闇の魔王様と魔法少女達   作:龍牙

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第九話『ダメ警官…ダメ執務官か? by.トウヤ/…良くて外道、悪くて無能か。 by.キバットバットⅡ世』

「愚かな話だな…色んな意味で」

 

プリシアの罪の告白をトウヤはそう簡潔に切り捨てる。

 

 

「『プロジェクトF』だったか、100%失敗するに決まっているだろう」

 

 

「100%って…どうしてそこまで「…命をバカにするな、『記憶』如きで死者蘇生できるほど人間は安くない」…………」

 

 

その一言で切り捨て押し黙るプレシアを一瞥すると、トウヤは指を一本上げる。

 

 

「それが第一の失敗…考え違いだ。クローン等下手な言い方をすれば『歳の離れた一卵双生児』だ。双子の兄弟が互いの存在を知らずに似た家庭に引き取られたとすれば、似た人生を歩むかもしれないが、それは“似ているだけの別人”だ」

 

 

そして、二本目の指を上げる。

 

 

「第二に魔力を持たせた時点で決定的な別人になる。差異を大きくした以上、元となった『アリシア・テスタロッサ』から離れるのは当然だ」

 

 

三本目の指を上げ、

 

 

「他にも色々と細かい理由が有るが…『人格』は『記憶』が構成するだろうが、記憶だけで作れるほど簡単じゃないだろう。一つの人格が作り上げられるのは、奇跡とも言って良い確率の上に有る。………記憶と言う一部だけで同じ人間になるか…。せめて記憶以外に思考パターンを使えば、99%程度のアリシア・テスタロッサの偽者にはなっただろうがな」

 

 

そして、レジェンドルガによって変えられたアリシアだった者へと向き直り、

 

 

「どちらにしても、貴女にクローンを作り上げたと言う記憶がある時点で、…思考パターンを似せたとしても、貴女にしてみれば…気持ちの悪いアリシア・テスタロッサの偽者にしかならないだろうがな…」

 

 

既に泣く事も止めて崩れ落ちている最後の裁きを言い放つ。

 

 

「…まあ、その紛い物も寂しさを紛らわすだけの現実逃避の為の人形にはなるだろうがな」

 

 

「…じゃあ…私はどうすれば良かったって言うの…。」

 

 

「…偽者の記憶を与えなければ、“アリシアに似ている義理の娘”として見る事は出来ただろう。クローンとして生み出したとしても、アリシアの妹としては見えただろう…。いや、クローンだから、下手をすればアリシアの娘と取る事も出来るか…? 母の子供への気持ちは男のオレには永遠に分からないがな」

 

 

肩に降りるⅡ世へと視線を向け、

 

 

「そうだな。オレにも息子と娘を持った経験は有るが…父親と母親では子供への想いも違うだろう」

 

 

「フェイトがアリシアの妹だとすれば…オレに妹を持った姉の気持ちは分からないが、弟を持った兄の気持ちは良く分かる。…弟を虐待した母を…オレは絶対に母等と思わない、母とは思ったとしても愛し等はしない。弟を傷付けた敵としてしか見れない。憎しみしか向けないだろうな。さて…彼女の存在を知ったら…元に戻ったとして、アリシアは…妹を傷付けた母に対して…以前のように接してくれるか…?」

 

 

「…あっ…うっ…」

 

 

トウヤの言葉に何も言い返せない。肯定してしまえば元に戻った娘に憎まれ拒絶される未来を肯定する。否定すれば…

 

 

「優しければ優しいほど…貴女を許せないだろう。同時に原因となった自分自身も…。さて…アリシア・テスタロッサは…優しい子だったのか? それとも、妹を虐待して喜ぶような…酷い人間だったのか?」

 

 

自分の最愛の娘が優しい子だと言う事を自ら否定する事になる。

 

 

「あの子は……優しい子…よ…」

 

 

だから、プレシアは自ら拒絶されるifの未来を受け入れるしかない。

 

 

「神の裁きは下っている。既にオレが何かを言える立場じゃない…。彼女にとって大切な『優しい母』の記憶だろうが…それを与えてしまったが為に…貴女は彼女を…母で有るが故に愛する事はできない」

