中華料理店織斑   作:ロドニー

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時空旅行 銀の福音事件 後編

 

 

 旅館に戻ると入口で仁王立ちする女性は千冬姉だった。しかし、俺達四人を観るなり警戒していた。

 

 当然だと言えば当然である。

 

 俺の実力は第四大会の時点では千冬姉を超えており、鈴も状況によっては千冬姉に勝つ場合があるのだ。

 

 そして、十夏と千秋にも言えるが、現代の国家代表すら勝てる実力は千冬姉の4歳から始めたスパルタ教育で既に在るのだ。事実、元中国の国家代表の楊香蓮にはSEを六割残した状態で十夏は勝っているし、元生徒会長で元日本代表(現ロシア国家代表)の更識白百合にも勝利して生徒会長の座を奪っている。

 

 それを見抜き、警戒は当然なのだ。

 

 「旅館から抜け出した馬鹿共は後で説教だが、生徒達を護って頂きありがとう。しかし、一夏や鈴音にも見えるが、誰だ?」

 

 「そうだな。

 

 俺は織斑一夏だな」

 

 「で、あたしが一夏の妻の織斑鈴音よ」

 

 「やはり、大人の一夏と鈴だったか。では、他の二人は娘か?」

 

 「あぁ、俺と鈴の娘だ。二人とも、自己紹介だ」

 

 「娘の織斑十夏ね。IS学園の1年生だけど、生徒会長をしてる」

 

 「同じく、織斑千秋。生徒会副会長をしてるよ」

 

 

 ((((((えっ!?1年生で生徒会長!?つまり、学園の生徒で最強!?)))))

 

 「ほう、詳しくは旅館の中で事情聴取だな」

 

 「千冬姉、じゃあ二人は…いだぁ!?」

 

 「エッへへへ…あたしが一夏と…」

 

 「「「「………」」」」

 

 やはり、ここでもお約束をする一夏。鈴を除くラヴァーズにはジト目で睨まれるが、何故、俺が皆から理不尽を受けなければイケないと思っていた。

 

 そして逆に鈴音は、両頬に手を当てながらイヤンイヤンして完全に恋する乙女化して一夏と結婚式を上げる妄想に浸っており、頭の中がお花畑化しているのは言うまでもない。

 

 「馬鹿者、織斑先生だ。

 

 お前達も作戦室来い。

 

 それと、鳳はいい加減に現実に戻れ!!」

 

 「あっだぁ!?

 

 あれ?

 

 結婚式は?」

 

 「「「「……」」」」

 

 鈴音の駄々漏れの妄想に呆れて物が言えないラヴァーズを余所に、旅館の地下にある作戦室に案内されて専用機持ちが一同に介する。ナターシャの身体には大したダメージは無いが医務室にて検査を受けて寝かされている。

 

 「おい、鈴⁉

 

 胸が当たってる!?」

 

 「当ててんのよ。

 

 悪い?」

 

 「いや…///」

 

「鈴さん、一夏さんから離れてくださいまし!!」

 

 「そうだ、一夏から離れろ!!」

 

 「フフフフ…後で一夏を監禁しないとかな?」

 

 「鈴、嫁は私のだ!!

 

 離れろ!!」

 

 「エッへへへ…いちか♡」

 

 「鈴♡」

 

 「「「何とかしないと…」」」

 

 十夏は見ていたが、更に積極的になった若き日のあたしはラヴァーズから抜け駆けして一夏の腕に組み一緒に来たのをジト目で見ていたらしく、後ろと前ではピンク色空間を作るダブル一夏とあたしにゲンナリしていた。

 

 「お姉ちゃん…」

 

 「千秋、言わないでよ…

 

 私でも、この空間から逃げたい…」

 

 無論、ラヴァーズも抜け駆けした鈴音を引き離そうとするが、あたし達の介入で両想いになってしまった二人をどうにも出来ない事を頭では理解しようとしても心までは無理の様だった。

 

 「さて、事情聴取をしたいが、いい加減離れろ!!」

 

 「「はい!?」」

 

 「よし、そちらも済まないが?」

 

 「織斑先生、バカ夫婦に言っても無駄なので」

 

 「そうなのか?」

 

 「万年おしどり夫婦だから無理です」

 

 と娘二人からディスられる始末のあたしと一夏。特に十夏は会長モード全開で報告を淡々と済ませる。

 

 そんな時に束さんがやって来る。

 

 「ちーちゃん!!

