日本の飛行場の到着ロビーでは人々が騒いでいる。その騒ぎの原因たる人物は実に八年ぶりに日本にやって来た。
その女性は学生時代から比べかなり成長したが軍服姿だけは変わらない。だが、それが霞むほどに美しい女性になっており、北欧神話の戦乙女を彷彿させるような銀髪で腰まで長いロングヘアに長身の女性はウキウキ顔の少女様に騒いでいる。
それが、とても美しい女性なのだから男性を振り向かせるのは世の常だから仕方ないだろう。
しかし、男性達は彼女の軍服姿と階級章に気付くなり視線を逸した。
まるで、畏怖の象徴の様に……
今では、世界最強を誇るドイツ空軍特殊部隊の黒兎隊総司令官で階級は中将であり、元ドイツ国家代表選手のラウラ・ボーディヴィッヒだからだろう。
もう一人、母親を幼くした感じの少女は母親の手を繋ぎながら周囲に無邪気な笑顔を振りまき西洋人形の様に可愛い6歳位の少女はラウラの愛娘であるレナス・ボーディヴィッヒだった。
世界の人々はそんな笑顔の少女を見たら、こう思うだろうか?
『レナスちゃん、マジ天使』
と思うだろう。
ラウラがウキウキ顔なのは自称嫁(一夏)の居場所を突き止めたに他ならない。
まさか、部下で側近のクラリッサ大佐の娘がたまたま学園の友達とお昼ご飯に誘われて向った先がIS学園の側にある中華料理店だった。まさかの店主がターゲットだったので、それが嬉しく幸運だったのだろう。
「待って居るのだな一夏!」
と呟き、一夏がいる街へ向かうモノレールへと娘と一緒に乗り込んだのだった。
モノレールに揺られる事、約30分程で目的地の駅に到着した。まずは、お土産と思いレゾナンスへ向かう。
「全く、変わってないな」
学生時代と全く変わっていない総合商業施設のレゾナンス。
だが、テナントの入れ替わりはあるだろうが学生時代に元フランス国家代表のシャルロットと通っただけに懐かしく思う。
クラリッサ大佐から間違った日本文化の認識でお土産におでん缶が最良だと言われそれを購入。娘にアイスクリームを購入しようと振り向くと学生時代の親友に似た少女がアイスクリームを買い食いして居たのだった。
その少女を鈴と勘違いしていた。
「まさか、鈴ではあるまいな?年の割にIS学園の制服でコスプレとは…」
確かに、茶髪でツインテールにあの背格好なら鈴音で間違いないだろうとラウラは結論付けた。
それは鈴音の学生時代までの髪型あり背格好だった。
しかし、当の本人であるラウラは卒業以降の髪型を知らない。
それに、鈴音の今の髪型は食品衛生上の為に髪を切りショートヘアに替えて頭に三角巾を巻いている。それに、身長はセシリア並に成長したのだから…
ラウラが間違えたのは鈴音の愛娘の織斑姉妹の妹の千秋なのだ。
若い頃の鈴音に似ているのは親子だからに過ぎない。
だが、ラウラは自分の娘の前で過ちを犯す事になる。
「お互い、歳なんだからコスプレを…」
千秋は自分の制服が母親がかつて着ていた制服なのを知っていた。元は母親のだが動き易さを重視した制服には愛着もある。だが、自分はまだ6歳なのに母親と同い年(オバサン扱い)の扱いにされた事に流石にキレた。
食べかけのアイスクリームを上空に投げ、地面を蹴りラウラに向けて一気に加速しながら姿を消す。
「誰がオバサンよ!!私はまだ6歳よ‼」
「グッハァ!?」
消えたかと思うと母親譲りの回し蹴りをラウラに決め、上空に投げたアイスクリームを再びキャッチしていた。
誰もが観たら、アクションスター顔負けのアクションだっただろう。
蹴られたラウラ自身は吹っ飛んだが、娘のレナスは咄嗟に手を離してバックステップで避けていたから無事だが、母親はアイスクリーム屋のゴミ箱へと突っ込んだのだった。
千秋はアルバムの写真を両親には秘密にして見てたからラウラの事は知っていた。
その、ラウラ本人から母親と勘違いされた挙げ句、オバサン扱いされたのだからキレて当然だろう。
まだ、麗しき6歳なのだから…
一応、千秋はIS学園の生徒会副会長(生徒会長は姉の十夏)なのだから…
