さて、警官隊が突入してくる確立が高い『塩見一族合同結婚式』まで残るところ三か月である。
決めることが多いために今日も長女・貴音と次女・周子は兄のお店へとやってきた。
「お~っす、兄ちゃん」
「可愛い妹達の登場ですよ。料理を準備してください」
食料のたかりのようであるが、実際のところは食料のたかい9割、結婚式と披露宴の相談1割なので結婚式と披露宴の相談がメインなのは誰の目にも明らかである。
「って、兄よ」
「兄ちゃん……やっぱり離婚危機かいな……」
「待て! 何故お前らは『やっぱり』って視線になってる! 俺と美優がラブラブなのは誰の目にも明らかだろう」
「「明らかすぎて逆にウザイ」」
「ふわぁぁぁぁ!!! 旦那の仕事が忙しくて一緒にいられる時間が少ない負け犬供が何か言ってるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
周介の煽りにダブルライダーキックを叩き込む周子と貴音。
床でモップになっている周介を無視して二人はカウンターに座りながら苦笑している美優に話しかける。
「それで? 今度は兄は何をやったんですか? ついにポリス案件ですか?」
「待つんや姉ちゃん。それだと兄ちゃんが今までポリス案件をやってないみたいな感じになるで」
「それはいけない、言い直しましょう。保釈金はいくらでしたか?」
「兄ちゃんのためやからな!! 私と姉ちゃんも一部払うで!!」
「この愚妹達はお兄様のことをどう思っているのかなぁ!!」
そしてギャーギャーとどうでもいいことを言い合い始める塩見三兄妹をみながら美優はお茶の準備を始める。
「相変わらず仲良しですね」
「そうですね。いいことです」
お店のカウンターで執筆作業をしていた詩音も苦笑しながらその騒ぎをみている。
法律的にアウトなことをよくすることで有名な塩見三兄妹だが、塩見一族やその愉快な仲間たちと付き合いの長い二人にとっては警察沙汰までは微笑ましいやりとりだ。
そして一段落したのか周子と貴音はカウンターに座り、周介は料理のためにカウンター内に入る。
美優が淹れてくれたお茶を飲みながら周子が口を開く。
「それで? なんで兄ちゃんは美優さんに土下座しとったの?」
「そうだ聞いてくれ周子! 貴音! 美優がRG Hi-νガンダムとHG ナイチンゲールを買っちゃ駄目だって言うんだ!!」
「「それは美優さんが悪い」」
「えぇ!?」
速攻で兄に同調した妹’sに美優が驚きの声を挙げる。
「いいですが、美優さん。HG ナイチンゲールがファン待望の1/144での販売です。今まではRE1/100しかなかったので小さくなって飾りやすくなったんですよ!!」
「そうや。それに合わせるかのようにMGでも出来が良かったHi-νガンダムも1/144サイズのRGで販売。新金型もふんだんに使われた新規ランナーも多くてファン大満足の品や」
「しかも俺はプレバンでRG Hi-ν用のハイパー・メガ・バズーカ・ランチャーも注文してしまった……こうなったら買うのは運命なんだよ!!」
「駄目です」
「「「何故!!」」」
「積みプラが多すぎるからです」
美優の言葉に塩見三兄妹は視線を逸らす。作っていないプラモデルがあるのに新しいのを買って積んでしまう。モデラーあるあるであった。
美優は怒っているアピールなのか腰に手をあてて人差し指を立てて言い聞かせるように話す。
「いいですか? すでに今月はRG サザビー スペシャルコーティング、戦艦 陸奥、駆逐艦、浜風、HG ギラドーガ、HG イフリート・シュナイドを買っています。しかも周介さんはそれだけでなくメガミデバイス 朱羅玉藻のついに美少女プラモまで手を出し始めました。さらに来月にはプレバンからMG トールギス・フリューゲルとHG ガンダムF91ヴァイタル一号機&二号機セットも届きます。さらにSMP ALTERNATIVE DESTINY『トップをねらえ!』ガンバスターまで来るんです!! もう客室が一つ埋まっているんですよ!! だからこれ以上は駄目です!!」