 

 

後悔した所で既に『愛する事ができない』。それが、

 

 

「それが貴女への…裁きだ」

 

 

彼女へと与えられた神の裁きなのだから。だが、トウヤは神でも天使でも無く魔王だ。魔王は常に神とは敵対する運命にあると考えている。

だからこそ…

 

 

「だけど、彼女は、フェイトは貴女に育てられた娘だ。貴女は彼女の母だろう。真実を知った上で…なおも母として愛してくれるなら…『その程度』の事は乗り越えられる。『親子三人』で暮していける…。アークさえ倒せば…アリシア・テスタロッサも生き返る可能性がある」

 

 

神が裁きを下したのなら、魔王としてのトウヤが行うのは魔王の救済。幸いと言っては何だが…レジェンドルガとして再生しているなら、逆に言えばアークを倒せば元に…生きた人間に戻る可能性もある。

 

 

既にトウヤの中でアークを自らの手で倒す事は決定事項だ。既に消滅させる方法は失われているし、相手も一度行われた封印に対して対策を持っているだろう。ならば取るべき手段は、結果を先に送る為の封印では無く…『倒す』以外に道は無いのだから。

 

 

「…もっとも、貴女の体を治療する必要が有るだろうけどな…」

 

 

「気付いてたの?」

 

 

「オレ達ファンガイア族を初めとする魔族は他者のライフエナジー…一種の生命エネルギーを吸収する能力を持っている。だから、それだけ弱っていればイヤでも気付くさ。…付け加えると、何年持つか分からない。乗り越える前に…アークを倒す前に、貴女が死んでしまったら意味は無いだろう?」

 

 

トウヤの言葉に『ええ』と頷くプレシアを一瞥しつつ、ビショップに検査と治療の準備を頼もうと考える。彼女にキャッスルドランに来て貰うか、ビショップを連れて此方に来るかは未定だが…。

 

 

だが、問題が一つ出て来た。自分が知った真実を何処までフェイトに伝えるかと言う事だ。

 

 

『自分は本当の娘ではなく本当の娘のクローンで、しかも、その母は余命幾許も無い』…はっきり言ってフェイトに伝えるべきか悩んでしまうほどにハード過ぎる。

今まで関わった印象では有るが、どう考えてもこれを全て受け止められる程精神的な面では強いとは言えないだろう。

 

 

心底悩みながら、プレシアへと視線を向けると、

 

 

「…取り合えず、貴女の検査が終わるまではフェイトさんには黙っていた方が良いな」

 

 

「賢明な判断だな」

 

 

「それが良いわね」

 

 

トウヤの言葉に揃って時期を待って話すと言う方向で同意する二名だった。

 

 

尚、レジェンドルガの同族化されたアリシアに着いてはプレシアの魔法で拘束しているが、『一時的な封印の方法が有るがどうする?』と聞いたら封印を施す様に頼まれた。

仮にも最愛の娘が化物レジェンドルガになった姿をこのまま見続けたくは無かったのだろう。

 

 

シールフエッスルの力で彫像状態にする事で一時的な封印は完了した。改めて封印した姿はレジェンドルガではなく人の物…その容姿はやはりフェイトと良く似ていた。

 

 

(…ジュエルシード…願いを叶える石か…。死者蘇生は無理でも、上手く扱う為の魔術的な処置を施せばプレシアさんの治療くらいには使えるか…)

 

 

そんな方向で思考を動かした結果、一度は考えるべきかと言う結論に至る。

 

人間の物よりも高いファンガイア族の医療技術や魔術的な処置でも治せない病は当然ながら存在する。彼女達の世界の科学技術から考えて医療技術も高いはずだ。それで、治せないと言うのなら…自分達の技術でも完治や延命は不可能だろう。

 

最後の手段として、危険物に縋るしかないと言う最後にして最悪の手段…。

 

 

そんな方法しか思いつかない自分がイヤになるが、それは飽く迄最終手段として割り切っておく。少なくとも残りの石を過激派の手に渡る前に回収する事…。

 

 

(…陸地は良いとして、問題は海…海中に落ちたと思われる魔石ジュエルシードか…)

