中華料理店織斑   作:ロドニー

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夏休み 特級厨師試験 激怒する一夏

 

 二次試験のお題は『鶏料理』で俺と鈴は頭を抱える。

 

 定食の定番である唐揚げに娘の千秋の好物の油淋鶏などメニューやレシピの数を上げればキリがないのは当然だろう。

 

 しかし、鈴は師匠からの選別の他に陽泉酒家の料理人から貰った餞別を思い出す。

 

 「一夏、次の鶏料理に烏骨鶏を使わない?」

 

 「烏骨鶏?

 

 あぁ、確か陽泉酒家の皆から貰った餞別に在ったな」

 

 「そうよ」

 

 「じゃあ、烏骨鶏と来たら、あれだな?」

 

 「判ってるじゃない!!」

 

 メニューが決まり、すぐに食材集めを始める。

 

 集めるのは数種の香辛料や米に香味野菜などを調理台へと運んで調理を開始する。まず、烏骨鶏の首を跳ねて血抜きをして、お腹を斬り内臓を出して水洗いをして下処理をする。無論、内臓も下処理して香味野菜と煮込み、灰汁を取りながら付け合わせのスープにする。

 

 「俺が烏骨鶏の下処理をするから、鈴は香味野菜と香辛料のブレンドを頼む!!」

 

 「任せなさい!!」

 

 鈴は大量の塩と卵白を混ぜて、塩釜の準備しながら香味野菜を刻み香辛料をすり鉢で潰し混ぜながら準備する。

 

 下処理を終えた、烏骨鶏の腹の中に米や刻んだ香味野菜と香辛料を入れて腹を閉じ、卵白を混ぜた塩で卵型を形成しながら烏骨鶏を包む。鈴は既にオーブンに火を入れて暖め終わっていて後は焼くだけだった。

 

 オーブンに入れれば、後は二時間待つだけだ。

 

 

 周りを見渡せば、一次試験を突破した料理人達が真剣な表情で調理する。

 

 そんな中、一人の女性に目が行く。

 

 「鈴、彼女って、まさか?」

 

 「元国家代表の楊香蓮ね。あたしと同期の代表候補生で、セシリアとは第四大会の三回戦で当たったのが彼女ね。セシリアにギリギリのところで負けてからは引退してからは、あたしと同じく料理人になったって聞いたわね」

 

 彼女は遼寧省の大連の料理人で薬膳料理専門の大連飯店のお抱え料理人の楊香蓮(ヤン・カレン)で、俺達と同じIS乗りで元中国の国家代表だった。 

 

 「あら、鳳、久しぶりね」

 

 彼女も気付き、挨拶する。

 

 彼女の料理はオーブンで焼いている最中だが、俺達と同じく焼き上がりを待っている状況だった。

 

 「久しぶりじゃない。でも、今は結婚したから織斑よ」

 

 「楊さん、久しぶりです」

 

 「あら、二代目ブリュンヒルデ様もいたのね。まさか、二人が結婚するなんて全く思わなかったわ。そう言えば、永遠のライバルのセシリアとも結婚する噂を聞いたけど?」

 

 「えぇ、娘の夏休み明けにセシリアとメアリーとも結婚式を挙げますよ」

 

 「で、あたしが第一夫人ね」

 

 「結婚、良いわね…私なんか、薬膳の魔女って言われて大連の自分が勤めるお店では嫌われ者よ…女尊男卑のせいで出会いも無いもの…」

 

 楊と嘆くが、専門とする料理は薬膳料理。

 

 元国家代表で在りながら、鋭い観察眼での診察と漢方薬の処方技術は中国では五本指に入る。そして、意外でもあるが日本の薬剤師と医師の資格持ちでもある。

 

 

 

 あたし的には欲しい人材でもある。あたしも漢方薬の処方技術と薬剤師の資格はあるが、流石に医師免許が無い。新たに開拓した漢方薬の入手したルートで買い入れても、調理しながら近所から買いに来る人に処方するのは正直言えば大変である。

 

 「香蓮、うちで働かない?」

 

 「えっ?試験中なのに、こんな話しは良いの?」

 

 「別に大丈夫よ。湘南市にあるあたしと一夏のお店は中華料理店織斑。とある事件でお店を壊されたついでに、少し大きくしたのは良いだけど料理人が不足しているのよ」

 

 「あのお店って、鈴音のお店!?

