俺が美優にプロポーズするまで   作:(TADA)

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周子ちゃん恋模様編です

ちなみにこれを書いている時に作者が聞いていたのは『がんばれドカベン』です


続・周子ちゃんの恋

六月も末になり、営業自粛が解除され俺の店も営業再開である。すると美優の友人である飲兵衛お姉様軍団が毎日のようにやってきて酒盛りをしている。

客として来てくれるのはとてもありがたいのだが、毎日のように美優を潰すのは勘弁して欲しい。ベロベロに酔った美優もとても可愛い(綺麗じゃないところがポイント)のだが、翌日に美優が羞恥心で顔を真っ赤にしてとても可愛いのだ。

 「あれ? 美優が可愛いんだったら別に構わないのでは?」

 「突然、どうした兄ちゃん」

『周子ちゃん特別セット』(現役アイドルが食べていいカロリー量ではない)を食べながら周子が俺を見てくる。

 「いや、毎日飲兵衛お姉様軍団に酔いつぶされる美優が可愛いと思ったんだが、翌日に羞恥心で顔を真っ赤にしている美優も可愛いと思ってな」

 「酔った美優さんは可愛い。そこに議論の余地はあらへんよ」

俺と周子は固く握手する。だから美優からの助けを無視するのは当然の帰結である。

 『ちょっと美優ちゃん!! グラスが空っぽよ!!』

 『さ、早苗さん! 私はもういいです!!』

 『待ってください早苗さん』

 『楓さん……!!』

 『美優さんは次は日本酒を飲む約束をしていたんです!!』

 『楓さん!?』

 『あら、私達のワインに付き合ってくれるんじゃないのかしら?』

 『やめてください礼子さん!! もう私のグラスにはビールと日本酒が……ああ!?』

結果的にチャンポンになった美優の酒は俺が一気飲みした。飲兵衛お姉様軍団から二杯目を注がれそうになったが一人で対岸の火事で笑っていた川島さんを生贄に捧げておいた。

とりあえずカウンターの中に戻って周子と兄妹のダベリを開始する。

 「プロ野球もようやく開幕したな。あいつも開幕一軍とはやるじゃないか」

 「努力しとったからな」

俺の言葉に何故か自慢そうにする周子。こいつも幼馴染で好きな相手が開幕一軍になったんだから素直に喜べばいいのに『キャラじゃない』とか言って捻くれている。全くそんなんだから

 「せっかくあいつとデートしてもヘタれて告白できないんだよ。誰だっけ? 『周子ちゃんは兄ちゃんと違うからデート一回目で告白してくるわ』って言ってたやつ。確か名字が塩見で名前が周子。職業はアイドルだったはずなんだけど」

俺の言葉に周子はカウンターに沈んだ。

こいつは意気揚々とデートに行ったはいいが見事にヘタれて告白できなかったのだ。相談に乗っていた美優が微笑みながら「やっぱり周子ちゃんは周介さんの妹ですね」と言っていたのが印象的である。

 「まぁ、今日の試合の先発はあいつだからな。しっかりテレビの前で応援しようぜ」

 「はぁ……せやな。そういや兄ちゃん」

 「なんだ?」

 「いつ野球専門チャンネルなんか契約したん?」

周子の言葉の通り、店に備え付けられたテレビには試合前の野球の映像が流れている。

 「いいか周子」

 「なんや」

 「プロ野球に東京スーパースターズと四国アイアンドッグスという球団が生まれた。さらに東京スーパースターズには土井垣将を監督として山田太郎、岩鬼正美、里中悟、殿馬一人、微笑三太郎の明訓五人衆が揃い踏みしていて、しかもチームメイトには明訓五人衆と戦った経験のある緒方勉、国定忠治、隼走、木下次郎、賀間剛介、星王光、ハリー・フォアマン、足利速太なども入団している。四国アイアンドッグスはもっと豪華だ。犬飼小次郎を監督にして犬飼武蔵、犬飼知三郎の犬飼三兄弟を筆頭に不知火守、中二美夫、影丸隼人、土門剛介、犬神了、坂田三吉とプロでも山田と鎬を削ったライバルが勢ぞろいだ。お前、こんなメンバー並べられたら応援するしかないだろ。同年代で野球をやっていた人間として」

 「にいちゃん地味に明訓五人衆がいた時に甲子園で明訓高校との試合に出場しとるもんな」

 「これでも紫義塾の正二塁手だぞ」

局長を筆頭にチームメイトはみんなどっかおかしいが。というか剣道部では敵がいないとか言って野球部に剣道部全員が鞍替えしてきた時はドン引きした。しかもそれで甲子園の決勝まで進んだのにはさらにドン引きした。

