闇の魔王様と魔法少女達   作:龍牙

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第十話『身分証明はちゃんとしよう。 by.トウヤ/全くだな。 by.キバットバットⅡ世』

「ストップだ!!! ここでの戦闘は危険すぎる! 時空管理局執務官、『クロノ・ハラオウン』だ。詳しい事情を聞かせてもらおうか?」

 

クロノと名乗った少年の後に居る大人二人…特に落ち着きの無い方の人物を一瞥しつつ、ダークキバ…トウヤは、

 

 

「妙な感覚だな…」

 

 

そんな感想を覚えてしまう。人の物ではない存在感、魔力の質、異世界の人間だからなのかとも思えるが、他の男とクロノと名乗った少年、フェイトから感じられるそれは違う。…寧ろ、後ろの男のそれは自分達魔族の物に近い。

 

 

ユーノとアルフがそれぞれの反応を見せているが、ダークキバの位置からでは詳しい事はわからない。

 

 

「このまま戦闘行為を続けるなら…」

 

 

「っち! フェイト、ダークキバ、引くよっ!」

 

 

「すまないが、オレはそう言う訳には行かない。(悪い様にはしないが、良い機会だ、連中に接触していく)」

 

 

(危険じゃ…)

 

 

(いや、逃げようと思えば逃げられる。寧ろ、殺さない方が心配だ。第一…気になる相手が居る。だから、先に逃げていてくれ)

 

 

「うん!」

 

 

アルフがクロノ達へ魔力弾を放った後で念話でそんな会話を交わすと、なのはとフェイトの戦闘の影響が無いように守っていたジュエルシードを手に取り、フェイトの方に投げ渡す。

 

 

「くっ!」

 

 

「っ!?」

 

 

フェイトへと青い魔力弾を放つのを目撃すると、素早くフェイトとクロノを繋ぐ斜線上に割り込むと、ザンバットソードの一閃で魔力弾を霧散させる。

 

 

「今のうちに」

 

 

「ありがとう…」

 

 

頭を下げて撤退していくフェイトとアルフの二人を見送ると、ザンバットソードを構えながらクロノ達へと視線を向ける。

 

 

「貴様! 何故邪魔をした!?」

 

 

「邪魔? 何の事だ…正体不明の不審者」

 

 

「正体不明だと、僕は時空管理局の執務官だ! 彼女達は僕に攻撃を加えた! この時点で公務執行妨害が適用された!」

 

 

ダークキバはパチパチと乾いた拍手を送りながら、

 

 

「…怒鳴っていると喉が枯れるぞ。第一…公務と言っているが…何処の国の組織なんだ? 少なくとも、それは日本にある組織じゃないな」

 

 

「なにを…。」

 

 

「まあ、“仮に”お前が公務を言える組織の人間と“仮定”すれば、牽制や威嚇も攻撃を仕掛けたとなるが…」

 

 

「だったら…」

 

 

「…お前は口頭で名乗っただけだ。口先だけ服装だけなら、幾らでも偽証は可能だ。そう言った組織の人間が最初にするべき事は己の身分証明じゃないのか? それとも…年齢からも考えて『執務官』と言うのは組織の中での見習いの事なのか? 監督している大人の付き添いも居ることだしな」

 

 

最後に『だとしたら、減点だな』と付け加え、『オレが言うのもなんだけど、大して歳の変わらない子供を前に出すなよ』と言う態度で問い掛ける。

 

 

付け加えると、ファンガイア族の中での身分証明は…トウヤの場合はキングの証であるダークキバへの変身、他のチェックメイトフォーならばチェスピースを模した紋章を相手に見せる事に当る。

 

 

「お、お前…」

 

 

「クロノ執務官、落ち着いてください」

 

 

デバイスらしき杖を握り締めながら、一番落ち着いた印象がある男が前に出る。

 

 

「確かにそちらの言う通りだ。君達がその魔法技術を持っている事、または関係者として判断した上で、此方の事を知っていると言う前提で話させて頂こう」

 

 

