闇の魔王様と魔法少女達   作:龍牙

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第十二話『トラブルはトラブルを呼ぶ…な。by.トウヤ/二度目だな、その台詞は。by.キバットバットⅡ世』

「ここは…? キャッスルドランの自室…なのか…?」

 

トウヤはゆっくりと瞼を開けて体を起こすと周囲を見回す。二度のウェイクアップの反動は思った以上にトウヤの体に負担が有ったのだろう…強制的に変身解除させられた事だけは覚えているが…。

 

 

「おお、目を覚ました様だな~」

 

 

「何時帰ってきたんだ…父さん…」

 

 

部屋の中にいる人物達の中の一人の声に対してトウヤは絶対零度の響きを持って答える。

 

 

トウヤ自身父親の偉大さを知っては居るのだが、どうしても、性格的に素直に尊敬できない相手だ。…トウヤ自身シリアスが長続きしない性格とは言え…。

 

 

…それでも、互いを十分に信頼している為にこの二人の親子の仲は悪くない。

 

 

ビショップ曰く、『似て無い様で似ている親子』らしい。

 

 

「久しぶりに会う父親に対してそんな言葉を…父さんは悲しいぞ~」

 

 

「…少なくとも…何年も子供を放っておいて家を空けているんだ…。この程度で許しているんだから感謝しろ」

 

 

「む~…トウヤ君、久しぶりに会ったお父さんにそう言う態度は良くないの!」

 

 

「お父さん、お帰りなさい。久しぶりに会えて嬉しいよ」

 

 

一緒に部屋に居たなのはの抗議に従って棒読み気味でそんな対応を返すトウヤだった。

 

 

「あー…そんな、棒読みで感情の篭ってない態度より、オレとしては今までの態度の方が良いと思うぞ、トウヤ」

 

 

「…言っといてなんだが、オレもそう思った。…まあ、それは兎も角…お帰り、父さん。それと、高町さん、怪我が無い様でなによりだね」

 

 

今までの冷たい口調は嘘の様に消え去り、気安い笑顔を浮かべながらトウヤはそう前半の言葉をオトヤへと、後半の言葉をなのはへと告げる。

 

 

「そう言うお前は随分と無茶をしたな。ダメージではなく、技の反動で変身解除など…そうそう有る事じゃないぞ」

 

 

そう言ってトウヤの肩に降りるのはキバットバットⅡ世。

 

 

「まったくだ。お前に王位を譲ったオレが言える立場じゃないが…才能は兎も角、その体は未熟な子供なんだ。無茶をしたら必ず取り返しのつかない事になる」

 

 

「…ごめんなさい…。だけど、あの時は…無茶をするしかなかったんだ…」

 

 

「それでもだ。大体お前は自分の事を粗末に扱い過ぎる」

 

 

「まあ、その無茶で女の子を庇っていた所は良くやったと言えるがな」

 

 

説教に対して素直に謝るトウヤを褒めながら頭を撫でるオトヤ。

 

 

「…えっと…。それで、父さんはどうしてこっちに…? 海外の方はまだ…」

 

 

「それでも、ビショップからの報告だと、お前一人だと無茶をしそうだったからな。暫くはお前の仕事を代行する為に帰って来たと言う訳だ」

 

 

オトヤの言葉に申し訳なさで一杯になる。

 

王族が直接統治している日本に比べて海外では魔族と人間の間にある溝は大きい。それを解決する為に小学生と言う年齢だが才能有るトウヤに王位を譲り、トウヤの補佐をキバットバットⅡ世にオトヤは任せて旅立った。

 

本来なら、まだ世界中を飛び回っているはずなのに、今回の事件が原因でオトヤは予定を切り上げて帰るしかなかったのだ。

 

 

「そう言う訳だ。トウヤ、お前は暫くの間事件解決に専念しろ。どうせ、止めても無駄なんだろうからな」

 

 

「…はい…」

 

 

「それじゃあ、お前も目を覚ました事だ。後で詳しい話を聞かせて貰おうか? …奴等レジェンドルガの影を掴んだって言う話はオレも気になる事だしな」

 

 

「ええ。その事について…ビショップやルーク、次狼さん達にも聞いておいて貰うべき事が新たに判明しました」

 

 

「っ!? なるほどな、お前がそう言うなら相当重要な事なんだろうな」

 

 

オトヤはそう言って頷くと、『集めておくから、彼女と話してから来い』となのはを指差しながら言ってトウヤの部屋を後にするオトヤ。

 

