「…なあ、Ⅱ世…オレは何てコメントするべきだと思う…?」
「…オレに聞くな…。頼むから」
アルフとユーノと共になのはとフェイトの一騎打ちを見学しているトウヤとキバットバットⅡ世が引きつった笑顔を浮かべながら声を揃えてそうコメントする。
フェイトの拘束バインドからの大技に耐えたなのはが今度は同じ様にバインドでフェイトを捕らえ………見た限り本当に非殺傷なのか疑問に思える大技を使おうとしていた。
「受けてみて! ディバインバスターのバリエーション!」
彼女のデバイス、レイジングハートに集う光は桜色だけではなく所々フェイトの金色のそれも見える。
「『スターライトブレイカー』!!!」
「…お前も人の事は言えないが…何と言うか、容赦ないな」
「それは自覚してる。だけど…フェイトさんの大技に耐えた高町さんの頑丈さには感心するが、あれは良い戦い方とは言えないな」
ふと、彼女達の決闘を眺めながらトウヤはそう呟く。
トウヤは戦闘時にはダークキバの鎧と言う高い防御力を持っている鎧を纏っていても攻撃を受けるのは常に最小限に留めている。
防御に自身があったとしても回避するに越した事は無いのだし、ゲームの様に一晩休んで完全回復とは行かない以上ダメージは戦う度に蓄積されていく、相手の攻撃力が自分の防御力を上回ったら危険だし、何らかの理由で防御が低下してしまったら、自分の防御を過信している状態で受けたとして…その結果は考えたくも無い。
少なくとも、ダークキバになったトウヤならザンバットソードを使わなくても、確実に先ほどのなのはの防御を貫ける自信がある。トウヤに匹敵する力を持った者を相手にした場合…彼女の戦い方は間違いなく危険だ。
付け加えるなら、トウヤの場合はキバの紋を使って拘束後連続攻撃を無防備な相手に叩き込むと言う戦い方はするが必殺技ウェイクアップフエッスルを使う時には拘束はしない。
(…これ以上彼女が関わらないなら良いが…まだ続けるなら、戦闘での回避の重要性を教えよう)
クラスメイトにこれ以上危険な事に関わってもらいたくは無いが、関わる気が満々である彼女を説得するのは無理だと諦めている魔王様トウヤでした。
「…ところで一つ良いか…?」
「どうした?」
「救助用に待機させていたシュードランだが…彼女達の魔力に怯えている様子だぞ」
「拙い!?」
「まあ、心配ないだろう。シュードランはお前よりも彼女達に懐いていたから…」
キバットバットⅡ世の羽が指す先では、海へと落下していくフェイトを海から飛び出してきたシュードランが受け止めていた。最近、自分よりもなのはとフェイトの二人に懐いているシュードランの事を思うと妙に悲しくなるのは何故だろう。
「…二人とも、オレは何時フェイトさんに真実を話すべきだと思う…?」
「ぼ、ぼくに聞かないでよ…」
「アタシに言われても…ねぇ」
決着の光景を眺めながら、確実にフェイトの精神に大ダメージを与えてくれそうな真実だけにどう話すべきかと悩むトウヤだった。ユーノとアルフに相談してみても明後日の方向に顔を逸らしてそう言われてしまう。
「兎も角、一度プレシアさんの所に行って治療の準備だな」
「一時的とは言え人間の魔族化か…人助けとは言え、禁忌の技術に手を出す事になるとはな…」
「裁きは受ける…全てが終わった後にな」
…実際、その裁きが『王なんて辞めてやる!!!』と常に叫んでいるトウヤにとっては別の意味で最悪な物になるのだが…それはそれ、もう少しだけ先のお話となる。ただこれだけは言える…何処まで行ってもトウヤは王様キングと言う立場からは絶対に逃げられないのだろう。………地位が上がる事はあっても。
「でも、こんな結界まで張って時空管理局は…」
「外に最強戦力ルーク達を待機させてあるからな…全員が戦い方によってはオレでも負ける人達だからな…」
「えーと、それって…」
何事も無い様に答えたトウヤの言葉にその状況を想像すると…他人事ながら顔色が悪くなるユーノだった。
「とは言え、敵にレジェンドルガが居る以上は警戒してし過ぎるって事は無いな」
