中華料理店織斑   作:ロドニー

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夏休み 巻紙先生の自宅訪問

 

 

 夏休みに入り、千冬叔母さんが一足先に帰り結婚式用の酒を殆ど飲んでしまった。

 

 結婚式用のお酒を全て飲まれた事にキレたマドカ叔母さんは、千冬叔母さんを地下アリーナに連行して折檻した後にメールでママに報告したら向こうで買ったのを送ると言っていた。

 

 そして、連絡から2日もしないで料理店の前に止まる4トントラック2台から降ろされたのはママが広州で買い付けて空輸便で届けられた木箱の量に困惑していた。

 

 「マドカ叔母さん、買い過ぎじゃない?」

 

 「頼んだのって、定食用に頼んだ上海蟹とナマコだけなんだが?

 

 鈴姉さんが買い付けた物も送るって…」

 

 運送会社の人から渡されたリストを確認しながら困惑するマドカ叔母さん、確かに上海蟹とナマコは入っているが乾燥鮑や乾燥帆立などの乾貸や食の本場である広州でしか手に入らない様な食材ばかり。

 

 そして、結婚式用に買ったと思われる酒樽に入った高級酒や別の酒樽からは甘い香りがするマンゴー酒など樽だけでも軽く40樽はある。

 

 本当、この匂いだけで酔いそうになる。

 

 私達はISを展開しながら、各食材を保存する店内の倉庫や冷蔵庫へ搬入しながらも大量の食材の使い道について議論していた。こんな時、重い木箱を運ぶにはセカンドシフトして小型化したアテナは非常に便利だと私は思う。

 

 「多分、結婚式で出す料理用の食材だろうね…」

 

 「うん、中国式の結婚式ってかなり派手だったよね…」

 

 私も中国での結婚式を見た事が無いが、二組のクラス代表で中国の代表候補生の周尚香さんから聞いた事があった。

 

 中国の結婚式は兎に角派手で日本の結婚式の比じゃないんだよと。

 

 そして、パパとメアリーさんにセシリアさんとの結婚式は中国式とイギリス聖合教会式の両方でやるとママが言っていた。

 

 当たり前だが、ママが第一夫人らしいから結婚式は仕切るらしい。

 

 結婚式は一応だが、メアリーさんとセシリアさんの二人からの強い要望で神の前にて一夏の夫として誓いをする為にイギリス聖合教会(神の前に誓う事で、誓い合った新郎新婦はイギリス聖合教会の名の元に離婚を絶対的に許されない。これが、イギリス聖合教会の絶対的ルールがある。もし、離婚した女性は二度と結婚を許されない)の教皇を呼び執り行い横浜にある大聖堂で誓いを建てた後に、横浜市港南区にある中国の寺院に移動して中国式の結婚式を行い、披露宴会場はうちの中華料理店織斑の大宴会場にて大々的にやる事はマドカ叔母さんから聞いていた。

 

 そして、木箱の中にはメアリーさんとセシリアさん用が披露宴で着る派手なチャイナドレスが入っていた事からもママの本気が伺えたのだった。

 

 さて、片付けている木箱を運ぶ最中、店の入口に立つ男性は背中に中華鍋を背負いリュックを片手に入って来たのだ。

 

 「ここが中華料理店織斑か?」

 

 「そうだけど?」

 

 日本人に見える短髪に切り揃えて後ろ髪は三つ編みした黒髪に黒い瞳をした中国人の男性は、私のたゆんとした胸に視線を感じるから理由を見付けて殴りたい。

 

 マドカ叔母さんが男性に気付き

 

 「お前が四郎だな?」

 

 「四郎です。貴女は…」

 

 「私か?

 

 私は中華料理店織斑の麺料理担当の特級麺点師、織斑マドカだ。

 

 お前の事は鈴姉さんから聞いているから安心しろ。

 

 今日から住み込みで私が鍛えてやる」

 

 住み込みだと、聞いていない私達姉妹は嫌な顔をしながら荷物を倉庫に運び込むが、私だけは二人の会話を聞いていた。

 

 「じゃあ、鈴音さんが言っていたマドカさんなんですね。ご指導をお願いします」

 

 

 

 マドカ叔母さんから後で聞いたが、四郎君は私達姉妹と同じ日本人と中国人とのクウォーターで広州の料理店雪華楼で住んでいたらしい。そして、四郎君の曽祖父はママが行っている陽泉酒家の偉大なる料理人の弟子だったらしくて、独立後に焼き物屋の娘と結婚して始めたのが麺料理専門店の雪華楼だったらしい。

