周子ちゃんがおとなしくしているわけもなく……
346プロ特別ライブ。俺は佐藤からもらったチケットで入場し、顔見知りの美優ファン(何故か親衛隊長と呼ばれる)や他のアイドルのファンと交流しながら大いに盛り上がっていた。
美優のLast Kissの時に美優と目が合い(佐藤がくれたチケットは最前列だった)少し照れていた美優を見た時は萌え死にかけたがなんとか持ちこたえ、今はアイドル達によるレクリエーション中である。
ステージ上には妹の周子。口癖は可愛い僕であり何故か投擲したくなるアイドル輿水幸子ちゃん。太眉が印象的な神谷奈緒ちゃん。そして周子とユニットを組んで活動している小早川紗枝ちゃんであった。
『今回の題目は周子はんが用意したって聞いとるけど』
『そうだよん。私が知恵を絞って用意したのをみんな楽しんでくれよな!!』
周子の言葉に客席からは歓声が出る。兄としては周子が用意した時点で地雷臭がひどく感じるのだが。
『まぁ、なんだったとしても可愛い僕の勝利は揺らぎないですけどね!!』
『う〜ん、その幸子ちゃんの最高の小物臭がたまらんな!!』
『小物臭ってなんですか小物臭って!!』
『幸子ちゃんは可愛いってことや』
『ふふ〜ん!! そうでしょう!! 僕は可愛いですからね!!』
『なんで今ので納得できるんだ』
奈緒ちゃんの言葉に同感である。周子の今の説明にはなんの説得力もない。
『それで? 何をしはるん……って聞こうと思っとったけど』
『まぁ、クイズセットが出てる時点で答えだよな』
紗枝ちゃんの言葉に奈緒ちゃんはボタンを押しながら答える。そこに周子はノリノリでマイクを持って説明を始めた。
『はいは〜い!! 今回、私が用意したのはこちら!! みんな大好きクイズ問題!! しかも普通のクイズ問題やないで、ちょっとマニアックなカルトクイズや!! 回答者は私、幸子ちゃん、奈緒ちゃんの三人!! 紗枝はんには問題を読んでもらいます!! トップにはこの後の時間を好きにしていい権利!!』
『ちなみに僕がトップになったら可愛い僕とステージ上で写真を撮れる権利をかけた抽選ですよ!!』
『私が勝った時にはトライアドプリムスの曲を披露するぞ!!』
『奈緒ちゃんが普通すぎて周子ちゃんはつまらん』
『うっさい!!』
周子の茶々に顔を真っ赤にして怒鳴る奈緒ちゃん。隣の熱烈な奈緒ちゃんファンはその顔をみてホクホクだ。
『台本では周子はんが勝った時だけ『ひ・み・つ』ってなっとったんやけど』
『大丈夫大丈夫、美城常務には許可もらっとるから』
『周子はんの大丈夫ほど信用できないものもないんやけど』
『う〜ん、この紗枝はんからの信頼のなさ。どう思う奈緒ちゃん』
『自業自得じゃない?』
『辛辣!!』
カラカラと笑う周子。そしてそのまま説明を続ける。
『当然のように勝者には栄光があるように敗者には惨めな末路が待っております!!』
『待ってください!! 僕はそれ聞いてませんよ!!』
『幸子ちゃんには言ってへんからな』
『ムキー!! なんでですか!!』
『だって幸子ちゃん前もって知ってたら逃げるやん』
『そんなに過酷な罰ゲームなんですか!?』
『せやなぁ、あえて言うなら……』
そこまで言ってから周子はとびきりイイ笑顔を浮かべる。
『Lipps特性罰ゲームってことかな!!』
『考える限りで最悪な選択だ!!』
幸子ちゃんの絶望の表情と奈緒ちゃんと紗枝ちゃんの引きつった笑顔が印象的である。
『それじゃあ時間もないことやしカルトクイズ、行ってみよぉ!!』
周子の言葉に歓声で答える客席。幸子ちゃんが小さくつぶやいていた「最下位じゃなければいんです……最下位じゃなければ……!!」と言う呟きは完全に敗北フラグであったが、突っ込む人物はいない。