 

 フッゴッ!?」

 

 「行き成り現れるな!!」

 

 今では余り見なくなった、千冬義姉さんが束さんにアイアンクローをする光景。

 

 「それよりも、なんで同じコアが有るのか気になって見に来たのだ。

 

  何故かな?

 

 いっくんの白式のコアナンバーの001。

 

 束さんが厳重に保管してあるコアナンバー004に、研究中で製造段階のコアナンバー686とコアナンバー687があるのかが不思議なのだ。

 

 う〜ん…

 

 そこにいる四人かな?」

 

 「束、あの四人は未来から来た一夏と鈴音だ。残りの二人は娘だ」

 

 「なんと!?

 

 箒ちゃん、残念だったね」

 

 ガッキン

 

 「姉さん殴りますよ?」

 

 「殴ってから言ったぁ!?」

 

 いつの間にか出した木刀で束さんを殴る箒。

 

 「なぁ、鈴?」

 

 「何よ?」

 

 「もの凄い、デジャヴを感じるのだが気のせいか?」

 

 「大丈夫よ。

 

 あたしも同じ事を感じていたから」

 

 「それよりもさ、観いていたけど君たちのISは束さんが構想中の六世代型と七世代型だよね?

 

 ううん、4機共七世代型かな」

 

 「「「「「「六世代と七世代!?」」」」」

 

 束さんが落とした爆弾により騒然となる作戦室。

 

 「えぇ、白椿と黒椿は確かにフォースシフトして七世代型ですよ」

 

 「「「「「フォースシフト!?」」」」」

 

 「そりゃそうよ。一夏は二代目ブリュンヒルデだし、あたしと一夏はタッグトーナメントでは四連覇したからね。それに、世界中の大会を引退するまで出まくって、優勝して賞金を稼いだわね。一応、あたしは一夏に次いで強いわよ?」

 

 「なるほど、経験値が貯まりに溜まってフォースシフトか…」

 

 ラヴァーズはいちゃつく二人を見ながら思う。

 

 そこまで強くなるのかと。

 

 だが、忘れてはいけない。

 

 おしどり夫婦の強さは血の滲む努力の結果だと。

 

 

 

 作戦室での事情聴取は終わり、一先ず俺達は宛行われた部屋に泊まる事になった。

 

 夕飯前、千冬姉が部屋に来る。

 

 「寛いでいる所で済まないな」

 

 「千冬姉、大丈夫だ。

 

 で、俺達に何か用か?」

 

 「あぁ、悪いが一夏達と模擬戦をしてくれないか?

 

 それと、一夏は私より年上だから千冬さんで呼んでくれ」

 

 「それは構わない。

 

 だが、やるのは十夏と千秋だけだ。

 

 俺と鈴は引退しているし、白椿と黒椿は今回を除いて娘を護る時にしか使わないと決めているんだ」

 

 「判った。

 

 その様に手配する。

 

 それとは別件だが、一夏と鈴音が料理人だと聞いてな、夕飯を頼めないか?

 

 旅館の料理人が怪我をしたらしくて夕飯が出せないらしい」

 

 「良いわよ。

 

 向こうだと、自宅兼お店が壊されて学園で食堂をやりながら一時住んでいたから」

 

 「そうだな。

 

 やるか鈴?」

 

 「当然」

 

 千冬さんに厨房へ案内され、材料を確認しながらメニューを決めていく。

  

 「一夏、メニューはコレでどうかな?」

 

 「そうだな。

 

 夏だし、海鮮をテーマにするか?」

 

 「そうね。

 

 テーマが海鮮なら新鮮な真鯛があるわね」

 