 

 (なんか、ママとパパのお店の始まりの様で親近感が湧いてくるし、生意気だと思ったら礼儀正しくて……///…あれ?顔が熱い…)

 

 経験した事がない戸惑いに、私は走って地下アリーナへと逃げたのだった。

 

 そう、一目惚れだと私は知らない。

 

 だって、大好きなパパに似ているんだもん…

 

 

 

 同じ頃、学園では織斑千冬が自宅から病院へと緊急搬送され入院したと職員室では大騒ぎだった。特に学年主任だっただけに後任がいない事や学年副主任である巻紙先生は特に頭が痛くなっていた。

 

 只でさえ、臨海学校での襲撃で六人の一学年担当の教師が撃墜された時の負傷が原因で入院中であり、二学年や三学年の教師を応援に来て貰っていただけに余計に痛い。

 

 そして、入院先の病院からの電話を受けた御手洗先生が対応して、副主任の巻紙先生に報告していた。

 

 「たっ、大変ですぅ!!

 

 織斑先生が重傷で入院だそうです!!」

 

 「御手洗先生、それはマジか?」

 

 飲んでいたコーヒーを吹き出して、御手洗先生を睨む巻紙先生。

 

 「はい、織斑先生が2ヶ月ほど入院と…」

 

 オレには信じられなかった。

 

 あの、ブリュンヒルデが重傷で入院したと。

 

 ただ、やった犯人がエムだと聴いた時は流石に驚いたが、御手洗先生から理由を聞けば夏休み明けに行う一夏とポンコツ貴族に脳筋元女王との結婚式用の酒を飲んだのが原因だったのは自業自得過ぎて笑える。

 

 だから、慌てて千冬が帰った理由が納得出来る。

 

 「一組の担任はどうすんだ?

 

 副担を代理で昇格させてやらせるか?」

 

 「それなんですが、束先生までも一緒に飲んでいたみたいで娘さんのクロエさんとラウラさんに折檻されながら叱られたらしくて、姉妹でドイツでもお仕置きするからと連れて帰られてしまって代理を頼めないんですよ…」

 

 「二人揃ってバカが!!

 

 仕方ねぇ、三組の副担任のティナ先生を、一時的に一組の担任にするから御手洗先生は流石に産休から復帰したてだからな流石に頼めねぇしな。

 

 オレのサポートには束の助手の更識妹を急遽、副担にして2学期を乗り切るしかねえぇな。

 

 幸い、更識妹は教員免許があるしな」

 

 「それでは、学園長に報告して来ます」

 

 「全く、二人揃って何してやがる。オレが学年副主任の柄じゃあねぇんだぞ」

 

 報告に向かった御手洗先生とは入れ替わりで雨宮先生が書類を抱えて職員室に入ってきた。

 

 「仕方ないわよ、オータム。

 

 学年副主任は産休が無ければ、御手洗先生の予定だったじゃない。

 

 でも、産休で駄目になってオータムが選ばれただけよ」

 

 「ちっ、スコールだって、いつの間にか3年生の学年主任じゃあねぇか」

 

 「あら、意外。

 

 最初はベテラン教師のナターシャ先生が成るかと、私は思っていたけど?」

 

 「ナターシャより、馬鹿共を抑える意味じゃあスコールが適任だろうが」

 

 3年生の馬鹿共を抑えられるのは雨宮先生かナターシャ先生ぐらいだった。

 

 それでも、元亡国機業の実行部隊の隊長だった雨宮先生の方が一対多数でも対応できる事から学園長から学年主任を任されたのもあるが、司法取引により更識家にマドカを含む三人が監視の下引き取られた経緯があるから元楯無の更識刀奈には文句を言えない。

 

 (マドカは後に更識家から一夏によって引き取られたが、姉の千冬並みの高い技量から学園を卒業後に日本の国家代表に選ばれて個人戦を出るようになった。

 

 しかし、二連覇を果たした一夏が鈴音とタッグを組んでからは、一夏と鈴音と戦い競えるタッグトーナメントを選んだが同じ日本の国家代表(後の大会のタッグトーナメントの試合で当り、シスコンモードを発動した一夏と鈴音に完膚無きにぶっ飛ばされる)に『この、犯罪者が大会なんかに出るな‼』と言われてからは、同じ国家代表選手から仲間外れにされる様になり国内の代表選手とは誰とも組め無かった。

