闇の魔王様と魔法少女達   作:龍牙

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第二話『えーと…キバって行くぜ! …でいいのか? by.トウヤ/いや、それは息子のセリフだろう? by.キバットバットⅡ世

 

魔力を持った危険な宝石がばら撒かれた事を一族全体に伝えた後日…トウヤは執事服の男性、チェックメイト・フォーの一人、ビショップから渡された報告書へと目を落としていた。

 

「動物病院で何者かに破壊された跡か…しかも、周囲の電柱が倒れ、コンクリートが砕けた…。随分と酷い被害だな。これはまさか…」

 

 

「ああ、警察に居る一族の者からの情報では周囲に例の宝石は無かったようだ。どうやら、何者かに持ち去られたんだろう」

 

 

キバットバットⅡ世の言葉にトウヤは考え込む。

件の宝石は、見た目は普通の宝石だ。知らずに触れてしまって街中でサバトが出現する危険が有るのだ。罪もない人々を何も知らない危険な宝石を拾ってしまった一族の者が傷つける。有ってはならないことだ。

運が良い事に、前回の暴走時の時に回収した代物は…人が居ない森で散歩をしていた一族の者が偶然にも落し物として拾ったらしい。警察に届け様として暴走してしまったのだから、はっきり言って哀れとしか言い様がない。

だが、この報告にはサバトが現れたと言う報告はない。そして、それを持ち去ったと言う何者かの存在。

 

 

「…なるほど…ファンガイア族以外にも、あの宝石は人間や動植物…最悪は単独でも何らかの力が発動し、周囲を危険に晒す可能性が有ると言うことか?」

 

 

「ああ。一族の者には極力触れずに見つけたら、連絡をする様に言ってはいるが…」

 

 

「それでも、間違いなく被害は出るか。あの宝石…『魔石』と命名して伝えてはいるが、魔石を持ち去った何者かには封印の手段と、隔離の方法が有ると言う事になるな」

 

 

「だが、そいつ等が魔石をこの街に撒いた張本人と言う可能性もある」

 

 

「試験的に暴走させ、結果に満足…または何らかの目的を終えたから回収した。…そう言う可能性も有るか」

 

 

「その通りだ。だが、回収者が善意で回収していた可能性がある。どちらにしても、この回収者には一度接触する価値は十分に有る」

 

 

「そうだな」

 

 

キバットバットⅡ世の言葉に頷きながら、トウヤは答える。

 

 

「まったく…何者があんな物をばら撒いてくれたんだか…?」

 

 

「だが、一般のファンガイアでさえ、サバトとなりオレ達が苦戦するほど力を発揮していた。下手な者の手に渡ったら危険だ」

 

 

「そうだな。前世の様に表立って動いていないが…オレに対して良い感情を持っていない奴等は多いか。さっさと回収して処分したいな。…ザンバットソードを持ち出せば、破壊できるか?」

 

 

「それは分からんが、あの宝石は火薬の代わりに魔力で出来た爆弾のような物だ。爆発すると危険だから止めておいた方が良いだろう」

 

 

思わず溜息を吐いてしまうトウヤ。

 

 

「取り合えず…回収者に接触、回収者に悪意が無ければ、回収の協力を行い、早めに全てを終わらせるか?」

 

 

「その通りだ。ファンガイア一族の情報網が有れば最低でも街中に落ちた物くらいは回収できるだろう」

 

 

「そうか。はぁ…取り合えず…早めに全部回収するか、オレの癒しの時間に連絡が入らない事を祈るか」

 

 

真面目にそんな発言をしてくれるトウヤに思わず頭を抱えてしまうキバットバットⅡ世。

 

 

「お前は、何、真面目にバカな発言をしている!?」

 

 

「バカとは何だ!? オレはいたって真面目だ! 高町さん達と一緒に帰ったりとか、癒しの一時は大事だろう!!! どれだけ、オレが王として苦労してるか分かってるだろう!?」

 

 

「分かっているが、少しは自重しろ!」

 

 

先ほどまでの真面目な空気は何処へ行ったのか…漫才の様な遣り取りを繰り返すトウヤとキバットバットⅡ世だった。

 

 

 

余談だが、ファンガイア一族の者達からの報告でジュエルシードは二つほど回収できた事を追記しておく。

 

 

 

「はぁ…はぁ…兎も角、今日は何事も無ければ良いな…」

 

 

「何か有るのか?」

 

 

「高町さん達に高町さんのお父さんが監督をしているサッカーチームの試合の観戦に誘われたから見に行くんだ」

 

 

心底嬉しそうな顔で答えるトウヤに思わず呆れた目を向けてしまうキバットバットⅡ世。だが、

 

 

「…はぁ…。随分と歳相応の顔をする様になったな。…今のお前を見ていると喜ぶべきか、悲しむべきか悩むぞ」

 

 

「まあ、良い事だと取ってくれ」

 

 

そう言ってキバットバットⅡ世へと手を振りながらトウヤは部屋を出て行く。

 

 

「まあ、あいつが歳相応の表情を見せているのは良い事なのだろうな」

 

 

