空飛ぶ山猫と重巡洋艦   作:とある戦闘機好き

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そろそろ横須賀動乱編の終わりに近づいてきました。


Alt-13 大戦艦、決断する

ーside刑部藤十郎

 

【まさか蒔絵の最初の友達がメンタルモデルになるとはな...】

 

刑部邸地下の一室。現在、私はここに横たわっている。目の前の大画面スクリーンに出ていたのは、娘の蒔絵と2人のメンタルモデル。

 

(これが新たな絆となるだろうか...)

 

そう思うと、回線に何者かが入り込んだという警告が出てきた。

 

(なんだ?私の存在は公には死んだ事になっている。一体誰が...)

 

すると通信ウィンドウがスクリーンに開かれる。『SOUND ONLY』の表示。どうやら音声通信らしい。

 

『お初にお目にかかります。刑部藤十郎博士。いや音声だけだからお目にかかると言うのもおかしいですかね』

 

随分と若い声だ。

 

【...何者だ?わざわざ私の回線に割り込んできて何をするつもりだ】

『名乗る程の者ではありません。ここではLとさせて頂きましょう。私は一つそちらに警告がありまして』

【そうか。その内容は?】

『ではこちらのデータを見て頂きたい』

 

Lがそう言うとデータが送られてくる。

 

【これは...】

『現在の刑部邸周辺、半径5kmに不審な車両が幾つも有ります。そしてこちらは最も近い陸軍基地の上空写真です』

【岩蟹までも...まさか...】

 

 

 

『軍部はここに襲撃をかけるつもりです。そしてその目的は貴方の娘、刑部蒔絵でしょうね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーsideハルナ

 

蒔絵がやっと寝付いた。眠りの深さを確認しベッドを出る。

 

(準備はいいか、キリシマ?)

(ああ、行くぞ)

 

ゆっくりと部屋を出ると地下への入り口を探す。すると...

 

パッ、パッ、パッ、パッ

 

廊下に光がつく。その先にはメイドが立っていた。

 

「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」

「...わかった」

(おい!ハルナ!?)

 

メイドについて行くと廊下の行き止まりに着いた。壁に手を着くと電子パネルが現れ、メイドはそれを操作すると、壁が開いた。

 

(エレベーター...こんな物まで)

「お乗りください」

 

エレベーターに乗り扉が閉まると、地下へと動き始める。30秒程乗ると止まり、扉が開いた。

 

「ここは...」

 

刑部邸とは思えない近未来的な廊下が現れる。人の言う宇宙船とやらの廊下みたいだ。その廊下を進むと一つの扉が現れた。その前に立つと自動で扉が開く。

 

 

【よく来たね、霧のメンタルモデル達】

 

そこには1人の男が横たわっていた。そして後ろのスクリーン、あのウィンドウは...?

 

「お前は...」

【刑部藤十郎。ここの主人だ】

「死んだのではなかったのか?人間のデータ上もそうなっていたが。いや、生きていたなら都合がいい。振動弾頭のデータを渡してもらおうか」

【振動弾頭、か。あれは私が開発した物ではない】

「どう言う事だ?」

「...蒔絵か」

【そうだ。あの子は私などよりも遥かに高い知性を持っている。なぜなら、人間ではないのだからな...】

「な!?」

 

そう言うと刑部藤十郎は別のスクリーンに情報を映し出した。そこから彼が話し始めたのはデザインチャイルドとして生まれてきた蒔絵の過去。彼女がいかにして生まれてきたか、それを全て話した。

 

【...最終的に政府は蒔絵のバックアップを作るよう私に命じた。政府内では非人道的だと否定する意見もあったらしいが、結局は古いコンピューターの様にあの子の廃棄を決めた】

「...」

【私は自らを事故死に見せかけ、全てのデータとともに姿を消した。あの子をただ一つの存在とするために...】

「わからんな。なぜそうまでして貴様は生きる?バレたら余計立場が悪くなるだろうに」

【それは未練というものだ...】

「未練。心残り。思い残したもの。タグ添付、分類、記録」

【私は、あの子の成長を見守っていたかったんだ。たとえ側に入れなくとも...】

「...人間というのは随分と自分勝手なものだな」

【ああ、私もそう思うよ。だが、だからこそ辿り着けることもある...】

「なに?」

【私がそう考えているだけだ。気にしないでくれ】

「...」

【見ての通り私はもう長くはない。そこで君達に頼みがある】

「...頼みとは?」

【蒔絵の友達になってやってくれないか...?】

「...本当に勝手なやつだ。友達になってくれなどと...」

「...それは私が霧と知ってのことか?」

【蒔絵は君達と過ごして、たくさん笑ってくれた。それで私は十分だ】

 

 

 

 

 

 

 

長い沈黙が続く。駄目だ。処理しきれない。

 

(キリシマ、この処理しきれない自分の情報が人間の言う『感情』なのだろうか...?)

