闇の魔王様と魔法少女達   作:龍牙

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第七話『平和が欲しい…。by.トウヤ/…珍しくシリアスが多いな…。by.キバットバットⅡ世』

さて、『王キング』と言う立場はトウヤ本人が『面倒』と言っている部分が有るのも事実だが、同時に彼自身、活用している部分はしっかりと活用しているのも事実だ。

 

今更では有るが今回のジュエルシード探索についても、ファンガイア族を初めとした魔族にとって危険な代物である以上、それを探索する為に一族の総力を上げるのもキングの立場を使えば簡単だった。

…実を言ってしまうと、ジュエルシードの力に過激派が気付いてしまったのには、それが原因とも言えるのだが。そのリスクを支払ってでも、早急にジュエルシードを回収する必要があると考えた結果だ。

…何事にも『リスク』と『リターン』が存在しているものと言えるだろう。

 

フェイトやユーノの世界の魔法に精通していない為にそちらの方面での探索は無理だろうが、ファンガイア族のキングの立場を利用した一族を動員しての大勢の人数による物理的探索…それは、当然の事ながら個人への負担は少なくなっていた。

 

…負担が軽い事が利点ならば…今のトウヤにはその利点はリスクとなっていたと言えるだろう…。なぜなら、

 

「いい加減にしなさいよ!」

 

彼女、『アリサ・バニングス』の怒声と机を叩く音が教室の中に響き渡る。

『いっその事、暫く休むべきだっただろうか?』と考えながら声に驚いて目を向けてしまった先の光景を見ながら、引きつった表情を浮かべてしまうトウヤだった。

 

「こないだっから、何話しても上の空でボーっとして!」

 

「あ…ごめんね、アリサちゃん…。」

 

なのはの声は明らかに沈んでいる。先日のフェイトへの敗北からなのはは落ち込んでいるのだろう。

トウヤから見たら二人の経験の差が圧倒的な実力の差として現れているのだろうと言う事は直に理解できる。

彼自身知らない事で予想でしか無い事だが、なのはが魔法に関わったのはつい最近…それもジュエルシードが振ってきた時であろう事は推測できる。だが、落ち込んでいる原因はそれだけでは無いだろう。

 

(…オレが言った事も原因なんだろうな…。)

 

そう思うとトウヤ自身責任を感じずには居られない。

結果的になのはを落ち込ませている原因も、目の前の光景の原因も自分が関係している可能性が有る。そう考えてしまうと、責任を感じずには居られない。

 

「ごめんじゃない! 私達と話してるのがそんなに退屈なら、一人で幾らでもボーっとしてなさいよ!!! 行くよ、すずか!」

 

なのはに向かってそう言った後、すずかの方を向いて早口にそう言うと、一人で歩いていってしまった。

 

…その光景を見ながら思わず視線を逸らして、

 

「アリサちゃん…。なのはちゃん…。」

 

「大丈夫だよ、すずかちゃん。今のは、なのはが悪かったから…。」

 

辛そうに落ち込んだ声ですずかにそう言うなのはに対して、

 

(…スミマセン、ゴメンナサイ、スミマセン、ゴメンナサイ、スミマセン、ゴメンナサイ、スミマセン、ゴメンナサイ、スミマセン、ゴメンナサイ、スミマセン、ゴメンナサイ、スミマセン、ゴメンナサイ、スミマセン、ゴメンナサイ…。)

 

心の中で謝罪の言葉を連呼するトウヤだった。

 

「…ごめんね。…怒らせちゃったな。ごめんね、アリサちゃん。」

 

(…心からゴメンナサイ…高町さん…。)

 

俯いて一人呟くなのはを見ていると本気で居た堪れなくなるトウヤだった。

なのはへの申し訳無さ等々の感情で机に突っ伏している闇の魔皇のその姿は、前世の弟が見たら何と思う事だろうか…?