 

 中国じゃあ、本格的で大衆向けの中華料理店だって有名よ!?

 

 じゃあ、一夏さんがオーナーなの?」

 

 「そうだな。俺がオーナーで総料理長をしている」

 

 「でも、広州の陽泉酒家の名前で出ているじゃない」

 

 「日本では有名だけど、こっちじゃあ無名に近いのよ。だから、あたしが師匠に頼んで推薦を貰った訳よ」

 

 「なるほどね…私、試験が終わったら働かせて貰うわね。セシリアともモンドグロッソ以来だから模擬戦したいわ」

 

 「一夏」

 

 「あぁ、宜しく頼む。月、これ位で良いか?」

 

 一夏は拡張領域から雇用形態を示した契約書を出して彼女に渡す。

 

 彼女が働く大連飯店での給料は日本円に換算して約15万円程度と安月給だが、あたしなら35万円から40万円を出しても雇いたい。

 

 優秀な人材だし、何よりも娘の護衛としても雇いたいのだ。

 

 二度と臨海学校の時の様な、あんな思いはしたくない。例え、親馬鹿とか過保護だと言われても傷付く娘を見たくないから。

 

 「えっ!?

 

 何なの?…月給38万円で週休2日って…社会福祉が完全完備で…住み込みが可ですって!?」

 

 そして、彼女は書類を目を通すうちに固まっていた。

 

 一応、マドカよりは給料は少なめだが、娘二人やボーデビィッヒ三姉妹にセシリアやメアリーもウェイターとして働いたりする為、社会保険や社会年金はこの際だから加入していた。

 

 

 「それとは別だが、娘の学園の外で外出時の護衛とIS学園への送迎をしてくれたら、月給の他に15万円を上乗せするぞ?」

 

 「是非!!」

 

 香蓮はすぐ様にサインしてあたしに渡す。書類は一夏を渡し、拡張領域へとしまっていた。

 

 『光陰矢の如し』

 

 日本の諺の様に三人との会話も時間が経つのも早く、他の料理人達が調理が終わり始めて、私達も盛り付けへと作業に入る。

 

 どうやら、調理人同士で採点らしく一夏は人数分を用意して行く。あたしも仕上がった付け合わせの黄金色に澄んだ薬膳の臓物スープを器に入れて、漆塗りの膳に乗せて、炊き上がった烏骨鶏の蒸し飯を一夏が乗せて、あたしが調理人達が座る席へ運んだのだった。

 

 

 

 一人目の料理は上海の上海飯店の料理人の張の料理、カラフルに彩られた揚げ鶏の餡掛けだった。

 

 「確かに美味いが……鈴、一口食べてみろ」

 

 「一夏、貰うわ」

 

 小皿によそられた、揚げ鶏。

 

 食べると確かに美味しいげど、ピンと来ない。

 

 正直、ボヤケた味付け。

 

 一夏は既にチェックシートに10点満点中、5点と書き込む。

 

 次はあたし達の料理。

 

 反応はと言えば。

 

 「飯とスープだけだと!?

 

 ふざけているのか!!」

 

 一人の料理人が叫ぶが、香蓮が

 

 「あら、これは列挙とした鶏料理よ。食べて判らない?烏骨鶏の濃厚な脂や旨味に香辛料の調和の取れた辛味がお米に染み込んでいる。そんな、贅沢な烏骨鶏特有の旨味だけをお米に染み込ませる。見事ね」

 

 「確かに美味い。確かに烏骨鶏は調理が難しい。俺も見事だと思うし、3次試験を挑むだろう俺達に滋養を付けさせてくれる一膳だ。見事だと思う」

 

 北京の北京飯店の料理人が絶賛する。

 

 点数は判らないが、一人を除き絶賛の嵐だった。

 

 次は香蓮。

 

 香蓮の料理は合鴨の香草焼き。

 

 唯の香草焼きじゃない。

 

 「鈴が思っている通りだ。

 

 数種の香草や香辛料を巧みに合わせて、鴨特有の臭みを消しているだけじゃない。それに加えて、漢方を織り混ぜて疲れを吹き飛ばすかの様な滋養強壮、それで持って味を壊さない腕。見事だと思う」