ダイルと呼ばれていた男はそう言いながらなのはの持つレイジングハートを指差す。

 

 

「何か質問が有ったら、質問してもらっても結構だ」

 

 

「…分かった…。そちらのお嬢さんもそれで?」

 

 

「え、あっ、はい!」

 

 

ダークキバに話を振られて慌てて返事をする。

 

ダイルの態度に微かに警戒を緩めながら、なのはとクロノ達の間に入るダークキバは自分へと向けられている殺気を感じ取る。

 

 

「先ずは駆けつけるのが遅れてすまなかった。先ほどの回収作業は確認していたのだが、この世界は本来、『管理外世界』、我々の組織が知る上で魔法技術の無い世界。其処にいる魔法技術を持った者が四人と使い魔が一匹…警戒して居た事と、封印作業中に突然入り込んでも互いに危険と考えたので、封印作業が終わる頃を見計らっていた」

 

 

(四人?)

 

 

「あの、一応、戦闘だったんですけど」

 

 

ふと、ダークキバがダイルの言葉に疑問を覚える中、ユーノの呟きが響くが…どう考えても、先ほどのそれは戦闘では無くダークキバの手によって施された“作業”にしか見えなかっただろう。

 

 

「…ん、エイミィ、なんだ。…分かった。其処のお前、直にその剣と鎧を此方に渡せ、ロストロギアの反応が確認された。」

 

 

デバイスを突きつけながらそう宣言してくれるクロノに、

 

 

「「はぁ」」

 

 

話に割り込んできてくれたクロノへのダークキバとダイルの溜息が重なった。

 

 

「ザンバットソードと闇のキバの鎧を渡せとはな…。それは出来ない。この剣も鎧も一族に伝わる至宝なんでな。武器である以上傷つく事は問題ないが、資格を持たない他人への譲渡ができる訳が無い」

 

 

「ロストロギアの不法所持の容疑が出ているんだぞ!」

 

 

「不法所持? 此方の世界での許可は持っているが」

 

 

「管理局法では違反になる! それは僕達時空管理局で管理されなければならない!」

 

 

「…無粋な事だ。他国、イヤ…そちらの立場なら異世界か…。どっちにしても、条約の一つも結んでいない異世界で自分達の世界の法を振りかざすとは…」

 

 

そう言いながらダークキバが掌を翳すと、出現したキバの紋がクロノの放った魔力弾を受け止める。

 

 

「お前を拘束する」

 

 

「はぁ…。一つ良い事を教えてやろう…」

 

 

そう言いながら、クロノの真上にキバの紋を出現させる。

 

 

「何がだ?」

 

 

「格上の相手への態度と言う奴だ。…先ずは、跪け」

 

 

「ぐぁ!!!」

 

 

キバの紋に引き寄せられる様に拘束されるとそのまま地面に叩きつけられる。ダークキバの言葉どおり、跪かされている様な形となる。

 

 

「き、貴様…公務執行妨害も追加されたぞ!」

 

 

「無粋に無粋で対応するのも気が進まないが…そっちがそのつもりなら、此方にも考えがある。Ⅱ世?」

 

 

クロノの言葉を無視しながら、ダークキバはベルトに留まっているⅡ世へとそう話しかける。

 

 

「なんだ?」

 

 

「…王キングへの攻撃…敵意ありと判断された場合は…我等一族の法では、こいつへの裁きはどうなる?」

 

 

「…状況が状況だからな。この場合、こいつはまだ自分の身分も証明せずに一族の至宝を奪おうとした。尚且つ、キングへの攻撃…一般のファンガイア族と人間の間でも、殺してしまっても正当防衛として一年程度の罰則で済まされるケースだ。お前の考えている事で間違いないぞ。此方の事を知らなかったとしても…下手をすれば、最悪の事態に陥る危険がある。極刑に処さなければならないだろうな」

 

 

そう言い切った後、二世は…

 

 

「お前自体への攻撃なら、お前の意志一つでどうにもなるが…闇のキバの鎧とザンバットソードを奪おうとした事、他の一族の者達にとって許せる事では無いだろう」

 