 

心の中で深く溜息を吐きながら、意を決して立ち上がると、

 

「あー…高町さん。何か悩んでるよね?」

 

なのはへと近づきそう話しかける。

 

「にゃ!? ど、どうしてわかるの!?」

 

「いや、そりゃ…この間、温泉の前であった時からそんな様子だからね。」

 

トウヤの言葉に俯いてしまうなのはに心の中で土下座して謝りながら、

 

「まあ、相談できない事なら、オレも深くは聞かないけどさ。きっと、バニングスさんは…“高町さんの力になれない自分”に一番頭に来ているんだろうからさ。」

 

「え?」

 

「だから、解決してからでも、相談できるようになってからでも良いから、打ち上げれば…いや、何時もの高町さんに戻っただけでも、仲直りは出来ると思うよ…。」

 

そう、どれだけ親しくても打ち上げられない事がある。前世も今もそれを打ち明けられる相棒が居るトウヤとは違う。自分が関わっている危険に友達を巻き込みたくないであろう事は容易く想像できる。

 

だからこそ、ダークキバの事を隠している自分に言えるのはその言葉のみ。

 

(…希望的な観測でしかないけどな…。)

 

それでも、それほど間違っていないと言う評価だとは思っているが。だから、部外者であるトウヤに出来るのは…ジュエルシードのこの世界からの排除だ。

 

(…ジュエルシードの問題が片付けば…少しはプラスに傾いてくれるだろう…。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、そんな決意を浮かべていたトウヤだったが………現在進行形でダークキバの姿で挫けそうになっていた。

 

「…何と言うか…重ね重ね、オレの力不足で申し訳ない…。」

 

「き、気にするな…お前のせいじゃない。」

 

「そ、そうだよ。」

 

「ほ、ほら、悪いのはあの連中なんだし。」

 

ジュエルシードが発動したビル街で落ち込んでいるダークキバとそれを必死に励ましているキバットバットⅡ世、フェイト、アルフと言う構図。

………そして、その原因となっているジュエルシードを取り込んだらしい、サバトの姿。付け加えると、他の一族の者が発見したそれを過激派の連中が奪って行ったらしい。

 

あとは簡単だ。他の過激派のファンガイア族の手で何時もの様にジュエルシードの暴走。

 

自分の事ながら、こうも反逆する者が多いのはどうにかならないかと考えてしまうが、トウヤが最年少でキングの地位に着いた事によって反逆を考えていた者達が表立って動き出した事が原因だろう。

 

簡単な話だ。子供のトウヤがキングの地位に着き、先代キングである父が居ない今、反逆を企んでいた者達にとっては最高の時期タイミングと考えたのだろう。

まあ、結果的に動き出したのは良いが想像していたよりも強大な力を持つトウヤの手によって潰されているのだから、笑ってしまう結果だろう。………相手にしてみれば引きつった笑いだが。

 

「…奴に王の判決を言い渡す…。」

 

「…その言葉は正気に戻してから言った方が良いんじゃないか?」

 

「それもそうだ…な!」

 

足元にキバの紋を出現させてそれを足場にして跳びながらサバトへとパンチを打ち込む。だが、それを目の前のサバトは障壁バリアらしき壁によって阻んでいた。

 

「生意気にバリアまではるのかい!」

 

「チッ。こいつ…。」

 

「お前の攻撃を防ぐとは、それなりに強い様だな。」

 

攻撃を阻まれながら空中で体制を立て直しながらキックを打ち込み、その反動でサバトから離れる。

 

サバトから繰り出される反撃を避けながらフェイト達に向かわない様に空中に出現させたキバの紋を足場にサバトを翻弄する。

 

『フェイトさん、オレが引き付けるから、その間に封印を。』

 

『うん、分かった。』

 

念話によって会話を交わし、サバトの相手を再開する。大振りな攻撃がそう簡単に当る訳も無く、ダークキバ自身攻撃を捨てて回避に徹し、囮になっているのだから、そんな攻撃が当る訳も無い。

精々自分ではなくフェイト達の方を狙おうとした時に自分の方に注意を向けるために攻撃を仕掛けるだけ。最悪は必殺技を使えば向こうもイヤでも注意せずには要られないだろう。

だが、

 

「にゃぁぁぁぁぁあ!!! 何あれ!?」

 

「っ!? 高町さん!」

 

「…時間を掛けすぎたか、向こうも優秀らしいな…戦闘経験以外では。」

 

突然の第三者の…聞き覚えのある声に驚いてそちらの方へと視線を向ける。位置はダークキバの丁度真後ろ、そこには予想通りなのはの姿が有った。悪い事にサバトの狙いがなのは達の方へと向いてしまった。

