翌日、織斑先生から頼まれたのはまたもや朝食だった。どうやら、調理人の怪我が酷いらしくて出来ないらしい。
パパもママも朝早くから朝食の仕込みに厨房入りしていて、朝から中華だけで無く生徒からの意見を取り入れて和洋中のバイキング形式で作るらしい。
無論、料理の味はパパとママの二人なら問題ない。
だけど、今日の生徒達の訓練では私と千秋対パパ達の若い頃の人達と模擬戦をすることが決まっていた。
「お姉ちゃんなら誰を真っ先やる?」
「零落白夜がある厄介なパパ(若)とAICがあるラウラさんかな?」
「じゃあ、箒先生の紅椿は?」
「技術も甘いし、はっきり言って雑魚以下ね」
「本人には絶対言わない方が良いかもよ?
絶対に泣くから…」
「大丈夫」
「?」
「私が泣く前に蹂躙するだけだからね♪」
「やっぱり、お姉ちゃんは前衛馬鹿だった…」
「何だとぉ!!」
頭を抱える千秋。
仕方ない。
お姉ちゃんの前衛馬鹿は父親と母親譲りなのだから、文句の言い様がない。千秋の弓矢の師匠は意外にも束さんやセシリアだったりする。
さて、話を置いとくが学生時代の一夏達はあの双子姉妹との模擬戦と織斑先生から聴き、葬儀の様に暗くなっていた。
事前情報で双子姉妹は国家代表クラスの実力者だと織斑先生が映像から分析して、一夏(若)達に教えていた。
特にラウラはAIC技術のあるシュバルツア・レーゲンでも織斑姉のアテナの単一仕様『イージスの盾』を諸に警戒していた。
「アレは、絶対に広範囲拘束だ…」
銀の福音戦で見せた単一仕様を自分なりに解析しても教官からの情報にしても、ギリシャ神話にあっさり辿りついた結論だと言えた。
「負けたら…十夏と千秋に愛でられる…絶対にな…」
そして、もう一人はセシリアだった。
「何ですの…千秋様の正確無慈悲な弓の腕前は…」
同じく、銀の福音戦で見た弓矢の雨は無慈悲にも全て銀の福音に突き刺さり刺さっている。
まるで、針鼠の様に…
ライフルのスナイプ技術なら負けないと思っていたが、対峙したら銃口に矢が刺さるのではと思ってしまう。
旅館の部屋では、厨房から大人の鈴の胸を観て逃げる瞬間、鈴(大)に瞬時加速の様な抜き足で廊下で捕まり耳に囁かれた鈴音(若)は部屋で八つ当たりしていた。
「確かに嬉しいけど、大人になってから貧乳は改善されるけど…
卒業して妊娠するまではずっと貧乳で、妊娠して出産してから大きくなるは酷いじゃない!!
うっがァァァァ!!」
「鈴ちゃん!?」
しかし、驚き鈴の八つ当たりを止めに入るティナを尻目に鈴音は考えた。
悪魔(大人鈴)から一つだけ解決するわよと囁かれた最悪な方法。だが、やったらやったで恥ずかしさから死ねる自信はある。
しかし、成功すればライバルから出し抜けるだろう。
まさか、裸エプロン(下着無し)で誘惑して、流されたらぶん殴り一夏を性的な意味で食べる。
確かに、朴念神には一番だろう。
それに…
「一夏(若)は既にあたしの恋人なんだから、食べても良いんじゃないの?」
「いや、年齢的に駄目だからね!?」
一夏と両想いになり、大人の鈴からの悪魔の囁きにより肉食系女子になった鈴音だけに、同室のティナは二人を祝福しながらも内容を瞬時に理解して顔を真っ赤にして鈴音に突っ込む。
即ち、七年も早まる『夜の大魔神降臨事件』を構想していたのだった。
そんな三人をさて置き、厨房では織斑夫妻が和洋中の様々な料理を仕上げて行き、出来た料理から仲居が運んでバイキングを準備して行く。
「大部出来たな…」
「やっぱり、慣れね」
学園と試験での経験が物を言うのを実感出来る。
だが、鈴が鈴音(若)に肩入れ過ぎているのは見逃せない。
「なぁ、鈴?」
「どうしたのよ、一夏?」
「なんか、鈴音に肩入れ過ぎてないか?」
「まぁね。ある事に気付いたからよ」
「何だ?」
「気付いたってよりも、あたしの師匠の東方不敗が居ない世界なのよ。この世界は…」
たしか、台湾で師匠として従事したという武術の達人にして世界最強と言われる東方不敗は生身でISを軽々と倒せるらしい。
「まさか、鈴?」
「当たり前じゃない。
まだ、現役時代の師匠と殴り合いたいじゃない?
