闇の魔王様と魔法少女達   作:龍牙

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第八話『トラブル増加か…。by.トウヤ/既に許容レベルを越えているぞ。by.キバットバットⅡ世』

「…『レジェンドルガ』…」

 

目の前に在る“被害者”を一瞥しながらトウヤはそう呟く。目の前に在るフェイトに似た金色の髪の少女の貌は蛇を思わせる物。

それはレジェンドルガによる同族化の影響。文献にある記録によれば、レジェンドルガにライフエナジーを奪われた者は全てこうなってしまう。例えそれが人間であっても、ファンガイアで有っても…。

だが、聞いた話では目の前の彼女は死んでいたと言う。…人の物では無い、愛らしかったであろうかつての面影さえも感じられない貌へと変わって化物レジェンドルガとして蘇った、彼女の母親にしてみれば、最低最悪の幸運。最愛の娘が人ではない最悪の化け物へと変わって蘇った姿は…神の与えた罰とでも思っているのだろうか…。だが、それは神の怒りではなく、悪魔の嘲笑。

 

 

目的は分からない。だが、これだけは言える。“レジェンドルガが彼女を同族として蘇らせた”と言う事は間違いない、と。

 

 

今の彼の現状を説明する為に時間は僅かに遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェイトにはデバイスの修復が終わるまでは休息する様に言っているが、彼女の事を考えると直に無茶をするだろう事は想像するのは容易い。

 

 

その間に一族の者達によるジュエルシードの探索を続けているが、それに準じて優先するべき事を片付けていた。

 

 

「…幸いだな…ここまで情報が手に入ったのは…」

 

 

「ああ」

 

 

レジェンドルガの情報や君主ロードとしての情報は多く残されているが、魔族の記録からも『無かった事』にする様にレジェンドルガのロード、『アーク』の情報は消されていた。

 

 

トウヤの元に届けられた資料は数少ない古文書の中の情報を断片的に繋ぎ合わせた、現時点でのアークについての情報だ。相手の情報を知らずに戦うよりも知って戦った方が遥かに戦い易い。禁断の力ウェイクアップ3を使わずに勝つ為にも、アークについての情報は一つでも多い方が良い。

 

 

「…『レジェンドルガのロード、アーク。それは初代より変わらずに存在していた。』…キバの鎧みたいに鎧を纏った姿…ファンガイア族のキングの様な物か?」

 

 

「確かに、そう考えるなら変わらずに存在している事にも頷けるな」

 

 

「『レジェンドルガの君主ロードアークとは不死の存在である。その肉体が滅んでも、アークの意思は鎧に宿り再び蘇る。アークを滅ぼすには『魂』そのものを消し去るしかない』…だと」

 

 

書かれていた文章を読んだ時驚愕が浮ぶ。これが真実だとすれば、事実上アークを倒す方法は封印以外に無い事になる。

 

 

だからこそ、宝玉にアークと共にレジェンドルガ族を封印した当時のキングは、封印の宝玉を『消滅』の魔法陣に置き、長い時間を掛けてアークの魂を消滅させようとした。

だが、その魔法陣から宝玉を何者かが奪い去り、今は何処とも知れない場所で復活していると言う訳だ。

 

 

「最悪だな。その手段は最悪の手段として、他の者に使われない様に完全に消失している。…術者と自身の命までも断ってまでな」

 

 

「時間こそ掛かるが、最悪の処刑手段だからな。『レジェンドルガと戦ったのは当時のキングと魔族の中から選ばれた騎士達と…当時のキングの友であった『人間』の『王』と王に従った『騎士』達。多くの者が犠牲になるなか、王がアークより力を奪い、力を奪われたアークはキングの手によって封印された』か…」

 

 

「…レジェンドルガ族と戦ったのは父の代だったが、まさか、人間の協力者が居たとは知らなかったな。」

 

 

感心した様に呟くキバットバットⅡ世の言葉にトウヤは賛同する様に頷く。

 

 

「『王の元にある『力』が戻らない限り、ロードは完全に復活する事は無い。そして、王が奪った限り、永遠にロードの元に力が戻る事は無い。』か。王についても調べる必要があるな。名前は…無かったか」

 

 

「レジェンドルガから隠す為か、完全に名前さえも削られていたそうだ。辛うじて分かったのは、騎士の一人の容姿だけらしい」

 

 

「…それが分かった所で意味は無いな…」

 

