俺が美優にプロポーズするまで   作:(TADA)

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テレビで紹介されることになった周介くんのお店


しかし、当然のように普通に済むはずがなく。


居酒屋『しんでれら』テレビ放送

 「うちの店を紹介したい?」

いつもの夜。いつもの飲兵衛集団が俺の店でドンチャン騒ぎをしている光景を「ああ、この人達がこの国でトップクラスのアイドル達なのか。日本終わったな」と考えていたら美優にそんな相談をされた。

 「はい。実は楓さんがラジオで頻繁にこのお店のことをお話しているみたいで、そうしたら美波ちゃんの番組で紹介したいというお話らしいです」

 「テレビ番組の取材申し込みだったら何度もあったけど、なんで美優からなんだ」

 「番組ディレクターが頼んだら『これ以上忙しくできるか、バァァァカ!!』と言われて電話を切られたとおっしゃってましたよ?」

そんなこともあったかもしれない。

 「う〜ん、テレビかぁ。いや、美優の頼みだったら全部叶えてあげたいんだが、テレビ番組で報道されてこれ以上忙しくなるのはなぁ……美優には悪いが断るよ」

 「兄ちゃん!! この頼みを受け入れてくれたら美優さんが次の時に色々奮発してくれるらしいで!!」

 (ガタッ!)

 「周子ちゃん!? いえ!! 言ってませんよ!?」

 「ふ、奮発ってなんだ、周子」

 「そりゃあAVでしか見られないようなことやろ。いよ!! 美優さんのムッツリ!!」

 「わ、私は何をすることになるんですか!!」

美優とめくるめくピンク劇場……だと……!?

 「美優、テレビ報道を断ると言ったな」

 「え、あ、はい」

 「あれは嘘だ」

 「周介さん!?」

 「兄ちゃん、どう考えても下半身で決めたやろ」

 

 

 

 

 

新田美波は自身のテレビ番組のロケで居酒屋『しんでれら』の前にやってきていた。

 「みなさん、こんばんは。今日は346プロ所属アイドル高垣楓さんのラジオ番組でも度々紹介される居酒屋『しんでれら』に来ています」

テレビ番組らしくお店の紹介を始める美波。

 「このお店、とても美味しい料理を出してくれることで有名で、346プロ所属のアイドルにもたくさんの常連さんがいらっしゃるようです」

そこまで説明して美波は残念そうな表情になる。

 「ですが店長からのお願いでお店の外観と周囲にはモザイクをかけてくれということでした。でも頑固店主がやっているお店って感じでちょっとかっこいいですよね」

美波の発言に男性スタッフから感嘆の声が溢れる。未成年なのに溢れ出る謎の色気はなんだ的な意味で。

 「それでは早速入ってみましょう。失礼しま……え?」

美波は硬直してしまった。それはそうだろう。何故か狼の被り物をした二人組(一人はカウンター内の厨房、もう一人はカウンターに座りながら)が「For the king for the land For the mountains For the green valleys where dragons fry For the glory the power to win the black lord I will search for the emerald sword」と熱唱している。狼の被り物だけでも美波の思考を停止させる威力があるのに、さらにはその狼達がムカつくほどうまく歌を歌っていることに驚きを隠せない。