 

それをチャンスと思ったのだろう、ダークキバへと向かって光弾を放つ。位置的に既に回避は出来ない。ウェイクアップ2やウェイクアップ1による相殺には時間が無い。同様にフエッスルによるアームズモンスターの召喚も無理。自分が盾になって防ぐ事も可能だが、今はそれを洗濯するべきでは無いと判断。

 

(仕方ないか。)「ザンバット!」

 

結果、他に手段がないと判断し、奥の手の中の奥の手を切る事を決意し、その名を呼ぶ。

 

ダークキバの叫びと共に出現したのはダークキバ自身にも負けない魔力を持った一振りの剣。ダークキバは自身へと迫る光弾へと向かってゆっくりと魔剣を振り上げ、

 

「はぁっ!」

 

叫び声と共に振り下ろすとダークキバへと迫っていた光弾毎、サバトの張っていたバリアを切り裂き、本体にもダメージを与える。

 

その剣こそ、ファンガイア族のキングの手に有るダークキバの鎧と並ぶもう一つの王の証たる最強の魔剣にして、ダークキバの鎧と並ぶファンガイア族の至宝。その名を『ザンバットソード』。

 

キングとして、この剣の使い手として認められているのだが、トウヤ自身ザンバットソードを使う事は今まで意図的に避けてきた。ダークキバの鎧を纏い、その剣の持つ事で得られる、加減の一切効かない闇の魔皇としての圧倒的な力…。その力に溺れる事を避ける為に今まで召喚しようとは思っていなかった。

 

 

だが、今はトウヤはその力を使うべき時だと判断を下した。

 

 

「まったく…お前は本当に自分の評価を低く見ているな。」

 

「…妥当な評価と思うがな…。…仕方ないか…。奴はオレが抑える。邪魔はさせないから、早く封印を。」

 

「は、はい!」

 

「うん!」

 

二人の返事を聞き、ダークキバがザンバットソードの刀身を撫でる。ダークキバの魔力を吸収するようにザンバットソードの刃が紅く染まる。そして、

 

「はぁ!!!」

 

ダークキバの振るうザンバットソードの斬撃がサバトに叩きつけられる。本体ではなく、光弾を優先して攻撃しているが、サバトへの攻撃の数の方が多いのはダークキバとの間にある圧倒的な力の差故だろう。

 

「ディバイン!」

 

「貫け、轟雷!」

 

二人の砲撃の準備が整った瞬間、ザンバットソードの鍔の部分を顔の前に持って行き、鍔の真上に掌を翳すと、ザンバットソードの鍔から金色のフエッスルが出現する。

 

「おまけだ…。お前に王の判決を告げる!」

「ウェイクアップ!」

 

「『絶滅タイムだ!』」

 

出現したフエッスルをキバットバットⅡ世に咥えさせると鳴り響くフエッスルの音色、

 

『バスター』

『サンダースマッシャー!』

 

「ファイナル、ザンバット! 斬!!!」

 

二人の砲撃とダークキバの斬撃がサバトに直撃し、ジュエルシードを封印、そして核となっていた過激派のファンガイア族はそのままステンドグラスの欠片となって砕け散っていく。

 

「さて、これでオレ達の役割は終わったな。」

 

「あとのジュエルシードの争奪戦は、オレ達は手を出せないが…。」

 

キバットバットⅡ世の言葉に頷くダークキバ。ダークキバの力が二人との間で隔絶しすぎていて、手を出さないのではない、手を出せないのだ。

 

少なくとも命の危険は無いだろうと、僅かながらダークキバは油断していた。争奪戦の結末を見届けようとした時、二人の杖デバイスがジュエルシードに当る。

 

その瞬間、二人の杖デバイス…バルディッシュとレイジングハートに皹が入り、ジュエルシードが再び暴走する。

 

フェイトはそれを素手で封印しようとしているが、負担が大きい様子だ。

 

「拙い!」

 

ザンバットソードをビルの屋上へと突き刺し、キバの紋を使いジュエルシードを押さえているフェイトへと近づき、

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」

 

キバの紋を使いながらジュエルシードを押さえ込みながら、両腕をフェイトの手とジュエルシードの間に割り込ませ、鷲掴みにすると両腕に激痛が走り、闇のキバの鎧にさえ皹が入っていく。