 

 同じくして、タッグトーナメントに出ようとしていた元クラスメイトで親友のイギリスの国家代表のセシリアとタッグを組み大会に出場してからは準優勝で、二人と決勝で毎回争う程だったらしい)

 

 「それもそうね…」

 

 オータムからの正論にガックリと肩を落とすスコール。これが、学園での二人の光景。

 

 お昼時となり食堂へ行こうと思うが、学園に残るのは自炊する生徒ばかりで食堂がお盆でコックが帰省中でやっていないと知らない二人はそのまま食堂に向かい、気付かないで食堂に着いた時には閉まっていた事を知ることになった。

 

 「まっ、マジかよ…」

 

 「あら、まぁ…」

 

 本人を前に言えば絶対に殺されるが、巻紙先生は家事が壊滅的に出来ない。逆に雨宮先生は辛うじて簡単な調理ができるが食材を買ってないので冷蔵庫には無いのだ。

 

 まぁ、隣町のレゾナンスで買えばいいのだが、そのために行くような二人ではない。

 

 だから、毎回の様に食べ損ねるのだが、二人はそこに気付かない。

 

 「なぁ、今日も食いっぱぐれかよ…」

 

 「流石に無いわね…」

 

 因みに、ナターシャ先生の料理の腕は普通だが、食堂が閉まるのを知り食材の買い込みをしてあるが、二人を食べさせると来週に食堂が開くまで足りなくなるので二人には秘密にしている。

 

 「仕方ねぇ…行くか?」

 

 「そうね…」

 

 仕方なく外出申請を書き受理されると、駐輪場からハーレーダビッドソンの2000ccのバイクを出して跨がると巻紙先生が運転し雨宮先生が後ろに跨り一路、マドカ達がいる中華料理店織斑へと向かった。

 

 

 国道1号線を痛快に走る二人乗りのバイク。

 

 向かうのは湘南市。

 

 新装開店の準備中だが、マドカか十夏に頼めば何かを食べさせてくれるだろと巻紙先生は思っていたし、同様に雨宮先生も思っていた。

 

 なぜなら、千冬と同じく馬鹿な事をしないし、常に大切な生徒して可愛がっていたからだろう。

 

 なにせ、巻紙先生にしたら十夏と千秋は可愛い生徒で更識から依頼された護衛対象で、雨宮先生にしたらマドカは亡国機業時代から母娘の様な付き合いだったからだろう。

 

 

 「なぁ、スコール?」

 

 「以前より大きいわね、これは…」

 

 常連客である二人が唖然と眺めるのは、駐車場と駐輪場を完備して新装開店の準備中である中華料理店織斑は更に大きくなって建てられていた。橙色の屋根の瓦が眼を引き、三層四階の建物には複数の朱色の柱が重厚な建物を支える純木造建築ながら古代中国の建築様式で再建された豪華絢爛の中華料理店に場違いな感想を漏らす二人。

 

 「これは、完全に一夏の趣味じゃねぇな…」

 

 「そうね…まるで中国の皇帝が住む様な宮廷ね…多分、奥さんの鈴音の趣味ね……一体、いくら掛かったのかしら?」

 

 「オレに聞くなよスコール…」

 

 正直、三百億円はくだらい建築費用で再建されたとは、家主である一夏と妻の鈴音しか知らない。

 

 何せ、当初は四億円で済ます計画が妻が二人も増えて妻達の居室が増えたりボーデビィッヒ三姉妹の部屋の確保など、店に無かった大宴会場まで追加して再設計してから再建した結果である。

 

 そして、似た者夫婦は再建後に自宅を観て叫ぶ。

 

 『やり過ぎた⁉』

 

 そして、アリーナを二周り程の広大な土地が在るのは、お店の地下にIS用のアリーナがあり激闘を繰り広げても壊れない安全性と災害時の市民の避難所兼シェルターとしても考慮した堅固な造りである事と同時に、二人が稼いだ優勝賞金で一帯の土地代と建築費用を払い、この店に並々ならぬ二人の熱意を注ぎ込まれて造られたのである。

 

 そして、建物を破壊した日本政府が莫大な賠償を支払ったのも頷けるのだ。(ただ、地下施設と地下アリーナは全くの無傷で避難したお客は全員無事。そして、湘南市の市民の緊急避難先に指定される事はある)

 

 言わば、織斑夫妻が世界大会を多数優勝して得た優勝賞金から得た資産を見れば、織斑姉妹は中華料理店織斑の令嬢であり、お嬢様だと言えると二人は思う。

 

 「はっ、入りましょうか?

