空飛ぶ山猫と重巡洋艦   作:とある戦闘機好き

7 / 21
どうも。本編再開です。

お気に入り増えてる...!
ありがとうございます!


Alt-5 山猫、地下ドックに行く

ーside山猫

 

機体を格納庫に戻すと小屋から一冊の分厚い本を取り出し、港へと走る。港へ着くとタカオが入港するところだった。丁度いいタイミングだったようだ。

 

「ここでいいの?」

「ああ、そこに泊めてくれ」

 

そう言ってタカオの甲板へ上がる。

 

「ちょっと、艦長。今、跳んで来なかった?」

「気にするな」

 

その間にバースのサイドから固定アームが伸びてきた。固定が終了すると出口にシャッターがかかり海水が排出された。

 

「なるほど。乾ドックってわけね」

「とはいっても今まで一度も使わなかったから、こんな物がこの島にあるなんて初めて知ったけどな」

「そうなの?」

「第一この島に船なんてないしな」

 

そう言うとなぜかタカオは少し嬉しそうに笑う。

 

そう、私が艦長の最初の艦なのね...

「なんか言ったか?」

「いいえ、なにも」

 

しばらく経つと海水が完全に排出され、地下へと動き始めた。

 

「どうなってんの、これ?」

「さっき言っただろう?地下ドックがあるって」

「いや、だから動力ってなんなのかなって」

「わからん」

「えぇ...」

「そういうことはオセロットが知ってると思う」

 

そう、気づいたらここにいた俺が知っているわけないのだ。

 

「オセロットって?」

「俺の相棒。あの戦闘機に載ってる自我を持ったAI」

「自我を持ったAI!?そんな物この世界には存在しないわよ!?」

「でも実際に存在するからなぁ」

「...とにかく艦長達が規格外ってことは、よく分かったわ」

「まあ、俺も半分サイボーグみたいなもんだし」

「...はい?」

「だから、俺も半分サイボーグみたいなもんだって」

「えぇ!?艦長って本当にこの世界で生まれたの!?」

「わからん、気づいたらここにいたからな」

 

オセロットならよく知っているだろうけど。

 

「てか艦長じゃなくて名前で呼べよ」

「艦長の名前はまだ聞いてないわよ。TACネームはRayvenって聞いたけど」

「リンクスだ」

「リンクス...山猫?」

「そういうこった」

 

そうすると地下ドックへ到着する。

 

「...ねぇ」

「...なんだ」

「港はあんなに小さいのに、なんで地下ドックはこんなに広いの?」

「...俺が知りたい。取り敢えず1番ドックに入れてくれ」

「わかったわ」

 

船体が1番ドックに固定されると、タカオと船から降りた。

 

「それで、リンクスは私にどんなことを教えてくれるのかしら?」

「戦略、戦術とか言う前に知っとかなきゃならんこともある。これ読んどけ」

 

そう言うと小屋から持ってきた分厚い本をタカオに投げる。

 

「ちょっ、なにこれ?」

「クラウゼウィッツの『戦争論』」

「どういうつもりかしら?」

「戦略、戦術とか言う前に、戦争の本質ってやつを知っといたほうがいい。読み終わったら感想をくれ」

「なるほどね...わかったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーside霧

 

「なに?タカオの反応が消えただと?」

「はい、コンゴウ。タカオは今現在、戦術ネットワークに繋がっておりません」

「概念伝達もか?」

「そのようです」

 

白い空間に白いテーブルと白い椅子。概念伝達の際に霧のメンタルモデル達が出会う場所。そこには2人のメンタルモデルがいた。

紫色のドレスを着た大戦艦「コンゴウ」とチャイナドレスに似た服を着る潜水艦「イ-402」。

イ-402はコンゴウにタカオの反応が消失したことを伝えていた。

 

「タカオに何があったというのだ...」

「そういえばタカオはイ-401に敗北後、自分の艦長を探すと言っていましたね」

「だがこれと何の関係があると言うのだ?」

「何の関係もないとは言い切れないのでは?」

「霧を離反したと?」

「私はそう考えます」

「...なるほどな」

「...どうかしましたか?」

「いや、なんでもない。引き続きタカオの捜索を頼む」

「了解しました。では失礼します」

 

そう言うとイ-402はいなくなっていた。

 

「まさかタカオほどの者が霧を離反するとはな...いや、実際に離反したと考えるのはまだ早いか」

 

メンタルモデルの利点。それについては自分も理解している。だがメンタルモデルによるデメリット、感情の発生については早急に対策を立てる必要がありそうだ。

 

そう考えるとコンゴウは現実世界へと意識を帰還させた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。