 「兄ちゃんはプロになろうと思わなかったん?」

 「俺レベルじゃ無理」

むしろうちの高校でプロで通用しそうなのは局長と壬生くらいだろうか。ひょっとすると鹿馬も通用するかもしれないが。

 「しかし、土井垣監督と犬飼監督はエンタメをわかってる」

 「それな。土井垣監督があいつを先発で投げさせようとしたら犬飼監督は当然のようにあいつのライバルを投げさせるんやから」

俺の言葉に力強く頷く周子。俺と周子の幼馴染である仲野光輝は東京スーパースターズに入団し開幕一軍、そして今日は土井垣監督の采配で先発を投げることになった。そして甲子園時代に光輝と球史の残る熱闘を演じた不知火為朝は四国アイアンドッグスに入団。こちらは当然のように開幕一軍となり、東京スーパースターズの先発が仲野だということを知ると犬飼監督に志願して仲野とプロの舞台で初対決となった。

 「しかし、私や兄ちゃんと一緒に野球をやっとった光輝がプロ野球選手なぁ」

 「うん? なんだ周子『私の光輝が遠くに行っちゃった』とでも思っているのか?」

 「兄ちゃん!! スピリタスよ!!」

 「あぁぁぁぁぁぁ!!!!! 目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

周子の奴照れ隠しに俺の目にスピリタスを注ぎ込みやがった!! 信じられん!! 一歩間違えたら失明するぞ!!

慌ててこちらにやってきた美優からタオルを受け取り、必死に目を洗う。

俺の目が無事なことを確認すると美優はカウンターに座る。

 「でも、光輝くんがプロになれて良かったですね」

 「あいつも喜んどったなぁ。『これで母ちゃんを楽させてあげれるわ』って」

 「いい子だよなぁ。それの幼馴染がこんなキチガイなんて可哀想だ」

 「自分のことを卑下する必要ないで、兄ちゃん」

 「お前のことだ」

 「なんやと」

驚愕顔をする周子だが、残念ながらお前は塩見の血族だ。

そして東京スーパースターズと四国アイアンドッグスの試合が開始される。軟投派ピッチャーとして着実に相手バッターを打ち取る光輝と、まさかの三振の山を築く不知火くんとの投手戦になっている。

 「光輝も元々良かったコントロールがさらに上がってるな」

 「なんでも自粛期間中に里中さんに練習法とか教わったらしいで」

 「そっか、里中っていう偉大な軟投派の先達がいたな。そこに山田の配球が加わればこうなるのか」

 「その里中と山田の黄金バッテリーから全打席ヒットを打ったにも関わらず居酒屋の店長をやっているキチガイがこの世にはいるらしいで」

 「俺のことだな」

というかあれはあの試合だけ妙に当たっただけだ。なにせ決勝までの安打数は1だからな。

試合は完全な投手戦になっている。光輝は岩鬼の失策でノーヒットノーラン、不知火に至っては完全試合のペースだ。

 「岩鬼のやつ死ねばいいのに」

 「周子、目がやばい。それにノーヒットノーランでも十分に大記録だからな」

7回のトップバッターは岩鬼。それを見る周子の目がやばい。好きな相手の大記録にケチをつけられたと思っている。

 「だが、ここで岩鬼の一発が出れば勝ちの可能性は高いぞ」

 「悪球打ちとか意味不明すぎるわ」

 「ですが、岩鬼さんはここぞという時に打ちますから」

 「兄ちゃんも美優さんも岩鬼に優しいんやな」

完全に不貞腐れている周子に苦笑する俺と美優。普段は飄々としていてもこういう子供っぽいところがあるのが周子という人間だ。

その子供っぽい一面を出すのも限られた相手だけっていうのも周子だが。

そして岩鬼に対しる配球は決まっている。ど真ん中に投げておけば何かやらない限り岩鬼は安全パイだ。

 「ほれみぃ。もうツーストライクや」

 「周子、顔! 顔! アイドルがしちゃいけない表情になってる!!」

スタジアムで選手に向かって悪態をつくおっさんの表情をしている周子。そして静かに逃亡がバレた飲兵衛お姉様集団に美優は連行されていった。

そして追い込まれた第三球。

 「お!!」

 「これは!!」

すっぽ抜けたのか不知火の球がストライクゾーンから大きく外れる。これを逃す岩鬼ではない。加えていた草に花が咲いたと思ったらそのクソボールをジャストミートしてバックスクリーンに叩き込む。