 

「そうそう、そこの少年も…そろそろ元の姿に戻った方が良いんじゃないのか?」

 

 

出て行く寸前になのはの肩に居たフェレット…ユーノだけに聞こえる様にそう言って立ち去っていく。

 

 

「…あー…出来れば、オレとしては高町さんには此処から先には関わって貰いたく無いんだけど…」

 

 

彼女とは(トウヤの持っている感覚で)それ程親しい訳ではないが、それでも『高町なのは』と言う少女の性格はある程度理解している。だからこそ返って来る返事は…

 

 

「いや!」

 

 

彼の予想通り『NO』だった。

 

 

「…はぁ…そう言うと思ってはいたけど…」

 

 

「…事態を考えるとかなり危険と言う訳か…テスタロッサ嬢もそうだが」

 

 

思わず溜息が重なってしまうトウヤとキバットバットⅡ世。タダでさえ、自分を倒す為の兵器としてジュエルシードを狙っているファンガイア族の過激派に加えて、姿を現した伝説にのみ語られながら、その力と存在は確かなものとされている最強種レジェンドルガ。

 

 

「高町さんは…フェイトさんに…何をしたい…?」

 

 

殺気こそ込めていないが、鋭さを増した視線をなのはへと向ける。飽く迄トウヤが聞きたいのは純粋になのはの言葉での答え。故に彼女の肩に乗っているユーノには『黙っていくれ』と言う視線を向けている。

 

 

「私は…お話をしたい…」

 

 

「…何を話すんだ…? 高町さん…君は…彼女と話してどうしたい?」

 

 

「…私はフェイトちゃんと…友達になりたいの!」

 

 

彼女から返って来た返事も予想通りの物だった。

 

 

「友達になる方法は魔法と言う事に関わるだけが方法じゃない…。これ以上此方側に関わらない事を約束するなら…オレから高町さんと話す様に頼んでも良い」

 

 

「でも!」

 

 

「これ以上関わり続けると…君が思っている以上に…いや、確実に君が考えているものよりも遥かに危険だ」

 

 

「でも、トウヤ君。私は…どうしてフェイトちゃんがあんなに悲しそうな目をしているのか、どうしてジャエルシードを集めているのか知りたいの! だから…」

 

 

「仕方ないか…」

 

 

其処まで彼女の言葉を聞き、トウヤはベッドから降りると服装を確認する。ダークキバに変身している時に来ていた物に間違いない。

 

 

そして、次に時計を確認すると、時間は既に六時を過ぎている。…流石にトウヤと同じ歳の女の子が家に帰らないのは拙い時間帯だろう…。

 

 

「はぁ…。高町さん、家に連絡をして今日は此処に止まっていくと良い。話は長くなりそうだし、これからも『魔法』と言う物に関わるなら、此処から先の話を聞いておいた方が良い。そっちのフェレットはジュエルシードの事は詳しいんだろう?」

 

 

「は、はい」

 

 

「あっ、家にはトウヤ君のお父さんが連絡してくれたから、大丈夫なの」

 

 

「…………」(父さん…さすがに、手際が良すぎるだろう?)

 

 

なのはの言葉に思わずそんな事を思ってしまう。

 

 

「それと…先に教えておくけど、オレは彼女がどうしてジュエルシードを集めているのか、知っている」

 

 

「だったら、それを「悪いけど、オレは教えられない…。」どうして教えてくれないの?」

 

 

「友達になりたいなら、彼女の口から直接聞く方が良いし、オレから聞いた所で“オレが裏切った”事にはなっても、“君が友達になった”訳じゃない」

 

 

だからこそ、トウヤがそれを知っていると言う事を教えた事が彼女をトウヤが信用しているから教えた結果だ。

 

 

そして、トウヤが彼女に着いて来いと促して部屋を出て行く。そんなトウヤを追いかけてなのはが部屋を出ようとした時、机の上に置かれていた『シャイニング』のメモリが彼女の元に行こうとする様に床に落ちた。

 

 

彼女達…なのはとユーノはそれに気付かずに部屋を出て行く。それを悲しむ様にシャイニングのメモリは輝いた。

 

 

 

 

 

 

キャッスルドランの中の大会議室…

 

 

