「…その姿…貴様…まさか。…レジェンドルガ!?」
姿を変えて咆哮する男…『オルトロスレジェンドルガ』を見てダークキバは思わずそう叫んでしまう。既に封印から開放されている以上、何時かは出て来るであろうと考えていたが、これは予想外の遭遇としか言えない。
(…プレシアさんの一件から、レジェンドルガが次元世界と言う範囲で生きているとは予想できていたが…時空管理局と言う組織の中に入り込んでいると言うのは…最悪の事態としか言えないな)
最大規模の権力と武力を有した警察兼軍隊と言える巨大な公的機関の中にレジェンドルガが紛れ込んでいる。それは、次元世界…否、『管理世界』では住人達の知らぬ間にレジェンドルガ達に支配されていると言う最悪にも繋がる可能性がある。
一つの世界その物がレジェンドルガの為のライフエナジー牧場でも有り、人の悲鳴や絶望を至上の音楽として好むその性質から超巨大なコンサートホールでも有り、人を狩る為の運動場でもある。…考えれば考えるほど最悪としか言えないだろう。
…だが、冷たい言い方だがトウヤにすれば、その最悪は別に地球に被害が無い限りは別に困らない。トウヤはセイギノミカタではなく魔王キングなのだから、守るべき範囲と其処にいるべき守るべき人達だけ守れれば十分…言ってみれば、『無価値か無関係の九を切り捨て、守りたい一は命を賭して救う』、それがキングであるトウヤの考え方だ。
文献から見つけられるレジェンドルガについての手掛かりと管理局と言う組織についての情報から纏めると、そんな最悪な状況に陥っている世界が幾つも有る事に繋がってしまう危険もある。
トウヤの考える最悪は…地球を除く世界の全てがレジェンドルガに支配される事、他の世界の人間が逃げ場として自分の守る地球に入り込まれる事である。
それが、トウヤの考えていた最悪の中の“最悪”の事態。技術力・戦力に差がある相手がこの世界に入り込む事と、“食事”と“娯楽”を求め、レジェンドルガが地球に戻ろうとする事。
後者は考えるまでも無い。かつて、他の魔族と一部の人間達が協力して行ったレジェンドルガとの戦争が再び起こる事に繋がる。
…一種の魔族が一つの伝承の元になったのに対して、単独で一つの伝承の元になるほどの個々の戦闘力と凶悪さ、他の種族を仲間に変える特異な増殖性、他の種族との間にある意識の違いに至っては絶望的…。共存の為の努力の果てに多くの者が命を賭し、当代のキングが命と引き換えに消滅へと繋がる封印を施した種族との。
前者は何が起こっても不思議ではなく、中には侵略行為を行おうとする者も出るかもしれない。その時、自分が取るべき選択は…今のトウヤには何も見えてこない。
「死ねェ!!!」
「くっ!」
ダークキバはオルトロスレジェンドルガの振り下ろした爪型デバイスをザンバットソードを使って防ぐ。
ザンバットソードの刃の位置を相手に向ける様に回転させ、爪型デバイス毎オルトロスレジェンドルガを切り裂こうとするが、
「チッ!」
それよりも早くオルトロスレジェンドルガが跳んでその場から離れた事でザンバットソードの軌跡は虚しく空を切る。
「これならどうだ!!!」
そう叫ぶと同時にオルトロスレジェンドルガの周囲に無数の魔力弾が現われ、一斉にダークキバへと殺到する。
「その程度か?」
それを余裕と言った態度でザンバットソードを振り、時にはキバの紋を盾にして防ぐ事で自分へと殺到する魔力弾を捌く。
「温い攻撃だな。多数を相手にしている訳じゃない。一人を相手に攻撃は、最強の一撃、それだけ有れば…」
ゆっくりとザンバットソードの刀身を指先で撫でると、刀身が赤く染まる。そして、踏み砕くほどの踏み込みと共にオルトロスレジェンドルガへと切りかかる。
「ギャァ!!!」
「十分だ!」
バリアを張りながら後に跳んで避けようとするが、それよりも早くダークキバの振り下ろしたザンバットソードは、オルトロスレジェンドルガのバリアに何の抵抗も許さずに切り裂き、オルトロスレジェンドルガの体を浅くだが切り裂く。
クロノSIDE
「す…凄い…」
ダークキバとオルトロスレジェンドルガの戦いを見ながらクロノは呆然と呟く。
そして、
「…あいつ…僕には手を抜いていたのか…?」
オルトロスレジェンドルガの先ほどの攻撃はクロノにも同じ事は出来るだろうが…それでも、あそこまで簡単には出来ないだろう。そして、それを無傷で防いで見せたダークキバには自分の魔法がどれだけ通用したのか…と考えずには居られない。
オルトロスレジェンドルガに向かって振られた一閃を避ける事が…浅い切り傷程度で済んだだろうかと考えずには居られない。
「…無理だ…」
自分の立場を先ほどのオルトロスレジェンドルガに置き換えれば…結果は、避けきれずに真っ二つにされる未来しか想像出来ない。
(…バリアを切り裂いたのもあの剣のロストロギアの…あの身体能力も鎧のロストロギアの…力なのか…?)
