中華料理店織斑   作:ロドニー

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夏休み 開幕 特級厨師試験!!

 

 

 娘達の夏休みも中盤にはいり、広州の夏が本格的になって来た。もうすぐ、年に一度に南陵の古城にて開かれる特級厨師試験は中国全土から特級厨師を取るべく料理人達が集まる。

 

 俺は鈴の師匠に中華の真髄とも言える様々な技術を試験前日までに徹底的に扱かれて、漸く広州の老舗である陽泉酒家に推薦されて妻の鈴を助手に南陵の古城へとやって来たのだ。

 

 「一夏、来たわね…」

 

 鈴は試験会場である城門を背に胸を張る。

 

 その姿は、再会した学生時代のあの日のSHR前と重なり、懐かしく思うし鈴を愛しく思う。

 

 「そうだな鈴、絶対に合格しような」

 

 「当たり前じゃない!!

 

 この、あたしが居るのよ。

 

 絶対に合格するわよ!!」

 

 この時ほど鈴が頼もしくもあるし、やはりタッグパートナーであると思う。

 

 そんな時だった。

 

 俺よりも背が高く、チェーンで柄を固定した中華包丁を肩に掛けたモヒカン頭の筋肉隆々な男が絡む。

 

 だが、奴の目先は俺の妻である鈴をやらしい眼で観ながらだった。

 

 「何だ?

 

 そんな優男が出るのか?

 

 テメェはさっさと帰れ!!

 

 ぐっ、へへへ…

 

 だが、そっちの女は良い女だからな、夜にタップリ楽しむから置いて行きな‼」

 

 ガラの悪い筋肉隆々の男が妻をエロい眼で見ながら、俺に挑発する。

 

 鈴は俺の大事な女であり、最愛の妻だ。

 

 置いて行ける訳もないし、渡す気も無い。 

 

 「……」

 

 「一夏!?」

 

 「はぁっ!!」

 

 バッサリ

 

 白椿の拡張領域から、第四回モンドグロッソを優勝した時に、優勝祝いで千冬姉から貰った一振りの日本刀である長曽根虎徹を出して居合抜きで奴のモヒカンだけ斬り、パサリと斬られた男の髪が宙に舞う。

 

 「へっ?」

 

 「悪いな。

 

 鈴は俺の妻であり、大事な女だ。

 

 お前なんかにやらん!!

 

 今は、モヒカンだけだ。

 

 だが、次は貴様の首を斬る…」

 

 「ひっ、ひぃぃぃぃぃ!?」

 

 日本刀が急に出た事に驚くが、それよりもモヒカンだけを正確に頭皮ギリギリに斬り落とされ、次は首を斬ると言うと男は悲鳴を上げながら逃げ出したのだった。

 

 だだ、鈴は『大事な女』と聴き、顔を手で覆いイヤンイヤンしながら嬉しそうな顔をしているが顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。

 

 昔なら、鈴はツンデレを発動していただろうが、久しぶりに観る可愛い鈴を思わず抱き締めそうになるが、逆に旦那に護られたのが嬉しいのだろう、俺の胸に頭を埋めて抱き締められてしまった。

 

 「一夏、ありがとう…

 

 でも、恥ずかしいじゃない…」

 

 二人の周囲はピンク色空間を形成しているが、一部始終を観ていた料理人達はざわめく。

 

 「すっげぇ剣術の腕前だな…」

 

 「なあ、あの二人ってまさか?」

 

 「あぁ、間違いなくISの世界大会のダックトーナメントの覇者の織斑夫妻だ」

 

 「えっ!?」

 

 「じゃあ、隣にいる女は元中国の国家代表候補生の鳳鈴音か!?

 

 中国のお偉いさんと喧嘩して、代表候補生を辞めたって噂だが?」

 

 「それもそうだが、奴は候補生を辞めてから台湾に渡り台湾の拳法の達人、東方不敗の愛弟子らしいし、一年もしないで流派東方不敗を極めた天才だって?」

 

 「えっ、俺が聞いたのは引退してから特級点心師を取って料理人になったって聴いたぞ?」

 

 「じゃあ、あの男は…」

 

 「二代目ブリュンヒルデにして、日本の凄腕の中華の料理人織斑一夏か!?」

 

 「なんか、騒いでいるな?」

 

 「まぁ、あたし達は色んな意味で有名だもんね…」

 

 俺達夫妻を見ながら色々と騒ぐ料理人達にげっそりしたのだ。

 

 門を潜ると沢山の調理台が立ち並び、ステンレス製のステージには様々な新鮮な食材が大量に鎮座していた。

 

 そして、自分達の試験番号の調理台に行くと、床や調理台には包丁の跡が目立つ。

 

 「色んな人が挑戦したんだな…」

 

 「そうね…」

 

 調理台の傷に感傷を浮かべながら、今まで受けた人達の想いを痛感する。

 

 拡張領域から自分の鍋や調理器具などを出して並べる。鈴も修理中の黒椿の予備機であり中国から夏休みを前に返還された甲龍の拡張領域からは調理器具を出して準備する。

 

 準備が終わる頃には、城壁の最上部にある建物から黒い被り物のマントを着る女性が降りてくる。

 

 そして、女性は叫ぶ。

 

 『これより、特級厨師試験を始める!!』

 

 とうとう、始まった特級厨師試験。

 

 周りの料理人達も叫ぶ。

 

 『おぉぉぉぉ!!』

 

 『静まれ!!

