世界は幾つも存在している。
彼等の在るそれは、ある可能性の持つ世界の一つ…。
其処は、かつて破壊者ディケイド達が旅をして廻った仮面ライダー達の世界の一つ、『キバの世界』と呼ばれている世界に酷似した世界の物語。
「ハァ!」
「ハッ!」
拳をぶつけ合う金と赤の二つの影。ぶつかり合う二人の仮面の皇帝、黄金のキバ『仮面ライダーキバ・エンペラーフォーム』と闇のキバ『仮面ライダーダークキバ』。
何度も交差する度に傷ついていく二人のキバ。
何度目かの交差の末にダークキバのパンチがキバ
「クッ!」
苦痛の声を上げて後に後退するキバ
更にダークキバはベルトのフエッスロットから外した『ウェイクアップフエッスル』を腰のバックル部分に止まっているキバット族『キバットバットⅡ世』の口に咥えさせ、それを吹かせる。
「ウェイクアップ1!」
「ハァァァァァァァァァアア!!!」
鳴り響くフエッスルの音色と共に周囲が夜の闇に包まれると、ダークキバは空高く跳び、遥か上空からキバEへとストレートパンチを放つ。それこそがダークキバの必殺技の一つ『ダークネスヘルクラッシュ』だ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
キバEの体が吹き飛ばされ、そのまま地面を転がりながら倒れる。ダークキバはそんなキバEにゆっくりと近づきながら、片膝を着いて倒れるキバEへと話しかける。
「もう止めろ、ワタル。これ以上、兄弟同士で戦う意味なんて無いだろう?」
「に…兄さん。」
「ファンガイアのハーフとは言えお前にはオレと同じ父の…先代キングの血が流れている。お前はオレの大事な弟だろ? 父も…母も…居なくなって、残されたたった二人の肉親同士が戦う必要なんて…無い。」
そう言ってダークキバは倒れるキバEへと手を差し伸べる。
「兄さん…。」
「オレ達『闇の一族』が人を支配し、争いも無く平和に治めていく。ワタル、オレの右腕として、共に覇道を歩こう。」
ダークキバの口から語られる言葉…
「そ、そんな事、させる訳には行かない!!!」
拒絶の言葉と共に差し伸べられたダークキバの手を振り払ってキバEは立ち上がり、マントを翻しながらファイティングポーズを取る。
「人は愚かだ…。同族同士で無意味に争い、己の欲望の為に他の命を奪い、未知のものを恐れ排除しようとし、人間の技術の発達の先に滅びしか齎さない。だからこそ、オレ達が支配する。」
「そんな事ない! 人間はそこまで愚かじゃない!!!」
「そうだな、それは認めよう。だが…世の中には愚かな人間の方が何倍も存在している。共存していけると思うか…? オレ達ファンガイアと…魔族と…人間が!?」
「そんな事はない、必ず共存できる! 昔の人達だってできた事が……今のぼく達に出来ないはずが無い!!!」
キバEの言葉をダークキバは鼻で笑い飛ばす。
「理想論だな。平和とは絶対の力の元に成り立つ物だ。絶対的な力によって守られる物だ。お前にもその力が有る。オレとお前、オレ達兄弟ならそれが出来る。最後通告だ…ワタル…オレと共にオレの覇道を歩め。」
「断る。」
はっきりと聞こえてくるキバEの拒絶の言葉にダークキバはその仮面の奥で嬉しそうな笑みを浮かべる。
「(…それで良い…。)残念だ…お前を…たった一人の弟を…オレの手で殺す事になるなんてな…。(ごめん、Ⅱ世…こんな事につき合わせてさ。)」
「(フッ、気にするな。)光栄に思え、絶滅タイムだ。」
心の中で互いにそんな言葉を交わし、ベルトのフエッスロットから外したウェイクアップフエッスルをキバットⅡ世に咥えさせる。
鳴り響くフエッスルの音色は二回。
ダークキバは三種類の必殺技をフェッスルを吹く回数で別種のより強力な必殺技を使うことが出来る。
本来、自爆技である『ウェイクアップ3』の『キングスワールドエンド』はその危険性から禁じ手として、二回フエッスルを吹かせるこの必殺技は事実上のダークキバの最強の技。
「ウェイクアップ2!」
再び周囲が夜の闇に包まれ、その場に君臨する支配者、闇の魔王『仮面ライダーダークキバ』。
そして、ダークキバは遥か上空へと跳躍し、キバEへと向けて最強の飛び蹴り『キングスバーストエンド』を放つ。
「ウェイクアップ・フィーバー!!!」
「ハァァァァァァァァァァアア!!!」
そんなダークキバを迎撃すべく、キバEは必殺技『エンペラームーンブレイク』を放つ。
遥か上空からキバEへと向かって放たれたキングスバーストエンドと、地上からそんなダークキバを迎撃すべく放たれたエンペラームーンブレイク。闇と黄金のキバの必殺技がその中間点でぶつかり合う……