身に着けているロストロギアの膨大な魔力で本人の魔力は推定できないが、艦からの報告ではそれだけでも最低でもSクラスの魔力を軽く凌駕しているそうだ。
(…あれはやはり僕達の…管理局の元にあるべきだ。あれがあれば…あれを管理局が自由に使えれば…)
SIDE OUT
「さて、答えてもらおう…。お前はオレの事を『仇』と言っていたな? 悪いがオレがレジェンドルガと戦うのはお前が初めてだ。お前は『宝玉』に封印されていた…アークと共に封印されたレジェンドルガなのか?」
「ケッ! そうだよ! あの忌々しい封印のな!!! あの戦いでアニキを殺したのも…その鎧を着ていた…ファンガイアのキングだ!!!」
(…やっぱりな…。なんだ?)
「ウォォォォォォォォォォオオオオオオ!!!」
咆哮と共にオルトロスレジェンドルガの爪型デバイスから薬莢の様な物が排出された。それを疑問に思っていると、再び魔力弾を無数に出現させる。
「なに!?」
「奴の魔力が上がっただと?」
突然の力の上昇に疑問を感じながらも、ダークキバはザンバットソードでの迎撃とキバの紋による防御にフットワークを利用した回避を加えてオルトロスレジェンドルガの攻撃を捌いていく。
「だが、防げないほどじゃないな」
最後の一つの魔力弾を握り潰しながらそう宣言する。
「テメェ!!! ヘッヘッヘッ…コイツならどうだ!?」
「…見ていなかったのか…無駄に数を揃えた所でオレには効かな…チッ!」
再び魔力弾を出現させるが、それでは先ほどの事と変わらない。そのはずだ。
だが、それではオルトロスレジェンドルガの顔に浮んだ笑みの意味が分からない。
その笑みの意味に気が付いた瞬間、なのはの元へと走る。
「ふぇ!?」
「貴様!!!」
「オラァ!!! しっかりと庇えよな!!!」
オルトロスレジェンドルガの放った魔力弾は一斉に殺到する…それも、ダークキバにではなく、なのはへと向かって。
数もスピードも二撃目のそれに匹敵する為、ザンバットソードとキバの紋だけでは防ぎきれない。
「き…きゃあ!!!」
「くっ!」
全てがダークキバへと向かっているのなら、まだ何とかなるが、その全てはなのはへと向かって行っている。全てを防ぎ切る事は出来ないので、防ぎきれない物は全てダークキバが盾となって防ぐしか無い。
一撃一撃は軽い物だが、衝撃までは完全に殺しきれない。
「これは殺傷設定に…管理局員がどうして?」
「…まったく、人間どころか、他の種族を見下しているレジェンドルガが下についているとは…どれだけ人望がある奴が上に居るんだ?」
「Ⅱ世、こんな時に面白くない冗談は止めてくれ」
ダークキバはキバットバットⅡ世の言葉にそんな言葉を返す。
レジェンドルガは時空管理局と言う組織を利用して何かを企んでいる。レジェンドルガの能力を考えれば、既に多くの人間の知らない内に、完全に上層部はレジェンドルガに支配されている可能性さえもあるのだ。
なのはへの攻撃を防ぐ為に盾となっている状況ではウェイクアップフエッスルは使えない。
「さっきは最強の一撃で十分とか言ってたよなぁ? …だったら、この手で殺してやる!!! 死ねぇ!!!」
両腕の爪型デバイスから薬莢が飛び出し、両腕の爪から魔力で構成された刃が伸び、一直線にダークキバへと向かう。
「ウェイクアップ1!」
最後の魔力弾をザンバットソードを投げる事で迎撃すると、僅かに魔力弾での攻撃が止んだ瞬間を逃さずにキバットバットⅡ世にウェイクアップフエッスルを吹かせる。