 

 第一次試験のお題を発表する!!』

 

 同じ服装の男性が、2つの垂れ幕を下げる。

 

 「一夏、マドカを連れて来れば良かったわね…」

 

 鈴が2つのお題を見て後悔する。確かに、このお題はキツイ。

 

 そう、一つ目のお題は『麺』だった。

 

 そして、もう一枚の垂れ幕が下がる。

 

 「まっ、マジ…」

 

 「やるしかな無い…」

 

 2つのお題は『非麺』

 

 「一夏、麺に非ずと来ているわね…」

 

 鈴が漢文で書かれた意味を俺に教える。

 

 だが、頭の中にはレシピが想い浮かぶ。

 

 これなら、一次試験は突破出来る筈だと思い鈴に指示を出す。

 

 「鈴、海鮮麺を作る。だから、鈴は鯛を三枚下ろしにして身は叉焼にアラや背骨は帆立と一緒に煮て出汁にしてくれ!!」

 

 「一夏はどうすんのよ?」

 

 「俺は、鯰から麺を作る」

 

 「はぁ!?

 

 鯰じゃあ、麺のコシが無いじゃない!!」

 

 「大丈夫だ。

 

 対策なら練ってあるから任せろ」

 

 と言い、俺は鯰が入っている水槽から生きがいい鯰を数匹を部分展開した腕で良し悪しを見極めながら捕まえる。そして、もう一つの水槽からは烏賊を掬いあげて調理台へと戻る。鈴も大きさも鮮度も良い最良な鯛を数匹を持って来ていて、叉焼にする為の下処理をしていた。

 

 「よし、やるか!!」

 

 気合を入れ、素早く鯰を捌き下処理をして行く。

 

 下処理が終えた鯰をすり鉢に入れて練り状になるまで摺り潰し、少量の塩と卵白を混ぜて更に錬る。

 

 擦り潰し、練った鯰を冷所に寝かし烏賊を処理する。

 

 烏賊は出刃包丁で細さ0.4ミリに斬り添えて行き麺の芯を作り練った鯰で麺状にして行き麺を作る。その頃には鈴が作業していた叉焼や糸状に刻んだ葱にスープが完全していた。

 

 「鈴、出来たか?」

 

 「出来たわよ。で、一夏は?」

 

 「麺は完成した。後は麺を茹でて盛り付けるだけだ」

 

 「なら、さっさとやるわよ!!

 

 一次試験を突破した奴等が出始めたから、急がないと二次試験の席が無くなるわよ」

 

 確かに、ちらほら合格者が出始めているのは判るが、慌ててミスるのは良くない。慎重に海鮮麺を仕上げる最中、試験官が叫ぶ。

 

 「番号1245、不合格!!」

 

 「何故だァァァァ⁉」

 

 隣の上海の海老館(かいろうかん)の料理人、韓は不合格になっていた。確かに、『麺に非ず』は難しいが簡単至極の様に麺の形をイタリアンパスタの様にリボン型に伸ばしただけでは当然だろう。

 

 「麺の形を変えただけだからだ!!

 

 よって、不合格!!」

 

 「糞!!

  

 また、来年受けてやる!!」

 

 韓は調理台を片付けると、荷物を纏めて帰るのだった。

 

 そして、俺達の海鮮麺が出来上がり、試験官を呼ぶ。

 

 「番号、1003。

 

 海鮮麺か…」

 

 「はい、鯰から麺をつくり、鯛のあらや骨を出汁に仕上げました」

 

 「なっ、鯰だと!?

 

 ふん、鯰麺などにコシがあるまい…」

 

 試験官が麺を食べると驚愕した表情になる。

 

 「何だと!?

 

 鯰麺なのにコシがあるだと!?」

 

 試験官は麺一本を掬い上げて一口噛り断面を見る。

 

 「なる程…麺の芯に硬い物が…これは何だ?」

 

 「烏賊を芯にしました」

 

 「烏賊だと!?

 

 なる程、だから麺にコシが在るのか…烏賊を寸分狂わない細さに切る刀工技術に麺を一本一本と丁寧に仕上げる技量は…合格である!!」

 

 「鈴、やったぜ!!」

 

 「当然じゃない!!」

 

 二人でハイタッチをして一次試験を喜んだのだった。

 

 そして、一次試験を二千人が受けて突破したのはたったの十人にも満たなかったのだ。

 

 そして、このまま二次試験へとなる。

 

 二次試験のお題は鶏料理だった。

 

 しかし、ここでとある料理人が料理人同士での採点になるのだが料理を冒涜する事をするとは、俺も鈴も知らなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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