ママを殴り飛ばしたあの人は無言のまま厨房の奥にある部屋へと籠もってしまった。
だだ、言えるのは持って行った食材が大量の内蔵ばかりだった事は言える。
でも、大好きなママにした事だけは許せず、千秋ちゃんのママをママの仇として睨むしか無かった。
だって、私にはママを助けられる様に早く大きくなってママの様に強く成りたかったから…
私がそう決意したのはパパが戦死した時だった。
パパはママが現役選手時代にママを唯一、ドイツ国内で撃墜判定を取ったドイツ空軍所属EUアフリカ方面航空隊のエースパイロットだった。そんなパパはママを模擬戦で撃墜した際にママのハートまで一緒に撃墜して選手を引退して黒兎隊に戻る際に結婚を申し込んだ。
そして、パパはママとの賭けに勝って二人は結ばれた。
ママが准将になった時に私を出産際に北欧神話の戦乙女の姉妹の名前であるレナスと名付けてくれた。
そんな私もパパとママに挟まれて幸せ一杯だった。
そんな幸せは長くは無かった。
私が3歳になり二人はファントムタスクの残党狩りで空軍とママの特殊部隊合同作戦だったが、パパの専用戦闘機のユーロファイターMk−Ⅶが激しい空戦末撃墜され戦死した。
パパの呆気ない最後だった。
落とされたパパは敵ISのライフルからのレーザーでコクピットを貫かれて即死だった。
パパは一瞬で蒸発してしまったから遺体すらない。
その日からママはママで大泣きしながらやけ酒や残党軍に阻まれ支援に来なかった陸軍所属のIS乗り相手に喧嘩などして荒れに荒れた。
私はクロエ叔母さんに預けられていたから葬儀までパパが亡くなったのは知らなかった。
私も葬儀で初めて知り、帰って来ないパパに泣き狂った。
だけど、ママは強かった。
二度と悲しい想いをしたく無かったから、お酒も喧嘩も辞めて中将まで上り詰めて、今は軍政改革を行っている。
だから、私もママやパパの様に強く在りたかったから泣くのを辞めた。
作り笑顔だけど、今は振り撒こう。
五歳の時に5世代型ISの新型機のヴァルキリーシリーズの適正があるとの事でママの猛反対を押し切りトライアルに参加した。私を含めた八人がトライアルに参加したが新型機を手足の様に扱えたのは最年少の私だけだった。
ヴァルキリーは手足の様に扱えるだけでは駄目だった。
装備された片手直剣である魔剣グラムを振るうためには強い筋力がいる。
素早い動きに耐えられる強い身体いる。
普通の食事だけでは足りない。
だから、身体や筋力を強くする為にサプリメントに手を出した。ママにも咎められたがひたすら無視した。
栄養不足で体が痩せ細って行ったのは判っていた。
サプリメントが足りないんだと思って更に大量摂取した。
大量摂取したらママの手料理がお腹が一杯で食べられなかった。でも、早く強くなりたいが一心でサプリメントが辞められなかった。
そんな時、クラリッサ大佐からママに報告が来た。
ママの探していた同級生が見つかったと。
そして、私のサプリメントも報告と同じくして部屋から消えた。
犯人はママだと判り、文句を言いに行ったら日本まで強制連行されたのだ。
そして、ママは千秋ちゃんの両親に怒られ殴り飛ばされたのだ。
何で?
ママは悪くないのに
どうして?
私は何故、ママが怒られ殴り飛ばされたか理解出来ないまま立ち尽くした。だけど、ママが殴られた怒りだけを残して…
ママはレナスちゃんを宥める様に優しく語りかけた。
「レナスちゃん、ママを殴った事は謝る。でも、ラウラは母親として私達に怒られたのわかる?」
「判らない!!ママは悪い事してない!!」
レナスちゃんに叫ばれるとママは完全にキレたのか再び額に青筋を浮かべ、ラウラさんが取り出した大量のサプリメントをレナスちゃんに見せ着ける。
「じゃあ、これは何よ?」
レナスちゃんは跋が悪かったのか小声で答えた。
「ママの様に大きくなって早く強く成りたかった。……だから、ご飯の代わりに飲んでた…」
気持ちは解りたくもない。
だけど、更に追い打ちを仕掛けた。
バァァァァンと机を強く叩き、ママが叫ぶ。
「何が、全く悪くないわよ!!
全然、悪いじゃない!!
あんたねぇ、サプリメントだけで大丈夫だって思ってるんじゃないわよ!!
こんなの飲むんだったら、しっかりご飯を食べなさいよ!!
あんたは、危うく栄養失調に成りかけて身体が危険だったの判んなかったの‼
その事でラウラが貴女を守る為に怒られ殴られたか判ってるの!!
母親として貴方の代わりに叱られたのよ!!
どうしようもない貴女のに為に!!
