空飛ぶ山猫と重巡洋艦 作:とある戦闘機好き
ー名古屋沖
「負けた...か...」
そこには一隻の重巡洋艦が浮かんでいた。艦橋の上には人...ではなくメンタルモデルが腰掛けていた。
その名を「タカオ」、旧日本海軍高雄型重巡洋艦一番艦「高雄」を模した霧の重巡洋艦である。
タカオは動かなかった。いや、動けなかったと言うのが正しい。彼女は先程の戦闘を思い出していた。
数える事十数時間前、タカオは霧を離反し人類側についた「イ-401」潜水艦の横須賀行きを止めるため、「ロ-501」潜水観測艦とともに和歌山県沖に位置する台風の目の中にいた。
それに対し401は横須賀に行くためタカオ攻略戦を開始する。
持つ情報の量から圧倒的優位に立っていたタカオだったが、401潜の艦長である千早群像により501潜を喪失、自身の武装もロックされ名古屋沖へと移動させられた。
必ず勝利出来ると思っていたし、その条件も揃っていたはずだ。だが負けた。ならその敗北の原因は何なのか?
天候?...台風を利用し、終始有利に立ち回っていたはずだ。
自身の状態?...霧のメンタルモデル。そんな物は関係ない。
なら...
「戦術?」
言って気づいた、自分と401潜との明確な違い。それは戦略や戦術。
かつての大海戦は多対多の艦隊戦。持つ武装のレベルが双方で大きく違う場合、下手を踏まない限りどの様な行動を取っても勝てるだろう。実際にそうだった。
だが一対一の戦いならどうだろうか。今回の戦いは武装のレベルに差がない上に、あちらには人類が今日までに積み上げてきた「戦術・戦略」が存在していた。限られた情報から戦術を作り出す。霧にはそれが足りない。
「そうか。だからこそ総旗艦はメンタルモデルの生成を...」
演算領域の一部を使用するデメリットがあれども、人類に溶け込むことによって、その戦術や戦略を吸収できるという大きなメリットがある。
「人類の持つ戦術や戦略...それがあれば私も...」
401潜に遅れをとることはなくなるだろう。兵器としての考えはそれで十分なはずだった。だが...
「人類か...面白いな...」
彼女は人類そのものに興味を持ってしまった。その結末がどういうものになるのか、彼女はまだ知らない...
ー数日後
「あれは...何だ?島か?」
401潜による24時間の武装ロック解除後、彼女はとある海域へと移動し、観測用のリコンを発射させた。のだが...
「おかしい。この近くに島はないはず。どういうこと?」
その海域には島があった。かつて大海戦を行った時ここ周辺の海域を通ったが、こんな島は無かった。
「戦術ネットワーク、それに概念伝達まで使えないなんて...」
強力な地磁気やジャミングが発生しているのか、圏外に置かれた携帯の様になってしまった。だがリコンだけは動かせる。とりあえず島を調べるためにリコンを移動させる。
「滑走路...その近くには格納庫まで...
あれは畑?小屋も立っている...」
無人島にしては随分おかしい。さらに調べるためにリコンを島へと近づけると...
「ミサイル!?どこから!?」
地上からミサイルが発射され、リコンが撃墜されてしまった。彼女はリコンが最後に送信した映像を確認する。そこには...
「...戦闘機?」
戦闘機が格納庫から出てくるところが写っていた。
「まさか...迎撃を?」
ー伊犂ノ島 side
格納庫の近くに作った小屋で調べ物をしているとアラームが鳴り響いた。
「なんだ!?」
すぐに格納庫まで行きOcelotを起動させ、ログを確認する。そこには...
『未確認飛行物体を確認。島の情報流出を防ぐため、Aサイトから対空ミサイルを一発発射する。発射許可を』
「どういうことだ?島の情報流出って...」
頭を傾げる。が...
「まさか...」
急いで島のレーダーサイトに接続する。そこには重巡洋艦の姿があった。
「霧か!?ミサイル発射許可、それと迎撃に上がるぞ!」
そう言うとOcelotは最適な武装の搭載候補を挙げる。
「取り敢えずASM-09を4発、弾頭はACFだ!それとAIM-18を6、ARAM-1を3パックを搭載!」
すぐにOcelotが搭載を開始する。その間に専用スーツを引っ張り出し、着用。操縦席に滑り込みRed Alertのシステムを立ち上げる。
Red Alertシステム、起動
メインバッテリー通電、空気圧縮機から両エンジンに空気投入。
両エンジン、起動。自己診断を最大出力で開始、完了。問題なし。両リアクターを使用電源に設定変更。
武装搭載完了。
TLS...動作よし。
ANJM/APAR-1x オールサイド・フェーズドアレイ・レーダー...動作よし。
GEN-Ⅸ HMD...動作よし。
ECMシステム...動作よし。
HASS...動作よし。
F/A-114 Ocelot 発進準備完了
「出るぞ!」
即座に滑走路に機体を進入させる。そこで上空に爆発が起こった。
『未確認飛行物体の撃墜を確認』
「よし!」
スロットルをアフターバーナーに入れ、即座に離陸。距離と方角を確認する。
「Control tower.
This is Rayven.」
『Rayven.
This is Control tower.
Start the counter attack mission.』
「Roger.」
機体は音を残して超音速飛行を開始した。
空飛ぶ山猫と重巡洋艦。ここから物語は始まる。