 

 

念の為に海岸を中心に捜索させているが一つも見つかっていない。海に一つも落ちていない等と言う希望的観測を信じる事は出来ない。

 

幸いな事に海中にあるなら、ファンガイア族にも回収の手段は限られる。だが、水生生物を模した『アクアクラス』のファンガイアが居ないと判断する事は出来ない。その上、海と言う場所が問題だ。

 

 

(…連中の手に落ちないとしても…万が一の発動で町を津波が襲うなんて起こったら拙いからな…)

 

 

そう考えると背筋が寒くなり顔色が悪くなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、トウヤ、母さんと何のお話してたの?」

 

 

「危険物ジュエルシード回収のお礼と、後はフェイトを頼むだってさ」

 

 

実際、部屋を出る時に『フェイトの事をお願いしてもいいかしら』と言われたのは本当の事だ。

 

 

(トウヤ)

 

 

(…アルフ?)

 

 

ふと、トウヤの頭にアルフからの念話が響く。

 

 

(あの鬼婆がフェイトの心配なんかするもんか。一体どんな話を話したんだい!? 今日はなんだか、様子も可笑しかったし!?)

 

 

(…普段彼女がどんな態度を取っているか、よーく分かる一言だな; …確かに話した事はそれだけじゃない。だけど…フェイトの事を頼むと言われたのだけは本当だ)

 

 

そう言った後一呼吸置き、

 

 

(…何れ時期を見て話す…。…今はまだフェイトさんに話す時じゃないんだ…)

 

 

(…そうかい、あんたがそう言うなら信じるよ)

 

 

(…良いのか、仮にもオレは“魔王”だぞ。もしかしたら、ジュエルシードを封印するためにフェイトさんを利用しているのかも知れないぞ)

 

 

(それでも、あんたを信じるよ。それに利用する様な奴が自分を盾にしてフェイトを守る訳無いからね)

 

 

そう、サバトの光弾から自分を盾にして庇ったり、ジュエルシードの発動を抑えるのに両腕にダメージを負ったりと…。加減の効かない自分がなのはとは戦えないと言う点を除いては、どう考えても利用する人間の行動には見えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

時の庭園から地球に戻った後、トウヤは今後のジュエルシード回収についての予定をフェイトとアルフ、キバットバットⅡ世と簡単に話した。

 

 

幾つかは海に落ちている可能性が高い事。ある程度陸地の探索が終わった後は十分に準備を整えてから海の探索に入る事。特に海の捜査の前には危険と準備を考えてフェイトには十二分に休息を取る様に言っておいた。

 

 

そして、トウヤが帰宅しようとした時、新たなジュエルシードの発動を確認して発動した場所で有る公園でなのは達と合流、共同しての封印作業になったのだが…。

 

 

「生意気にバリアまで張ってたんだよ…ねぇ?」

 

 

ジュエルシードを取り込んだ“はずの”巨大な大木の怪物のバリアを紙の様に切り裂いてダークキバのザンバットソードが剪定している姿を呆然と眺めているなのは&フェイト主従。

 

 

「今までよりも強いはずなんだよね」

 

 

「私達の出番…」

 

 

「無いよね」

 

 

色々と考える事、悩む事が多かった結果、なのはとの争奪戦を全面的にフェイトに任せていたお返しとストレス解消も兼ねて大木の化け物との戦いを引く受けた訳だが、サバトを除けば今までよりも強かったのだが、全然余裕と言った様子でザンバットソードを使い、根を切り裂き、枝を切り裂き、淡々と無力化していく姿に見ている方は呆然としてしまう。

 

 

「終わりだ。無力化したから封印を頼む」

 

 

根と枝を完全に奪い、相手に同情したくなるレベルでダークキバの手によってボロボロにされた大木の化け物を放置して、なのはとフェイトへと向き直りそう告げる。

 

 

その後、なのはのディバインバスターとフェイトのサンダースマッシャーによって速やかに封印された。二人の顔には同情の意思が浮かんでいた。

 

そして、前回に続いてのなのはとフェイトによるジュエルシードの争奪戦が開始になる訳である。

 