 

「そうだな」

 

 

溜息と共に資料を閉じ、天井を見上げる。騎士の一人の容姿が何らかの手掛かりになるかもしれないが、それで知る事が出来るのは精々騎士の子孫くらいだろう。その騎士も生き残っていたかは分からないから、子孫が居るとも限らない。寧ろ、命を落とした者達の中に居たと考えた方が建設的だろう。

 

 

「幸い、今アークは弱体化しているから、倒すのは簡単なのが救いか…」

 

 

「色々と気になる部分も有るがな…」

 

 

そう、資料の中にあるアークの力を奪ったという『人間の王』の存在と、それについての記述。

 

 

浮んでくる疑問が頭の中をグルグルと廻っている状況に溜息を吐き、そのまま机に突っ伏すと携帯電話が視界の中に入る。

 

 

「…そう言えば…はやてさんから夕食に誘われたんだっけ…気分転換に行って来る」

 

 

「そうだな。少し精神的に癒されて来い」

 

 

「そうだな…高町さんが落ち込んでいるから、学校でも疲れるんだよな…」

 

 

「…お前には珍しく真面目な姿が長続きしたからな。……ビショップ達が心配してたぞ……」

 

 

「って、心配されるのか!?」

 

 

「…普段の自分の姿を考え見ろ…」

 

 

悲しい事に相棒、キバットバットⅡ世のその言葉に心から納得して言い返せなくなるトウヤだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、その翌日だが、母親の元に報告に行くと言う連絡がフェイトから有った為にそれに同行する事になった。危険物ジュエルシードの回収をしてくれているのだから、彼女にそれを指示した相手に対して礼を言いに行くのも悪くないだろう。

 

 

(トウヤ、少し良いかい?)

 

 

(アルフさん?)

 

 

アルフから念話が聞こえてきた事に気付き、アルフへと視線を向ける事で『構わない』と言う意思を示す。

 

 

(実はフェイトのお母さんの事でね)

 

 

そして、アルフから彼女の母親の事を聞かされた。

 

 

(そんな相手に会うのに怯えもしないなんて…な)

 

 

母親の元に戻る嬉しそうな彼女の姿にそんな疑問が沸き上がる。純粋に母を慕う彼女の姿からはそんなネガティブな家庭事情等感じる事は出来ない。

 

 

(…なんで虐待している親に会うのに、そこまで嬉しそうなんだ…)

 

 

他人の家庭事情の事など、彼女の母親の事や彼女のことを何も知らない他人でしかない自分が口を出せる事ではない。トウヤに何とかして欲しいと思っているであろうアルフには悪いが、事情を知らない限りは精々現場を見て止める事くらいだろう。

第一、彼女達の世界の法等はトウヤの知識にはなく、自分の世界の法しか知らない。他所の世界に自分達の世界の法ルールを持ち込むなど、“無粋の上に無礼”だと考える。

 

 

 

 

 

 

 

 

「トウヤ、着いたよ」

 

 

「カルチャーギャップだな」

 

 

「…彼女達の世界の魔術…いや、魔法だったか…。便利なものだな」

 

 

『時の庭園』と言う名前らしい彼女達の母親の居る家に案内されたトウヤとキバットバットⅡ世の第一声がそれだった。

 

 

どうでも良い事だが、封印されているとは言え自分の家に『タイムマシンモドキ』な扉や、キャッスルドランの中に自宅と言う事になっているマンションと繋いだゲートが有るトウヤとキバットバットⅡ世に言える事ではないと思う。

 

 

「それにしても…立派な城だな」

 

 

「ああ、中々良い家だな」

 

 

「えへへ、そう」

 

 

城を見てそう褒める魔皇様とその相棒の言葉に嬉しそうに答えるフェイト。そして、フェイトに案内され、彼女の母親の部屋の前に来たのだが…

 

 

「ここが母さんの部屋だよ」

 

 

「そうなんだ」

 

 

フェイトの言葉へとそう返し、扉へと視線を向けるとそこから向こう側から感じられる『絶望』の感情。

 

 

「母さん、私です、フェイト・テスタロッサです」

 

 

嬉しそうに言いながらゆっくりとフェイトが扉を開ける。

 

 

「ッ!?」

 

 

部屋が空けられた瞬間、トウヤは妙な物を感じ取る。それは人間の物では無く、微細な…弱い物だが、自分達魔族の物に近い魔力。

 

