中華料理店織斑   作:ロドニー

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閑話 鈴音とメアリーとの決闘 前編

 

 

 臨海学校から学園へと戻った3日後、第三アリーナでは学園の生徒が殆んど集まっていた。

 

 理由は勿論、現役時代に瞬殺の女王と言われた織斑鈴音と鮮血姫と云われ怖れられたイギリスの元女王のメアリーとの決闘だった。

 

 アリーナの客席は満員で入りきれなかった生徒は他のアリーナで中継を見る事になるのだが、各国関係者は最強夫妻の片割れとも言える織斑鈴音の実に七年振りの勇姿を焼き付けようと挙って学園へと足を運んだのだ。

 

 そして、メアリーの専用機はIS適正が低い彼女の為に身体にフィットしやすい鎧型の機体で特殊金属製の純白のドレスの上に白銀のドレスアーマーを纏う専用機の名前は白騎士を彷彿させる姫騎士だった。

 

 姫騎士の武装は二つだけだ。

 

 ナイツシールドは標準装備だが、斬馬刀の様な巨大な大剣クレイモアと腰の鞘にある剣はメアリーの国イギリスに相応しい片手直剣のエクスカリバーのみだった。

 

 姫騎士の製作者は篠ノ之束だった。

 

 束博士は臨海学校の直前まで孫や織斑姉妹の剣術指南をしていた脳筋思考で解決する彼女をかなり嫌っていたが、三人の専用機に装備された片手直剣は西洋剣術だと孫のレナスに言われて漸く判り和解する。

 

 そして、お詫びと孫娘に織斑姉妹を観てくれたお礼として作ったのが姫騎士だったのだ。

 

 しかし、姫騎士の世代区分は2世代型のISに区分されているが、装備や装甲などはアテナからの可動データを元に製作している為に最低でも5世代もしくは4世代型に区分される筈が、彼女の余りにも低過ぎるIS適正(ギリギリ反応する適正値D−)が要因で2世代型の性能しか出ないのだが、開発者である束は第一世代では主流だった身体にフィットする鎧タイプで低い適正をカバーし、アテナとアルテミスを開発した際の技術を使い機動性能だけは5世代級とアンバランスな機体となったのだ。

 

 まさかの話だが、セカンドシフトしたアテナとアルテミスがコアネットワークを通じて十夏と千夏の二人が動き易い様に姫騎士と同じ鎧型に原点回帰した事は言うまでもない。

 

 そして、ピットではISスーツ姿の二人。

 

 メアリーとセシリアが居た。

 

 二人の対決に何故、セシリアまで参加と言うと鈴音が助っ人を許していたのも在るがメアリー自身がIS戦闘が初心者である。それで、セシリアが助っ人として許されたらしい。

 

 だが、セシリア本人は学生時代からの想いを成就させる事が最大の目的とはメアリーですら予想していない。

  

 それに、現役時代のタッグトーナメントの雪辱を晴らす事もそうだが、セシリアの専用機は現役時代に使用した専用機はブルーティーアズの後継機のティターニアだった。

 

 ただの現役時代のティターニアでは無く、本来なら木更津基地攻略を目的を隠れ蓑にイギリスの研究所から研究用に保管されていたティターニアの試作零号機の先行試作機を取り寄せていたらしく、マドカの願いから束博士の協力の下にセシリアのブルーティアーズのコアをティターニアと交換。マドカの現役選手時代の専用機だった帰蝶を解体して、解体したパーツで強化改修したティターニア改だったのだ。

 

 しかし、姿はティターニア改では無くブルーティアーズに似ているのは、コアを交換して強化改修したティターニア改をセシリアが展開しながら束博士と調整の最中に急に光り出して、ティターニア改とコアを抜かれハンガーに展開してあったブルーティアーズまでも巻き込んでセカンドシフトしてしまいティターニア改から6世代型全距離対応射撃タイプのクィーン・ティターニアとなったのだ。

 

 作業していた束博士はこの光景を観て

 

 「もう、意味が解かんないよ!?」

 

 と叫んだらしい。

 

 そして、その姿は臨海学校中の織斑姉妹も木更津方面に飛ぶ姿を観ており、ブルーティーアーズと見間違えたほどに酷似しており当然だった。

 

 「メアリー、私も援護いたしますが絶対に深入りし過ぎないでくださいな。あの方には武器のリーチの差なんて存在いたしませんわ。それに、恐ろしいのは武器を弾かれたら最後、カウンターがきますわ。タッグトーナメントで酷い目に遭った私とマドカさんの経験ですわ」

 

 「カタログスペックよると武装が少ないのね?」

 

 「とんでも在りませんわ!!

 

 確かに、黒椿には武装と言えるのはビームサーベルだけでしょう。

 

 ですが拳法の技が彼女の武器。

 

 ですから、黒椿は格闘特化の機体ですわ」

 

 「じゃあ、クレイモアよりエクスカリバーの方が良いわね…」

 

 

 ピットではセシリアから鈴音の専用機、黒椿の注意事項をメアリーに説明していたのだった。

 

 

 そして、時間となりピットから大歓声の下にアリーナへ出れば、腕を組みながら睨み六対のスラスターユニットを広げた黒椿が空中に待機していた。

 

 「なっ!?」

 

 「黒椿は四対のウィングではなくって!?」

 

 セシリアが驚愕するのも当然だろう。

  

 鈴音は最初から二人を叩き潰す積りで、本来の姿の黒椿のサードシフトした黒椿・神龍で挑むのだから。

 

 つまり、セシリアがタッグトーナメントで戦ったのはセカンドシフトした黒椿・日輪だったに過ぎない。

 

 この時、セシリアは思った。

 

 セカンドシフトしたクィーン・ティターニアでも勝てないと。

 

 そして、メアリーも悟っていた。

 

 一夏の隣に並び歩む為に如何に鈴音は努力して来たかと。

 

 だけど、二人の心は一つだった。

 

 一夏と鈴音が歩む高みに行けたら、こんなにも素晴らしい事は無いと。

 

 そして、負けられないと…

 

 

 

 それとは逆に、モニタールームで記録をしながらモニターを見る篠ノ之箒は思う。

 

 一夏と歩む事を何故、諦めてしまったのだろう。

 

 何故、私は鈴音とは違い従いていく事を止めてしまったのだろうかと。

 

 想いながら、最初は無理矢理に着いて行った鈴音の決断力と行動力に羨ましく思った。

 

 私では到底出来ないだろう。

 

 だけど、逆に得た物もある。

 

 姉さんとの和解だった。

 

 

 

 VIP席に座る、デュノア社社長であるシャルロットは思う。

 

 一夏と鈴音の居る場所は僕には眩し過ぎると。

 

 だから諦めて、パパの遺したデュノア社に全てを捧げて立て直した。そして、ドイツには遅れを取ったけど5世代機の設計まで終わり試作段階だった。

 

 だから、僕もセシリアに負けない様にと思う。

 

 

 

 生徒会室ではモニターに釘付けになる双子姉妹とボーデビィッヒ三姉妹。

 

 双子姉妹には母親の勇姿を生で見るのは初めてだったし、観たのは記録映像だけだった。

 

 二人は思う。

 

 母親がこんなにも遠い存在だったと。

 

 母親とは自宅の地下アリーナで何度も戦ったが全て、瞬殺されて気付けばアリーナの地面に倒れて居た記憶しか無い。

 

 だけど、いつかはママとパパに挑み勝ちたいと二人は思ったのだ。

 

 

 そして、試合開始のブザーがなりママとメアリーさんが激突したのだった。

 

 

 

 

 


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