俺が美優にプロポーズするまで   作:(TADA)

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ゴールキーパーと一対一……!! これは決めるしかないぞ周介くん!!


そして誕生日おめでとう美優さん!!


決戦は誕生日

 「今日の店は貸切! 料理の準備は万全! ケーキも知り合いの腕の良いパティシエに頼んで作ってもらった! そして切札の指輪も用意は完了している……!! 妹よ!! 兄ちゃんは今日決めるぞ……!!」

 「うん。誕生日当日にプロポーズは女性的にいいと思うけど」

そこまで言って周子は呆れたように俺を見てくる。

 「『予定時間まで緊張でどうにかしそうだから話し相手になってくれ!!』ってなんなん? 兄ちゃんはどこまでヘタレなん?」

妹の切れ味の良い言葉に俺の心が切り裂かれる。だが、その言葉の暴力も今は夜に控えている本番の緊張をほぐすのに丁度良い。

今日は2月25日。俺の恋人である三船美優の26歳の誕生日だ。俺はこの日に結婚を申し込もうと思って全ての準備を整えた。美優は昼間に仕事があるが、夜に俺の店に来てくれる予定になっている。

そう! 今日こそ決めるのだ!!

 「というか呼んどいてなんだが、周子は仕事大丈夫なのか?」

 「今日はオフやったから大丈夫やで。まぁ、タダ飯食わせてくれるならいつでも呼んでくれてええで」

 「お前は俺の店で金を払ったことあったか?」

 「兄ちゃんは可愛い妹から金をとるつもりなん?」

 「どこまで図々しいんだうちの妹は……」

昔からそうだがこいつはどこまでも図太い。小心者の俺とは大違いだ

 「というか兄ちゃん。いくら料理しか能がないとは言え」

 「お前はなんでそう辛辣なの?」

 「あ、ちょっと言い方悪かったな。変えるわ。いくら料理以外に能がないとは言え」

 「悪化してるじゃねぇか!!」

俺の言葉にカラカラと笑う周子。こいつの失礼さは誰に似たのだろうか。

 「まぁ、話続けるけど、兄ちゃん。作りすぎ」

周子のマジ視線の先にはお座敷の机を覆い尽くす料理の山が!!

これには俺もちょっと焦る。何せ自覚があるから。

 「いや、これには富士山より高い理由があるんだ」

 「どうせ『あ、そう言えば美優はこれも好きだったな』とか思い出しながら作った結果なんやろ?」

 「周子はエスパーだったのか」

 「兄ちゃんの理由が砂場の山より低いだけや」

そんなこと言われても勝負の日だから腕によりをかけた結果なんだ。だって『あの料理がなかったからちょっと……』と断られたら俺は店を畳んで宇治川に飛び込みたくなる。

余り物で作った料理を食べながら周子が問いかけてくる。

 「それで? そろそろ待ち合わせの時間じゃないんか? それだったら私はクールに去るで?」

 「周子はスピードワゴンだったか……っと、うん? 美優から電話?」

 「なんや兄ちゃん。会う前からイチャつく気かいな」

 「大丈夫、大丈夫。周子にもいずれいい人が見つかるさ」

笑顔で中指を立ててくる周子を尻目に俺は電話に出る。

 「美優か。どうかしたか? え? 仕事現場のプロデューサーが美優の誕生日会を企画してくれていた? こ、断れそうにないか。いやいや!! 仕事の付き合いも大事だからな!! ああ、大丈夫!! なに!! 俺はまた今度でもいいさ!! ああ。それじゃあな」

俺と美優の会話が聞こえていたのかかなり沈痛そうな表情を浮かべて俺を見てくる周子を無視して、俺は隠し戸棚からスピリタスを取り出し、グラス一杯を一気飲みしてから口を開く。