だから、秘匿回線で師匠に連絡したら全く通じないし、夜中に抜け出して見に行ったら台湾の師匠の自宅は全く無かったし、人物自体が存在して無かったのよ」
「じゃあ、まさか?」
「全く違う、平行世界ね。
だから、若き日のあたしと一夏を両想いにしたのよ。まぁ、中華の師匠は居たからね」
俺は鈴の昔から高い行動力には呆れていたが、まさかの行動力に脱帽するしか無かった。
朝食を済ませ、砂浜には私と千秋に哀愁漂う7人の専用機持ちと七人に呆れる織斑先生と山田先生がいた。
「では、2対7での模擬戦を始める!!」
「織斑先生、少しよろしくて?」
「どうした、セシリア」
「私達が二人に対して過剰戦力では無いでしょうか?」
「大丈夫だ。貴様等の腕では、この姉妹にすぐ負ける」
「「「「「「やっぱり!?」」」」」」
「正直言えば、山田先生も加えたいくらいだ」
(((((セシリア、頼むから山田先生を!!)))))
「織斑先生、そんなにですか?」
山田先生が織斑先生に質問する。
「当然だろうな。世代間による専用機の力の差もだが、技量だけなら国家代表の上位ランカーに近いだろうな」
「えっ!?
そこまでですか!?」
「だから、胸を借りるつもりで挑め!!」
(((((やっぱり、挑むのね!?)))))
始まった模擬戦。
「千秋、作戦通りに行くよ!!」
「うん、お姉ちゃん!!
その前に、セシリアさんを…」
十夏は展開装甲と光の翼を展開して、二重加速で白式を捉える。
「何で、俺が最初に!?」
「白式が厄介だから!!」
「はっ、早過ぎる!?」
一夏(若)は三叉槍のネプチューヌを構えた十夏に真っ先に狙われた。砂浜で見せた紅椿の瞬時加速の比ではない加速力はハイパーセンサーですら捉えきれない。
そして、千秋はアルテミスをヘカーテモードに切り替え、景色と同化しながら姿を消しラウラのシュバルツア・レーゲンを斬り伏せる為にデスサイスを得物に近付く。
だが、ヘカーテに切り替わる瞬間を狙い、セシリアのブルーティアーズのスターライトで狙撃しようとするが
ドッガン
「きゃあ!?」
スターライトのレザーを撃った瞬間に暴発し、砲身が爆発して使えなくなったのだ。
そう、開始と同じくして千秋がセシリアのスターライトの銃口に矢を放ち、セシリア本人は銃口に矢が刺さった事に気付かずに射撃をしたので暴発したのだ。
「ラウラちゃん、貰ったよ!!」
「なっ、いつの間に!?」
「模擬戦が終わったら、着せ替え人形よ!!」
ラウラのシュバルツア・レーゲンの真後ろに現れたヘカーテに驚愕している間に斬り伏せられ海に落下。
「着せ替え人形だけは、やだァァァァァ!?」
バッパン
ラウラは千秋に着せ替え人形となる事が決まった瞬間だった。
千秋はヘカーテから再び、アルテミスへモード変換して簪が纏う打鉄弐式とシャルロットが纏うラファール・リヴァイブカスタムを狙うべく、展開装甲と光の翼を展開して加速したのだ。
「何処だ!?」
「遅いよ!!
シールドクラッシュ‼」
「グッェ!?」
「バイバイ、パパ♪」
「ゲッホ…ゲッ!?
グッァァァ!?」
同じくして、白式も十夏のアテナのシールドの尖端で首元をシールドクラッシュされ、怯んだスキにネプチューヌに連続突きを食らって海に落下したのだ。
「貴様!!