 

「分かった。…仕方ないな…。喜べ、初めて人間が…いや、異世界人か。どっちにしても、初めてファンガイア族の掟で裁かれるんだからな」

 

 

冷たい口調で倒れているクロノを見下ろしながら、ダークキバはそう宣言する。

 

 

「ふざけるな! お前に何の権限があると言うんだ!?」

 

「権限なら有るぞ。自己紹介が遅れて申し訳ない、オレはファンガイア族の王キング、この世界に住まう全ての魔族を纏める者。さて、先ほど読み上げた罪状を魔族の掟に照らし、お前自身の無知を持って減刑を加え…」

 

 

ダークキバはそう名乗り一礼すると、ザンバットソードを振り上げ、

 

 

「クロノ・ハラオウン、貴様に王の判決を下す………『死』だ!」

 

 

「な!? ふざけるな、なんだ、それは!?」

 

 

「そちらも適応されない、『管理外世界』で自分達の法を持ち出した。だから、こっちもお前の行動をオレ達ファンガイアの法である『掟』で裁いた。どうだ、少しは自分の行動の過ちを理解したか?」

 

 

「光栄に思え、普通ならあそこまで丁寧には行われない。刑罰だけ告げられるだけだ。……大抵は現行犯だがな」

 

 

そう言いながら、立ち上がるクロノにザンバットソードを向ける。

 

 

現在ファンガイア族を初めとする魔族には人間との共存を望んでいる者達が各種族の代表やチェックメイトフォーを含めて戦力・数共に最大勢力として存在している。だが、そんな者達の中でも…知らない事とは言え、闇のキバの鎧とザンバットソードを奪おうとしたクロノの行動は許せない事だ。最悪の場合は…クロノが原因で人と魔族が完全な敵対状態に陥る可能性もある。

 

 

ならば、

 

 

「さあ、覚悟は良いな?」

 

 

ゆっくりと全身からクロノを威圧する様に魔皇力を開放しながら、ダークキバはザンバットソードをクロノへと突きつける。先ほどの大木の怪物との戦いでも並みのバリアではザンバットソードの前には無意味だろう。

 

 

「うっ…あっ…。」

 

 

ダークキバから放たれる魔皇力に威圧されているクロノに切りかかろうとするダークキバだが、

 

 

「ダ、ダメ! そんな事しちゃ、ダメ!!!」

 

 

「っ!?」

 

 

そんな、ダークキバを止める様にクロノとダークキバの間になのはが立ちふさがる。

 

 

「邪魔を『待ってください!』っ!? 今度はなんだ?」

 

 

なのはの前でザンバットソードを止めると、空中にモニターが現われ、緑色の髪の女性が映し出される。

 

 

『時空管理局提督『リンディ・ハラオウン』です。その子の母でもあります。こちらに敵意はありません。どうか…これ以上は止めてくれませんか?』

 

 

「ダメだ。」

 

 

リンディと名乗った女性の言葉をそう一言で切り捨てる。

 

 

「そんな!?」

 

 

『私達は、そちらの事は何も知らなかったんです! こちらの不手際は謝罪します! その子を殺すのだけは…止めてください! お願いします!』

 

 

「…既に判決は下した。後は判決に従って裁きを下すだけ…これに例外は無い。…有ってはならない事だ」

 

 

『そ、そんな!』

 

 

「で、でも、だからってそんな事しちゃ、ダメだと思うの!」

 

 

なのははダークキバに抱きついて必死に止めようとしている。…ダークキバ…トウヤ自身、友人であるなのはに手荒なマネをする事は出来ない為に自分を止め様としているなのはを振り払う事はできない。

 

 

「(…仕方ない…。)Ⅱ世…」

 

 

「分かっている。お前達が異世界の人間で有る事に加え、事情を知らなかったと言う事を考慮して、今は見逃そう。だが、そいつに下した判決はまだ生きている。必要以上にこの世界に居るのなら、命は保障しない。それで良いか?」

