空飛ぶ山猫と重巡洋艦 作:とある戦闘機好き
ーside山猫
「この島、結構広いのね」
「たしか大体10平方キロメートルくらいある」
タカオが島に着いた翌日。
地下ドックから地上へ出た後、タカオに島の案内をする事にした。
「あそこが自給自足の畑、あっちが格納庫と滑走路、それでここが発電所」
「発電所もあるって...」
「この島は火山島だからな。地熱発電やマグマを利用した発電もできる」
火山島だからできる強みだ。
「少しいい?」
「なんだ?」
「この島の海域、たしか沿岸から20kmくらいだったかしら。海域に入った途端、いきなり戦術ネットワークと概念伝達が使えなくなったのよ」
「使えなくなった?」
「ええ」
「...オセロットなら知ってるかも」
取り敢えずオセロットに聞くために格納庫へと向かった。
「オセロット、起きてるか?」
『どうした、相棒?』
「この島ってジャミングとかのECM関連の施設ってあったか?」
『そんな物はない。が、この島が特殊なんだ』
「どう言うことかしら?」
『この島は【異空間】に位置している』
「...えっ?」
「なるほどな」
『どうやら相棒は理解したみたいだな』
「つまり【scp オブジェクト】に指定されるような島だと言いたいわけか」
『そう言うことだ』
「...話が飛躍しすぎて意味がわからないけど、【scp オブジェクト】ってなんなの?」
『【scp オブジェクト】は確保、収容、保護すべきとされる異常性を持った物体、生物、概念の事だ。それ以上の事は分からない』
「それで、なんでこの島はそれに指定される様なものだと?」
「異空間の発生が普通の現象だと思うか?」
「あっ」
『異空間にこの島が位置するから、タカオの言う戦術ネットワークや概念伝達が使用できないと推測するべきだ』
「...なるほどね」
しかし伊犂ノ島が異空間にあるとか初めて知ったんだが...
「なあ、オセロット」
『どうした?』
「ここに入る条件って何なんだ?」
『それは分からない。だが、とある海域に一定の方向から進入する事によって転移するのではないかと推測する』
「じゃあ、あの時私は」
『それによって転移したと考えられる。それによって推測は条件足りうると判断した』
タカオによって条件が証明されるとはな...
「原因も分かった事だし、これからの事も考えないとな」
『これからの事か?』
「ああ。うちにタカオが来た以上、世界情勢と無関係ではいられないだろうな」
『確かにな。どうするつもりだ、相棒』
「それを今から話し合うんじゃないか」
『それもそうか』
そう、問題はここからだ。タカオが来た以上、世界情勢は自分らの無関係を許す事はないだろう。何かされる前に手を考えなくては...
「リンクス、ちょっといい?」
「どうしたよ?」
「『戦争論』、読み終わったわ」
「早いな。流石は霧といったところか」
「それで感想なんだけど...」
「...言いたい事は分かる」
「内容が所々で矛盾してない?」
「それはしょうがない」
「なんでよ!?」
「その本、クラウゼウィッツが亡くなった後に出版されたからな。纏めたのはクラウゼウィッツの奥さんと部下の方々だし」
「彼は纏めようと思わなかったの?」
「彼は内容が矛盾しているのは知っていた。その上で編集して出版しようと思っていたんだが、その前に亡くなられたのさ」
「じゃあ、これは...」
「その遺志を様々な人が受け継いで作り上げたってわけ。内容が矛盾しているのはしょうがない。描いた本人ほど内容を知っている人はいないからね」
「なるほどね...でも内容については理解できるわ」
「ならいいんだ」
これで次の段階へと移れるか...?
「で、何を話していたのよ?」
「うちがこの世界で、どう行動するべきかってトコ」
「そうね...まだ、世界に認知されるのは早いんじゃない?」
「だよなぁ...」
『なら、バレない様に行動すればいいじゃないか』
「「それだ!」」
オセロットの意見に声が揃った。
「私も人がどの様に生活しているのか、知りたいんだけど」
「知らんかったんかい!」
『タカオ...それは...』
「まぁ、取り敢えずタカオが霧やイ-401から認知されない様にしないとな...」
「どうにかできるの?」
『1日だけ待ってくれ』
「ん?」
『私が考えておこう』
「なら頼んだ、相棒」
『任された、相棒』
「そういやタカオ」
「なに?」
「俺を艦長にするって言ってたけど、オセロットをどーすんの?」
「あ」
「考えてなかったんかい!?」
『それも私が考えておこう...』
次から横須賀編に入るかも