あの人が奥の部屋に籠もってから約二日がたった。
その間の食事だけど味がとてもじゃないが地獄だった。
「うっ、げぇぇぇ苦い…」
千秋ちゃんのママが作る漢方薬を使ったとても苦い薬膳粥を食べさせられている。
何でも、私の内臓はサプリメントの過剰摂取が原因でまともに食事が取れる状況では無いらしい。
そう、ピンク色の髪をした愉快な叔母さんに無理矢理カプセルに投げ込まれたと思ったら身体検査を行なった。
私はドラム式洗濯機の衣類ではない!!
と内心突っ込みを入れる間もなく完了。
結果は当然ながら栄養失調と胃潰瘍の一歩寸前まで荒れていて、他の臓器も一部が臓器不全に成りかけてたらしい。
それを聞いたママには抱き着かれ大泣きしてしまった。
本当に馬鹿な事をしたと反省中。
そして、あの大量のサプリメントは大量の箱ごと文字通り十夏ちゃんの手によって滅却処分したらしい。
更に、あのピンク色の叔母さんからのナノマシン治療に加えて千秋ちゃんのママによる漢方薬膳粥を加えた内臓の治療を二、三日するらしい
ここで暮すに至るに、日中は双子姉妹は学園だから居ない。
少しは動いた方が良いからと店の手伝いをまかされたが、これは無いだろと思ってしまう。
私とママの姿を見て、ニコニコ顔の千秋ちゃんのママ。
私とママはこんな姿に顔を真っ赤にしながら全身をモジモジするしかない。
今の気持ちは親子揃って呟いた。
「「あぁ、もうお嫁さんに行けない…」」
「別に良いじゃない。普段はアタシはそれを着て仕事をしてるのよ?ラウラはスタイルが良いんだから似合ってるし、レナスちゃんは可愛いから文句無しね」
「でもな、スリット入りのチャイナドレスは無いだろ!!」
とママか猛抗議する。
「仕方ないでしょ!!
一夏は奥に籠もって出て来ないんだから、厨房はアタシが切り盛りするしかないの!!
判った?」
とバッサリと逃げ道を切られ諦めるしか無かった。
諦めて注文を取ったり料理を運んだ。
しかし、繁盛店だけに忙しい。
千秋ちゃんのママは、一人で鍋を振るっていてお客さんを待たせずに注文を捌いていく。
だが、お客さんを見ると安心しているのは何故だろう?
その答えが判らないまま、午後三時になり昼間の部は終了。
そして、ママと私が安心した理由。
あの人が居ないと夜の部である居酒屋はやらないらしい。
理由は看板メニューである焼き鳥や刺し身の仕込みだけは千秋ちゃんのママでもやらせて貰えないらしい。
お店の入口には千秋ちゃんのママ自ら『本日は終了』と掲げられていて、私とママのやる事は店内掃除して完了だった。
そして、翌日にはあの人が居て厨房で土鍋で何かを煮ていた。
私はあのカプセルに入って再び検査したら内臓の荒れは収まったらしい。
二階にある織斑家のリビングに私とママに加えて、あの人を除いた家の住人達が座っている。
あの人が土鍋を乗せたお盆を抱えて一階の厨房から上がって来て、そのお盆を私の前に置く。
ぽわぁぁんと湯気から登る、美味しそうな匂いに鼻腔を刺激する。
グゥゥゥ
「ハァウ///」
その匂いが私のお腹から音を立てた。
久しぶりに聴くその音に顔を真っ赤にするには時間は要らなかった。
その人が土鍋の蓋を空けた。
透明なスープにお米が柔らかくなるまで煮込んだお粥だった。
ママは
「こんな手抜き料理を…」
と言い切る前に千秋ちゃんのママにお玉で物理的に黙らされ、正座をさせられていた。無論、こんなに良い匂いがするのだから手抜きな訳がない。
「ラウラ?
これはね、一夏が内臓から煮出して三日三晩大量に出る灰汁を丁寧に取り続けて澄んだ出汁よ。
丁寧に作り上げた出汁からお米を丁寧に煮込んで作ったお粥よ。
決して、手抜き料理じゃないわよ。
アタシに作れって言われても絶対無理だからね」
「あぁ、久しぶりに三徹したわ」
「一夏お疲れ様。
約二日もお店をアタシに任せたんだから、お礼はベッドでね♪♪そろそろ、3人目欲しいしね♪♪」
「マジか!?」
「うん、期待するね♪♪」
しかし、奥さんからお礼の内容を聞いたあの人は顔を真っ青にして震えていた。
折角、格好いいなと思ったのに台無しである。
それよりも、目の前のお粥だった。
まさか、三日間も寝ないで灰汁を取り続けていたの?
私の為に?
どうして?
「レナスちゃん、冷めない内にどうぞ」
とお椀にお粥を盛り、私に手渡す。
レンゲで掬い、フーフーしながら一口食べる。
「!?」
あぁ、美味しい。
体中に漲る力
これは…
生命なの?
そうか、体中に漲るのは生命の力。
サプリメントでは感じ無かった、溢れて来る生命の力。
気付けば、私はお椀ではなく手にグローブをして鍋を掴んで握ったレンゲで貪る様にお粥を食べていた。
熱かったけど、身体が欲していた物がその鍋の中に在ると本能が騒ぐから貪り、ただ食べる。
絶対に分けたりするものか!!
これは、私の物だ!!
気付けば、鍋は空っぽだった。
頭上に暖かい感触。
「満足したかい?」
「うん…美味しかった…///」
あの人いや、一夏さんに撫でられていた。
はぅぅぅ
恥ずかしい…
どうしたのだろ?
このモヤモヤする気持ち。
そうか、これは私の初恋なの?
決めた。
「ママ!!」
「レナスどうした?」
多分、クラリッサ大佐は死ぬだろが関係ない。
お願いだから一度死んで来て!!
「私、一夏さんのお嫁さんになる!!だって、親しい人が男性ならお嫁さんになるってクラリッサさんが…」
言った瞬間
「「「「はぁァァァァ!?」」」」
「良いよね?一夏さん♪♪」
「待て!!一夏は私の嫁だ!!たとえ娘でも譲らんぞ!!」
「ちょっと待ちなさいよ!!親子揃って、アタシの夫を取らないでよ!!」
「十夏お姉ちゃん、チャンスだよね?」
「そうね。今こそ、下剋上のチャンスよ!!」
最早、カオスである。
一夏は学生時代の事を思い出しながら頭を抱え、一目散にリビングから逃げ出したが、それを追うレナスにラウラ。
二人をぶっ飛ばそうと黒椿を部分展開して追う最愛の妻である鈴音。
下剋上のチャンスだと各々の武器を部分展開して自分の母親に立ち向かおうとする双子姉妹。
これが何時もの日常である。
「そんな訳あるかぁぁぁぁ!!」
と締め括ろうとしたが、飛んできたお玉に直撃して路上に気絶する作者だった。