コロナは弱まってきたが、念のために俺の店は営業を自粛している。妻(重要、俺の妻!!)である美優も家からのリモート出演をすることがあり、カメラのギリギリ映るラインで周子と一緒に『無言で映画の名シーン再現』をやっていたらテレビ局の人と美優にガチ怒られをしたのは完全に余談である。
ちなみに今日は美優はオフ。周子はメインMCを務めるラジオ番組『周子ちゃんネル』の収録のために出かけている。
「そういえば……」
美優と一緒にコーヒーを飲みながら映画(僕のワンダフル・ライフ)を見ていたら、美優が何か思い出したかのように口を開く。
「周子ちゃんって恋したことあるんでしょうか?」
「周子が恋ねぇ」
美優の言葉に俺は考える。
昔から俺と美優を見て育った周子である。恋に恋するなんてスイーツなことはないだろうが、普通に好きな人くらいだったらいてもおかしくない気もする。
「私達のことをあれだけ応援してくれたんですから、私も応援してあげたいです」
「おう…えん?」
「応援だと思いましょう!!」
美優の力強い言葉に俺は頷いておく。周子の昔の所業を応援と言える美優は女神かな? ああ女神か。
「まぁ、そうしたら俺が聞き出してみるか」
「……さりげなくですよ?」
「わかってる、俺を信用してくれ!!」
「信用しているから信用できない気持ちはどうすれば……!!」
美優も着実に塩見の血に染まってきていて嬉しいものである。
「ただいま」
「おう、おかえり」
「おかえりなさい」
そして妙に真剣な表情をして周子が帰ってきた。俺と美優の言葉に返事をすることなく、流れているBlu-rayを止めるとゲンドウポーズをしながら座る。
それに俺もゲンドウポーズをしながら座り、美優も戸惑いながらゲンドウポーズをしながら座った。
「兄ちゃん」
「なんだ」
「相談があるんや」
「言ってみろ」
周子は真剣な表情を浮かべながら口を開く。
「私と美優さんのデュエット企画があるんやけど、曲が決まらんのや」
「なんだそんなことか」
俺の隣で「あ、あの企画のことですね」と呟いている美優を脳内メモリに保存しながら俺は周子に告げる。
「いいか、周子。お前と美優は義理の姉妹だ。つまり美優はお姉様だ」
「その時私に電流走る……!!」
「いえいえ!! 全く理解できませんけど!?」
俺と周子が硬い握手を交わしている横で美優が焦った声をあげている。
「え? マジ? 美優は今のでわからない?」
「普通はわからないですよ」
「マジかぁ。美優さんもだいぶ塩見に染まったと思っとったけど、まだまだやなぁ」
「うぅ……」
周子の言葉に少しショックを受けている美優。だが俺はあることに気づく。
「待て、周子。美優が塩見に染まるってことはキチガイになるってことじゃないか? 俺はそんな美優も普通に愛せるけど、ファン的にはアウトではなかろうか」
「遠回りな惚気はスルーするけど、確かに美優さんがキチったら美優さんファンブチ切れ案件かもしれんな」
「もう二人とも!!」
美優に叱られたが、俺達にとってそれはご褒美みたいなものである。
一息ついて美優が口を開く。
「それで? 何の曲にするんですか?」
美優の言葉に俺と周子は視線だけで会話。そして立ち上がりながら叫ぶ。
「チキチキ!!」
「名言クイーズ!!」
俺と周子の言葉に美優はどこか呆れたようにため息を吐いた。
「それじゃあまず俺からな」
「周介さん、わかりやすいのにしてくださいね」
ネタの時は全力でやるのが塩見なのでそれについてはなんとも言えない。
「『そうだ! 敵の数が多すぎて宇宙が黒く見えない!! 敵が7分で黒が3分! いいか!? 敵が7分に黒が3分だ!!』」
「この後の絶望の戦いが待っていることがハッキリわかるええセリフだよねぇ」
俺の言葉に周子がわかるわかると頷いている。だが美優は首を傾げていた。
「じゃあ次は周子な」
「よっしゃ」
そして周子は真剣な表情で叫ぶ。
「『どんな犠牲を払ってもかまわん!! 本体を死守しろ!! あと22分だ!!』」
「その後の戦いも含めて最高のシーンだよなぁ」
俺は周子の言葉にわかると頷く。だが美優はまだわからないようであった。
「美優はまだわからないか」
「いえ、二人ともわざと難しいセリフを選びましたよね」
「兄ちゃんはそう言われても仕方ないチョイスやね」
「好きなんだがなぁ」
個人的に作中でもトップクラスに好きなセリフなんだが。
「もっとわかりやすいセリフをください」
美優の言葉に周子と視線を合わせ、力強く頷く。
この作品の代表的なセリフと言ったらこれしかあるまい……!!