そんなトウヤの背中を見送りながら、キバットバットⅡ世はそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

なのは達と彼女の父親である『高町 士郎』が監督をしている翠屋JFCの試合の応援に来たトウヤだが、なのは達と仲良くしているトウヤには男子からの殺気の篭った視線を向けられているが、当のトウヤは一切気にしていない。

 

 

「高町さん、元気無いけど、どうかしたの?」

 

 

妙になのはに元気が無い事に気が付いてそう声をかける。

 

 

「え、ええ、大丈夫だよ!」

 

 

「…なら、いいんだけど、無理はしない方が良いよ」

 

 

「なのは、あんた、本当に大丈夫なの?」

 

 

「具合が悪いなら、帰った方が良いよ」

 

 

慌てて否定するなのはとの会話をそう言って切り止めるが、彼女の友人のアリサとすずかの二人も心配してそう言う。トウヤとしては本人が言うほど大丈夫には見えなったのでもう少し聞きたかったのだが、試合開始のホイッスルが鳴った事で出来なくなった。

 

 

試合中、なのはが連れている、なのはが飼う事となった『ユーノ』と名付けられたフェレットと目が合う。

 

 

(…気のせいだとは思うが、妙なフェレットだな…)

 

 

疑ってしまえば何処までも疑える。聞いた話では、トウヤがジュエルシードで誕生したサバトと戦った日に拾ったらしいのだが、妙な偶然だと考えてしまう。なのは達に気付かれない様に、僅かに殺気を込めて睨み付けると、ユーノは隠れてしまう。

 

 

(…ただのフェレットだったか…悪い事したな)

 

 

流石にあんな危険物をばら撒いて回収している者と関係があるとすれば、その程度の殺気に怯えはしないだろうと判断し、そんなユーノの姿に罪悪感を感じてしまう。

 

 

『な、なのは、彼は一体何者なの!?』

 

 

『え!? トウヤくんの事?』

 

 

念話でそんな会話がなされている中、トウヤは気付かれないように横目でなのはとユーノの方へと視線を向ける。

 

 

(…気のせいだな…)

 

 

その後、無事試合は終わり結果は2対0で翠屋JFCの勝利で終わった。勝利のお祝いの為に食事会となったが、それに誘われたトウヤは、また何か起こってキバットバットⅡ世がトウヤを呼びに来る時の事を考えて、涙を呑んでそれを断って帰路についてたのだが、彼の予想通りまた街にばら撒かれた危険物が原因の事件が起こったらしく、キバットバットⅡ世が呼びに来たのだった。

 

 

「Ⅱ世、これは!?」

 

 

「ああ、ファンガイア族が媒体になった訳ではない様だが、あの宝石が引き起こした事態の様だ」

 

 

街中に何本もの樹の根が生え、そこから更に伸びた枝がビルを侵食し、大惨事となっていた。

 

 

「まったく…折角の休日くらいは平和に過ごしたかったって言うのに」

 

 

「諦めろ。それに、こんな事態を想定して打ち上げには不参加だったのだろう?」

 

 

目の前の光景に溜息を吐きながらそんな会話を交わす。溜息を吐くと幸せが逃げるというが、それが本当だとしたらトウヤの場合は完全に悪循環となっている事だろう。

 

 

目の前に広がる街中を覆うほどに成長した巨大な樹木。媒介になっているのがファンガイアの一族の者では無いとは言え、こんな状況を放って置ける訳が無い。

 

 

「行くぞ、Ⅱ世!」

 

 

「ああ。ガブリ」

 

 

「変身!」

 

トウヤの手を噛み付くキバットバットⅡ世。そして、変身の叫びと共に出現したベルトのバックル部分にキバットバットⅡ世が座すると、トウヤのダークキバへと変身する。

 

 

「はぁ!!!」

 

 

変身が完了したダークキバへと向かって来る樹木の枝を己の四肢を振るいながら粉砕していく。

 

 

「Ⅱ世、例の宝石の位置は分かるか?」

 

 

「ああ、中心の大樹…その頂上付近だ。だが、迂闊に攻撃は出来ないぞ」

 

 

「どう言う…。チッ! 意味だ?」

 

 

キバットバットⅡ世と会話をしながら戦っているダークキバへと向かって来る枝を空中に出現した赤いキバの紋がそれを防ぐ。

 

 

「ああ、例の宝石の媒介になったのだろう、人間が二人存在している。下手に必殺技を使っては、そこにいる人間達まで傷付けてしまうぞ」

 

 

「チッ! 状況は本格的に最悪って訳か!?」

 

 

排除すべき異変の中心を確認した物の、下手に手出しは出来ない状況である事を理解する。下手に中心部に攻撃してはそこに居る人達まで傷つけてしまう事になる。強力なダークキバの力が完全に仇となった結果と言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

その頃、あるマンションの屋上に息を切らせている一人の少女…なのはの姿があった。そして、首から提げているペンダントから赤い宝石を外し、空へと放り投げる。

 

 

「レイジングハート、お願い!!!」

 

 

《スタンバイ・レディ、セットアップ》

 

 

