ファントムタスクの事件から出身国であるアメリカはテロ組織を抱えていた責任を取らされコアは個人所有であるシバリオゴスペルを残し、新しく生まれ変わったIS委員会によって没収となりISコアを全て失った。
そして、アメリカは世界大会への出場資格すらも剥奪されたのだ。
しわ寄せはIS学園に居たアメリカからの学生にも及び、自主退学するか、他国へ亡命を果たさなければ成らなかった。
しかし、私は母国で代表候補生の資格を失ったが、キャノンボール・ファーストで好タイムを残していた事からテンペスターMk−Ⅲのトライアルに受かり、そのままイタリアに亡命して代表候補生の資格を与えられた。
その時のルームメイトだった鈴ちゃんが一緒に喜んでくれた事は忘れない。
同じ境地だった唯一の専用機持ちだったナターシャさんもアメリカ政府に命の危険を感じて学園の教師として日本へ専用機と一緒に亡命を果たした。
私は卒業後は血の滲む努力で国家代表まで上り詰め、政府の意向でキャノンボール・ファーストではなく第三回の世界大会の選手として出場させられるが、結果を言えば初戦から悪い意味での大会史上初やギネス記録を残して一回戦負けをしてしまった。
相手はブリュンヒルデである織斑千冬ですら成し得なかった二連覇を果たした弟であり同級生だった織斑一夏だった。
普通に在り得ない敗北の形だった。
今でもお玉を見ると震えてしまうし、呆気なく敗北した自分への怒りだってある。
今でもあの光景は忘れない。
試合開始のブザーから電光石火の様に飛来する青白く光り輝く物体。
目の前で来て、その正体がお玉だと気付く頃には回避不可能な距離だった。
そして、高速飛来するお玉が私の顔面に直撃。
顔面に当たったお玉の衝撃で気絶をしながら落下。
地面に衝突してシールドエネルギーがあっという間にゼロになって敗北。
呆気ない敗北。
試合開始して3秒での敗北だった。
私はその敗北から帰国。イタリア国民から怒りを込めた意味で不名誉極まりない痕名を貰った。
『世界最速の敗北者』
本来なら、私の愛機であるテンペスターMk−Ⅲと世界最速を名乗る筈だった。
敗北に落ち込む私に更に悪い事が起こる。
まだ、キャノンボールがあるからと思っていたが政府からの強制引退勧告により強制的に引退させられた。
私の選手生命が終わった瞬間だった。
愛機は不名誉極まりない事から破棄にすると言われたが退職金は要らないから愛機を返却してもらい、母校であるIS学園へ日本政府に亡命しながら教師見習いとして再就職したのだった。
学園での仕事は担任の補佐から部活動の顧問まで多彩で新鮮だった。教師として先輩だったナタル先生は三年生の担任を任されていて、落ち込んでいた私を同郷の誼で新学園長の更織刀奈さんに話しをして副担任にしてくれた。
それから数年が経った。
私は教員免許が取れてやっと新任教師だが、新一年生の学年の教師陣の一員になっていた。
学園の新一年生の予定である名簿を観たら身体が震えた。
一年三組の担任は巻紙礼子先生で副担任は私だったが巻紙先生の姿を見て驚いたがそれよりも驚く生徒がいたのだ。
その、生徒名簿の名前に身体が震えたのだ。
しかも、二人があの人と同じ苗字だからだ。
その二人は
『織斑十夏』
『織斑千秋』
プロフィールの年齢には6歳とあった。
何でこんな小学生の年齢でとも思った。
しかし、一学年の学年主任でベテラン教師である織斑先生は二人の親が元選手としてかなり有名で姉妹に危険が及ばない処置としての強制入学だと手短ながら説明された。
尚、十六歳になるまでは進級を一切認めてはいけないと日本政府の意向付きだった。