クロノレベルの相手ならばルークやビショップ達ならば…“当然”ながら敵では無い。だが、相手がレジェンドルガとなると話は別だ。…以前倒したオルトロスレジェンドルガは戦った印象から明らかに下っ端…小物だった事が分かる。ならば、推測の段階だがアースラの中には最低でも一人、もっと強い力を持ったレジェンドルガが必ず居ると考えて間違いないだろう。
態々今回の決闘の際に周囲に最強クラスの戦力を動かしてまで注意していた理由はそれへの対策が有る。
「それに、ビショップからの連絡によると、向こうもオレ達の事を監視していた様だ」
彼等の使う魔法技術は未知の物だが、ファンガイア族を初めとする魔族は何気に魔術的な技術以外にも、科学技術の面でも高い技術力を持っている。
付け加えると現在進行形で次元世界やデバイスについても研究中である。ビショップが言うにはオルトロスレジェンドルガが使っていたデバイスを回収したらしい。
そんな会話を交わし、トウヤとキバットバットⅡ世、ユーノ、アルフ達はシュードランに救助されたなのは達に合流する。
「ねぇ、フェイトちゃん」
「なに?」
トウヤ達が合流した時、なのはは先ほどまで決闘していたとは思えない穏やかな口調でシュードランの上でフェイトに問い掛けていた。
「フェイトちゃんは何で、ジュエルシードを集めてたの?」
「母さんに集めるように言われたんだ」
「お母さんに? あんな危険な物何に使うの?」
「分からない…。…でも「あー…言い難いが…オレは知ってるぞ」え!?」
フェイトの言葉を遮る様にトウヤがそう告げる。
「トウヤ、知ってるなら「…本人なら兎も角、オレが言うべきかは分からないから全てを言う訳にはいかない。それで良いなら…」…それでもいいから…知ってるなら教えて! 私は…母さんの役にたちたいから…」
「私からもお願い、知ってるなら教えて!」
「あー…」
フェイトに縋りつかれ、なのはに頼まれて嫌と言えるトウヤでは無いが…内容が内容だけに何処まで話すべきかと悩んでキバットバットⅡ世へと助けを求める様に視線を向けるが、キバットバットⅡ世からは『仕方ないから話してやれ』と視線だけで伝えてくる。
「先ず最初に言っておくが…フェイトさん、君にジュエルシードを集めさせていた理由だけど…それはつい先日無くなった。正しくは変わったと言うべきか」
「「え?」」
二人はトウヤの言葉に揃ってそんな言葉を上げる。
「あー…それで、その本来の目的については本人から聞いてくれ。だけど、ジュエルシードを集める必要はある」
「どう言う…」
「君の母さん…プレシア・テスタロッサはあとどれだけ生きられるかは完全に未知数…精々あと一年生きれば『長生き』と言うレベルだな」
「え?」
トウヤの言葉にフェイトの表情が完全に凍り付いてしまう。
「オレ達ファンガイア族は『吸命鬼』と呼ぶべき一族だ。生命エネルギー…それの減少なら他人の事でも気付ける。寧ろ…そこまで弱っていれば気付くのも簡単だ、会っただけで気付ける」
そう言って二人の持っているデバイスを指差すと、
「その治療の方法として、ジュエルシードを利用しようと思ったと言う訳だ…」
結果的に二人のデバイスのダメージは有るが、それでも決闘を通じて意思をぶつけ合う事は出来た。
心配事としてはレジェンドルガと時空管理局だが、そちらに関しては戦力としては自分達ダークキバと魔族だけで対処するべきだと考えている。
「それじゃあ…」
「ああ、今すぐにでも治療に…っ!? Ⅱ世!!!」
「ああ、ガブリ!」
「変身!」
“それ”に気が付き素早くダークキバに変身すると、周囲に魔法陣が出現する。
「チッ、少し過小評価し過ぎていたか」
ダークキバ達を取り囲むのは武装した管理局員達。だが、その武装局員達から感じられるのは…人間の気配ではなく、
「これは…」
「…ああ、全員同族化済みか…」
魔族の物に近く、その顔は西洋の鎧の様に変わっている者も居れば、イヌ科の動物を思わせる顔に変わっている者も居る。どう見ても同族化によってレジェンドルガに変えられている。
『トウヤ様!』
そんな時、ビショップからの念話が届く。確か先に時の庭園に向かわせて治療の準備を整えさせていたはずだが…
