それでも今までよりはイチャイチャしているはず……!!
「焼き加減はこれくらいで大丈夫ですか?」
「うん? あぁ、それくらいで問題ないよ。美優は料理上手いな」
俺の言葉に美優は少し照れた表情をする。
現在、俺と美優は二人で料理をしている最中である。場所は俺の店の厨房。それというのも美優がうちの常連アイドルの皆さんとお花見をすることになったらしく、その料理を作りたいというのだ。美優にいいところを見せたい俺はうちの厨房を貸し出し、当然のように材料も俺が出した。美優も最初は遠慮していたが、俺が決して折れないことを感じ取ったのか、申し訳なさそうにお礼を言ってくれた。この言葉で俺は10年は戦える。
え? お店? 臨時休業に決まってるだろ。言わせんなよ、恥ずかしい。
(しかし、こうして二人で並んで料理をしていると……)
「まさか並んで料理をしていて新婚夫婦の妄想なんて童貞中学生みたいな発想はしてへんよな、兄ちゃん!!」
「Heyシスター! 唐突に入ってきて失礼な宣言するのやめようぜ!!」
店の入り口をスパーンと開いて失礼なことをほざいてきた周子に返す。
ど、童貞ちゃうし!! 美優とシたから童貞ちゃうし!!
「んでんで、どないして美優さんが兄ちゃんのお店で料理しとるん? ついにうちのヘタレがプロポーズしたんか?」
「お前がそう煽るからプロポーズし辛くなってることにそろそろ気づいてくれない?」
「自分のヘタレを可愛い妹のせいにするのはどうなん?」
「可愛い妹? どこにいるんだ?」
周子が笑顔で自分を指差しているが、俺はそれを華麗にスルー。俺には面倒で厄介な妹はいるが、可愛い妹はいないはずである。
「それで? 周子と一緒に来たのは誰だ? 周子とユニット組んでる子じゃないよな」
「いえ、その前に346プロダクションの子じゃないですよ」
美優の言葉に俺は周子を見る。
「どこから誘拐してきた」
「兄ちゃんは妹をどういう眼でみとるの?」
「いつか犯罪を起こしそうで心配な妹だな」
「大丈夫や。その場合は兄ちゃんに前科がつくだけやから。美優さん、前科がついた兄ちゃんでも愛してくれますか?」
「お前は何を言っているんだ」
「だ、大丈夫です!! どんな周介さんでも私は愛してみせます!!」
「美優も俺が前科者になること前提で話すのは辞めようぜ!!」
周子は冗談で言っているが、美優はガチ発言なので複雑な彼氏心だ。
そんな心温まる漫才を見ていた周子の連れの子がクスクスと笑っている。
「失礼した。私は今日の仕事を周子さんと一緒になって仲良くなった白瀬咲耶だ。周子さんが美味しいランチを出してくれるお店を知っているというから来たんだけど、取り込み中だったかな?」
爽やかな笑顔と王子成分を振りまくスタイルの良い女子高生。
俺は真顔になって咲耶ちゃんに告げる。
「咲耶ちゃん、友達は選んだ方がいい。周子と一緒にいたらその爽やかな笑顔が胡散臭い笑顔に変わってしまうぞ」
「兄ちゃん兄ちゃん!! 兄ちゃんも人のこと言えへんで!!」
周子のツッコミを俺は華麗にスルー。確かに俺の友人には鬼畜と外道を煮詰めたクソみたいな性格の連中が多いが、俺は普通なのだ。
「ふふ、周子さんは現場でもみんなを楽しませてくれるけど、それはお兄さんとの会話で鍛えられたトーク術なんだね」
「俺と周子の会話のドッジボールを楽しい会話と申したか」
「どうや兄ちゃん。こんなええ子に飯を食わせずに外に放り出せるんか?」
「仕方ない。ほれ、カウンターに座れ」
俺の言葉に元気よく返事をする周子とお礼を言ってくる咲耶ちゃん。正反対のようで仲良くて結構である。
そしてそんな俺を見て美優が優しく微笑んでいる。
「ん? どうかしたか?」
「いえ。私はなんだかんだ言いながら周子ちゃんに優しいところも好きですよ」
美優の言葉に真っ赤になる俺。そして割と恥ずかしい発言をした自覚をしたのか、自爆して顔を真っ赤にする美優。
「Hey! そこの中学生カップル!! 今回は何で自爆したのか知らんけどランチはよ!!」
「本当に空気を読まない妹だなぁ……!!」
俺の言葉に周子はやれやれと言った感じで首を振る。
「ええか兄ちゃん。川島さんとか見たいに最近になって兄ちゃんと美優さんの関係を見始めた人達からしたら、兄ちゃん達は微笑ましいで済むんやけどな、私みたいに子供の時から見せつけられたら『お前ら早く籍入れろよ』って気分になるんやで?」
「やかましい!!」
俺がプロポーズのタイミングを失っているのは周子のこの煽り芸も大きい。何せ普段から『さっさとプロポーズしろ(意訳)』と本人を前に言われていたら、誰だって難しいはずだ。
俺はそう自己正当化してから周子達から料理の注文を受けていなかったことを思い出した。
「周子に咲耶ちゃん、何を食べるんだ?」
