中華料理店織斑   作:ロドニー

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閑話 鈴音とメアリーとの決闘 後編

 

 

 アリーナ全体を閃光と爆風が覆い、ぶつかり合った二人はエネルギーの反発により弾け飛ぶ。

 

 黒椿はアリーナの客席の閉じたシャッターに吹き飛ばされ激突し、重装甲とも言える装甲は全体が罅割れてボロボロで、六基あるウイングバインダーは無惨にも消し飛んでいて存在はしていない。黒椿の状態を見ても明らかに大破しており、単一仕様『獅子奮迅』の効果は切れてパーソナルカラーである朱色の装甲に戻っていた。

 

 「重装甲のお陰で助かったわね…」

 

 とボヤき、飛ぶ事が不可能と判断して生き残った右脚のスラスターでバランスを取りながらアリーナの地面に降りる鈴音。しかし、軽い脳震盪を起こしフラフラだった。

 

 それとは反対側に吹き飛ばされアリーナの壁へと激突したメアリーの姫騎士は武装だったエクスカリバーは持ち手から先が砕けて無くなり、腕と脚部は装甲が消し飛んで配線やらフレームが剥き出しで壊れ、ウイングバインダーは激突した衝撃で動作不良を起こして使用が出来なく成っていた。唯一の救いは激突しても気絶しなかった事だろうが、全身打撲で立つのがやっとだと言える。

 

 「姫騎士、まだ戦えるわね?」

 

 メアリーは姫騎士に呟き、未だに闘志を剥き出しに持ち手だけとなったエクスカリバーを投げ捨てて生き残ったエクスカリバーの鞘を杖に立ち上がり鈴音を睨む。

 

 両者共に専用機は大破し、シールドエネルギーまでも残りが100を切っていたのだ。そして、次の一撃が勝敗を決めると過言ではない。

 

 ただ、客席から見る人々は思うだろう。

 

 『人外同士いや生温い。怪獣大決戦だと』 

 

 だが、人々はメアリーを賞賛するだろう。

 

 元世界最強の片割れである織斑鈴音を追い詰めた事に。

 

 だが、メアリーは専用機の性能だけでは無いと思う。

 

 今で、培われ磨き上げて来た古代王国流剣術や生身でISとも対等以上に闘えるまでに鍛えた身体能力。

 

 束博士が開発し、メアリーのギリギリでコアに反応する低過ぎる適正値に悩み初めて技術の原点回帰したパワードスーツであり鎧型にした事で、メアリーの身体能力を余す事なく発揮出来る様に開発した姫騎士。

 

 それ等が複雑に混ざり合い起きた奇跡と、モニタールームで静かに見守る織斑千冬は分析する。

 

 

 飛ぶ事が不可能な二人は走りながらアリーナ中央付近で再び激突する。

 

 「シャァァァ!!」

 

 「はぁぁぁぁ‼」

 

 とメアリーが鞘で袈裟斬りで殴り掛かり、カウンターを狙いアッパーでメアリーの顎下を狙う鈴音。

 

 「しまった!?」 

 

 「最後の武器が!?」

 

  しかし、メアリーの全身打撲で蓄積されたダメージで姫騎士がふらつきタイミングを誤った事と、シャッターに激突した事で軽い脳震盪から復活できずにふらつき、鈴音のカウンターのアッパーは顎では無くメアリーが握る鞘を殴り砕く。

 

 正に九死に一生を得たメアリーとカウンターで仕留め損ねた鈴音。

 

 こんな事が起こるのは両者共に身体的にダメージが酷い事を示すのだが、これで辞める二人ではない事をモニタールームで見る夫の一夏は悟っていた。

 

 「二人とも、無事に終わってくれ…」

 

 と二人が無事に終わる事を願い呟く。

 

 

 

 一方、セシリアは救護班の手により試合中の最中の救出によりアリーナから救護室へ搬送されていた。

 

 そして、治療中の最中に目覚めたのだ。

 

 「私、どれ程気絶を?」

 

 「二分だな。下層ゲートの側だったから救出が出来たが正解だな」

 

 ドクターの受け答えに救護室のモニターに映る二人の激闘。

 

 そして、メアリーの専用機の姫騎士に発現した単一仕様『約束された勝利』を発動しエクスカリバーを放つ瞬間と七年前には覚えていなかった流派東方不敗の最終奥義を放つ鈴音。

 

 「高みが高過ぎですわね…」

 

 「そう思うか、セシリア・オルコット?」

 

 「えっ?

 

 織斑先生!?」

 

 救護室に入って来たのは書類袋を抱えた織斑先生だった。

 

 「ふん、まぁ良い。

 

 鈴音から試合前に預かった伝言と書類だ。

 

 良く聴けよ、小娘?

 

 重婚が認められたからには、セシリアは合格だとな。

 

 認められた限りは、高みを驕ることなく歩めよ。

 

 私の可愛い、義妹」

 

 「えっ?