『どうした?』
『時空管理局と言う組織に此方の場所が特定されてしまった様です。此方に武装隊を送り込まれてしまいました。そして、私も封印されたアリシア嬢と一緒にミセス・テスタロッサに転送され…』
事実上時の庭園にはプレシア一人と言う事になる。…ビショップと一緒に救うべき娘を転送させたと言う事は…。
『そっちもか。こっちにも送られてきた…しかも、ご丁寧に同族化済みだ。此方を片付け次第、プレシアさんを助けに向かう』
『分かりました』
余命幾許も無い自分を犠牲にしてフェイト達を助けようとしたのだろう。アークを倒せば救われるアリシアをトウヤ達に託して。
「ザンバット!」
ザンバットソードを呼び出してそれを一閃、ザンバットソードから放った衝撃波でレジェンドルガ化した局員達を後退させると、
「…こんな時に何だが…フェイトさん。君に話さなければならない事が有る」
「え?」
レジェンドルガ化した局員達に対する牽制を続けながらダークキバはプレシアに会った時に知った真実を話す。
トウヤを除いた全員の表情は暗く沈み、特にフェイトの表情は酷く沈んでおり、アルフだけは怒りを浮かべていた。
「どうしてこんな時に!!!」
「時の庭園にも送り込まれた」
ダークキバの言葉にフェイトが微かに反応する。
「ここを終わらせたら、オレはそっちに向かう。…フェイトさん、君はどうする? 母に会いに行くか、それとも…逃げるか」
「でも、私は…」
「…伝えたい思いはあるはずだ。君の気持ちを、思いを、大好きな母親に伝えなくていいのか?」
自分自身大切な弟に何も伝えずに終わってしまったのだから、何よりも何も出来ずに終わってしまう苦しみは理解できる。
「い……いやだ…。こんな形で母さんとお別れなんて嫌だ!」
「フェイト……」
「フェイトちゃん……」
フェイトはバルディッシュを握り締めて立ち上がる。
「作られた存在でも、こんな形で終わりなんて嫌だ!」
「なら…オレも力を貸そう。ここから始めれば良い…。プレシア・テスタロッサの娘でアリシア・テスタロッサの妹の…『フェイト・テスタロッサ』としての君の生き方を」
「うん! 私まだ始まってもいなかったんだね」
「それで…高町さん達はどうする?」
「フェイトが行くならアタシも行くよ!」
「アルフ…」
アルフがそう反応する。ある意味分かりきっていた答えだ。
「私も…私も行く!」
「ぼくも行きます!」
ある意味これからの問題については関係ないと言えるなのはとユーノの二人の言葉にダークキバは、
「ああ!」
そう簡潔に答え、レジェンドルガ化した局員達に向き直り、
「フェイトさん、君は一人じゃない…オレも高町さんも、アルフも、ユーノも居る。「オレも忘れるな」…そうだったな、Ⅱ世も居るんだ。一人じゃない」
フェイトへとそう告げる。
「うん!」
「ねえ、トウヤ君…」
「何、高町さん?」
「私の事も名前で呼んで欲しいの!」
内心『こんな時に言う事か?』とも思ってしまうが、逆に『こんな時だからこそ』なのかもしれないと思い直す。
「分かった、なのはさん」
『そうか。なら、ここはオレ達に任せてもらおうか』
高らかに鳴り響く音と共に海中から上昇してくるキャッスルドラン。キャッスルドランの出現に気付いたシュードランがダークキバ達を乗せたまま一体化するとキャッスルドランが生来の攻撃性を取り戻し、咆哮を上げる。
「父さん!?」
「ああ、露払いは父に任せておけ」
父であるオトヤの変身したサガがキャッスルドランの頭の上でトウヤへとそう告げる。
「…じゃあ、ここは任せた」
父への信頼からか、あっさりとその言葉を受け入れると、フェイトに向き直り、
「フェイトさん、転送を!」
「うん!」
「そうそう、トウヤ! これを持って行け!」
そう言ってサガはダークキバへと“それ”を投げ渡す。
「っ!? これは!?」
時の庭園へと転送される直前に受け取ったそれを見て思わず疑問の声を上げる。
そう、ダークキバへと…トウヤへと渡された物は…シャイニングメモリとロストドライバーだった。