 

「その子は?」

 

 

何かに疲れ切った様子…あらゆる希望が失われた人間が浮かべる表情の代表的な例と言えるほどの暗い表情を浮かべている女性、『プレシア・テスタロッサ』がトウヤ達を一瞥していた。

 

 

「自己紹介が遅れました。私は『トウヤ・F・クリムゾン』と申します。この度は貴女の娘さんのお蔭で我々の世界に落ちた危険物の対処が出来た事に対する感謝を伝えに来ました。聞けば、貴女に言われて回収したそうでしたので、彼女に頼みこうして貴女と一度面会の機会を作っていただきました」

 

 

一例と共にその言葉を告げる。一族の王としてジュエルシードの事に対する一族に及ぼす危険を押さえられているのは事実なのだから。トウヤの挨拶とフェイトの協力に対する感謝を告げると、フェイトが成果を報告していたのだが、

 

 

「たったこれだけ…。…もういいわ、行きなさい」

 

 

「母さん?」

 

 

フェイトとアルフの様子を盗み見るが、明らかに戸惑いが浮んでいる。…彼女達の知っているプレシアと目の前に居るプレシアが当てはまらないのだろう。

 

 

「…すまない、フェイトさん、少しオレも君のお母さんに話が有るから、席を外してもらえるかな?」

 

 

「う、うん」

 

 

トウヤの言葉にフェイトとアルフの二人が部屋を出て行くとトウヤはプレシアに向き直る。

 

 

「…それで、話ってなにかしら?」

 

 

「単刀直入に言おう…。その絶望の根源は…貴女の後に有るのか?」

 

 

「ッ!? そうよ…フ…フフフ…天罰が下ったのかしら…もう、こんな物が幾ら有っても!?」

 

 

トウヤの言葉に崩れ落ちながらジュエルシードをゴミの様に投げ捨てる。

 

 

「っ!? 危険物を投げるな! 第一、何が有ったって言うんだ!?」

 

 

「…そうね、見たいのなら、見せてあげるわ。私の愚かさが招いた結果を…」

 

 

そう言ってトウヤとキバットバットⅡ世がプレシアに連れられるままに言った先に置いて、冒頭に繋がっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「生き返ってくれたのよ…アリシアが…。私の事をお母さんって呼んでくれたけど…直にこんな姿に変わってしまって…」

 

 

崩れ落ちて泣き崩れるプレシアを一瞥すると、トウヤは彼女の娘…『アリシア』と呼ばれた同族化された被害者を一瞥する。拘束されているが、それにも構わずライフエナジーを求めて動き出している。

 

 

「これは…「神様の裁きなんていう慈悲深い物じゃない」…どう言う意味なの?」

 

 

彼女の独白を遮るように言葉を綴る。トウヤの言葉によって微かにプレシアの声音に意思が篭る。

 

 

「…これは…レジェンドルガによる同族化だ。情報源が古い文献にしかないが…。詳しいことを話す代わりに…話してもらおうか、貴女の言う自分の罪と言うのを…」

 

 

そう告げて、泣き崩れていたプレシアに向き直ると、

 

 

「改めて自己紹介と行こう。オレの名はトウヤ・F・クリムゾン。人と共存する事を選んだ闇に生きる魔族を統べるファンガイア族の…王キングだ」

 

 

己の地位と立場を告げ、ダークキバの姿さえも見せると、レジェンドルガについて説明を施す。

 

 

「…貴女の罪は何なのかは知らない…だが、少なくとも…これは神様が与えた罰なんかじゃ…ない」

 

 

親しくなった少女に連れられた家で見つけたのは…追っていたレジェンドルガの存在の尻尾。

 

 

「ああ、少なくとも、状況証拠だけならば…これはレジェンドルガによる同族化だ」

 

 

 

 

告げられるのは救いの一言なのか…

 

 

 

 

「じゃあ、アリシアを元に戻す方法は…」

 

 

「一つだけ。レジェンドルガの君主ロード、アークを倒すことだ」

 

 

 

 

彼女に与えられた救いは、何処にいるかも分からない相手に対して、レジェンドルガと戦った代々のキングでさえ不可能だった偉業を成す事。

 

 

 

「…それじゃあ、話していただこう…。貴女の罪を」

 

 

 

 

本当の断罰は此処から。優しい魔皇による罪の裁きの時。

 

 

 

 

 

 

 

 

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