二次試験も終わり、3次試験の会場である北京の紫禁城へと向かいながら、あたしは車中で一夏を問い詰めた。
何故、ケシの実を知っているのかと。
答えは単純だった。
「鈴、忘れてないか?
ほら、俺達が現役時代の時はフリーランスだったから、行き先の国に訓練場所を借りる替わりに色んな任務をやらされただろ?」
「そう言えば、カナダのプロリーグの大会に呼ばれた時に訓練場を借りる代わりにやったわね…あたしが空港警備と案内で一夏は何故かは知らないけど、麻薬取締班の誰よりも鼻と舌が効くから空港の麻薬取締局に行かされていたわね…」
いくら、フリーランス(自由国籍)であっても国家代表の様な軍事的任務や空港警備など相互監視の観点からやらされる。
それが、亡国機業事件以後にIS委員会が定めた自由国籍の専用機持ちの規定だからだ。
「俺は麻薬取締りをやされた訳だ。で、ケシの実と大麻や拳銃の密輸が最も空港が多かったからな。匂いだけは嫌でも覚えてたんだよ」
「私は漢方薬の処方で、禁止薬物だから匂いの特徴で判っただけよ?」
と一夏が運転し高速をひたすら走るランクルの後部座席から香蓮の声がしていた。
「で、なんであんたが乗っているのよ!!」
「だって、北京に向かう足が無いもん。それに、一夏さんに聞いたらオッケーだって?」
そう、香蓮も一夏に断り後部座席にいつの間にか乗っていたのだ。
「一夏!!
あんたねぇ!!」
「別に大丈夫だろ?」
「んな訳あるか!!
あんたはそうやって、いつの間にか世界中を周っている時だって、散々国家代表とか候補生を手助けして恋する乙女化して墜ちているでしょうが!!
判りなさいよ、このフラグ一級建築士いや朴念神!!」
「ひっ、ひでぇ⁉」
「確かに、鈴の言う通りね♪」
「香蓮さんまで!?」
「「ねぇ♪」」
現役時代でもそうだったけど、いつの間にか香蓮の様に恋に墜ちている乙女が居るのだから油断出来ない。
流石に、アメリカの国家代表イーリス・コーリングが一夏に対して恋する乙女化した時は流石に焦った。あたしと一夏がアメリカで寝泊まりするホテルに酒瓶片手に学園の夏休みで帰省したナターシャと二人で『一夏、飲むぞ‼』と言いながら部屋に突入して、コニャックをロックで飲まされあたしと一夏は酔いつぶれた。そして、あたしは『にゃははは、暑いわね‼』と酔った勢いで服を全部を脱ぎ捨てて一夏に抱き付き、二人もチャンスと思い脱ぎ捨てて抱き付いて既成事実を作ろうとするが、あたしは『一夏とスルから邪魔よ!!』と叫び二人を蹴り飛ばして気絶させていた。それ以後、一夏から飲酒の禁止を言われたのが懐かしい。
まぁ、あたしも香蓮やイーリス達を強くは言えないが中学生時代に落された乙女ではあるが…
なったら、成ったであたしの第一夫人は揺るぎないが香蓮については不安しかないのは気のせいだと思いたい。
そして、3次試験は世界にネット中継されながら紫禁城での満漢全席を制限時間内に手早く作り上げる事。それは、どれだけ過酷なのかは想像出来ないだろ。
だから、あれだけはお店で提供するとあの値段になるのだが、お店のメニュー表にあるが注文自体は完全予約制である。
話は逸れたが、南陵から北京までは距離にして約1200㎞ある。高速鉄道なら数時間で北京なのだが、3次試験までは一週間ある為に車で移動中なのだ。
助手席に乗るあたしは南陵を出る時に水筒に淹れた、ブラックコーヒーを紙コップに入れて一夏に渡す。
「一夏、コーヒーよ」
「サンキュー、鈴」
「眠そうだったからね」
あたしはコテンと一夏の肩に頭を乗せて、二人(?)の時間を楽しむ。
「一夏、3次試験が受かれば特級厨師よ。頑張りなさいよね。あたしも、出来る事をサポートするから」
「なら、頑張らないとな」
「って、ナチュラルにいちゃつくな!!
独り身の私に対する嫌味か!!」
「「いちゃついて無いが(わよ)?」」
「何処がよ!!」
「「ん?」」
二人から漂う天然のピンク色空間に煽られ砂糖を吐き掛ける香蓮が叫ぶ。しかし、二人にしたら唯の夫婦の会話でありいちゃついていない。
某脳筋女王が自宅のリビングで新婚夫婦の様な甘ったるい空間に居る二人を観て名言を残している。
『娘の二人までもが砂糖を吐く空間』
と言いながらゲンナリしていたらしい。
同じく、某ポンコツ元貴族も空気に煽られてゲンナリしていたと言うまでもない。
そして、途中でホテルに泊まり2日後の午後に北京入りを果たしたのだった。
時を同じくして、織斑邸の地下アリーナでは…
プツン…
アーリィによって締め縄付き岩の下に封印された駄女神の二人に巻かれた締め縄が切れ掛かっていた事に誰も気付かないでいた。
「やっと、出られそうだな?」
「えぇ、お姉様」
「十夏と千秋には仕返しをしないとな?」
「お姉様、そんな事が在ろうかと時空神から面白い物を借りていましたわ」
「流石は、我が妹だ」
「「フフフフ…」」
こんな会話をしているとも知らない織斑姉妹は夏休みの宿題を済ませて、マドカと話していた。
「十夏、千秋は留守番だ。良いな?」
「えっ!?