さぁ、何か答えなさいよ!!」
ここまで言われてしまったレナスちゃんはと言うと…
結論から言えば、ママの夜叉モードに完全に大泣きだった。
ラウラさんに謝るように叫びながら泣いていた。
「うっ、ウェェェェェン!?ママ、ごべなんなざい!!」
レナスちゃんに完全に言い切ったのか、ママは十夏お姉ちゃんを呼んだ。
「十夏、悪いけどそんなゴミは全部燃やしなさい‼」
ママが私達に渡して来たのは大量のサプリメントだった。段ボールの数にして約百二十箱。
「お姉ちゃん…これ、完全に密輸だよね?」
「だよね…」
と姉妹でラウラさんがレナスちゃんから取り上げたサプリメントの量とサプリメントを大量消費してた事実にレナスちゃんの事に呆れつつ、お姉ちゃんはアテナの装備である槍で燃やし尽くしたのだ。
アレから目覚めた私は娘の為に嫁と鈴に汚れ役を頼んでしまった事に後悔していた。力を求め、嫁を憎んだあの頃の様に…
「痛たた…二人して本気で殴るなんてな…」
殴られた右頬と下顎にかなりの痛みを感じながら鈴の部屋のベッドから起き上がる。
こんな所をもし、最愛の夫に今の姿を見られたら、嫁と同じくカミナリが落ちただろうな。
正直言えば、嫁と鈴音の再会は今日が初めてでない。
3年前に私の夫の葬儀の時にドイツで再会している。その時、完全に憔悴していた私を暫く世話をしてくたのを懐かしく思う。
だから、少しだけ昔話をしよう。
私とハンスの出会いはまだ、第三回大会が終わった後で空軍からの救援要請からアフリカへ向った時だった。
ドイツ空軍の一人のパイロットが私に喧嘩を吹っかけて来たのがハンスとの出会いだった。
ハンスは次世代型戦闘機のユーロファイターMk−Ⅶ(最終生産モデル)の専属パイロットでアフリカ方面なら負けなしのエースで撃墜数なら優に三百機を超える。
しかし、そんな彼が小娘である私に子供が隊長なのかと喧嘩を売ったのだ。馬鹿にされた事に逆上した私は模擬戦を申し込んだが、攻撃は全て躱された挙げ句に飛行技術的に難し過ぎて廃れた逆落としからの急降下爆撃で嫁以外に撃墜されるとは全く予想出来なかった。
私は嫁以外に初めて、彼に惚れてしまった。
だけど、猛アピールして来たのは彼で結婚を申し込まれた時は嬉しくて泣いてしまったのはレナスには秘密だ。
結婚後は幸せで溺れそうになった。
仕事も上手く行き過ぎて怖くなった。
結果的に上層部に認められ、私は二階級特進で准将に昇格して愛娘のレナスにも恵まれた。夫も撃墜数更新で黒十字勲章を貰い大佐に昇格だった。
しかし、幸せは長くは無かった。
空軍と私の部隊の合同作戦が決行されファントムタスクの残党狩りを行なった。
敢えて言えば、待ち伏せからの空軍の惨敗。
夫も撃墜され戦死。
陸軍が残党の飛行場を襲撃する計画が進軍中に阻まれ失敗。迎撃の為に夫の部隊をIS部隊で待ち伏せして全滅させたのだ。
私は夫が殺された事に逆上して単機で襲撃して撃滅させたが、クラリッサ大佐が止めてくれなければ大破したレーゲンで追撃したまま失敗して夫の下に行っていただろう。
あの時のクラリッサのビンタは身も心も痛かった。
娘を置いて逝くのかと…
クラリッサに叫ばれた時は流石に辛かった。
夫の葬儀が終わった後は私生活は荒れに荒れた。
特に娘が泣き狂った時は辛かった。
何もしてやれない私自身に…
抱いて慰めるしか出来ない私に…
それでも、強くあろうとした私のせいで娘が狂ったのは自覚していた。
鈴と相談しながらレナスをどうにか護ろうとした。
だけど、第5世代型ISのトライアルを娘が受けてから更に悪くなった。
私の手料理すら食べてくれなくなった。
私宛にサプリメント会社から来る請求書。
痩せ細る愛娘。
だから、嫁や鈴に相談したのだ。
あの頃の様に立ち直らせてくれた様に…
だから、二人の返答には涙が止まらなかった。
「「汚れ役は任せろ」」
そして、私はクラリッサを使い嫁の居場所を捜させた。鈴の娘が学園に居るクラリッサの娘と接触する様に仕向けて…
情報が来るなり、レナスの部屋から全てのサプリメントを没収して拡張領域に収納。娘が怒鳴り込んで来たら作戦開始の合図で日本へ向うと…
そして、娘を更生させるべく嫁と鈴に預ける事が出来た。
どうか、レナスが更生しますよう
お願いします。
レナスはハンスとの大事な宝物だから…