「『お前とアマノは一人一人では単なる火だが』」
「『二人合わせれば炎となる』」
俺の言葉の後に続く周子。そして二人でガイナ立ちを決めながら叫ぶ。
「「『炎となったガンバスターは、無敵だ!!』」」
「あ!! トップをねらえ!ですね」
美優もコーチの名言は知っていたらしい。やはりトップは偉大である。
「そういえば兄ちゃん。奈緒ちゃんがトップは2しか見たことないって言うとったで」
「それはトップファンとして放っておけない。Blu-rayBoxを貸してあげるんだ」
「よしきた」
俺の映画やアニメが大量に入っている棚からトップをねらえ!のBlu-rayBoxを楽しそうに抜き出す周子。
「周介さん」
そして小声で美優が声をかけてくる。
「さっきのことをさりげなく聞いてください」
美優の言葉にそういえば周子に恋愛のことを聞くことになっていたことを思い出す。
美優がちょっとジト目になる。
「忘れてましたね?」
「覚えていたよ。ちょっと脳内から消えていただけで」
「それを忘れていたって言うんですよ?」
都合のいい俺の耳は美優の言葉をシャットアウト。そしてトップ以外にもBlu-ray(DVDも含む)を漁っている周子に声をかける。
「周子、お前好きな奴いないの?」
「さりげなくは……!?」
美優がマジ驚愕顔を浮かべているが、周子に回りくどいことをしても無駄なのは兄である俺がよく知っている。
振り向いた周子も驚いた表情を浮かべていた。
「なんや兄ちゃん。突然、家にママと名乗る教師がやってきたみたいに唐突やな」
「三世院の悪口はよせ!!」
「やよいさんは何をしているんですか……!?」
美優が周子の発言に驚愕顔をしている。三世院やよいというのは俺の同級生の一人で、大学病院に勤務していたが幽霊が『視えすぎる』ために高校の保険医になったというアルティメットな経歴の持ち主の本業・巫女である。それだけでも十分に濃いのにこいつは『キツすぎてドン引きな不吉な相の持ち主』の男子生徒の運命を変えるために押しかけママになるというアルティメットな奴である。友人一同の総意として『幽霊を視すぎて頭がおかしくなった』と結論した。
昔馴染みの凶行に割と本気で戦慄している美優は置いておいて、話を進める。
「いや、お前は昔から俺と美優のラブラブチュッチュを見せつけられてきたわけだろ」
「理解しているなら自重しろや」
「断る」
とりあえず俺の発言で顔を真っ赤にしている美優をみて周子と力強い握手をしてから話を進める。
「お前にも一人や二人くらい好きな相手いるんじゃないかと思ってな」
俺の言葉に難しい表情をする周子。そして首を捻った。
「なぁ、兄ちゃん」
「なんだ」
「『好き』ってどういうことや?」
「お前はいつまで中学生の気分でいるんだ」
「いや、真面目な話で。シューコちゃん、そのあたりの感情よくわからん」
「マジで言っているのか、お前」
「マジや」
驚愕の真実である。昔から俺と美優の仲を茶化してきたくせに、まさかの……
「お前、恋愛処女かよ……」
「周介さん!! 言い方!!」
「甘いで兄ちゃん!! 私は唇もヴァージンやで!!」
「周子ちゃんも!! 言い方!!」
会話している俺達より顔を真っ赤にしている美優に兄妹でほっこりしながら考える。
「あ〜、周子。好きってあれだ。具体的に言うとGガンの最終回」
「いえ、それじゃあ理解できないと思います」
「あ〜、そういうことかぁ」
「理解できてる……!?」
はて、美優は何を不思議そうにしているのだろうか。好きと愛を理解するならGガンか08MS小隊を見れば恋愛クソ雑魚でもわかるだろうに。