そして曲が終わるとお座敷から歓声がでる。

 「店長、歌上手いじゃない!!」

 「あの人が店長さんなんですか!?」

お酒を飲んで完全に出来上がっている346プロ所属アイドルの片桐早苗の言葉に美波の中にあった頑固親父の店主イメージが崩れ去った。

 「あら、美波ちゃん、ようやく来たのね。遅いから先に始めちゃったわ」

 「いえ、瑞樹さん。ロケ時間通りなんですが……」

川島瑞樹(当然のように出来上がっている)の言葉に美波はちょっと引きながら告げる。だが、当然のように酔っ払い達にそんな声は届かない。

 「さあさあ、美波ちゃんもこっちに来てください。お猪口にちょこっとでいいので一緒に飲みましょう」

 「楓さん、私は未成年ですよ!?」

 「そんなこと言ってぇ!! どうせ大学では飲んでるんでしょ!! 今時未成年だからって酒を飲まない大学生の方が貴重よ!!」

 「早苗さん、元婦警さんが言ってはいけないことですよね!?」

入店してからツッコミしかしていない美波。しかし今日はまだ柊志乃や高橋礼子がいないだけマシなのだ。彼女達がいるとさらに酷くなる。

 「あの、美波ちゃん」

 「あ、美優さん」

そしてようやく案内人役の美優がやってきた。

 「え〜と、本日のお店を紹介してくださる三船美優さんです」

 「よろしくお願いします」

美優はそう言ってカメラに向かって深々と頭を下げる。

 「とりえずこちらのカウンター席へどうぞ。撮影用に確保していますので」

 「あの、早苗さん達は?」

 「みなさんはただ飲みたいだけの方々なので放って置いて大丈夫ですよ」

美優の微笑みながらの言葉。そこには飲兵衛達に振り回され続けた歴戦の猛者の凄みがあった。

ただ毎回潰されているだけとも言う。

美優に案内される形でカウンター席に座る美波。すると正面にいた狼が両手を振り上げて叫んだ。

 「よく来たな新田美波!! 歓迎しよう!! 盛大にな!!」

 「え、え〜と……ありがとうございます?」

つい語尾が疑問形になってしまった美波。仕方ない。食事の美味しいお店だと聞いていたのに居たのが狼の被り物をすたキチガイだもの。

しかし、そのキチガイはもう一匹の狼に小声で話しかけ始めた。

 「おいおい、見事にドン引きされているんだが、どう言うことだ?」

 「兄ちゃん、やっぱり狼の被り物をするんやったらFLY AGAINの方が良かったんやないか」

 「いえ、そう言う問題じゃないです……というかその声はひょっとして周子ちゃん?」

全く見当違いの答えを出している狼達の片割れの声に同僚的な意味で聞き覚えがあったので美波が問いかけると、狼の片割れがカウンターの椅子に立ちながら宣言する。

 「346プロダクション所属アイドル塩見周子です!! 趣味は献血、特技は他人をイラッとさせることです。『青の一番星』買ってね!!」

 「どうした周子。標準語なんて使って」

 「キャラ作りやで兄ちゃん」

 「いや、それだったら普通逆にしない?」

 「甘いぞ、美波ちゃん!! 京都出身アイドルが京都弁を使うなんて普通すぎるでしょ!! 京都出身にも関わらず標準語!! これが新世代ですよ!!」

 「とりあえず周子ちゃん。椅子に立つのはやめましょう」

 「はい」

美優の言葉に素直に椅子から降りる周子。

 「え〜と、周子ちゃんもこのお店の常連なんですか?」

 「お金は払ったことないけどね!!」

 「……んん?」

周子の突飛な発言に頭の上にクエスチョンマークが飛び散る美波。そこに美優が苦笑しながらフォローした。

 「周子ちゃんはこのお店の店長さんの妹さんなんです」

 「だから何食べてもお金はかからないゾ!!」

 「俺は金払えって言ってるよな」

 「知らんな」

そして始まる塩見漫才。いつもと違うところは狼の被り物を被っているのでシュールさが増していることだろうか。

 「美波ちゃんは何か飲みますか?」

 「え? あの二人は放っておいていいんですか?」

 「常連さんにはいつものことですから」

確かに塩見兄妹の漫才などこの店の常連だったら必ず一回は見る光景だ。特に夜の常連の場合は初日からみることも珍しくない。