 

ダークキバは当然ながら戦闘には参加できず、二人の戦いを観戦している訳である。

 

 

「ジュエルシードには衝撃を与えたらいけないみたいだ」

 

 

「うん、前みたいな事になったら…私のレイジングハートもフェイトちゃんのバルディッシュも可哀相だもんね」

 

 

「だけど、譲れないから」

 

 

「私はフェイトちゃんと話がしたいだけなんだけど」

 

 

 

 

 

「…だったら単純に武器を向けなければ良いんじゃないのか…?」

 

 

「まあ、戦って意思をぶつけ合う事も分かりあう事に繋がるはずだろ? だからこそ、オレもそれには苦労した」

 

 

「確かにな。お前は弟ワタルに何も伝えずに戦っていたからな…。拳を交える時も…偽りの意思を伝えなければならなかった…か?」

 

 

「ああ。最後はああするしかなかったけどな。」

 

 

ザンバットソードを腰に携え、適当な木に背中を預けながらダークキバとキバットバットⅡ世は前世の事を思い出しながらそんな会話を交わす

 

意思をぶつけずに全力では無く何処か手を抜いて戦い、己の意思を伝えずに敗北する為に戦った。…中途半端な…最後の兄弟喧嘩かいわ。

 

 

 

「私が勝ったら…ただの甘ったれた子じゃないって分かって貰えたら………お話、聞いてくれる?」

 

 

 

なのはの言葉が聞こえてくる。

 

 

「…そう言えば高町さん…」

 

 

「どうした?」

 

「いや、昔一度だけ…泣いているのを見た事が有ったなって思ったな。確か、家族の中で孤立してたとか何とか…」

 

 

「…トウヤ、それは流石に略しすぎじゃないのか?」

 

 

「…確かお父さんが入院したとか、お母さんやお姉さんが忙しかったとか………兄さんが怖いとか…。まあ、一日一緒に遊んで入学するまで会わなかったからな」

 

 

「それなりに辛い思いしている訳だな、彼女も。」

 

 

「どうしてこう、オレも高町さんも、フェイトさんも、十歳にも満たない間に重い人生を送ってるんだか…」

 

 

「…力を持った代償は、当たり前の幸福…と言う訳か」

 

 

そんな会話を交わしていると、上空で二人が駆け出す。その瞬間だった、

 

 

 

 

 

 

 

『ストップだ!!! ここでの戦闘は危険すぎる!』

 

 

制服を着た二人の大人を引き連れて現れた少年が右手の黒い杖でフェイトのバルディッシュを、左手でなのはのレイジングハートを受け止める。行き成りの状況に驚きを隠せない二人だが。

 

 

「時空管理局執務官、『クロノ・ハラオウン』だ。詳しい事情を聞かせてもらおうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「時空管理局…ね」

 

 

「…出てくるのは良いが、偶然にしては随分と狙った様なタイミングだな。」

 

 

「都合の良い偶然と考えるには…ちょっとタイミングが良すぎるな。…何故あの化け物と戦っている間に出てこなかった、何故二人の戦闘中に出てこなかった、とかな。だとすれば…」

 

 

「何らかの理由で此方の戦いを覗っていて、出てくるタイミングを計っていた。と考えられるな。」

 

 

「理由か…考えられるとすれば、二人やオレの戦力の確認…? もしくは、未確認の相手への警戒か? …Ⅱ世…時空管理局…信用するに値すると思うか…?」

 

 

「結論を出すには早いだろう…。だが、その行動は警察組織の一種にしては…どうかと思うがな。何処の世界に市民の危険を眺めてタイミングを待つ警察組織がある。まあ、弁護するならば戦闘中への介入は危険と…危険だったか? いや、それ以前に、あれは戦闘と呼べる物だったのか?」

 

 

今更ながら、自分達が本当に戦闘していたのか疑問に思うキバットバットⅡ世だった。はっきり言って一方的な剪定としか言えなかったのだし。

 

 

「………。どっちにしてもダメだろう。」

 

 

何気にダークキバとキバットバットⅡ世、二人の中で時空管理局の信用が絶賛低下中でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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