しかし、あの双子姉妹は私には持て余す存在で自分の考えが甘かったと今でも後悔していた。
入学するからには必ずテストを受ける。
6歳だから知識は不十分だろうと思っていた。
しかし、蓋を開けて見れば筆記は姉妹揃っての首席が確定する。
まさか、実技試験までも認識不足を痛感する。
実技試験は学年主任の意向で姉の十秋にはナタル先輩が担当し、妹の千夏には巻紙先生が担当する事になった。
結果を言わずともわかるだろ。
ナタル先輩はあのシバリオゴスペルを使ったが、彼女の専用機であるアテナの装備でイージスの楯と言われる実体のある楯を使い、シールドの絵柄にメデューサが現れると先輩は何時の間にか拘束されて動けくなり槍にタコ殴りにされ敗北。
同じくして、巻紙先生はアラクネで挑んだが、彼女専用機であるアルテミスの単一仕様により植物を操作するとアリーナ全体の地面から生えた木々は彼女の絶対領域化する。ギリシャ神話の狩猟を司る名前だけに絶対必中の弓を構えられて降伏したのだった。
双子姉妹は合格だったが、教師陣に違う意味での恐怖を植え付けたのだった。
入学式が終わり、アリーナから爆発音が聴こえた。
まさか、襲撃だと思ったら現生徒会長であり十八代目の更織楯無(本名、更織白百合)と織斑十夏さんとの試合だった。
更織さんは卒業生で現学園長の先代更織楯無(本名、更織刀奈)の長女だった。しかも、アリーナは生徒会の権限で貸し切り状態での試合だった。
結果は織斑十夏の完全勝利だった。
あの、神々しい彼女の専用機の姿を忘れられない。
例えるならアリーナという戦場に舞い降りた、ギリシャ神話では知恵と戦を司るアテナの降臨そのものだった。
彼女が何故、現生徒会長を蹂躙するのか判らない。
単一仕様の焔で作られたペガサスに牽引されるチャリオットに乗り、空を駆け回るかの様に超高速機動で槍で何度も斬り刻まれる恐怖と通過後に焼かれる炎に絶対敗北を心身に絶望を叩き付けられる光景。
最早、試合ではない。
ギリシャ神話の一文を彷彿させる。
女神に刃向かう者には跪く事さえ許されず、抵抗すらも許されずにただ女神(アテナ)によって戦場(アリーナ)を蹂躙される。
蹂躙劇でSEをゼロにされた彼女はその場で恐怖から開放されたショックで地面にへたり込み泣き叫んでいた。
「お母様に言われたって二度と実力調査なんかやらないわよ!!本当に怖かったわよ!!生徒会長なんか辞めてやる!!うわァァァァァ!?」
泣き叫びながらも握りしめていた母親から譲られた扇子にはアンタが主役ではなく『貴女が生徒会長!!』と達筆な字で書かれていた。
彼女に相当なトラウマを植え付けたらしい。
そして、更織さんから十夏に生徒会長になり彼女が卒業するまでの十二年に渡る最強の生徒会の誕生の瞬間だった。
生徒会長を辞めたはず更織さんは十夏さんに強制連行され、生徒会書紀に任命されたのは別の話。
しかし、普段の二人は全く手の掛からない優秀な生徒で担任の巻紙先生のお気に入りでもあった。
一年一組の担任で学年主任の織斑先生は叔母であるが、贔屓はせずに厳しくしていた。
ただ、五時限目が終わると寮ではなく自宅に帰る。
夕飯に有り着こうと織斑先生と篠ノ之先生は二人に付いて行くのが問題だったが警護が理由だったので問題には成らなかった。
私も鈴ちゃんが作る酢豚や角煮を目的に二人の自宅の料理店には良く通っている。今は、元同級生で同僚の篠ノ之箒さんやナタル先輩と一緒に通っているが…
私は選手より教師が向いていたと今は言える。
二人がどんな風に成長するのかが楽しみである。
何故なら教師は教え子の成長を楽しみにするものだと思うし、私は学園での先生なのだから。