誰しも見えている地獄に入りたくはないのだ。
「しかし、周子がクイズねぇ」
どう考えても普通のクイズなはずがない気がする。
そして紗枝ちゃんが1枚目の問題を読み上げる。
『え〜と、それじゃあ第一問。銀河英雄伝説外伝螺旋迷宮に出てくる730年マフィアの名前を全員(ピンポン!!)え、と、周子はん』
『ブルース・アッシュビー。アルフレッド・ローザス。ヴィットリオ・ディ・ベルティーニ。ファン・チューリン。フレデリック・ジャスパー。ジョン・ドリンカー・コープ。ウォリス・ウォーリック』
『え〜と、正解です』
やはり普通ではなかった。
『ブルース・アッシュビーを中心に活躍した士官学校の同期生達。もし第二次ティアマト会戦でアッシュビーが死なずにいたらどうなっていたかは銀英伝ファンなら誰しも妄想するよな!!』
そしてどうでもいいことを解説する周子。そんな周子に幸子ちゃんが引きつった笑いを浮かべながら問いかける。
『しゅ、周子さん? この問題は?』
そんな幸子ちゃんに不適な笑みを浮かべる周子。
『一つ言い忘れとったな。このクイズはただのクイズやない』
そして周子は腕を組んでから言い放った。
『銀河英雄伝説カルトクイズや!!』
『な、なんだってぇぇぇ!!!!』
『安心してや、問題はネッ友に作ってもらったから私も知らん』
『いえ、そう言う問題じゃないんですけど!? 可愛い僕が銀河英雄伝説なんてを知っているわけないじゃないですか!?』
『それなら黙って罰ゲームを受けるんやな!! 紗枝はん!! 次の問題や!!』
騒ぎ立てる幸子ちゃんを無視して先を促す周子。やっていることは完全に悪党である。
『それじゃあ第二問。アニメオリジナルエピソード「辺境の解放」で登場したアニメオリジナルキャラクターであるフランツ・ヴァーリモント少尉が所属していたのは第何艦隊(ピンポーン)』
『ふ、簡単すぎて欠伸が出るで』
『ま、待ってください周子はん!! 解答権は奈緒はんです!!』
『……え?』
確かに解答権のランプがついているのは奈緒ちゃん。奈緒ちゃんは特に表情を変えることなく口を開く。
『ホーウッド提督の第七艦隊』
『せ、正解です!!』
『何ぃ!?』
奈緒ちゃんの正解に客席からもどよめきが出る。そして周子は焦ったような表情になった。
『ば、ばかな!? 奈緒ちゃんは新しいアニメにしか興味がないはずでは!?』
『いや、そんなことないぞ? 銀河英雄伝説は抑えているし、ガンダムシリーズは基礎教養だからちゃんと抑えてる』
『ちなみに私はハゲの作品だったらブレンパワードが好きなんやけど』
『あ〜、わかる。あんまり主要人物死なないし、いい作品だよなぁ』
そして完全にオタ会話をする周子と奈緒ちゃん。
『と言うか周子ちゃんがアニメ見てる方が私としては意外なんだけど。奏ちゃんと映画談義しているのは何回も見てるから映画好きなのは知ってるけど』
『映画見るのもアニメ見るのも兄ちゃんの影響や』
『それだったらSHIROBAKOの劇場版公開されたら一緒に見に行かないか? 一人だとちょっと恥ずかしくてさ』
『ええで』
『ちょっと待ってください!! この状況だと僕に勝ち目ないんですけど!?』
幸子ちゃんの言葉に周子はイイ笑顔を浮かべ、奈緒ちゃんは「可哀想だけど明日にはお肉になっちゃうのね」と言う視線を幸子ちゃんに向ける。
『それじゃあ次に行こか』
『待ってくださいィィィィ!!!!』
幸子ちゃんの叫びも虚しくクイズは続く。周子の圧勝かと思った銀河英雄伝説カルトクイズだったが、奈緒ちゃんもかなりの重度らしく、いい勝負になっている。
そしてクイズ勝負の結果は……