「ヤサイマシマシカラメマシアブラスクナメニンニク」
「ここはラーメン屋じゃない」
「しゃーないなぁ、それじゃあベンティノンティーマンゴーパッションフランペチーノアドホワイトモカシロップアドホイップクリームで」
「ボケの重ねがけをするな周子。もう周子はめんどくさいからいつものな。咲耶ちゃんはどうする?」
「あ、それじゃあ周子さんと一緒のをお願いするよ」
「あいよ」
周子のボケの連発に面倒になったので軽く流し、俺は調理を始める。
「そういや、美優さんはなんで料理しとんの? 花嫁修行?」
周子の失礼な問いにも美優は優しく微笑みながら答える。
「そのつもりがないと言ったら嘘になりますけど、今日は川島さん達とお花見をするんです。それで料理を持っていくので、周介さんに習っていたんです」
「兄ちゃん!! 花嫁修行のつもりもあったってさ!! 美優さんは誰の花嫁になるんやろなぁ!! 少なくともまだプロポーズできていないヘタレではないよなぁ!!」
「ここぞとばかりに煽ってくるなよこの愚妹がぁ!!」
周子のこの煽りスキルは誰に鍛えられたものなのだろうか。俺みたいな優しい性格の人からでないのは確かだが。
「それにしても花見ねぇ。私も行きたいわ」
「あ、それだったら周子ちゃんも一緒に行きますか? きっと川島さん達も喜んでくれますよ」
「……ちなみに美優さん。メンツはいつもこのお店で飲んでいるお姉様方ですか?」
「はい、そうです」
「自分から地獄の宴に突っ込む趣味はないんで遠慮しときます」
「お前の川島さん達に対する印象はどうなっているんだ」
周子のガチトーンでのお断りの発言に思わず俺が突っ込んでしまう。
「いやいや、兄ちゃん。私も頻繁にこのお店であの人達の飲んでいる姿みとるけど、あの飲み方についていけるのは常人には無理やで? その証拠に美優さんの最近のお泊まり率、上がっとるやろ?」
周子の問いに俺はあえて無言で返す。美優があの肝臓の強さがおかしい人達のペースで飲まされて、潰されて、俺の部屋に泊まる回数が増えているのは事実だからだ。
「でも周子ちゃんだったら普通に飲めそうですよね。周介さんの妹さんですし」
「スピリタスを水代わりに飲む変態と一緒にせんでください」
「周子、軽くウォッカをストレートでいっとくか?」
「未成年に飲ませるのは犯罪やで、兄ちゃん」
「高校時代」
「過去は振り返らないもの」
俺のツッコミに周子は平然と返す。こいつは高校時代に東京に住む俺の家に来て平然とウォッカを空にしたことをなかったことにしたいらしい。
「それより美優。そろそろ時間じゃないのか?」
「え? あ!!」
俺と周子の会話を微笑ましそうに聞いていた美優に声をかけると焦った様子になった。
「片付けは俺がやっとくから、行ってきな」
「す、すいません周介さん」
「いいっていいって。どうせ俺の厨房だ。俺が片付けとくよ」
「すいません。それじゃあ行ってきます」
美優は着ていたエプロンを脱ぎ、最後に俺達に頭を下げると、作った料理が入ったバスケットを持って外に出て行く。
「私は一緒に仕事をしたことないけど、優しそうな人だね」
「そうやろ、咲耶ちゃん。うちの兄ちゃんには勿体無い人や」
「聞こえてるぞ、周子」
咲耶ちゃんの言葉に茶々を入れる周子。何故、周子は俺を小馬鹿にしないと会話できないのだろうか。
「ほれ、それよりできたぞ。『ジャンボエビフライトンカツ定食(大盛り)』だ」
出された料理に喜ぶ周子と、真顔で固まる咲耶ちゃんの対比がちょっと面白かったのは俺の心の中に留めて置くとしよう。
「ヤッホ〜!! 店長、お店やってる?」
「あれ? 片桐さん? 今日はお花見だったはずじゃあ?」
「お花見だったわよ!! 次は打ち上げ!!」
「打ち上げ? お花見の打ち上げ? ああ、川島さんと高垣さんと柊さんまで……って!? 美優!! 大丈夫か!?」
「おかしいれす。お花見の打ち上げなんて絶対におかしいれす……」
塩見周介
嫁(予定)と一緒に台所に並んで立つ新婚夫婦の妄想をしてちょっと嬉しかった。
三船美優
厨房で恋人と一緒にご飯を仕度ができて幸せ。でもお花見の後の打ち上げはおかしいと思う
塩見周子
今回も元気に兄を煽っていくスタイル
白瀬咲耶
作者がシャニマスを始めたので無理矢理出演させる暴挙。口調などが間違っているのはお許しください。何せ作者はW.I.N.Gに勝てない雑魚Pなので。ちなみに料理は食べきれなかった。
そんな感じで第三回です。今までで一番イチャイチャできたのではないかと作者は思っています。相変わらず好き勝手している妹がいますが。
困ったことにネタが既に尽きかけている問題。でも周介くんがプロポーズする姿が想像できない問題。今後はどうするかなぁ……