「それでいいさ…ワタル。」
……はずだった。
優しげに呟きながら飛び蹴りの体勢を崩し、両腕を大きく広げてキバEのエンペラームーンブレイクの前に無防備な体を曝す。
「っ!? 兄さん!!!」
無防備なダークキバの胸に突き刺さるキバEの必殺の飛び蹴り、エンペラームーンブレイク。そして、ダークキバを中心に上空に浮かび上がる『キバの紋』。
その中心から彼の全身を包む闇のキバの鎧に皹が広がっていき、そのまま、彼は人と魔族の共存を目指す己の弟に仮面の奥で優しく微笑みを向けながら自身の死を受け入れる。
「兄さん…。トウヤ兄さん!!! どうして!?」
浮かび上がるキバの紋と共に爆散するダークキバとキバットバットⅡ世。そんな兄の名を叫びながら、キバEは勝利したのだ。……一族の王を決める戦いに……。
彼の中に人間を支配する意思等、何一つ存在していなかった。
弟へと語ったほど人間を見下してはいなかった。
寧ろ、彼の心の中に有ったのは、純潔のファンガイアで有りながら人と魔族が仲良く手を取り合う共存の未来。
弟と同じ道だ。
だが、それにはどうしても倒すべき存在が必要なのだ。
それは黄金のキバを中心として集まった『共存派』に対する、人間を家畜のように見下し支配する事を考えている『過激派』。
だから、純潔のファンガイアであり、王の鎧『ダークキバ』の後継者である自分がそんな過激派の代表となり、敗北させる必要が有ったのだ。
そして、最終的に人を力で支配する事を考えた過激派の代表である自分を共存派の代表である弟に倒させ、その上で戦いを完全に終わらせる事。それが彼の望みだった。
自分の死で全ての戦いは終わる。だから、それまでは自分は覇道を歩む闇の魔王を演じ続け、弟に討たれる必要が有った。
自分につき合わせてしまったキバットバットⅡ世には申し訳なく感じているが…それでも、自分にはこれ以外の方法は思いつかなかった。
心残りが在るとすれば…
『…それにしても…なんでオレは小学生の年齢でそんな事を考えて苦労しなきゃならないんだよ!?』
『ト、トウヤ!?』
『最後だから言わせて貰うけどな…オレだって、普通に恋したり、楽しく遊んだりしたかったのに…なんでこんなに苦労しなきゃならないんだよ!!! あー…これも全部…あの過激派のバカ共のせいだろう!!!』
『…思った所でこれで終わりだ…。残念だが諦めろ。』
『そうだな…。クソォー!!! 来世じゃ絶対に自由に、楽しく生きてやるからな!!!』
絶対に弟には聞かせられない絶叫が彼の心の中で響き渡るのだった。
…現在…
「…なあ、Ⅱ世…。」
「何も言うな…。」
机に突っ伏しながら告げる彼に同情100%の声をかけるキバットバットⅡ世。
前世の死で心の中で絶叫した。二度目の人生…彼は再びファンガイアの王に…他の魔族を束ねる王の家系に生まれていたのだ。
「…神様殺したい…オレはファンガイアでも他の種族でも良いから…楽しく平和に生きたかったのに…。せめて、前世の記憶なんてない方が良かったのに…。」
何故か前世の記憶を持って転生してしまった彼は机に突っ伏しながら涙目で神様へと恨み言を呟き続けていた。
「神様のバカヤロォー!!! 大体、なんでまた小学生で王にならなきゃならないんだよ!!!」
「前世で弟に後始末を押し付けた罪なんじゃないのか?」
そうかもしれないと思っても納得したら負けそうな言葉を呟いてくれる相棒のキバットバットⅡ世。
「そうだよな…。」
付け加えておくとこっちにはトウヤの弟であるワタルは居ないし、Ⅱ世の息子のキバットバットⅢ世も娘のキバーラも居ない。
「…あー!!! クソ、絶対に今度は楽しく生きてやる!!! そして…止めてやる…何時か絶対に王なんて止めてやる!!!」
「…あー…応援しているから、頑張れよ。」
彼、再びファンガイアの最年少の王の位に就いた少年『トウヤ・F・クリムゾン』、偽名『紅 トウヤ』の二度目の人生は常に絶叫と神への文句と共に始まるのだった。
二度目の人生で再び王となったファンガイアの王『トウヤ』…これは彼の楽しい日々を送る為に苦労する物語である。
さて、ついでに完全に余談だが、二度目の人生が始まった時、キバットバットⅡ世と共に彼の元に有った白いUSBメモリらしき物と赤いL字の機械については彼自身使い方も分からないので放置状態にある事を此処に付け加えておく。
それが何であるか分かる人にはわかる事だろうが…それが何故彼の元に有るのかは…彼に対して神様が同情したからなのだろうか?