 「笑えよ、ベジータ」

 「いや、流石の周子ちゃんもこれは笑えへん」

 「笑ってくれよ!! せめていつも通りにバカにしてくれよ!!」

俺の渾身の叫びである。

 「あぁぁぁ!! なんで俺はこうなるかなぁ!!! 昔っから張り切ると大抵のことは空回る!!」

 「まあまあ、落ち着け兄ちゃん」

 「俺は落ち着いている!! 落ち着いているからこの世界に絶望している!!」

 「落ち着け糸色先生!!」

周子にコップから水をぶっかけられてとりあえず落ち着く。

 「あ〜、今回も駄目だったじゃんよぉ。これマジでプロポーズできないんじゃねぇの?」

 「なら諦めるん? 美優さんなら新しい人見つけられるだろうけど、兄ちゃんは美優さん逃したら一生独身やで?」

 「周子の毒舌で正気に戻ったわ。いや、俺だって美優と別れるなんて考えられへんけどな、こうもタイミングが悪いと呪われてると思ってまうねん」

 「兄ちゃん、訛っとるで」

 「おっと、酒が入ったからな。気をつけよう」

美優は転勤族の親だったので、一時期いろんな訛りが混じって大変なことになっていたから、訛りに良い印象を持っていないのだ。だから俺も常に標準語を話すようにしている。

周子? こいつに何を言っても無駄である。

 「は〜、嫌になる。本当に嫌になる。誕生日逃すとか次はいつだよ」

 「クリスマスとかどうや?」

 「十ヶ月先かぁ」

コップに注ぐのが面倒になったので瓶ごとスピリタスをラッパ飲みする。

 「そういや、兄ちゃんなんでそんなに焦っとるん?」

 「いや、俺たちも今年で26だろ?」

 「兄ちゃんは7月生まれだから27になるやん」

 「細かいことはいいんだよ。ほら、女性の初出産は30までにした方がいいってよく聞くからさ。デキ婚はアイドル的にどうかと思うとギリギリだろ。今年か来年くらいが」

 「プロポーズもできてへんのに子種仕込む事も考えているとかキモ!!」

 「やかましい」

こいつは本当に妹なのだろうか。少しは兄に対する優しさを見せるべきだろう。

 「そう言えば兄ちゃん」

 「なんだよ」

三本目のスピリタスを空っぽにしながら周子に問い直す。

 「美優さんのどこが好きなん?」

 「お、それを聞きたいか? 聞きたいんだな。よし教えてやる」

 「あ、やっぱええわ」

 「ウルセェ! 聞け!!」

四本目のスピリタスを一気に飲み干しながら口を開く。

 「昔からだったがどこか憂いを帯びていて儚げで結婚していないのに未亡人の雰囲気を醸し出しているところは当然だが、流されやすい性格でNOと言えない庇護欲をかき立てさせられるところはもちろん、最近では子供にたいして母性溢れる包容力もある女性になった。そして、一番なのは天然なところが」

 「もういい……!! もう黙ってくれ……!!」

俺がマシンガンのように言葉を並び立てていると途中で周子に無理やり止められてしまった。まだまだ語れるのだが。

 「まぁまぁ、兄ちゃん。ほれ、これも飲んでみ」

周子に差し出された水を飲んだ瞬間に俺の意識は飛ぶのであった

 

 

 

 「兄ちゃんは酒飲むとめんどくさくなるからなぁ。さっさと落ちてもらうに限るわ」

周子は一緒にユニットを組んでいる天才に作ってもらった睡眠薬『安らかに眠るンデス』の瓶を軽く振りながら呟く。

このまま兄を店舗スペースに放置して帰ることも考えたが、いつもお世話になっているのでたまには『良い妹ムーブ』をするために兄を引きずって二階の住居スペースに運ぶ。途中の階段で引きずっている兄からいい音が鳴っていた気がするが周子ちゃんは華麗にスルー。そのままベッドに放り込んで任務完了。

一階の店舗スペースで残っている料理でも片付けるかぁ、と思って一階に戻って箸を掴むと突然お店の入り口が開かれる。

 「あ、あれ? 周子ちゃんだけですか? 周介さんは……?」

 「Oh……美優さんやないですか」

兄の恋人である三船美優が綺麗な格好をして立っていた。このカップルはなんでこうタイミングが悪いんだろうか。

 「美優さん、仕事先の人とパーティだったんやないんですか?」

 「あ、それが瑞樹さんが『恋人のところに行ってきなさい。ここは私がなんとかしておくから』と言ってくださって」

 「瑞樹さんと一緒の仕事やったかぁ……!!」

この店の常連である川島瑞樹が最高のアシストをしたようだが、残念ながら恋人はすでに夢の中である。

 「すいません、美優さん。兄ちゃんはすでに寝てもうたわ」

 「……やっぱり怒ってらっしゃいましたよね」

 「ちゃうちゃう。自分の運の悪さとタイミングのなさに嫌気がさしてスピリタス四本を空っぽにして潰れただけや」

 「あの……スピリタスって確かアルコール度数が……」

 「綺麗な火がつくやつやね」

酒はこれくらい強くないとだめとか言っている兄の正気を疑う、周子ちゃん。薬で兄を落としたことは遠い棚に放り投げておく。

 「ま、美優さんもせっかくだから兄が『美優さんのために』作った料理でも食べましょ」

周子がわざと『美優のために』を強調していうと顔を真っ赤にして照れる美優。それを見て内心で「付き合いたての中学生か!」とツッコミを入れるが口には出さない。口に出すとますます中学生的反応をされるのは経験で知っている。

