空飛ぶ山猫と重巡洋艦 作:とある戦闘機好き
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ーside山猫
機体を格納庫に戻すと小屋から一冊の分厚い本を取り出し、港へと走る。港へ着くとタカオが入港するところだった。丁度いいタイミングだったようだ。
「ここでいいの?」
「ああ、そこに泊めてくれ」
そう言ってタカオの甲板へ上がる。
「ちょっと、艦長。今、跳んで来なかった?」
「気にするな」
その間にバースのサイドから固定アームが伸びてきた。固定が終了すると出口にシャッターがかかり海水が排出された。
「なるほど。乾ドックってわけね」
「とはいっても今まで一度も使わなかったから、こんな物がこの島にあるなんて初めて知ったけどな」
「そうなの?」
「第一この島に船なんてないしな」
そう言うとなぜかタカオは少し嬉しそうに笑う。
「そう、私が艦長の最初の艦なのね...」
「なんか言ったか?」
「いいえ、なにも」
しばらく経つと海水が完全に排出され、地下へと動き始めた。
「どうなってんの、これ?」
「さっき言っただろう?地下ドックがあるって」
「いや、だから動力ってなんなのかなって」
「わからん」
「えぇ...」
「そういうことはオセロットが知ってると思う」
そう、気づいたらここにいた俺が知っているわけないのだ。
「オセロットって?」
「俺の相棒。あの戦闘機に載ってる自我を持ったAI」
「自我を持ったAI!?そんな物この世界には存在しないわよ!?」
「でも実際に存在するからなぁ」
「...とにかく艦長達が規格外ってことは、よく分かったわ」
「まあ、俺も半分サイボーグみたいなもんだし」
「...はい?」
「だから、俺も半分サイボーグみたいなもんだって」
「えぇ!?艦長って本当にこの世界で生まれたの!?」
「わからん、気づいたらここにいたからな」
オセロットならよく知っているだろうけど。
「てか艦長じゃなくて名前で呼べよ」
「艦長の名前はまだ聞いてないわよ。TACネームはRayvenって聞いたけど」
「リンクスだ」
「リンクス...山猫?」
「そういうこった」
そうすると地下ドックへ到着する。
「...ねぇ」
「...なんだ」
「港はあんなに小さいのに、なんで地下ドックはこんなに広いの?」
「...俺が知りたい。取り敢えず1番ドックに入れてくれ」
「わかったわ」
船体が1番ドックに固定されると、タカオと船から降りた。
「それで、リンクスは私にどんなことを教えてくれるのかしら?」
「戦略、戦術とか言う前に知っとかなきゃならんこともある。これ読んどけ」
そう言うと小屋から持ってきた分厚い本をタカオに投げる。
「ちょっ、なにこれ?」
「クラウゼウィッツの『戦争論』」
「どういうつもりかしら?」
「戦略、戦術とか言う前に、戦争の本質ってやつを知っといたほうがいい。読み終わったら感想をくれ」
「なるほどね...わかったわ」
ーside霧
「なに?タカオの反応が消えただと?」
「はい、コンゴウ。タカオは今現在、戦術ネットワークに繋がっておりません」
「概念伝達もか?」
「そのようです」
白い空間に白いテーブルと白い椅子。概念伝達の際に霧のメンタルモデル達が出会う場所。そこには2人のメンタルモデルがいた。
紫色のドレスを着た大戦艦「コンゴウ」とチャイナドレスに似た服を着る潜水艦「イ-402」。
イ-402はコンゴウにタカオの反応が消失したことを伝えていた。
「タカオに何があったというのだ...」
「そういえばタカオはイ-401に敗北後、自分の艦長を探すと言っていましたね」
「だがこれと何の関係があると言うのだ?」
「何の関係もないとは言い切れないのでは?」
「霧を離反したと?」
「私はそう考えます」
「...なるほどな」
「...どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。引き続きタカオの捜索を頼む」
「了解しました。では失礼します」
そう言うとイ-402はいなくなっていた。
「まさかタカオほどの者が霧を離反するとはな...いや、実際に離反したと考えるのはまだ早いか」
メンタルモデルの利点。それについては自分も理解している。だがメンタルモデルによるデメリット、感情の発生については早急に対策を立てる必要がありそうだ。
そう考えるとコンゴウは現実世界へと意識を帰還させた。