円卓を囲む様に一番奥にある豪華な装飾が施されたイスが一つ有り、その隣に誰も座っていないイスが二つほど置かれている。そして、奥に置かれたイスの隣にオトヤが座している。その奥にビショップとルーク、次狼、ラモン、力と言ったファンガイア族の重鎮二人と各種族の代表三人が座している。

 

 

トウヤはゆっくりと奥に置かれた豪華な装飾が施されたイスに座ると…。

 

 

「…父さん…オレの隣の席が高町さんなのは予想できるけど…何故間に二つも?」

 

 

奴等レジェンドルガの事を話す以上は自分達ファンガイアの事を話す必要が有るのは理解しているが、それほど離す必要があるのも当然なのかと思わず考えてしまう。

 

 

「それじゃあ高町さん、改めて自己紹介させて貰う。オレの本名はトウヤ・F・クリムゾン。そこに居る父さんから王位を受け継いだ…闇の一族…魔族の王だ。」

 

 

「ふぇ? ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 

なのはとユーノが驚くのも無理も無いだろう。…なのはにしてみれば、行き成りクラスメイトが『王様』だと言われたら流石に驚くしかない。

 

 

「あー…驚くのも無理も無いけど、取り合えず説明だけはさせてもらえるかな?」

 

 

「う、うん。」

 

 

簡単にトウヤ達の一族の事を説明する。…流石に吸血鬼ならぬ『吸命鬼』と言う部分の説明の時は本気で怯えられたが…。

 

 

そして、管理局員として存在していた男が封印されていたはずの種族、レジェンドルガで有ったと言う事も…。

 

 

「ま、まあ、怖かったら今からでも家に送るけど…。」

 

 

トウヤの言葉になのはは慌てて首を横に振る。少なくとも、それほど怖がられては居ないのには安心したが…。

 

 

「そうか、それは良かった。それじゃあ、お嬢さんはトウヤの隣に座ってくれ。知っている相手の隣の方が安心できるだろう? それと…そっちの少年はそろそろ“元の姿”に戻ってくれないか?」

 

 

「何時から気付いていたんですか?」

 

 

「…まあ、こう見えても先代のキングなんでな、その程度の事は出来ないとな。少年の生命力のそれは人間のそれに近かったからな」

 

 

「それじゃあ……」

 

 

ユーノとオトヤの会話に『?』マークを浮かべるトウヤとなのはの二人。そして、ユーノが人間の姿になった。…オトヤとの会話が正しければそれが本来の姿なのだろう。

 

 

「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

「な、なのは!?」

 

 

「た、高町さん…知らなかったのか…?」

 

 

そう呟いた後、ふとユーノへと視線を向ける。

 

 

「…聞きたい事が有るが…その前に温泉の一件の時には居ない物と思ってそっちの事情も聞かずに好き勝手言ってしまってすまなかった」

 

 

そう言って頭を下げた。

 

 

「え!? そ、それは…ぼくも言われても仕方ない事だと思っているし…」

 

 

「…そうか…。それと…こっちは聞きたいことだけど…ユーノ…だったか? フェレットの姿の時…もしかして…高町さんの部屋で…」

 

 

「う、うん」

 

 

「…同じ事が二度もあっても困るだろうけど…参考までに聞いておいてくれ…。真っ先にそう言う場合の協力者が女性だった時には自分が人間だと話した方が良い」

 

 

「え、えーと…」

 

 

「今のオレ達の年齢なら問題も有るだろうけど…流石に同じ歳の女の子の部屋に居たというのは…一歩間違えれば変態扱いされる危険がある」

 

 

「う、うん」

 

 

淡々と告げられるトウヤの忠告に思わず頷いてしまう。

 

 

付け加えると、何を思い出しているのか激しく疑問だが…顔を真っ赤にしているなのはが絶叫している。

 

 

 

さて、会議が開始されたのはなのはが落ち着いてからだった。空席が多い為に着席する者が居ないイスは片付けられた円卓にトウヤを上座にして座る一堂。

 

 

先ずはなのはが『魔法少女』になる切欠となった事故についてユーノから説明がされた。

 

 

「なるほど、あれが撒かれたのにはそんな事情が有ったのか」

 

 

「はい…それで僕が回収しようと」

 

 

「行動は立派だが、無謀だな、少年」

 

 

「ですが、彼が動いてくれなければ、被害は間違いなく大きくなっていたはずです」

 

 

ユーノの言葉に向けたオトヤの感想にビショップがフォローする。

 

 