 

 ねっ、オータム?」

 

 「そうだな…」

 

 こんな建物で高級料理店ではなく大衆食堂を謳っているのだから詐欺も良いところだが、店内は大衆食堂らしくて過ごしやすい。

 

 店に入るなりマドカを呼ぶ。

 

 「エム、居るかぁ!!」

 

 叫ぶが反応が無い。

 

 多分、地下アリーナで双子姉妹の訓練をしているのだろうか?

 

 確か、千冬から臨海学校での無断出撃で謹慎の他に訓練が追加されていたと聞いていたが、学園のアリーナでは千冬が帰省してからは訓練をしていない。

 

 なら、マドカ達が居るのは地下アリーナだろうと思った矢先、一人の男性が野菜の入った笊を抱えて厨房に来たのだ。

 

 「すいません、新装開店の準備中で休業中なんですが?」

 

 「あぁん!?

 

 誰だテメェは?」

 

 「ちょっと、巻紙先生!?」

 

 「雨宮先生は黙ってろ!!

 

 何時もなら通されるのに、あの野郎の態度が気に食わねぇだけだ!!」

 

 「エムなんて方はいませんが?」

 

 更に食い付く四郎に青筋を更に浮かべる巻紙先生は肝心な事を失念していた。

 

 男性はマドカの亡国機業時代のコードネームを知らない事を。

 

 キレそうになる巻紙先生と休業中だからと帰らせようとする四郎。

 

 最早、一触即発の状態だった。

 

 だが、大人な対応するのが雨宮先生だった。

 

 「悪いわねぇ。エムじゃなくてマドカを呼んでくれるかな?

 雨宮が来たと言えば判るからね」

 

 「マドカ師匠ですか?

 

 師匠でしたら、地下アリーナですが…

 

 生憎、地下アリーナへの行き方が…」

 

 「そう、なら私達が判るから行くわ」

 

 四郎から地下アリーナにマドカ達が居ると聞き、店の奥にある地下へ行くエレベーターに乗り込み、アリーナがある最下層のボタンを押して降りたのだった。

 

 

 

 地下アリーナでは、マドカが黒騎士を展開してスターゲイザーMk−Ⅳをソードモードで二人の猛攻を軽くいなし、十夏がアテナを展開してネプチューヌを振り回しながら突きまくり、千秋が展開するアルテミスの3つのモードで漆黒のヘカーテを展開してデスサイスで斬り付ける光景。

 

 「「てぇゃァァァァ!!」」

 

 「そんな、チグハグな連携で私を倒せると思うな!!」

 

 やはり、未だに姉妹は仲直りしていない様子で連携すらバラバラだった。普通なら千秋が後衛でアルテミスで矢を射りながら援護するのだが全く援護する気すら無い。

 

 「全く、駄目ね。あの程度ではマドカに敵わないわ」

 

 「全くだな。空自が三機でやる『スパイダーネット』は有名な捕まえ方だって事をオレ達の時代では当たり前だったから、模擬戦しながら十夏の身体に危険だって叩き込んだが、千秋は見てるだけで理解出来なかったからな。

 

 それが、臨海学校での姉妹の悲劇だな」

 

 「オータムにしては優しいのね」

 

 「いやな、臨海学校と聞いて一夏の時の様に嫌な予感がしたから、二人には模擬戦で教えただけだ。まさか、実際に空自がスパイダーネットを使うとは予想してねぇよ」 

 

 「理解出来なかった千秋を姉が庇った。

 

 言うだけなら、正に悲劇ね。

 

 あんなに私がキレたのは久しぶりだったわね。

 

 私が救援に間に合わなかった事に対してね」

 

 「だが、フリーランスでタッグトーナメントを出るって二人から聞いたが、あれじゃあな…」

 

 「全くね…」

 

 まだ、学年別タッグトーナメントの時の方が強く感じるのはスコールも意見は同じだった。

 

 てんでバラバラもいい所だ。

 

 全く、噛み合わない二人。

 

 「全く、強情な所だけは一夏と鈴音に似やがって、見てらんねぇよ」

 

 そんな時だった。

 

 「てぇゃァァァ!!」

 

 「ちょっと、千秋!?」

 「ぬっ⁉」

 

