空飛ぶ山猫と重巡洋艦 作:とある戦闘機好き
Alt-9 山猫、急襲する
ーside霧の大戦艦
「終わりだ!401ィ!」
横須賀の海上では巨大な艦が、今にも401に超重力砲を放とうとしていた。
その艦はハルナとキリシマ。二隻は合体して一隻となり、超重力砲は出力を増していた。だがー
「なんだ、この反応?」
その401を固定するロックビームに正面から入って来る4つの反応。ハルナは咄嗟に危険を感じ取った。
「キリシマ!超重力砲発射シークエンスを中断しろ!」
「どうして!?」
「正面から何か来る!」
キリシマは急いで発射シークエンスを中断する。その瞬間ー
「ミサイル!?」
4つの反応から1つずつ、計4発のミサイルが放たれる。ただのミサイルなら何も怖くはないが、そのミサイルは...
「クラインフィールドが!?」
クラインフィールドを破るACF弾頭搭載型の対艦ミサイル。大戦艦級でも3発、合体しているなら6発でクラインフィールドを飽和できる。今の状態なら401によって損耗しているため、4発でクラインフィールドが飽和してしまった。
「クラインフィールドが飽和しきった!?ハルナ、何が起きた!」
「わからない...でも私達を沈められる何がいることは、確かだ...」
今まで霧を沈められたのは、目の前にいる401だけだ。だが、これは何なんだー
ーside山猫
これは丁度数十分前のこと。
「確かに401の動きは、大戦艦二隻を相手取るなら十分だ。だがやはり侵食弾頭の損耗は抑えているな。上手いやり方だ」
「あれって持久戦の動きよね」
「おおよそ横須賀から引き離そうとしているんだろう。もう少し上手くやれば撃沈する事も出来るだろうな。そこはしょうがないか」
「なら?」
「殴り込もうか。タカオ、準備を頼む」
「了解。上げる機数は?」
「俺とUMFを3機の計4機だ」
『聞いていた。UMF-1の1から3号機の準備は完了している』
「ok。エレベーター起動。F/A-114とUMF-1を3機デッキへ移動開始!」
「行って来る。航空管制は頼むぞ」
「わかったわ。いってらっしゃい」
ロッカーから専用スーツを取り出し、着用。機体まで走り、HMDヘルメットを被り操縦席に滑り込んでキャノピーを閉じる。
「オセロット!」
『機体準備は完了だ。いつでも行ける』
「ok。タカオ、管制開始。」
【了解。こちら航空管制。第一カタパルトにF/A-114、第二カタパルトにUMF-1の1号機を固定。機体状況知らせ!】
「こちらRayven。機体状況オールグリーン」
『こちらオセロット。各UMF-1と接続を確認。全機オールグリーン』
【確認。風速は20ノット、風向は艦進行方向0度。リニアカタパルト、電圧上昇。500、600、700、発艦許容範囲に到達。発進どうぞ!】
「Rayven、クリアードフォーテイクオフ!」
『オセロット、1号機テイクオフ』
身体にカタパルトの加速Gがかかる。一気に空へと出ると高度を上げる。
【Rayvenと1号機は高度5000ftまで上昇、艦後方で旋回を開始。後続が上がるまで待機】
「了解、旋回開始」
【続けて2号機、3号機をカタパルトに固定。電圧上昇、発艦許容範囲に到達。発進どうぞ!】
『了解。オセロット、UMF-1 2号機、3号機、テイクオフ』
【全機上空待機解除。編隊を組み方位45へ急行。現場の状況はこちらから逐一報告します】
「了解。各機、エレメントを組め。俺と1号機、2号機と3号機だ」
『了解。エレメント完了。飛行開始』
4機の戦闘機が編隊を組み、空を駆ける。
そして現在。
「こちらRayven。霧の大戦艦級にACF弾頭の09式ASMを4発ほど食らわせた。映像を送る」
【確認したわ。これはハルナとキリシマね。合体してる】
『随分と奴らはフットワークが軽いな』
【ええ。コンゴウ麾下の艦隊で、2人はかなりの自由行動権があるのよ】
「なるほど...だから401を追って横須賀まで来たって事か...」
【そういうことになるわね】
『にしても合体した大戦艦級のクラインフィールドが普通4発で飽和するか?』
「401の攻撃で損耗していたからな。ん...401がフルファイアに入った」
【終わりそう?】
「少し足りないな。タカオ、そっちから2発程撃てるか?」
【最終誘導してくれるなら出来るわ】
「了解だ。オセロットは最終誘導準備に入ってくれ。その間はUMFはこっちが受け持つ」
『ok。UMF操縦権をRayvenに譲渡』
「譲渡確認。レーダーシステムをオセロットに連動、確認」
しばらくするとタカオから2発ほど09式対艦ミサイルが発射され、こちらへ飛翔してきた。
【後はお願いね】
「ok。オセロット」
『レーダーシステムとミサイルの連動を確認。最終誘導開始。目標、敵艦機関部』
オセロットの正確な誘導で直撃コースに入る。そしてー
『直撃を確認。敵艦の機関部が暴走を開始した。もう持たないだろう』
「ok、UMF操縦権をオセロットに譲渡」
『譲渡を確認』
「戦闘終了。全機HASS並びにEMS起動。帰還する」
タカオへと帰還しようと各機を纏めて編隊を組むと、その瞬間後方から閃光が走った。
「さて、もう少し様子を見ようか」
まだまだ面白い事が横須賀では起きるだろう。どう関わってやるか楽しみだ。
ーside401
「なんだったんだ、あれは」
対ハルナ、キリシマの戦闘を終えた401艦長、千早群像はそう言うと溜息をついた。
「ええ、明らかに普通じゃありませんね」
「たった4発のミサイルで大戦艦級のクラインフィールドを飽和させたんだぞ!?只者じゃねーじゃん!」
401副長の織部僧は冷静に判断するが、火器管制担当の橿原杏平は見たものが信じられないかの様に騒ぎ立てていた。
『てか発射した機体も大概だよ!明らかに人が耐えれる限界を超えた機動してたし!』
「離脱する時にも、即座に反応が消えましたね」
機関担当の四月一日いおりとソナー・センサー担当の八月一日静は、発射した機体について議論していた。
「イオナ」
「なに?群像」
「あの機体、見た事あるか?」
「ない。むしろ私の方が群像たちに聞きたい」
「俺たちはみんなこんな反応だ。誰も見たことはない」
全員が全員、あの機体について首を傾げていた。
「杏平、三笠に置いておいたキャニスターを戻せるか?」
「ああ、まだ三笠が崩落してないから戻せるぜ」
「なら戻しておいてくれ。それと静、映像はあるか?」
「はい、正面スクリーンに出します」
正面スクリーンに先程の戦闘の様子が映し出される。
「先頭の機体、F-14に似ていますね」
「ああ、だがF-14にカナード翼や傾いた水平尾翼はない。他の機体についてはキャノピーすらない」
「ってことは先頭の機体以外は無人機か?」
「その可能性はありそうですね」
「ヒュウガに映像データを送って、両機のおおまかなスペックを割り出すように伝えてくれ」
「わかりました」
謎の機体についてメンバーが対応を進める中、
「...タカオ、貴方なの?」
とイオナは小声で呟いた。
いきなり横須賀動乱編のクライマックスぽかったけど、まだまだ続きます。