マドカ伯母さんだけ、北京に行くのは狡い!!」
「鈴姉さんから呼ばれたのだ。仕方ないだろ!!」
そう、マドカも鈴に呼ばれて弾と一緒に北京に行く事になった。しかし、十夏も千秋もだが文化祭とキャノンボールファストに向けて、生徒会への大量の書類が自宅に届けられていて処理しなければならなかった。
「くっ、書類が来なければ!!」
「お姉ちゃん、その前にママに叱られるよ?」
「むっぐっ!?」
姉妹は親の言付けを守り、自宅の自分の部屋で書類整理をしたのだった。
北京の紫禁城。
中国が清の時代に建てられた、皇帝の居城であり現在は世界遺産に登録さている。しかし、特級厨師試験は伝統に乗っ取り現在でも最終試験である3次試験の会場とされていた。
「相変わらずにでかい城よね」
「だな」
織斑夫妻も紫禁城入りしており、残った受験者達が腕を振るうために集まっていた。
『これより、3次試験を始める!!』
試験官の掛け声により、料理人達が一斉に動き出す。
二人も決められた手順と打ち合わせ通りに動き、調理を開始する。
満漢全席は全部で108皿に上る料理。
仕込みに時間が掛かるものから、一夏は一斉に下処理を済ませて行く。
他の受験者達は最終試験だけに許可された人数以内なら大丈夫な為、応援に駆けつけた料理人達が手伝い料理を完成さて行く。
「流石にキツイわね…」
「流石にな…」
調理開始から30分で完成させた料理は約20皿。
しかし、他は応援もあり40皿近くを完成させている。
「諦めんじゃないわよ!!」
一人の料理人があたし達の所に来る。
真紅の髪をした歌舞伎役者の様な鋭い目付きをした女性。
「しっ、師匠!?」
そう、陽泉酒家の総料理長の周鈴だった。
そして、もう一人。
「あら、周も来たの?」
「劉、あんたもやるんでしょ?」
「「当然」」
マドカの師匠であり師匠とは従姉妹の四川飯店の総料理長の劉さんだった。
キィィィィィン
と空を切るような音に上を向けば、落ちて来るのは
「ギャァァァァァァ!?」
ズッドン
「「「「……」」」」
着地に失敗した弾と、もう一人。
「おぉぉぉにぃぃぃちゃぁぁぁぁん!!」
黒騎士を解除して一夏に目掛けて落下して抱き付くのはマドカだった。
最後は
「私、試験を辞めるわ」
「「「「何だと!?」」」」
「新しいオーナーに行くわ。あんた達にイジメられながら働くより、鈴が居る店が楽しいもん」
3次試験を放棄し、俺達に加わるのは香蓮だった。
「織斑オーナー、改めて宜しくね♪」
虐められてきた大連飯店の料理人達を無視して、自身が持つ中華包丁を片手に俺達の料理の下処理を素早くこなしていく。
そして、蘇るかのように凄まじいスピードで仕上がる料理達。
周師匠が鱶鰭の姿煮を中華鍋を振るいひっくり返し、劉さんは片手に家鴨を持ちながらお玉で煮えたぎる油を掛けながら北京ダッグをつくる。
気絶から復帰した弾は片っ端から野菜関連の炒め物を作り、マドカは自分が得意とする麺料理を作り、鈴は点心を作り上げたのだ。
まるで、ドリームチームの様に息が合い満漢全席があっという間に出来上がる。
そして、試験結果は
『陽泉酒家の臨時調理人の織斑一夏、並びに特別枠として大連飯店の調理人の楊香蓮の二名を合格とする!!』
俺は特級厨師として合格したのだった。
そして、俺と香蓮は龍が画かれた特級厨師の紋章入りの調理服と中国政府からは証明書を貰ったのだ。
しかし、試験後に香蓮が辞めた事に納得しない人物達が居た。
香蓮が大連で勤めていた大連飯店の連中だった。
「テメェ!!
辞められると…」
「あたしのダチを虐めんな!!」
キレた鈴とにっこり笑顔の周師匠と同じくにっこり笑顔の劉師匠の同い年三人組により蹂躙される様に全員ぶっ飛ばされ、紫禁城の外壁にロープで縛られて逆さ吊りにされたのは言うまでもない。