なのはの投げた宝石は赤く輝き、彼女の姿を今までの物とは違う彼女の通う学校の制服に似た服装へと変化する。赤い宝石は魔法の杖とでも呼ぶべきかと言う形の杖へと変化した。それが、魔導師となった彼女の姿である。そして、彼女は目の前に広がる大樹を見つめていた。

 

 

「酷い…」

 

 

「多分、人間が発動してしまったんだ。強い思いを持った者が願いを込めて発動させた時、ジュエルシードは一番強く発動するから…」

 

 

トウヤがその場に居れば本格的に問い詰めたであろう、フェレット…ユーノが人間の言葉を喋るという光景。そのユーノが大樹の出現の原因がジュエルシードに有ると話す。

なのははサッカーチームのメンバーが自分の親が経営している店『翠屋』で昼食を取り、解散したメンバーの中にいたキーパーの少年がジュエルシードを持っている気配を薄らと感じていた事を思い出した。

 

 

その場にキバットバットⅡ世が居れば気が付いてトウヤが回収していただろう。だが、不運にもトウヤはキバットバットⅡ世を連れていなかった。

 

 

(やっぱり、あの時の子が持ってたんだ…)

 

 

気配を感じていたはずなのに、それを見逃してしまったなのはは、酷く後悔していた。

 

 

 

 

 

 

「はぁ!!!」

 

 

枝に絡まっている人達を救助しながら進むダークキバの歩みは当然ながら遅い。だが、下手に中心となっているジュエルシードを封印する事で樹木が消えた時の事を考えると救出しない訳にはいかない。

 

 

「クッ! このままでは、被害は広がるだけだぞ」

 

 

「分かっている。だけど!!!」

 

 

ダークキバがどうすべきかと悩んでいると彼の真上をピンク色の光が一直線に飛び、中心部分を打ち抜いた。

 

 

 

 

 

「リリカルマジカル、ジュエルシード…シリアルⅩ…封印!!!」

 

 

なのはが叫んだ瞬間、レイジングハートから巨大なピンク色のビームの様な物が発射され、ジュエルシードのある場所に直撃すると、街を飲み込むように眩い光が周囲を飲み込み、

 

 

 

 

 

「大樹が消えていく?」

 

 

「どうやら、オレ達とは違う回収者が封印した様だ」

 

 

大樹が消滅していくのに気が付く。幸いにもゆっくりと地面に下ろされている様で枝に捕獲されていた人々は無事解放された。

 

 

「そうだな。取り合えず一安心だが…な!」

 

 

足元にキバの紋を出現させ、それを足場にジャンプし、なのは達の下へと飛び去ろうとしたジュエルシードを受け止める。

 

 

「敵か味方かわからない相手に渡したくは無いからな。悪いけど頂いて行く」

 

 

「ああ。それにしても…ナンバーはⅩ。どうやら、『最低数』が一気に10に増えたな」

 

 

「いや、オレ達の他の回収者を考えるとそれ以上…21と言う説は完全に当っているな」

 

 

「そうだな。さて、早く帰ってそれを隔離しよう」

 

 

「ああ」

 

 

ダークキバの姿から変身を解除すると、トウヤとキバットバットⅡ世はその場を立ち去っていく。

 

 

 

 

 

「おかしいな、ジュエルシードが来ないよ、ユーノ君?」

 

 

「確かに変だ…今までならシーリングしたら、レイジングハートの所に来るはずなのに」

 

 

トウヤ達が回収した事でジュエルシードが現れない事を不思議に思っているなのはとユーノの姿があった。

 

 

レイジングハートが警告を発するが、既に遅くトウヤが人気の無い場所でシールフエッスルによる封印を行った事で、反応を見失ってしまった様子である。

 

 

 

 

 

 

後日…

 

 

「…またサバトか…。注意は促したはずだろう!?」

 

 

ダークキバの姿でトウヤはサバトの現れた場所に向かっていた。

 

 

「いや、どうやら、今回はお前に対抗する為のカードとして入手した者達が結果的に暴走したらしい」

 

 

「うわ~…それって、オレのせいか?」

 

 

「いや、お前に責任はないだろう。まあ、特別気にせずに戦えると考えればいいだろう」

 

 

「それもそうだな。授業の途中で抜け出してきたんだ、早く倒して戻るぞ!」

 

 

「分かっている」

 

 

そんな会話を交わしながらサバトの姿を見つけると、目の前の光景に思わず足を止めてしまう。

 

 

「…昨日会った回収者とは別人…接近戦型か」

 

 

「その様だな」

 

 

サバトと戦う黒いマントを纏い、金色の刃を持った鎌を持ってサバトと戦う金色の髪の少女の姿が有った。

 

 

「どうする、トウヤ?」

 

 

「決まっているだろう…助けに入るだけだ!!! よりにもよってオレに反抗するファンガイア族が媒介な以上、危険だ!」

 

 

そう叫びながら、ダークキバはサバトと戦う金色の少女に加勢すべくその戦いへと介入する。

 

 

 

 

これが、トウヤと二人の魔導師としての…『高町なのは』、『フェイト・テスタロッサ』との出会いであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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