空飛ぶ山猫と重巡洋艦 作:とある戦闘機好き
ーside401
振動弾頭のサンプルを積み込み、横須賀港を出た夜。
「暗号通信?」
それは突然だった。
「艦長。送信先が不明の暗号通信が来たのですが...」
「なんだって?」
「モニターに出します」
モニターに出てきたのは謎の言語の羅列。どういう事だ...
「僧、分かるか?」
「いえ、流石に...ここまで複雑な物は初めて見ましたね」
「...群像」
「どうしたイオナ?」
「これ、霧の暗号」
「なんだって!」
いったい誰がこんな物を...
「解読出来るか?」
「出来る。今、終わった」
「それでなんてあったんだ?」
「...『とある子供とメンタルモデルが接触した事により、その家に軍部の特殊部隊が急襲する手筈になっている。君達に彼女らの救出、保護に手を貸して欲しい。保護後に再度連絡する。合流後に報酬を渡すつもりだ。報酬は我々の持つナノマテリアルの一部と侵食弾頭の補給。受けてくれるなら連絡をしてくれ。重巡洋艦タカオ』って」
「あいつが!?」
「どういう事でしょうか...?」
「確かにナノマテリアルや侵食弾頭の補給は嬉しいが、なんかありそうな気がすんだよな」
そうだ。あまりにも話が出来すぎている。が、問題はそこではない。
「人とメンタルモデルが接触した方が大事だ」
「そうですが...多分接触したのはハルナ達でしょうね。私達にも責任はある」
「そして依頼主はタカオ...皆、この依頼どう思う?」
「騙して悪いが感も否めませんが...」
「それはいつもの俺たちじゃん」
「どうでしょうか...」
「微妙な所だよね」
「...群像」
「イオナ?」
「きっと大丈夫。タカオは多分接触した子の保護を優先している」
「...保証は?」
「じゃないとこんな依頼は出さないと思う」
「...そうか。皆、この依頼を受けようと思う」
「了解。一応火器管制立ち上げておく」
「わかりました。センサー類準備は完了です」
「機関部も準備完了。いつでもいけるよ」
「イオナ、タカオに連絡をとってくれ」
「了解」
ーsideタカオ
予測される特殊部隊の刑部邸襲撃まで残り15分。現在の位置は刑部邸の沿岸から南に5海里、上空500m。
「タカオ、401から連絡は?」
「そろそろ...きた」
401から概念伝達による連絡が来る。
「概念伝達が来たわ」
「作戦と報酬の引き渡しについて説明してくれ」
「了解よ」
そう言って概念伝達の場所へ意識を移した。
白い空間。相変わらず何かの庭園でも模しているのだろうか。椅子に座ると向かい側に401のメンタルモデル、イオナが現れる。
「タカオ」
「きたわね、401」
「私達は依頼を受けさせてもらう」
「そう、ありがとう」
「...タカオ」
「なに?」
「なぜ貴方は私達がハルナ、キリシマと戦った時に助けてくれた?」
「よく分かったわね。だけど、それは私の意思じゃないわ」
「えっ?」
いつも無表情なイオナは驚いた顔をする。それだけ驚いたという事だろう。
「私の艦長の意思よ。私はそれに乗っかっただけ」
「貴方も艦長を?」
「ええ。それについては後で話しましょ。作戦について説明するわ」
「わかった」
作戦の概要を説明する。あまり残った時間はない。
「今回の目的は霧の大戦艦ハルナ、キリシマ並びに接触した民間人、刑部蒔絵の3人。貴方達にはこの3人の保護を担当してもらうわ」
「状況は?」
「少し急ぎましょうか。後15分程で刑部蒔絵の邸宅に陸軍の特殊部隊が制圧を開始するわ。私達は空から敵部隊の制圧を、貴方はハルナ、キリシマと協力し刑部蒔絵を護衛して401まで運んで。ハルナ達には話は通してあるから問題はなし。貴方達の離脱完了を確認し次第、私達も離脱するわ。
これ、作戦詳細ね」
401へ作戦詳細のデータを送る。
「艦の待機場所については?」
「特にこちらからの指定はなし。でも、なるべくバレない方がいいかもしれないわね」
「離脱後については?」
「こちらから再度連絡させてもらうわ。その時に合流場所を指定するわね」
「報酬は?」
「合流完了後にお支払いするわ」
「わかった。ではこちらも作戦行動に入る」
「ええ、お願いね」
少し目を離すとイオナは消えていた。自分も意識を戻す。
「おわったわよ」
「ok。では作戦を開始する」
ーside401
「...群像」
「どうだイオナ?」
「タカオから作戦詳細を預かった。目的は3人の保護。メインモニターに出す」
「結構な作戦だな。軍を敵に回す事になるかもしれないが...この作戦をタカオが?」
「わからない...でもタカオには艦長がいると」
「なんだって!?」
「まさかタカオもですか...」
「でもそう考えればこの作戦もそいつが考えたって事じゃねーの?」
「確かにその線はあり得る。...いや、それよりも依頼だ」
「そうですね。準備の方は出来ています」
「なら作戦を開始しよう。イオナ、準備はいいか?」
「いつでも」
「よし。401、発進する!」
次は戦闘シーン。上手く書けるかどうか...