 「いよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉし!!!!!!!」

カウンターの椅子から立ち上がってガッツポーズを決める周子。

そしてその後の7回8回9回は山田の配球と光輝のコントロールで三者凡退に抑えて東京スーパースターズが勝利する。

 「やったで、兄ちゃん!! 光輝のやつが初先発で初勝利!! しかもノーヒットノーランや!!」

 「おう、そうだな。俺、ちょっと奥でおばさんにメールしてくるわ」

 「あ、私も送っとかなきゃ」

嬉しそうにスマホを取り出して光輝のお母さんにメールを送っている周子。俺はそれを見ながらある人物に電話をする。試合直後だが、今日のことを知っているので多分出てくれるはずだ。

 『殿馬ズラ』

 「おっす、殿馬。塩見だ」

そう!! 電話の相手は東京スーパースターズの殿馬一人二塁手である!! 甲子園時代に試合後になんとなく仲良くなって今でも連絡をとっている相手で、俺の友人の曽成が殿馬のチャリティピアノコンサートでオーケストラの指揮をとる時に仲介したりして仲が良いのだ。

電話の向こうで殿馬が呆れた様子である。

 『仲野のやつマジでやるつもりズラか?』

 「あいつは昔からやると言ったらやる頑固者だよ」

 『後で土井垣から怒られるズラよ』

 「あ、それは俺の知ったこっちゃないんで」

電話の向こうで殿馬が思っ切りため息をついた気がするが無視する。

そしてテレビではヒーローインタビューが行われている。今日のヒーローは当然のようにノーヒットノーランを達成した光輝だ。その様子を嬉しそうに見ている周子。そして爆弾が投下される。落とすのは光輝だ。

 『アイドルで自分の幼馴染の塩見周子さん!! 結婚を前提にお付き合いをしてください!!』

テレビからの声に店内が静かになる。言われた周子本人は唖然とした表情でテレビを見ているし、飲兵衛お姉様集団は完全に視線が面白いターゲットを見つけた視線になっている。

そして俺はカウンターに戻る。唖然とした表情のまま俺を見てくる周子。

 「に、兄ちゃん……」

 「何も言うな周子。この電話の相手に素直な気持ちをぶつけるんだ」

そう言って俺は周子に俺の携帯を渡す。テレビでは殿馬が携帯を光輝に渡していた。

通話先が誰か気づいたのか周子の笑顔が引きつる。俺はそれに力強くサムズアップ!!

 『「も、もしもし」』

緊張した様子で電話する周子。するとテレビの中からも周子の声が聞こえる。テレビ局ナイス。

光輝も緊張した様子で電話を持っている。

 『俺の気持ちは言った通りや。答えをもらってええか?』

その言葉に固唾を呑んで見守る飲兵衛お姉様集団。そして周子はちらりと横目で俺を見てきた。俺はそれに力強く頷く。

すると周子は覚悟を決めた表情で口を開いた。

 『「よ、よろしくお願いします」』

その瞬間に爆発したような歓声が店内を包むのであった。

 

 

 

 

 『土井垣にガチ説教を食らったズラよ』

 「悪い悪い。今度店に来てくれ。タダで美味い飯食わせてやるから」

 『行けたら行くズラよ』

 「おう待ってるわ」

 




塩見周介
妹に完璧なアシストを決めたつもりの兄。元高校球児で甲子園出場経験あり。

塩見美優
実はこれの発案は美優さんだったりする(善意100%)

塩見周子
この後に飲兵衛お姉様集団に盛大に揶揄われる。さらに新聞で知った他のアイドルからも盛大に揶揄われる。

仲野光輝
ついに名前がついた『彼』くんです!! 幼馴染でもある周介くんとその奥さんである美優さんの発案で『ヒーローインタビューで公開告白』をやってのけた。この作品では不幸成分が大幅に薄まっている模様




そんな感じで周子ちゃん初恋模様完結編でした。無駄に引き伸ばしても仕方ないので光輝くんから告ってもらってすっぱり解決!!
ちなみに『彼』くん改め仲野光輝くんの名前は作者が書いている『綺麗な君に恋をした』の方で周子ちゃんと光輝くんの子供がクロス作品で出てきたので、自動的に名字が決まり、名前は適当に考えました。
ちなみに『綺麗な君に恋をした』の主人公は周介くんと美優さんの息子くんが主人公。塩見の血族を見せつけています。綺麗なだけじゃない式守さんが原作になっておりますのでもしよかったらご一読ください。

それと東京スーパースターズと四国アイアンドッグスは『ドカベン』と言う野球漫画の架空チームです。
ドカベンは野球漫画の最高峰。異論は認める。
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