 「じゃあ、タレは胡麻のピリ辛ダレにして、真鯛の氷山盛りは確定だな。あとは、揚げ物には師匠から教わった真鯛の春巻きに、人数分ある伊勢海老は昇竜餃子、お吸い物は真鯛のアラで出汁を取って、エビのすり身団子と三つ葉だな。後は白米か?」

 

 「膳ならそんなもんね」

 

 「始めるか?」

 

 「点心はあたしがやるわ」

 

 「了解」

 

 メニューも決まり取り掛かる。

 

 まずは、春巻きとお吸い物の準備だ。

 

 真鯛を刺し身用と加熱用に素早く切り分けて三枚降ろしにして大量の身のついた背骨は寸胴へ投入して行く。

 

 寸胴に投入した真鯛の身付きの背骨は酒と塩のみで味付けして、エビ団子のエビの香りを際出せるために乾燥椎茸の戻し汁と合わせながら調整する。

 

 戻した椎茸はスライスして春巻きの具材へ。

 

 真鯛の春巻きと昇竜餃子は鈴が作る。

 

 次は真鯛の氷山盛りだ。

 

 生徒と教員併せて約250名。

 

 先に胡麻ダレを作り、刺し身を切り分けてから冷凍庫から氷の塊を大量に出して、拡張領域から氷の彫刻用の道具を一式出して真鯛の刺し身盛る為の氷山を掘る。

 

 「これが、手間が掛かるよな…」

 

 鈴も真鯛の春巻きの下処理しながら昇竜餃子の皮を作り、大量の蒸籠を準備する。そして、駅弁ではお馴染みの紐を引くと弁当が熱く温まり大量の水蒸気がでる箱を下に敷き準備する。

 

 「全くね」

 

 愚痴りながらも全ての料理が完成し仲居達が大広間へと運ぶ。

 

 

 

 

 

 

 大広間では若き日の俺達が集まる。

 

 「ねぇねえ、聞いた。

 

 今日の夕飯は臨時の料理人が作ったらしいよ」

 

 「えっ?」

 

 「それって、大丈夫なの?」

 

 騒ぎ出す生徒はどうせ臨時料理人だから大した事は無いだろうと騒ぐ。

 

 大広間の片隅で座る織斑姉妹はその話しを聞いて不機嫌になるが、料理自体は楽しみで仕方がない。

 

 何故なら、父親であり日本人初の特級厨師が作る料理だから。

 

 仲居達が大広間に膳を運び込む。

 

 料理を見た生徒は騒ぎ出す。

 

 「旅館なのに中華!?」

 

 「有り得ない!!」

 

 若き日の鈴は思う。

 

 「えっ…こんな料理、特級以上の料理人じゃないと作れない料理ばかり…」

 

 だが、中居が料理を説明しながら、紐が引かれ料理を蒸していく。そして、食べ始めた生徒は驚くばかりだった。

 

 「凄い!?

 

 餃子が背って行く!?」

 

 「美味すぎるんだけど!?」

 

 そんな中でも、教員達は絶賛の嵐だと言えた。

 

 「真鯛の春巻き、まるで生きているようだ!?」

 

 「真鯛の刺し身にこの胡麻ダレ。

 

 酒が有ったら進むぞ!?」

 

 十夏と千秋も絶賛しながら料理を楽しんだのだ。

 

 

 

 食べ終えた若き日の鈴は一人厨房へ向かっていた。

 

 「何で、特級クラスの料理が…」

 

 厨房には二人の夫婦が片付けをしていた。

 

 そして、一夏と名乗った人物の調理服を観て納得出来たのだ。

 

 何故なら

 

 「えっ、特級厨師!?」

 

 そう、一夏の着る調理服にある独特の龍の紋章は特級厨師しか着れない服なのだから。そして、調理服の上着を脱ぎタンクトップ姿の大人の鈴に見つかり声を掛けられたのだ。

 

 「あら、あんた来たのね?」

 

 「いえ…」

 

 タンクトップから判る、大人の鈴音の大きな胸の膨らみを直視してしまい、あたしは逃げる様に走り出したのだ。

 

 「なんで、大人のあたしはあんなにデカイのよ!!」

 

 虚しく、光る星は応えてくれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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