「そうだね。彼が動いてくれなかったら、キングも苦労した筈だよ」

 

 

「そ、う」

 

 

続いてビショップの言葉に賛同するのはラモンと力の二人。

 

 

「だが、結果的にそいつは一つを封印するだけで力を使い果たした。運が悪ければ、そこで命を落としていたかもしれない。自分の限界ちからを正しく評価できるのも大事だぞ」

 

 

「だが、中々見所があるな」

 

 

感心しながらもユーノの無茶を嗜める次狼と、感心するルークの二人。この場に居る中でトップクラスの戦士と言える二人からはユーノは中々気に入られている様子だ。

 

 

「所で、時空管理局…レジェンドルガが入り込んでいると思われる組織は…?」

 

 

「それなら、三日後に改めて話し合いをする事になった。そう言う訳だ、オレも付き合うぞ」

 

 

ふと気になった自分が倒れた後の事を聞くとオトヤはそう答える。なのは達に確認の為に視線を向けると、『そうだ』と肯定してくれる。

 

 

「まあ、向こうとの話は良いとして…フェイトさんの事は…」

 

 

「彼女は我々の恩人です。キングに牙を向けた者達の所に等、しかも、レジェンドルガの近くになど渡す訳には行きません」

 

 

そう言ってくれるのはビショップ…。プレシアの行動次第だが、これでフェイト達を自分達の下で保護することは出来る。

 

 

「あとは…レジェンドルガか…」

 

 

「まさか、時空管理局の中にそんな奴等が入り込んでいたなんて…」

 

 

「…能力から考えてネズミ算式に組織を乗っ取れるからな…。クロノとか言った執務官とか言う役職の奴の反応から考えて、まだ完全に全員がレジェンドルガと言う訳じゃ無さそうだ」

 

 

「ですが、それも時間の問題でしょう。一歩間違えれば…我々の世界の外は既にレジェンドルガに影ながら支配されていても不思議ではありません」

 

 

「そんな!」

 

 

思わずビショップの言葉に反応するのは次元世界出身のユーノだった。自分の部族の仲間達がそんな危険な状況にあるのだから、その反応も当然の事だろう。

 

 

「可能性としては有りえるな…」

 

 

「ですが、まだ表向きは正常に組織が動いている様にしているのでしょう…。奴等としては次元世界と言う外の世界は…トウヤ様やオトヤ様の様な天敵ライダーの居ない新天地フロンティアと言えるでしょうから」

 

 

「開拓の為の人材が何も知らない局員と言う訳か…」

 

 

「優秀な人材は正に良い『働き蟻』と言った所でしょうね。文字通り…自分達の開拓した土地を管理する為の」

 

 

「やれやれ、封印されている間に奴等も知恵を付けたかもしれないって言う訳か?」

 

 

「厄介な話だな。あー…高町さん、着いて来れてる?」

 

 

「う、うん」

 

 

一人話しに参加できていないなのはに休憩も兼ねてトウヤは簡単に説明する。ある程度なのはに理解をしてもらった所で再び会議は再開される。

 

 

 

 

 

 

 

 

会議終了後…

 

 

「トウヤ様、高町様、スクライア様、お食事をご用意いたしました」

 

 

「「うわぁー」」

 

 

トウヤに案内されて食堂に通されると並べられた豪華な料理に思わず歓声を上げる。

 

 

「今日は珍しく豪華だな」

 

 

「お客様を歓迎する意味を込めて用意させていただきました。それでは、ごゆっくり」

 

 

そう言って食堂を出るビショップを見送って夕食を食べ始めるトウヤ達だったが…。

 

 

「えっと…トウヤ君…?」

 

 

「どうしたの、高町さん?」

 

 

「何でデザートから食べ始めてるの?」

 

 

「…フルーツのサラダだから問題ないよ…」

 

 

「でも…真っ先にイチゴから食べ始めるのは…」

 

 

「好きなだけだ。イチゴの味が…数少ない母さんとの思い出だからな」

 

 

「トウヤ君…」

 

 

ファンガイア族のキング…トウヤ・F・クリムゾン…。

 

 

「…母さんが生きていた頃…作ってくれたイチゴミルクの味がな…」

 

 

僅かに残る二度目の人生での母の面影を…。一度目の人生の中で見えなかったそれを…。

 

 

「そうなんだ。ごめんね…」

 

 

「謝る必要は無いよ、高町さん」

 

 

微かな記憶の中から見つめ続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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