俺が美優にプロポーズするまで   作:(TADA)

23 / 39
色々な意味での家問題

最後にちょっとシリアス風味です




さて、いつもの夜。いつもの店。そしていつも通りに閑古鳥が鳴いている。

普段であればアイドル飲兵衛お姉さま集団が集う我が店も、お姉さま集団が軒並み仕事が入っているせいで本当に人がいない。

 「あの周介さん……楓さんから『店長のおつまみで獺祭が呑みたいです』ってメールが来たんですけど……」

 「どれどれ」

美優が見せてきたメールを確認すると明らかに酔い潰された旭(なんだかんだで仲良くなった)を膝枕している高垣さんの写真が入っていた。

美優にとりあえず写真を転送してもらい、その写真を『スクープ! 大人気アイドルに膝枕されるうらやまけしからん男・神谷旭!!』とコメントをつけてtweetしておく。

即座に大炎上したようだが俺の知ったことではない。

俺が何をしたのか気づいたのか美優は苦笑いである。

 「周介さん、あまりやりすぎては駄目ですよ?」

 「全てはイケメンなのが悪い」

 「自分がフツメンだからってイケメンへの嫉妬は見苦しいで、兄ちゃん!!」

 「突然やってきて失礼なこと言うのはやめようNA!!」

店の扉をスパーンと開いて超絶失礼なことを突っ込んでくる周子。

 「あれ? 周子ちゃん、今日は収録が遅くなるんじゃ?」

 「ああ、それな」

美優の言葉に頷きながら口を開く周子。

 「一緒の収録に『注目の若手アイドル!!』ってメンバーの中に三峰ェ!が所属してるグループおってな。つい三峰ェ!といつものノリでやったら『頼むから帰ってくれ』って懇願されて帰された」

 「それは仕方ないな」

 「いえ、全然ダメですよ!!」

俺の言葉に即座に否定して周子に対してお説教を開始する美優。だが『美優さん大好きクラブ』の俺たち塩見兄妹にとっては美優のお説教とかご褒美でしかない。

 「頑張ってお説教する美優さんマジ天使……」

 「周子、心の声が漏れ出ちゃってる」

 「おぉっと」

周子の言葉に顔を真っ赤にしてカウンターにうつ伏せになる美優。俺たちとの付き合いがクッソ長いにも関わらずこの初心な反応をしてくれる美優はマジ女神。

お説教が終わってしまったことに名残惜しそうにしながらも周子はカウンターに座ると、そこに広げられていた資料を手に取った。

 「お、兄ちゃん、家買うん?」

そう、俺と美優が相談していたのはマイホームの購入であった。

最近は売り上げが伸びて貯蓄に余裕が出来始めた俺、そして大人気アイドルの美優の収入を合わせると一軒家は普通に買える蓄えになっていた。(なお、ほとんど美優の収入である

 「いや、最初は都内のマンションでも買おうかって美優と相談していたんだよ」

 「? でもここにある資料は全部一軒家やで?」

周子の問いに苦笑しながら美優が口を開く。

 「私が事務所でマンションの資料を見ていたら楓さんがやってきて『美優さん、買うんだったら一軒家にしましょう。そしてリビングでパーティしましょう』って言ってきまして」