 丁度、十夏とマドカが槍とソードによる鍔迫り合いが起きた時に千秋が瞬時加速をしながら近付き十夏を巻き込みながらマドカに斬りつけたのだ。マドカは殺気で気付き千秋のデスサイスを瞬時加速して難無く躱したが、十夏は反応が遅れて千秋からの斬撃を躱せずに、天使の様な翼型のウイングバインダーを斬り落とされてバランスが取れ無くなり切り揉みしながらアリーナの地面へと落下するが、両脚のスラスターを吹かして地面との激突だけは避けたのだが、斬られた十夏は千秋に対して怒っており険悪なムードが支配する。

 

 そう、臨海学校以来の姉妹喧嘩の勃発だった。

 

 一夏と鈴音の両親に叱られて鳴りを潜めていたが、未だに仲直りしていない二人には、松明を投げ入れた火薬庫と同じ様にいつ爆発するか判らない状態だとは思ってもいなかった。

 

 「千秋、何すんのよ!!」

 

 「チャンスだから斬りつけただけやだよ?」

 

 「チャンス!?

 

 フザなけんな!!

 

 私が前衛で千秋が後衛でしょうが!!

 

 味方まで巻き込むな!!

 

 って、私まで斬る事ないでしょ!!」

 

 「だったら殺る?」

 

 「上等よ!!

 

 千秋のアルテミスがマルチタイプになったからって、図に乗るな!!

 

 あんたのアルテミスをスクラップにしてやるわよ!!」

 

 「殺れるものなら、やって見なさいよ!!」

 

 「何だと!!」

 

 「二人共、そこまでだ!!」

 

 「この、前衛馬鹿!!」

 

 「何だとぉ!!」

 

 マドカが怒鳴り、二人を止めるが喧嘩が収まる気配はない。それどころか、止めに入るマドカを無視してまでも口喧嘩はさらに激化するが、殴り合いにだけはならない理性だけは残っていた。

 

 「いい加減にしろよ?

 

 十夏に千秋、私の目の前で喧嘩とは良い度胸だ‼」

 

 このままでは、青筋を浮かべてキレたエムが何を仕出かすかは長い付き合いだから予想出来る。

 

 経験上から確実にキレたエムは、十夏と千秋は半殺しにするだろう。

 

 それだけは、オレもだが一夏に鈴音は望んでいない。

 

 なら、オレは教師として二人を止めるか?

 

 止めるだけでは駄目だ。

 

 なら、エムの替わりにオレがやるのが二人には、一番判るだろう。

 

 だから、キレたマドカにアリーナの管制室から、オレが叫ぶ。

 

 『エム、オレがやるから代われ!!』

 

 「オータム⁉」

 

 「「げっ、巻紙先生!?」」

 

 管制室からの叫びに反応して驚く三人。

 

 マドカは未だに口論中の二人を放置して、渋々ピットに戻るがピットに居た私とスコールを見て驚く。

 

 「オータム、何しに来た?」

 

 「マドカ、飯を食いに来たが正解だ。だが、此処に来て二人を観ていたが、あれじゃあな。二人を軽くシメて来るわ」

 

 「何だと!?」

 

 「エム、あれじゃ駄目じゃない?」

 

 「エムじゃない!!

 

 マ・ド・カだ!!」

 

 「別に、昔の呼び方でも構わねぇじゃねぇか?

 

 なぁ?

 

 じゃぁ、行くぜ!!

 

 来い!!『アラクネ』‼」

 

 「オータム待て!!」

 

 マドカの静止を聞かずにピットから飛び出す。

 

 久しぶりに、二人には一夏と戦った以来の本気でやってやろう。まぁ、バレたら学園長にどやされるだろうが構わねぇ。

 

 本来なら、人を殺し過ぎたオレやスコールにマドカは死刑は確実だった。しかし一夏はオレ達を許し、更識姉は司法取引を持ち掛けて受けたオレ達は更識家の暗部として働き罪を抹消された。

 

 そして、オレとスコールの新しい任務は学園での教師として生徒に、今まで培った操縦技師を教えたりした。

 

 今度は一夏と鈴音の娘の護衛。

 

 死ぬ筈だったのに助けられ、新たな道をくれた一夏と更識姉には頭が上がらねぇ。

 

 だから、仮に死ぬとしてもこの姉妹喧嘩だけは、辞めさせて仲直りだけはさせたい。

 

 一夏への恩返しだから…

 

 「オラァ!!