自身へと向かってくるオルトロスレジェンドルガの両腕の爪に有る十の魔力刃を掻い潜り、オルトロスレジェンドルガの体に必殺のストレートパンチ、ダークネスヘルクラッシュを打ち込む。
「ガァァァァァァァァァアア!!!」
ダークネスヘルクラッシュの直撃により、全身に皹が入るが、それでもまだ倒す事には至っていない。全身に皹が入りながらも、オルトロスレジェンドルガは爪型デバイスから伸びる十本の魔力刃をダークキバへと振り下ろす。
「くっ!」
とっさに左手を盾にして防ぐとダークネスヘルクラッシュを打ち込んだ部分を蹴り、距離を取ると地面に突き刺したザンバットソードを回収する。
「二度のウェイクアップか、無茶をする」
「ファンガイア族の…魔族を統べる王として…レジェンドルガ…貴様に王の判決を言い渡す」
「ウェイクアップ!!!」
鳴り響く二度目のウェイクアップの音色、鳴り響くのはザンバットソードの鍔から出現させた金色のフエッスルの音色、
「『死だ!!!』」
『ファイナル、ザンバット!!! 斬!!!』
「ガァァァァァァァァァァァァアアアア!!!」
ダークキバとキバットバットⅡ世の裁きの声が重なり、ザンバットソードの斬撃がオルトロスレジェンドルガを切り裂き、憎悪の篭った視線を最後の瞬間までダークキバに向けながら爆散し、砕け散る。
「ハァ…ハァ…。」
『必殺技』はその文字の如く“必”ず相手を“殺”す“技”。だが、それ程の破壊力を持った技を使った使用者への反動は当然だが有る。
ファンガイア族に伝わる“三つ”のキバの鎧、その中でも黄金のキバの鎧と対となり、力を制限されていない最強の闇のキバの鎧。それの持つ三つの必殺技の内の一つと、ザンバットソードの持つ必殺技。そんな技を短時間で二度も…大人ならば兎も角、幾ら才能が有るとは言え小学生と言う年齢の体で使ったのだから、トウヤ自身へのダメージは…。
「ぐ…。」
「トウヤ!!!」
装着者の限界を感じ取り、これ以上のダークキバへの変身は危険と判断したキバットバットⅡ世は、慌ててダークキバより離脱する事で変身を解除する。それと同時に限界を迎えていたトウヤの体がゆっくりと崩れ落ちる。
「ふぇ!? トウヤ君!?」
「彼は、あの時の!?」
変身が解除されたトウヤの姿を見てなのはとユーノの二人は驚愕を露にする。なのはは倒れたトウヤに駆け寄る。
『クロノ、ダイル隊長、彼をアースラに!』
「は、はい!」
「了解しました」
今までダークキバとオルトロスレジェンドルガの戦いを魅入っていたクロノと、敢えて手を出さなかったダイルが倒れたトウヤへと彼に駆け寄っているなのはとキバットバットⅡ世に近づいていく。
『悪いが、ちょっと待って貰おうか?』
「ふぇ?」
「お前は…」
そんな時に響く第三者の声。
現われるのは白いチェスピースのキングを思わせる一人の騎士。
「ここには結界が張られていたはずなのに…」
「おぉ~、あの結界はそこの少年が張ったのか? お蔭でここに入るのには結構苦労したぞ」
白い騎士はなのはの肩に乗るユーノに向き直り、感心した様にそう告げる。
『貴方は何者ですか?』
「おお、美しいお嬢さん、オレが何者かって聞かれたら、こう答えるしかないだろうな。こいつの父親だ。」
倒れるトウヤ達に近づきながら映像の中に映るリンディへとそう告げ、白い騎士『仮面ライダーサガ』…トウヤの父にして先代のキング…『オトヤ・F・クリムゾン』は、クロノとダイルへと向き直る。