「う〜ん、そうなるとあいつ……かなぁ?」
真剣な表情で考えながら誰か思い浮かべたのか首を傾げつつも、納得した表情を見せる周子。
「お、誰だ」
「ヒント:不幸」
「オーケー、理解した」
「いえ!? 私はさっぱりですけど!?」
美優が理解していなかったので、名前を言うと納得した表情を見せた。
「彼と周子ちゃん、昔から仲よかったですからね」
「今年のプロ野球開幕遅れはあいつの本領発揮やね!!」
「前、連絡したら『こうなったら新人賞をとるしかない……!!』って燃えていたな」
彼と言うのは俺と周子の幼馴染の少年である。年齢は周子の一つ下で、ずっと野球をやっていてプロにもスカウトされた少年である。
だが特筆すべきはその不幸っぷりである。小さい頃に両親が離婚。学校が学校だったので虐められることはなかったが、大会では毎回いいところまでいくが、肝心のところで勝てなかった。
だが、実力はあったのでプロにスカウトされたのである。
「あいつも兄ちゃんの友達の鍼師さんに感謝しとったで。『あの人のおかげで俺は野球を続けられる』って喜んどった」
「あいつも謎だよなぁ。『元気になれぇぇぇぇぇ!!!』って叫びながら鍼うつと彼の肩も彼の母親の癌も治るって」
「改めて考えると何者なんでしょう?」
三人で俺の友人の鍼師について考える。ちなみに鍼師本人は『世界中の病原菌を駆逐する!』と叫んで世界治療旅の真っ最中である。
腕を組みながらどこか納得した表情を見せる周子。
「そうかぁ、私はあいつが好きだったんか」
(ニヤァァァ)
「あの、周介さん? 笑顔が邪悪ですよ?」
美優の言葉を流して俺はスマホで彼に向かってメッセージを飛ばす。そして飛ばしたメッセージを周子に見せる。
そこには『コロナ騒動が落ち着いたら周子とデートしてくれない?』と書いておいた。
「きさまぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ハハハ、照れるな照れるな!! ナイスアシストを決めたお兄様を崇め奉るといい!!」
顔を赤くしながら俺をガクンガクン揺らす周子。高笑いをする俺。
そんな俺達を見ながら美優は呆れたようにため息を吐くのであった。
塩見周介
妹の恋路にアシストを決めたつもり
塩見美優
後日、周子ちゃんのガチ恋愛相談に乗ってあげた
塩見周子
初めての恋心に戸惑い
彼
作者の別作品である『救われなかった少年』の彼の別次元存在。こちらでは頭のおかしい周介くんの友人のおかげで救いがあった模様
愛や恋を知れるアニメ
Gガンダム、08MS小隊ですかね
周子ちゃんと美優さんのデュエットソング
トップをねらえ!〜Fly High〜
趣味の趣味に走った回でした。トップをねらえクイズと三世院やよいネタは書いていて楽しかったです。ちなみに三世院やよいさんはHAPPY LESSONというアニメのキャラです。知っている人は作者と同年代。
そして周子ちゃんが恋するキャラは作者の過去作品からリサイクル。彼くん(本編でも名前は出ていない)は作者の別作品である『救われなかった少年』の主人公です。作者のコメディネタが好きな方にはあまりオススメできませんが、シリアスな周子ちゃんは見られます。ちなみに読んだ後の苦情は受け付けておりません。
あの作品に救いなんてねぇから!!
書き終わってからシンデレラガールの順位ネタを入れ忘れることに気づきました。とりあえず美優さん34位おめでとう!! そして周子ちゃん50位圏外というネタ提供ありがとう!! ネタにできなくてごめん!!