 

「…無茶をする…。闇のキバの鎧を纏ったトウヤでさえ、こうなると言うのに!」

 

キバットバットⅡ世はフェイトの無茶を叱りながら、一度ベルトから外れシールフエッスルを取り外して咥えると再びダークキバのベルトに戻る。

 

「ジュエルシード、封印だ!!!」

 

フエッスルの音色が響き渡り、最初にジュエルシードを封印した時の様にジュエルシードを封印する。

 

それによってただの青い宝石に戻ったジュエルシードはダークキバの手に収まる。シールフエッスルを使っての封印では、まだ完全ではないが、それでも一時的に抑えることはできるだろう。

 

「……ありが…とう………。」

 

辛うじて礼を言いながら意識を失うフェイトを受け止め、ダークキバはゆっくりと着地する。

 

「…まったく…何の為にここまで無理をするんだ…。」

 

直接的に触れたとは言えダークキバの鎧に皹が入るほどの力を素手で押さえ込んだのだから、手がボロボロになっているのは当然だろう。意識を失ったフェイトを抱き抱えながら、後に立っているなのは達にジュエルシードを見せ、

 

「そ、それを渡して下さい!」

 

「…それは出来ない…。」

 

なのはの肩に乗るフェレット…ユーノの言葉をダークキバはそう切り捨てる。

 

「彼女がこれほど必死に頑張った以上…悪いが、君達には渡す訳には行かない。」

 

そう告げると駆け寄ってきたアルフへとジュエルシードを渡してザンバットソードを回収する。

 

「でも!」

 

「私からもお願い! ユーノ君、今回はダークキバさんの言う通りにしてあげて。」

 

納得していない様子のユーノに対してなのはがそう言う事で引き下がってくれた。

 

「…ありがとう…。」

 

仮面の奥で微笑みながらそう告げてダークキバはその場を立ち去る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???SIDE

 

「艦長、ロストロギアによる次元震を補足しました!」

 

「次元震?」

 

「はい、小規模ですが…。」

 

「場所は?」

 

「第97管理外世界『地球』です。」

 

「分かりました。これより私達は、その次元震の元のロストロギアを回収しに『地球』に向かいます! 『クロノ執務官』、『ダイル隊長』も準備を。」

 

「はい!」

 

「了解した。(…まさか、我等の聖地とはな…。)」

 

ダイルと呼ばれた男は部屋から出ると一人の男が話しかける。

 

「なー、隊長さん、次は久しぶりの里帰りなんだろ?」

 

「…余計な事を喋るな、私達は一応管理世界出身と言う事になっている。」

 

「ったく、面倒だな。ここの連中全部支配下に置いときゃ、良いじゃないんですか?」

 

「…残念ながら、焦って我等の事を知られるのは得策ではない。下手な行動は…『ロード』にご迷惑をかける事になる。」

 

「はいはい、分かりましたよ。でもさ…次の次元世界で食って良いでしょう…久しぶりの故郷の味を…。」

 

男の姿が二つの首を持った狼の様な異形の姿へと変わる。それは伝説の中に存在する双頭の魔犬『オルトロス』の様だった。

 

「…ダメだ…。…他の世界なら許可してやりたい所だが、地球で下手に事を起こしたら、魔族に我等の事が知られるだろう…。」

 

「オレはいい加減、我慢の限界なんだよ!!! 計画なんざ知らねぇから食いたいんだよ!!!」

 

ダイルと呼ばれた男の手の中に出現したオルトロスの怪物の首に突きつけられる。

 

「…我等の全てはロードの…レジェンドルガの『計画』の為…。我等の我慢を貴様如きの為に無駄にする訳にはいかん。命令を聞かないのなら…この場で始末する。」

 

「…分かったよ…。くそ、あの黒いのは兎も角美味そうな奴等が居るのに…。」

 

「…本局への帰路に付くまでの辛抱だ…。執務官と艦長とブリッジクルーの幾人かは支配下に置くようにと命令されている。」

 

「おー…いいね。」

 

「…それから…戦力になりそうな者を見つけたらだが…。」

 

「食っても良いんですか?」

 

「質にもよるな。良質なライフエナジーはロードへの捧げ物だ。」

 

「はいはい。」

 

 

 

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