 

 

「…異存は無い。貴女と君もそれで…。」

 

 

「は、はい!」

 

 

『か、感謝します…』

 

 

暫定的な裁きの見送り。幸いにもこの場に居るのはトウヤ達だけ、人と魔の戦争に繋がる危険の有る行動を起こしてくれたクロノへの裁きは永久的に先送りにしてしまえば問題ない。…第一…此処に居るのはトウヤ達を除けば真実を話した所で不利益になる者達だけ、向こうも好き好んで、『死の判決を言い渡されました』等と言う訳が無い。

 

相手はフェイト達からの話と、向こうの言葉を信じるのなら、別の世界の公務員…今回の事件が終われば二度と会う事も無いだろうと予想できる。

 

 

 

『グルゥ…。』

 

 

 

何処からか誰にも聞こえないほど小さい獣の呻き声が響く。

 

 

「ふざけるな、犯罪者が!」

 

 

一人だけまだ抵抗する気で居るクロノだが、

 

 

『クロノ、少し黙りなさい』

 

 

「しかし、艦長…」

 

 

『クロノ・ハラオウン執務官! 命令です。少し静かに』

 

 

「………了解です」

 

 

艦長命令を出され引き下がる。

 

 

 

 

「向こうがこれ以上手を出さないなら、今は見逃す…。だから、そろそろ離れてくれないか?」

 

 

「あっ! は、はい!」

 

 

ダークキバの言葉に自分の行動を思い出し、慌ててダークキバから離れようとするなのは、

 

 

だが、

 

 

『ダァークキバァ!!!』

 

 

「っ!? 高町さん、離れて!!!」

 

 

「え? 高町さんって…」

 

 

突然の咆哮と共に襲い掛かってくる一番落ち着きの無かった男が、爪型のデバイスを起動させダークキバへと襲い掛かって来る。突然の行動からなのはを庇う為に正体を隠す演技も忘れて突き飛ばす。

 

 

「くっ! 行き成り何を!?」

 

 

ザンバットソードを盾に男の爪型デバイスを受け止めると、

 

 

「もう我慢できねぇ!!! ダークキバ!!! アニキの仇だァ!!! ウオォォォォォォォォォォォォォオン!!!」

 

 

「なに!?」

 

 

二つの咆哮が重なって響くと男の姿が異形の物へと変わる。灰色の体色、頭部には二つの狼を思わせる顔…何処かウルフェン族に似ているが、此処までの異形は13の魔族の中で唯一…一種族だけしか確認されていない。

 

 

「まさか…」

 

 

 

 

 

『あれは…獣化の希少技能レアスキル? はっ、ダイル隊長、彼は貴方の部下でしょう、早く止めてください!』

 

 

「すみません、突然だったもので。(馬鹿者が、…封印された代が兄の仇とは言え、勝てる訳の無い、闇のキバに向かっていくとは…我慢させすぎたか)」

 

 

 

 

 

「あっ…あ…」

 

 

「なんだ…あれは…」

 

 

ダークキバへの憎悪と共に感じられるのは餌を与えられなかった獣の放つ食欲からなる殺気…。近くに居る者達の中で耐性の無いなのはとユーノの二人は直接的にぶつけられるそれに恐怖を感じる。

 

 

「…その姿…貴様…まさか」

 

 

ダークキバは異形の姿になった男の体を蹴り上げ、男だった者を突き飛ばすと、なのはとの間にマントを翻しながら彼女達を守るように立つ。

 

 

そして、茶色の体とウルフェン族をイメージさせる双頭を持ち、両腕には爪型のデバイスを装備した異形の怪物へと、確信を持って言い放つ。

 

 

 

双頭の魔犬…ギリシャ神話における地獄の番人ケルベロスを兄に持つ双頭の犬、『オルトロス』の伝承の元となりし、伝説種レジェンドルガ

 

 

 

 

「…レジェンドルガ!?」

 

 

 

 

『オルトロスレジェンドルガ』

 

 

 

 

 

 

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