『なんとか終わった。もう一度やれと言われてもできない』
『ク、イゼルローンを陥落させた時のヤンの言葉だな』
冷や汗を拭いている周子と、周子のセリフの解説をしながら悔しそうな奈緒ちゃん。
ギリギリの勝負になったが結果は周子の勝利であった。
『それじゃあ優勝は周子はんやけど……何やるん?』
『ちょっと準備があるから待ってな。佐藤!! 美優さんよろしく!!』
ステージ上でそれを告げると周子はステージから降りる。
「……え?」
「まあまあまま」
そして笑いながら俺の手を引いてステージの上まで引っ張っていく。
え? なに? なんなの? 客席からも『美優さんファンのヤベェ奴だ』って言われているんだけど。と言うか他のファンからも俺の認識ってそう言う認識のことにちょっとショックだ。
「あ、あの心さん?」
「いいからいいから☆」
そしてステージ脇からは佐藤に押し出される形で美優が出てくる。
そしてステージ中央でお見合いする俺と美優。
そして周子はマイクを使ってイイ笑顔で口を開いた。
『美優さんに恋人である兄ちゃんから大切な話があるってさ!!』
………
「「周子!?/周子ちゃん!?」」
思わずハモる俺と美優。それはそうだろう。突然ステージに引っ張り出されたら妹(妹分)からそんなことを言われるのだ。
そしてイイ笑顔を浮かべたまま周子は俺にマイクを渡してくる。そしてマイクに拾われない声量で俺に伝えてくる。
「男を見せる時やで」
………
(え? お前まさかここでプロポーズしろってか!?)
慌てて美優を見ると、佐藤に何か言われたのか顔を真っ赤にして俯いている美優がいる。そして佐藤と周子は俺に向かってサムズアップ!!
(バカかテメェらは!?)
ライブの最中にプロポーズとか許されると思ってるのか!? お偉いさんに怒られ……そういえばさっき常務には許可もらっているって言ってましたね!!
(どうする……!? 今度デートしてくださいで誤魔化すか……!? そうだな!! それしかない!!)
『美優!!』
『は、はい』
きちんとマイクを使って応答する俺と美優。そうだ、ここはデートしてくださいで逃げておくんだ……逃げて……
本当にそれでいいのか?
周子はキチガイだが、俺や美優のことを本気で思ってくれているのは知っている。そして炎上を覚悟で兄である俺にこんな舞台を用意してくれた。そのチャンスから逃げるのか?
覚悟を決めろ周介……!!
『俺と結婚してください!!』
俺が頭を下げ、手を差し出しながら大きく叫ぶ。ライブ会場は静まりかえっている。
永遠に続くかと思われた沈黙は俺の手を握った美優によって破られる。
『こちらこそ、よろしくお願いします』
その瞬間にライブ会場から大歓声が溢れるのであった。
「エンダァァァァ!!」
「周子!! その歌はやたら恋愛成就のシーンで流れてるけど、歌詞も映画も超男女が別れてるから!!」
「な、なんやて!? それやとあと私のレパートリーじゃあ嗚呼!逆転王!と戦国武将のララバイしかないで!?」
「青の一番星はどうした!!」
塩見周介
俺たち
三船美優
結婚します
塩見周子
うまくいってご満悦
神谷奈緒
目の前でプロポーズを見てしまい顔真っ赤
輿水幸子
後日バッチリ罰ゲームをやらされた。
やったぁぁぁぁぁぁ!!! ついに周介くんがプロポーズしてくれた!! 勝ち確定なのにへたれてプロポーズしてくれなかった周介くんが!! 公衆の面前で!! 公開プロポーズ!!
これ書いた後に思いましたけど、ネットがめっちゃ荒れるやつですよね。
まぁ、ここは優しい世界ってことで一つ許してもらいましょう。
次回からは式を挙げるまで編が始まるかもしれませんし、始まらないかもしれません。