一夏を!!」
「あたしの一夏に何すんのよ!!」
「うっげぇ、そこまでママと同じ!?」
瞬間加速で突っ込んで来るのは、一夏を落とされてキレたママ(若)の甲龍と箒先生(若)の紅椿だった。
ネプチューヌを直ぐに量子変換して、自宅でインストールしてあった巨大な戦槌をラビットスイッチで変える。
「厄介な順から落としただけだよ?」
「可愛く言うなァァァ!!」
首を傾げながら可愛く言ってママを煽る。更にキレて衝撃砲を放とうとするが、射線上には紅椿が居て撃てない。
「箒、邪魔よ!!」
「何だと!?」
「十夏をぶん殴るから邪魔って、言っているのよ!!」
「それには同感だが、邪魔はないだろう!!」
仲間割れをし始めた二人を無視して、紅椿に瞬間加速で瞬時に紅椿の真裏に近づき、戦槌を振りかぶり紅椿が甲龍に当たる様に振り抜いた。
「仲間割れする、暇は無いよ!!」
「グッァァァァ!?
なっ、後ろから卑怯な!!」
「ちょっと、箒⁉
あたしまで巻き込むなぁぁぁ!!」
「早く離れろ!!」
「うっがァァァ!!
あんたが離れなさいよ!!」
見事にママの甲龍を巻き込み落下するが、光の翼を全開に加速して、ラビットスイッチで戦槌から巨大で両刃のダブルトマホークに変える。
「仲間割れはどれ程愚かか身を持って感じなさい!!」
「「ギャァァァ!?」」
そのまま、言い合いながら絡み合う二人を追い抜くと二人纏めてダブルトマホークを振り抜き、シールドエネルギーを奪い去ったのだ。
ラビットスイッチしながら遊ぶ十夏を尻目に、千秋はシャルロットのラファール・リヴァイブカスタムと簪の打鉄弐式とやり合っていたが、既に二人は矢を大量に射られて針鼠状態だった。
「うっげげ…あの姉妹、強過ぎでしょ…」
「マルチロックのミサイルでも、捉えきれないなんて…」
「じゃあ、止め行くよぅ!!」
「あっ、終わった…」
「お姉ちゃんより強い!?」
弓を量子変換して仕舞い、腰にある剣を抜き三重瞬時加速ですれ違いざまに打鉄弐式とラファール・リヴァイブカスタムのスラスターユニットだけを斬り裂く。
二人は叫びながら海に落下。
「「なんか、理不尽〜!!」」
「お姉ちゃん!!」
「イェェイ!!」
七人の専用機持ちは海に落下して、ハイタッチをする私達姉妹を悔しそうに見るのだった。
圧倒的な強さとしか言い様がない状況を作戦室から見ていたが、血が騒ぐのはいつ以来だろうか。
「織斑先生…」
「ここまではとはな…」
父親の一夏からは、娘二人は国家代表の上位ランカークラスだと聞いていたが実際に観て納得が行く。山田先生は馬鹿共を回収に作戦室から出て行き、入れ替わる様に一夏がやって来たのだ。
「どうだ、うちの馬鹿娘達は?」
「一夏か…あの歳であそこまでとは驚きだ」
「だろうな。だが、単一仕様は使わない様にキツく言ってある。それでも、使わせたのは基本的な技術と応用だけだな」
「ほう、単一仕様は無しか…アッハハハハ!!
それを聞いた連中は落ち込むだろうな」
流石に単一仕様無しは可哀相だが仕方ない。
「それに、使わせても構わなったが馬鹿姉妹の単一仕様は自然その物を替えてしまうからな。十夏ならフィールドを火の海に変え、千秋は密林に替える。だから、禁止を言い渡しんだ」
「なるほどな。更識姉の水と同じか?」
「いや、全く次元が違い過ぎるよ。確かに、ナノマシンの応用だがな」
「そうか…見る事が出来なくて残念だな。だが、あのモニターに映るバカップルはどうにか出来ないか?」
モニターに映るのは抱き合い、お互いの無事を確認しあう一夏と鈴音の二人のバカップルと各々の得物を出して引き離そうとするラヴァーズ。
これを観ながら、俺は平常運転だと納得する。
「無理だな。それよりも、可愛い姪が早く見られるかもな?」
「なっ、いぃぃちぃぃかぁぁぁ!!」
残姉化した千冬姉を無視して、昼ご飯の準備に厨房へと戻ったのだ。