 「それじゃあ美優さんはそっち座って。箸も今とってきますから」

 「ありがとうございます、周子ちゃん。あ、私の好きな料理ばかり」

顔を真っ赤にしながら呟いた美優の一言があれば兄は十年は戦えるだろう。

それからしばらくは和やかな食事が続く。周子が兄と美優の仲をからかうのは昔からなので美優も慣れたものだ。なにせ昔は顔を真っ赤にして俯いて何も喋れなくなっていたのに、今は顔を真っ赤にして喋ることは可能になっている。

 「そういや美優さんはあのヘタレのどこが好きなん? こう言っちゃなんやけど顔は平均値で性格もヘタレやで? 美優さんならもっといい物件を探せると思うで?」

 「そんなことないです!! 周介さんはとても優しいですし面倒見も良いですそれにたまに見せる少年のような笑い方も素敵ですしお料理をしているときの真剣な表情は見惚れるほどです」

 (あ、地雷踏んでもうた)

周子の一言に人が変わったように兄の美点を言い続ける美優。始まって2秒で聞くことを辞めた周子はこのスイッチが入った兄嫁(仮)をどうしようか考えるが、自分のポケットに天才が作った睡眠薬が入っていることを思い出す。

やるべきことが決まったら即実行が周子ちゃんのポリシー。兄嫁(仮)の言葉に適当に相槌を打ちながら水の中で睡眠薬を一滴垂らして準備完了。

 「まぁまぁ、美優さんとりあえず落ち着く意味で水でも飲んで」

 「あ、はい。ありがとうございます」

そして美優が水を一口のむとコテンと横になって静かな寝息を立て始めた。

 「ふぅ、胸焼けするところやった」

兄嫁(仮)から兄の惚気を聞かされるとかどんな拷問だ。つまり周子ちゃんは悪くない。

実兄は乱雑に扱ってもなんの問題もないが、流石に兄嫁(仮)を乱雑に扱うわけにはいかないので、周子は美優を背負って兄の眠るベッドまで運ぶ。

そして兄の隣に寝かせると周子の悪戯心に火がついた。

 (これ、美優さんを下着姿で寝かせておいたらおもろいことになるんとちゃうか)

やることが決まったら即実行である。周子は丁寧に美優の服を脱がせ、ついでにメイクも落としておく。そして二人を抱き合わせる形を整えて布団を被せる。

 「それじゃあお二人さん、良い夢を〜」

それだけ告げて周子は部屋から出る。そして一階の店舗スペースの戸締りをして裏の勝手口から外に出て(勝手に作ったスペアの)鍵で締める。

 「塩見周子はクールに去るで」

そして帰った。

 

 

 

 

 『周子ぉぉぉぉ!! お前!! やっていい悪戯と悪い悪戯があるだろ!?』

 「何をいうとるの兄ちゃん、超今更やんか。ところで今朝事務所にやってきた美優さんの肌が妙にツヤツヤしてて腰をちょっとさすってたんやけど、まさか朝っぱらから下着姿の美優さんを見て襲ったなんてことないよな、兄ちゃん」

 『……合意の上だからセーフ』

 「セウトや」

 




塩見周介
完全にゴールを決めるつもりが見事に空ぶったタイミングが悪いオリ主。

三船美優
朝からは恥ずかしかったけどちょっと嬉しかったりもする複雑な心境

川島瑞樹
完璧なアシストが無駄に終わった

塩見周子
フリーダム妹。同じユニットを組んでいる天才の作った薬品を兄で頻繁に実験する。



ゴールキーパーと一対一かと思いきやまさかのオフサイドでノーゴール……!! このタイミングで外すとかどうするんだ周介くん!!

美優さんとのイチャイチャを書きたかったはずなのに書きあがったものが塩見兄妹による漫才に。頭のおかしいキャラしか書けない作者にはイチャイチャは書けないということか。だが、諦めんぞ、次回こそは…!! 次回こそは美優さんとイチャイチャさせたい……!!

ところで素朴な疑問なんですがイチャイチャってどうやったら書けますか?
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