 「なんでや」

 「そしたら瑞樹さんもやってきて『そうしたら美優ちゃん、私達が泊まる部屋も必要よ』ってなりまして」

 「なんでや」

 「さらに志乃さんも『お酒も豊富に置いておく必要がると思うわ』って」

 「なんでや」

 「それで礼子さんが『店長用に大きめのキッチンも必要でしょう』となって」

 「なんでや」

 「最後に早苗さんが『じゃあもう一軒家にしましょう!! 大丈夫!! 私達もお金出すから!!』ってことになりまして」

 「兄ちゃんと美優さんの家が完全に飲み会会場になる件について」

 「周子、それは言ってはいけないことだ」

何が怖いってあの人たちガチで言っているし、具体的に出せる金額まで俺たちに言ってきたことだ。

つまり俺たち夫婦に拒否権はなかった。

 「でも、お家でみなさんとパーティも楽しいと思いますから」

 「あかん……美優さんが天使すぎて辛い……」

 「美優天使説とか俺の友人一同の総意だから」

美優女神説と接戦だけれども。

とりあえず周子とガッチリ握手してから再び資料に目を戻す。

 「なんかこの際土地買って家建てたほうがええんやないの?」

 「それ楓さんも言ってました」

 「そうしたら他の皆さんの出せる金額が上がったな」

 「草不可避」

あの人たちの中では俺たちの家=飲み会場となっている。

 「周子はどうするんだ? 光輝も今年は寮だけど、来年からは一緒に暮らせるだろ?」

 「ああ、それな」

光輝はプロ野球選手、周子は売れっ子アイドルのために収入だったらうちより多い。住もうと思えばいい家に住めるだろう。

そして真剣な表情で口を開いた。

 「うちは公営団地に住もうと思ってる」

 「なんでだ」

 「いややなぁ、兄ちゃん。私らはプロ野球選手とアイドルっていう来年にはどうなっているかわからない仕事やで? 節約できるところは節約せな」

 「夢を目指している子供たちに現実を突きつけるな」

プロ野球選手とアイドルなんて男の子と女の子の将来の夢ランキングで上位にくる奴だろう。

 「あと子供がいっぱい欲しいからできるだけ節約したいってのもある」

 「現実的ですねぇ」

周子の言葉に美優が苦笑しながら言う。

 「兄ちゃんのところは子供計画とかしてへんの?」

 「あ~」

周子の問いがまったく悪気がないのはわかっているのだが、あまり触れて欲しい話題ではなかった。

 「周子、同人作家が美優本の新作描いたんだけど興味ないか?」

 「ある!!」

 「同人作家さんはまだ描いていたんですか……!?」

周子の即答に戦慄する美優。あいつには何を言っても無駄である。何せ友人一同絶対に一度はネタにされている。

そして美優は苦笑しながら口を開いた。

 「周介さん、私なら大丈夫ですから」

 「……そうか?」

 「?」

美優の言葉に俺は心配になる。そんな夫婦のやり取りを不思議そうに見る周子。

そして美優は覚悟を決めた表情で口を開く。

 「実は私が不妊症のようで……」

 「……oh」

美優の言葉に流石にやっちまった表情になる周子。他人の地雷を笑顔で踏みぬく周子であるが、美優と双海の地雷には細心の注意を払うのが周子である。

 「ご本家様はなんて言うとるの?」

ご本家様と言うのは我が塩見家の本家である。実は我が塩見家、家系図を辿れば鎌倉時代から続く武士の一族である。何故か途中で神聖ローマ帝国に行ったりしているがまぁ、それはそれ。

うちの家は一応分家の嫡流であり、俺は長男なので名目上家を継ぐ必要もある。その後継者が生まれないというのは問題ではないか、と周子は言っているのである。

だが、侮ってはいけない塩見の血。それは当然のように本家にも及ぶ。

 「ご当主からは『どれくらいのタイミングで養子が欲しい?』って連絡来たな」

 「ふぅ!! 流石はご当主様だぜ!!」

いや割とマジである。しかも美優に対して『病気なら仕方ない。うちの分家をよろしくな……!!』と平然と言えちゃうあたりがすごい。

 「よっしゃ!! 兄ちゃんと美優さんのために周子ちゃんも一肌脱ぎます!!」

 「具体的には?」

俺の言葉に100%笑顔で周子が口を開く。

 「私が産んだ最初の子供あげるわ!!」

 「そんな犬猫じゃないんですから」

そう突っ込む美優の浮かべた笑顔には嬉しさが混ざっているのであった。




塩見周介
お店は今日も閑古鳥

塩見美優
女将スタイルにも慣れた。実は不妊症でガチで悩んで離婚覚悟で周介くんに打ち明けたところ平然と受け入れられた模様

塩見周子
子供はいっぱい欲しい。そして最初の子供を兄夫婦にあげるつもりなのはガチ。後日、旦那にも相談して本決まりした模様

塩見家
鎌倉時代から続く由緒正しい武士の一族。途中で神聖ローマ帝国に飛び出したりしているのはご愛敬




そんな感じで10月編です

家庭を持ったことで家の購入を考えた塩見夫婦。当然のように飲兵衛お姉さま集団の横槍が入り当初予定していたマンションではなく一軒家になった模様。

そして突発的に入ってきた美優さん不妊症設定。これは割と最初から決めていました。そして不妊症では周介くんの美優さんに対する(重たい)愛は揺るぎません。
作者的にそういう障害も乗り越えて二人には幸せになってもらいたい。

そして周子ちゃんの『子供あげるよ!!』宣言。つまり別作品(綺麗な君に恋をした)で周介くんと美優さんの子供である周くんは実は周子ちゃんの実子。赤ちゃんの頃に兄夫婦に養子に出されたという設定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。