 

 これは…」

 

 渡された書類袋には三通の書類。

 

 一つはオーロラのIS学園への編入届け。

 

 もう一つは新しい私の戸籍と娘の戸籍。

 

 最後は丁寧に折り畳まれた婚姻届だった。

 

 私には戸籍謄本と婚姻届だけは解らなかった。

 

 娘のオーロラが一夏さんと私の娘と成っていたのだ。

 

 そう、戸籍謄本には

 

 織斑オーロラ 2XXX年1月6日誕生 十歳

 

 父親 織斑一夏

 

 母親 セシリア・オルコット

 

 長女(養女)

 

 本籍地 イギリス ■■■■地方■■市■■■■

 

 備考欄 本籍地を2XXX年7月20日により、神奈川県湘南市湘南■■■■中華料理店織斑に変更。

 

 と書かれて居たのだ。

 

 そして、私には鈴音さんと織斑先生が後見人としてサイン入りの婚姻届だった。

 

 言われなくても解る。

 

 鈴音さんから許されたと。

 

 「うっ、わぁぁぁ…」

 

 ベッドのシーツを握りしめ、込み上がる涙と言葉に出来ない嬉しさ。

 

 そして、救護室は私の泣き声が木霊していた。

 

 

 

 再び、アリーナ。

 

 専用機は大破しながらも激闘を繰り広げる二人。

 

 姫騎士を殴れば、黒椿の右腕の装甲とフレームが罅割れていた為に耐え切れなくて砕け散り。

 

 逆に姫騎士が黒椿を蹴り上げれば、姫騎士の足のフレームが曲がり機能停止する。

 

 既に両者は満身創痍。

 

 シールドエネルギーも二桁を切り、お互いに大破して機能不全を起してパワーが出ない。一撃一撃が既に軽い一撃しか出せない状況の最中、試合が動いた。

 

 最初に投げ捨てた、大剣クレイモアをメアリーは拾い上げようとしたが、鈴音が許す訳がない。

 

 「これで!!」

 

 「拾わせると思ってるの!!」

 

 「掛かった!!

 

 もら………」

 

 左腕から繰り出される渾身の一撃は拾おうとした大剣を砕いたが、メアリーはチャンスだと思い鈴音に踵落としを入れようとするが入れられなかった。

 

 そう、メアリーは

 

 「えっ、しまった!?

 

 やられ……えっ?

 

 メッ、メアリー!?」

 

 右脚を上げ踵落としを構えたままの体勢でメアリーは身体に蓄積され過ぎたダメージが原因で姫騎士を纏ったまま気絶していたのだ。

 

 

 鈴音とメアリーの決闘はメアリーが片足立ちのまま踵落としを入れる構えをしたまま気絶し鈴音の勝利となった。

 

 こんな試合、二度と観ることはないだろうと試合を観た人達は口を揃えて言っていた。そして、もし気絶しなかったら勝って居たのはメアリーだと学園の生徒は口を揃えて言っている。

 

 それだけの激闘。

 

 一人の男性を愛する故の女と女の意地の張り合い。

 

 逆に、各国の現役の国家代表は口を揃えて言う。

 

 織斑鈴音が引退してて良かったと。

 

 あんな、化物に勝てる訳が無いと…

 

 だが、黒椿と姫騎士は大破して束博士でも修理に半年以上は掛かるだろうと涙目となり、愛娘のクロエとラウラに泣き付いていたと助手の更識簪は語る。

 

 簪自身も日本政府から頼まれていた専用機を全て、学園に居る元日本の代表候補生の生徒を学園の企業代表候補生の専用機として再登録して配布したらしい。

 

 

 

 試合後、鈴音はメアリーが寝ているだろう病室へと足を運ぶ。

 

 無論、娘二人を連れてだ。

 

 「入るわよ」

 

 ベッドの脇に腰掛けて居るメアリーは腕や脚は包帯で巻かれ痛々しい姿だった。あたしも人の事を言えないくらいに打撲と打ち身で包帯だらけだったが…

 

 「鈴音様!?」

 

 メアリーは鈴音達を観て困惑する。

 

 無理も無い。

 

 認めてくれないと思っているのだから。

 

 しかし、鈴音は十夏と千秋を前に出して言う。

 

 「ほら、アンタ達。

 

 新しくママになるメアリーに挨拶しなさい」

 

 「「メアリーママ、末永くお願いします」」

 

 「へっ?」

 

 メアリーは二人の双子姉妹からママとして挨拶されたのだ。困惑するなとう言うより困惑する。

 

 「メアリー、あたしがアンタを認めわよ。

 

 それと、あたしと千冬義姉さんのサイン入りの婚姻届よ。

 

 早くしないと、セシリアに先を越されるわよ?」

 

 トンデモ発言に目をパチクリするメアリー。

 

 セシリア?

 

 「セッシー!!

 

 抜け駆けしたなぁぁぁぁ!!」

 

 メアリーはベッドから急ぎ立ち上がり、セシリアが居るだろう病室へと走って行ったのだ。

 

 だが、セシリアは夫からサインを貰い役所へと提出していたとはメアリーは知らない。

 

 そして、セシリアから遅れて提出したメアリーはイギリス王家から除名処分されたとも知らなかったのだ。

 

 伝統を重んじる王家が妻が居る男性へと嫁ぐ事を良しとしない事をメアリーは浮かれたまま知らなかった。

 

 

 

 

 

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