 

 「ありがとうね」

 

 香蓮の点数は満点の10点。

  

 あたしでも入れるだろう。

 

 流石は薬膳の魔女だと言わせる腕前だった。

 

 

 数名の採点が終わり、最後は河南省から来た女料理人の蘭花(ランファ)の鶏肉とピーマンの炒め物だった。

 

 しかし、普通の炒め物にしか見えない。

 

 他の料理人は

 

 「「「「「美味い!?」」」」」

 

 と高評価だったが、一夏と香蓮は食べずに額に青筋を浮かべるている。何故かと思い一夏の皿に手を出すが

 

 「鈴、捕まりたく無かったら食べるな…」

 

 「えっ、どう言う事よ!!」

 

 「良いから食うなよ?

 

 巫山戯た料理を作りやがって!!」

 

 始めて見る一夏の怒り。

 

 余りにも、あたしにしたら今の一夏が怖い。

 

 それはまるで、宇宙での亡国機業との最終決戦でエクスカリバーで白式ごと撃ち抜かれ瀕死の一夏を千冬義姉さんが抱えて見せた時の様な底冷えする様な冷たい怒り。

 

 香蓮も匂いで判り、皿を床に投げ捨てていて叫ぶ。

 

 「なんて物を入れてるのよ!!」

 

 「香蓮も判ったか?」

 

 「あら、薬膳の魔女を舐めないでね」

 

 「束さん特製の解毒薬だ。香蓮、一応飲んどけ」

 

 「ありがとう。流石にこれは中毒と依存性が怖いもの」

 

 「聞くぞテメェ、何でけしの実を使った?」

 

 「えっ、ケシの実ですって!?」

 

 ケシの実、麻薬の阿片の材料ともなる植物。

 

 中毒に成れば、依存性が最も高いと言われ中国でもそうだが日本でも麻薬取締法で禁止されている麻薬だ。

 

 「あら、残念。中毒にさせて高得点取ろうとしたのにね」

 

 「腐ってやがる。

 

 料理はな、楽しく美味しく皆で食べる物だろうがぁぁ!!そんな、理由で貶すんじゃねぇぇよ!!」

 

 

 一夏の怒り。

 

 魂からの叫びに、他の料理人達は唖然として皿を落とす。騒ぎを聞いた黒い被り物を着た女性も来て

 

 「何を騒いでいる!!

 

 ほぅ、貴様は禁止薬物を使ったな。よって、失格とする!!」

 

  「チッ!?」

 

 禁止薬物を使った蘭花を捕まえようと試験官が囲む。

 

 「捕まる訳には行かないわね!!

 

 来なさい神龍」

 

 失格を言い渡すが、蘭花はISを展開して試験官達が吹き飛ぶ。

 

 それは、かつて中国の研究所から盗まれた甲龍の正式な後継機で四世代型の神龍だった。

 

 「亡国機業を復活させるまでは捕まる訳には行かないのよ!!」

 

 彼女が逃亡を図るが、一夏は完全にキレていた。

 

 「来い、白椿!!」

 

 一夏は白椿を展開して神龍を掴み、古城の外の荒野へと連れ出す。

 

 そして、千冬義姉さん以来使わなかった単一仕様『修羅の刹那』を使ったのだ。

  

 「亡国だと!!

 

 巫山戯るな!!

 

 また、不幸な人を作りたいのかよ!!

 

 単一仕様『修羅の刹那』を発動!!」

 

 「はっ、速過ぎてみっ、見えない!?」

 

 「うぉぉぉぉ!!

 

 単一仕様『零落白夜』発動!!」

 

 「キャァァァァ!?」

 

 刹那の最中のスピードに加速した白椿は神龍は斬り裂かれる。

 

 そして、空から落ちて来るのは斬り裂かれた腕や脚のパーツが雨の様に降り注いだのだった。

 

 彼女の神龍は大破して、解除された状態で落下するが、一夏によって抱えられて試験官によって呼ばれた警察に逮捕されたのだ。

 

 

 二次試験はケシを気付かずに食べた5人を入れた6人が不合格となり、一夏と香蓮を含めた4人が合格となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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