 「お料理の方は私のオススメを用意していただいているんで、先に何か飲み物から」

 「あ、はい。それじゃあ烏龍茶を」

美波の言葉に周子(しかし、狼ヘッドである)は再び椅子から立ち上がり指を鳴らしながら宣言する。

 「Hey マスター!! お客様に『特製』烏龍茶を!!」

 「ヨロコンデ!!」

周子の言葉に元気よく答える店長(当然のように狼ヘッド)。そして店長が取り出したのはウォッカとウィスキーの瓶。

この時点で美波の嫌な予感は高まる。

そして嫌な予感が当たるかのようにジョッキにウォッカが9、ウィスキーが1の割合で入れられる。

 「はい、烏龍茶」

 「これは私が知っている烏龍茶じゃありません!!」

当然のように出された烏龍茶(という名前を借りたモンスター)を見ながら叫ぶ美波。

 「何を言ってるんだ、美波ちゃん。ちゃんと烏龍茶の色してるんじゃん」

 「そうだぞお客さん、しかも色だけじゃなく」

周子の言葉に続くように口を開いた店長はチャッカマンの火を烏龍茶に近づける。すると烏龍茶に火がついた。

 「火までつく」

 「火がつく時点で大部分がアルコールですよね!?」

さらに突っ込む美波ちゃん。このままでは美波ちゃんの常識がやばい。

 「それじゃあお水ください」

 「わかった、水だな」

美波の注文変更に素直に応じる店長。そしてジョッキに透明の液体が入った飲み物が美波の前に置かれた。ジョッキで出てきたことに驚いた美波であったが、大人しくそれを飲もうとしたところを美優に止められる。

 「美優さん?」

 「ちょっと待ってくださいね、美波ちゃん」

そういって美優はチャッカマンを透明の液体に近づける。

すると透明な液体に火がついた。

 「…………………え?」

 「もう!! 店長!!」

 「色は水だからいいだろ」

 「よくないです!!」

呆気にとられる美波。怒る美優。悪びれない店長。煽る周子。お酒の追加を頼む飲兵衛集団。この時点でテレビスタッフはこの回は大きな放送事故回になることを覚悟した。

これが塩見兄妹を同時にテレビに出すことだ。

そこからも美波のsan値がピンチな進行が続いたが、美優の懸命なフォローでなんとか番組進行していく。特に店長の料理を食べた時の美波の表情は新田美波ファン垂涎の代物になるのであった。

 「え〜と、それじゃあ最後に周子ちゃんからお知らせです」

 「はいは〜い!!」

美波のパスを笑いながら受ける周子(しかし狼ヘッドである)。

 「美優さんとうち兄ちゃん中学時代からお付き合いしてるから」

 「周子ちゃん、それは言わないって約束しましたよね!?」

 「というか最後くらいは真面目に締めてください!!」

全国放送で爆弾を投下された美優は顔を真っ赤にして、美波はついに怒鳴ってしまうのであった。

 

 

 「さてさて、今回のテレビで美優さんと兄ちゃんは付き合っていることを全国区にすることはできたわけやな」

収録後に美優と美波のダブル説教を受けたにも関わらず全く答えた様子のない周子ちゃん。

 「覚悟しろや、兄ちゃん、美優さん。必ず年内にはプロポーズしてもらうで」

周子ちゃんプロデュースの『ヘタレな兄プロポーズ大作戦』が始まる。

 




塩見周介
番組の収録は最初から最後まで狼の被り物を被っていた。

三船美優
まさかの周子の裏切りで公然の秘密(三船美優には恋人がいる)が暴露され赤面。

塩見周子
兄と義姉のために暗躍を始める周子ちゃん。

新田美波
完全に巻き込まれ事故。

飲兵衛集団
最終的にみんな潰れた。





そんな感じで10月編でした。ハロウィン回にするつもりが完全なカオスに。そして暗躍を始める周子ちゃん。周子ちゃんが目指すのは年内のプロポーズ。大丈夫? 相手は周介くんだよ?

本文中の英語歌詞はとある洋楽の歌詞です。最近ガイドラインが変更され歌詞を使っても良いようになったので使ってみました。
え? だったらアイマスの曲を使え? ちょっと何を言っているかわかりませんね。
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