなさい!!」
と外務大臣久方大臣を股間を蹴り上げ金的を潰し、頭を掴むと大理石の床にめり込む威力で叩き付けたのだ。
そして、次の二人の獲物は総理だった。
総理は逃げようとするが、二人に捕まり座席に座らされ
「さて、皆さんにはこの法案を出して貰いましょうか?」
鈴音が総理に出した二つ法案
野党と与党には内閣不信任案を出し、総理には皇族の政治への参加(イギリスの女王エリザベス四世の強い要望)に関する法案に多重結婚に関する法案だった。
「なぁ、鈴。
それ、どうしたんだ?」
「あっ、コレ?
メアリーがあたしに渡したヤツ」
「あぁ、だからか…」
納得出来ないが、なぜ多重結婚に関する法案なのかとメアリーに問い質しかったのだ。
そして、一時間もしないで永田町は3つの基地を制圧したイギリスのロイヤルガードにより報復ついでに制圧され、議会は内閣総辞職と外務省並びに防衛省は突入したイギリスのMI6により、大臣以外のそれ等に加担した役人達が全員逮捕となった。
結果、日本政府はドイツに対しては建造中の紀伊型戦艦二隻を就航次第引き渡しと30兆円の賠償支払いとなり、イギリスからの要求すんなり通り、皇族を政治への参加を認め並びに多重結婚を認め、賠償金5000億円の支払いとなったのだった。
修理が粗方終わった中華料理店織斑の厨房では、久しぶりに一夏が蒸し器を使い調理をしていた。
「そろそろだな」
ガッタン
「誰だ!!」
物陰から出て来たのは匂いに釣られたメアリーだった。
「メアリーですの…」
「とうしたんだ?」
「初めてのISを乗りまして、お腹が空きましたの。
何かありまして?」
「少し待ってな」
椅子を出してメアリーを座らせる。
そして、蒸し器から取り出したのは蒸し上がった桃饅頭だった。
「これは…ナイフ使います?」
見た目も桃に見えるがれっきとした饅頭である。
手に取り食べるメアリーは涙を流す。
あぁ、この恋は実らないのだと。
しかし、諦めるメアリーではない。
だから
メアリーは立ち上がり、一夏の背中に抱き付き抱きしめる。
「めっ、メアリー⁉」
「私、一夏様をお慕いしています…だから…」
何も答える事の出来ない一夏に抱きしめる力を強めるメアリー。
だが、メアリーが抱きしめるのを急に辞める。
それは
「メアリー!!
あんた、あたしが居ながら夫に!!」
「鈴音さん!?」
凄い剣幕の鈴音と泣きそうになるメアリー。
「メアリーが一夏が好きだって解るわよ!!
でもね、あんたはあたしの家庭を壊す気なの?
答えなさい!!」
「辞めろ、鈴‼」
「一夏は黙ってなさい!!
これは、あたしとメアリーの問題。
メアリー、一夏と思いを押し通そうと思うならあたしと戦いなさい!!
そして、一夏の向上心と共に歩いて行くのかが、如何に大変なのか身を持って知りなさい!!」
メアリーに試練を与えるあたし。
多分、セシリアも加わる事も判っていた。
共に歩む。
あたしにしたら毎日が修行だった。
一夏は歩み続ける事を辞めない。
だから、メアリーだけは認めたく無かった。
むしろ嫌いだ。
でも、メアリーは一夏をあたしの様に愛している。
「えぇ、私は鈴音さんと戦いますわ!!」
やはり、愛は本物だった。
だけど、あたしは負ける気は無い。
メアリーを、獰猛な鷹のような目で睨むのだった。