 

 いつまで、やり合ってんだ!!」

 

 「えっ!?」

 

 「キャァァァ!?」

 

 「ち、千秋!?」

 

 ピットのカタパルトからの射出の加速と二重加速であり得ない加速力で千秋のヘカーテに体当たりして吹き飛ばすが、蜘蛛の糸を射出して十夏のアテナに巻きつける。

 

 「今度は十夏だ!!」

 

 「いっ、糸が斬れない!?

 

 キャァァァ!?」

 

 巻き付けた蜘蛛の糸をハンマー投げの要領でぶん回して、千秋に向けてぶん投げる。体当たりされ、壁に激突した千秋に更にぶん投げられた十夏が衝突する。

 

 「「ピッギャア!?」」

 

 「弱いぞ!!

 

 まだ、学園祭で襲った一夏の方が強えぞ!!」

 

 「「うっぐぅ」」

 

 叫びながら、リボルバーを掛けて加速して絡み合う二人にブレードで滅多斬りにする。

 

 「そんなんで、タッグに出るだぁ?

 

 タッグを舐めんじゃねぞ!!

 

 あぁぁん、一夏と鈴音に挑みてぇだ?

 

 寝言は寝て言えや!!」

 

 今度は千秋を蜘蛛の糸で巻きつけてぶん回す。

 

 「オラァ、オラァ、オラァ!!

 

 喧嘩して、二人揃って謝りてぇのに意地を張り合ってる馬鹿姉妹がオレに勝てるわけねぇだろうが!!」

 

 叫び、千秋を地面に引き摺りながら三重加速し、加速力と千秋の重量を生かして蜘蛛の糸を巻き付けられてまともに動けない十夏にすれ違いざまに千秋をぶつける。

 

 「「ギャフン⁉」」

 

 最早、十夏のアテナも千秋のヘカーテも蜘蛛の糸で巻き付けられ身動きすら出来ない。それでも、第2世代のアラクネでは第6世代のアテナとヘカーテにはダメージがまともに入らないのはスコールだって判っていた。

 

 「オラァ、立てよ!!」

 

 「うっぐぐぐ…」

 「痛たた…」

 

 オレは、最も意地を張る十夏と千秋に挑発する。

 

 「あぁ、折角ようテメェ等に教えたのに千秋を助ける為に自分を犠牲にするなんざ馬鹿だよな‼

 

 で、今度は馬鹿な妹に逆ギレか?

 

 ザマァねぇや

 

 千秋は千秋で姉に助けられたのに気付かねぇし、ありがとうの一言もねぇ愚妹か?」

 

 ブッツリ…

 

 「わっ、私の…」

 

 「あぁん?

 

 聞こえねぇよ!!」

 

 ブッツリ…

 

 「私の妹を馬鹿にするなぁぁぁぁ!!」

 「お姉ちゃんを馬鹿にするなぁぁぁぁ!!」

 

 十夏が魔剣レヴァティンをコールして蜘蛛の糸を切り裂く。そして、千秋のも自分のを切り裂いた後に二人は連携しながらオレに襲いかかる。

 

 「やれば、出来るじゃねぇか!!」

 

 瞬時加速とリボルバーを混ぜ合わせながら、瞬時に離脱する。

 

 「千秋、あの時はごめんなさい!!

 

 だから、前衛しか出来ない私を援護して!!」

 

 「私もごめんなさい!!

 

 だから、援護は任せて!!」

 

 学年別タッグトーナメントの時の様に、アルテミスに戻して絶え間なく援護する千秋とファランクスの様に守り攻める十夏。

 

 「ちっ、やりにくい!!」

 

 「「はぁぁぁぁ!!」」

 

 遂に、アラクネに矢が刺さりスラスターを破壊される。

 

 「しまっ!?」

 

 「単一仕様『イージスの盾』を発動!!」

 

 「単一仕様『アルテミスの矢』を発動!!」

 

 「やっ、やべぇ!?」

 

 「「喰らえぇぇぇ!!」」

 

 盾に填められたメデューサに睨まれ、硬直し拘束されるオレにアルテミスから必中の矢アラクネを直撃してシールドエネルギーをゼロにされたのだ。

 

 まぁ、二人が仲直りしたから、やられた事は気にしない。

 

 シャワーを浴びた後は、迷惑をかけたお礼に手料理とキンキンに冷えたビールをご馳走となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

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