「おいす〜」
「おう周子か」
「いらっしゃい周子ちゃん」
店の扉を開いてやってきた周子に俺と結婚して時間限定女将として働き始めた美優は声をかける。
だが周子は店の扉を閉めるとすぐに椅子に座らずじっくりと上から下までじっくりと見た後力強く頷いた。
「兄ちゃん、美優さんが着物姿なのはわかっとるやないか」
周子の言葉に俺はサムズアップすると、周子も親指を立ててくる。ちなみに美優は照れて顔を真っ赤にしている。
周子は席に座りながら注文してくる。当然のように周子特別メニューだ。
「お前は食事制限とかしなくていいのか?」
「私は食べても太らんから」
「周子ちゃん、それ事務所で言って盛大にヘイトを集めたばっかりですよね」
「美優さん、過去は忘れるもんやで」
周子はキメ顔でそう言った。
「そういや兄ちゃん」
「なんだ」
俺が調理していると周子が話しかけてくる。調理中に喋るとか料理人的にアウトな気もするが、まぁ、周子だからいいか。
「美優さんのフィギュア出るらしいで」
「いつ発売だ。俺も予約しよう」
「あ、私も予約しとるで」
俺と周子は硬い握手をしてドヤ顔を美優に向けると、美優は恥ずかしそうに手で顔を覆っていた。
「あ、でも兄ちゃん、美優さんフィギュアのパンツ覗いちゃダメやで」
「俺の奥さんなのにダメなのか……?」
「ダメや」
「あの……周介さん。私の洗濯物とかで毎日見てますよね……?」
ふ〜、やれやれだ。美優はわかっちゃいない。
「いいか美優。本物のパンツとフィギュアのパンツは別物だ」
「何を言ってるんですか……!?」
「それも理解できないなんて、美優さんはもうちょっと塩見の名前を名乗る重みを知った方がいいで」
「どういうことですか……!?」
俺と周子の言葉にマジ驚愕顔を浮かべる。だが美優も塩見を名乗ることになるのだからこれくらいは理解して欲しい。
「そういや兄ちゃん、結婚式はどうするん?」
「ああ、それな。美優とも話をしていたんだけど10月くらいに挙げるつもりだよ」
「あれ?残り七ヶ月しかないけど大丈夫なん?」
「安心しろ。社長が『お前たちが結婚式をしたという広告はかなり強い。うちを使え』って直接言ってきた」
「それって益々大丈夫なん? 社長さんだったら容赦なくぼってくると思うけど」
「通常より30割増しで要求してきたな」
「社長さん……!!」
「美優の説得により通常料金になった。舌打ちが秒速3000回飛んできたが」
「フゥゥ!! 流石は美優さんだぜ!!」
「周子ちゃん……!! 辞めてください……!!」
いや、マジで俺の友人達の美優に対する甘さはなんなのだろうか。
「それで美優ともちょっと相談していたんだけどな」
「なんや」
「例えば周子。何も知らない状態で俺の友人達を見たらお前ならどうする?」
「ポリス案件やな」
周子は言ってから妙に納得する。
「なるほど。新郎側の友人がちょっと初心者にはきつい人ばっかりなわけやな」
「マトモなの双海くらいなんだよなぁ」
こればっかりは本当に困った。美優が結婚式に同僚アイドルならまだしも未成年アイドルも呼ぼうとしているのでこの問題が発覚した。
「特に美優は可愛がってる市原仁奈ちゃんを呼ぼうとしてるからなぁ」
「あぁ。ちょっと子供には兄ちゃんの友達は完全にアウトやな」
そこで周子はいいことを思いついた表情になった。
「呼ばなければいいやん」
「それは俺も思った。でもなぁ、はい美優」
「お世話になってるんですから呼ばないと失礼ですよ」
「美優さんは女神すぎて目が潰れそう」
「周子!! 気付け薬よ!!」
俺がカウンターに叩きつけたスピリタスの瓶を一気に飲み干す周子。
「それやったら全裸さんに服を着せるところからやな」
「それなだがあいつが服着たらどう思う?」
「頭がおかしくなったと思う」
それは一周して普通になったということだろうか。
「だがあのバカのやることはこっちに予想ができない」
「呼ばなければいいやん」
「あいつから『俺を呼ばなかったら全裸で勝手に乱入するからな!! ンンン!! ネクストニューチャレンジャァァァァァァ!!!!』って連絡がきた」
「相変わらず平常運転で安心したわ」
俺の友人にマトモなのはいないのか。
「座席配置にも気をつけないといけませんね」
「? なんでだ美優」
俺の言葉にすごく言いづらそうに口を開く美優。
「いえ……あの……ロリコンさんが」
「あ〜、あいつだったらアイドルやってる小学生見たら発狂するよな」
「あの人去勢されたんやないの?」
「やつ曰く『心のオニンニンがボッキーするんだよ!!』って言ってたな」
俺と周子の会話を聞いて顔を真っ赤にして恥ずかしがる美優。俺はそんな美優を見ながらしみじみ頷く。
「見てくれこの可愛い人。俺の奥さんなんだぜ?」
「惚気を聞かされる。妹ポイントマイナス1。罰としてカルーア一気飲みやな」
周子の言葉に俺は店に用意してあるカルーアを1瓶一気飲みする。
「っぷはぁ!!」
「普通牛乳で割らん?」
「めんどくさかった」
いちいち牛乳で割る作業が面倒すぎる。だから一気に飲んだ。
「周介さん、お店のお酒を飲んじゃダメですよ」
「いや、美優。カルーアなんて軽いお酒をうちで飲む奴いないぞ?」
「それでもです」
とりあえず怒られたので大人しく周子の料理に移る。
「でもうちらの出身地に来て美優さんと詩音さんみたいに普通になるのは奇跡やな」
周子の言葉に美優は苦笑する。
「私も詩音さんも期間が短かったですから」
「兄ちゃん、曽成さんって何日で馴染んだっけ?」
「一時間」
曽成というのは指揮者をやっている友人である。どこにいるか? 世界のどっかにいるだろう。あいつは心配するだけ無駄だ。
「俺はこれから結婚式までの期間にあいつらを普通にしなきゃいけないのか……」
「応援だけはしとるで」
「手伝ってくれ」
「それは断る」
塩見周介
自分の友人を考えて頭痛がひどくなる
塩見美優
旧姓三船。結婚生活は順調な模様。しかし結婚式が不穏である
塩見周子
兄の悩む姿が見れてメシが美味い
社長、全裸、ロリコン
周介くんの友人達の一部
曽成
周介くんの友人。一応クロスキャラ。主演原作は『天にひびき』
そんな感じで結婚式の準備編です。友人を呼ぶという普通の行為がポリス案件に直結してしまうのが周介くんの交友関係。クロスタグ入れたから作者が好きな漫画のキャラ入れましたけど。『天にひびき』を知ってる人はいるのだろうか
ちなみに美優さんの方にはアイドルがいっぱい参列する。参列するアイドルにトラウマを植え付けないか心配である。