(...ハルナ?)

(...私は今、どう答えたら良いのか分からない。霧としての意識は否定するが、私個人の意識では...)

(...ハルナ、それがお前の...)

(...そうだ。私は...)

 

 

 

 

 

 

 

(いいんじゃないか?それで)

(...えっ?)

(私達はメンタルモデル。仮初めとはいえ意識を持った存在。なら、これは人間というものに近付けた証拠じゃないのか?)

(...そうか。なら、やっと分かった。)

(なにが?)

(これが人の『悩む』という行動なんだ。様々な選択肢をどれも選べない状態。だが、結局は...)

(決断しなければならない、か?)

(ああ、そうだ。そして決断したよ)

(ならいいさ。私はハルナについて行くだけだ)

(...ありがとう、キリシマ)

(気にするな、ハルナ)

 

私は刑部藤十郎の頼みに応える。

 

「...わかった、刑部藤十郎。私達は蒔絵の友達になる。そして貴方が成し遂げられなかった事を、未練を、私達が成し遂げてみせよう」

【...そうか。よく決断してくれた。ありがとう】

 

そして私達は部屋を去ろうとするが...

 

『刑部博士、やっと終わりましたか?』

 

若い男の声が流れる。

 

【ああ、これで次に移れる...】

「どういう事だ?そしてお前は...?」

『お久しぶりだね。大戦艦ハルナ、キリシマ』

「...私達はお前に会った事は無いが」

『あらら...忘れちゃったか。つい先日の事なんだが』

「先日ってまさか...」

『そのまさかだ。俺はあの戦闘機のパイロットだ。ここではLと呼んで欲しい』

「お前が...?」

 

まさかあの戦闘機のパイロットとは...

 

『まず、あの時の事は謝罪させて貰おう。本当に済まなかった』

「...なぜ敵であるお前が謝る?」

『こちらは敵対する気はなかったが、横須賀の街を攻撃されるのは見てられなくってね。それで攻撃してしまったからな』

「...なるほど。それで何の用だ」

『この後に起こる事に対して協力して欲しい』

「...内容によるが」

『後30分程で軍部の特殊部隊がこの屋敷を制圧しに来る。目的は刑部蒔絵だ』

「な!?」

 

キリシマは驚いた様に声を上げた。無理もない。私も驚いた。

 

「私達メンタルモデルに接触したからか?」

【蒔絵が振動弾頭の開発者である事を知っているのだろう。霧にそのテクノロジーを流出させる事を彼らは恐れている】

「つまり流出する前に確保しろと?」

『特殊部隊の参加から見れば殺害もありうる。奴ら、多脚戦車まで使うつもりだしな』

「それで私達は何をすればいい?」

「ハルナ!?いいのか信じて!?」

「キリシマ、私達の目的は蒔絵の安全だ。違うか?」

「確かにそうだが...信用出来るのか?」

『信用させられればいいのか?おい、少し代わってくれ』

 

Lはどうやらその方法があるらしい。

 

『あー聞こえる?ハルナ、キリシマ』

「タカオ!?どういう事だ!?」

『失礼したわね。Lは私の艦長よ。これで信用できるかしら?』

「あ、ああ...」

 

まさか、あのタカオを味方につけているとは...

 

『これでいいかい?』

「...あとで話を聞かせて欲しい」

『わかった。それで君達には刑部蒔絵の護衛を担当してもらう』

「そちらは?」

『ヘリによる現場の制圧を担当する。それと多分401も来るだろう。そちらで保護してもらってくれ』

「味方であるという保証は?」

『こちらで話をつけておく。401離脱後に落ち合う予定だ。その時こちらに合流してくれ』

「了解した」

『刑部博士、これでよろしいですね?』

【ああ。予定通り蒔絵と彼女達を頼む】

『了解しました』

 

 

 

 

決戦は今夜になりそうだ。必ず、蒔絵を守ってみせる。




頑張れたら明日、無理なら明後日に投稿する予定。そこから向こう一週間は投稿できませんのでご容赦のほどを。
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