伸びている母親(ラウラ)をオバサン扱いされた事に軽蔑な目で見つめる少女にレナスは何故か(母親に間違った文化を教えて行くクラリッサとそれを信じてしまう母親の粛清)親近感を感じ得ずには居られなかった。
レナスの一目惚れだったが感情は出せなかった。
「ねぇ、貴方がサリナ先輩が言ってたレナスちゃん?」
「そうだが?」
だが、レナスは母親が一撃で屠られた事に驚愕しながらも千秋に惚れつつも警戒していた。レナスは知らないだろうが、織斑姉妹は母親に中国拳法を習い、更にISの操縦技術は初代ブリュンヒルデの愛弟子でもあるのだ。近接格闘なら生徒では学園最強なのは当然だが姉には勝てない。姉の専用機であるアテナの単一仕様『イージスの盾』の拘束攻撃の前では赤子も同然なのだから……
「可愛い!?」
「ふっえっ!?」
千秋が可愛いと叫ぶと一瞬で消えレナスは抱き付かれている事に気付く。レナスは同い年のはずの千秋に成すがままに愛でられ、嬉しさ半分恥ずかしさ半分で涙目だった。
レナスを愛でること、暫くして千秋は二人を自宅に案内する事になった。ラウラさんの目的には反対だが、パパとママのお客さんである事は変わらない。
途中、自宅付近の裏路地から自分の担任の悲鳴が聞こえたが聞かなかった事にした。どうせ、雨宮先生(スコール)が礼子先生(オータム)に折檻中だと思うし礼子先生の自業自得だと思ったからだ。
ラウラ親子を連れ、自宅に到着。
「ただいまぁ!!」
と勢い良く入る。
パパとママは予約の宴会の準備中だった。
お姉ちゃんは食器洗いをしたりして手伝っていた。
ラウラさんはパパを見付けて叫ぶ。
「一夏!!」
「ラウラか!?久しぶりだな!!」
「ラウラ、久しぶりね‼」
「息災だったか、鈴」
だが、パパとママはラウラさんの愛娘を見ると様子がおかしかった。
「なぁ、ラウラ?」
雰囲気が変わるパパ。
何時もより、怖い……
ラウラさんも雰囲気を感じたのか咄嗟に構える。
「レナスちゃんに何食わせてやがる?明らかに痩せ過ぎで肌の色も悪い。
鈴も見てみろ。
歳相応なら納得できるが…」
ママもレナスちゃんの肌を観察したり頭皮の毛並を見て状態を理解して顔を顰める。
ラウラさんはレナスちゃんの事情を知っているのか跋が悪いような表情をしている。
「答えねぇか!!馬鹿野郎!!」
パパの行き成りの雷。
ビクッんとラウラさんが背を飛ばし、レナスちゃんは何故、母親が怒られているのかが判らず涙目で泣きそうな表情だった。
ラウラさんはパパ達と久しぶりの再会だったが、行き成り娘の事に叱られた事に理解して慌てて鞄から大量のサプリメントを取り出した。レナスちゃんは「あっ、隠された奴!!」と叫ぶが、更にパパとママの怒りと言う名の火に油を注ぐ事になった事に気付かなかった。
青筋を完全に浮かべたパパとママ。
濃密な殺気。
これは一番ヤバイ奴だ……
私は、姉の十夏お姉ちゃんの所にレナスちゃんの手を引っ張って走り厨房にいるお姉ちゃんへ緊急避難。お姉ちゃんもパパとママの状態を素早く理解したのかイージスの盾を部分展開していた。盾の内側に入り三人共身を屈めた瞬間。
パパとママの特大のカミナリが落ちたのだ。
「卒業する時にシャルや俺達が食事だけは気を付けろよなって言ったよな?なぁ、何で娘さんがあぁ何だ?」
「それは…」
「「テメーはレナスの母親だろがぁ!!この、大馬鹿野郎がぁぁぁぁぁぁ!!」」
ガッシャァァァァァン
私が見た光景
パパとママからのダブルパンチを貰い、店の扉を粉々に粉砕しながら吹き飛んで行き、店の反対側のブロック塀に叩き付けられたラウラさんはブロック塀にメリ込み気絶。
ドッサァと路面に崩れる様に倒れ、ブロック塀もボロボロに崩れたのだった。
路上に居た人達はラウラさんの惨状を見ながら普段とは違う店主と奥さんの荒れように驚き、パパは私達の所に歩いて来るとレナスちゃんに「食事療法するから暫く家で暮らせ」と言い、レナスちゃんは母親のラウラさんが一撃粉砕されたショックと恐怖で首を縦に振るしか無かった。