「だ、だがSD系は少し崩した!!」
「詩音さんが執筆の合間に休憩で崩したんじゃないですか!!」
夫婦の言い争いに妹’sの視線が詩音に集まる。その視線に悪びれる様子もなく詩音は口を開いた。
「最近のSDは無塗装でもかっこよくなるのがいいですね」
「なるほど。ところでSDシリーズは来年に新作がでますが」
「アーサーガンダムマークⅢは予約しました」
「詩音さん!?」
まさかの同居人の裏切りに美優が驚愕声をあげたが、詩音は貴音と周子とガッチリ握手。どうやら同意見だった模様である。
「わかった。美優、じゃあこうしよう」
「な、なんですか? どんな条件でも絶対に認めませんからね」
美優の怒り表情(コアリクイの威嚇くらいの怖さ)に萌えながらも周介は真剣な表情で言葉を続ける。
「タミヤの1/350戦艦 ビスマルクを買おう」
「え(トゥンク」
「「釣れてる釣れてる」」
妹’sの言葉に慌てて首を振る美優。
「わ、私の好きな分野で釣ろうとしても駄目ですからね!!」
「ビスマルクを買うんだからトランぺッター1/350 HMS フッドも買おう」
「くぅぅぅうぅぅぅぅぅぅ!!!!」
ものすごく思い悩む表情を浮かべる美優。
そして美優は絞り出すように口を開いた。
「ビスマルクとフッドでデンマーク海峡海戦のジオラマを作ってください」
「モデラーの奴にも協力させよう」
「じゃあいいですよ」
妻からの許可にガッツポーズを決める夫と、ジオラマを楽しみにする妻。
似た者夫婦であった。
そんな感じで夫婦の茶番を終えて周子と貴音は本題に入る。
「兄よ、披露宴の会場はどこに決まりましたか?」
そう、結婚式と披露宴の会場選びである。
色々な意味で問題のある人物しかいない塩見方の参列者である。普通の会場ではきっと会場が物理的に本能寺して警察沙汰になる。
警察沙汰には慣れている塩見三兄妹であるが、せっかくの晴れ舞台で警察沙汰はできればやめておきたい。
だから慎重に慎重を重ねて会場選びをしていた。
条件は事件が起きても内内に握りつぶせるところ。
「薙切のじーさんが遠月リゾートのホテル『遠月離宮』を使うように言ってきた。料理人も堂島さんが腕をふるってくれるそうだから問題はないだろう」
「相変わらず兄ちゃんの人間関係がバグってて草」
「なんか交換条件で遠月學園高等部一年生の実地研修受け入れることになったけど」
「「Welcom to キチガイ ワールド」」
「否定できないのが悲しいところだな」
いくら非常識に慣れている遠月學園の生徒でも頻繁に法律的にアウトな人物がやってくるこのお店での実地研修は辛いだろう。
哀れな生贄に黙祷。
「それで、だ。披露宴の時に流す音楽なんだが……」
料理をしながらの周介の言葉に周子と貴音は美優からお茶のお代わりをもらいながら聞く。
「小椋佳の歓送の歌は外せないと思うんだよ」
「異存はないで」
「銀河英雄伝説に異存などあるわけがないですね」
意見の一致をみた塩見三兄妹はガッチリ握手。
「てなわけで美優。歓送の歌は使っていいよな?」
周介の言葉に美優は苦笑い。
「名曲なのは間違いないですからね……いいですよ」
「「「ひゃっほい!!!」」」
美優の言葉に喜びの声をあげる塩見三兄妹。
「そういえば美優さんは使いたい曲とかないん?」
「わ、私ですか?」
「私達だけで決めるとダンバイン飛ぶで入場することになりますよ」
貴音の言葉に真剣な表情で考え込む美優。その姿をスマホのカメラ機能でバシバシ撮りまくる美優さん大好きクラブの面々。
「そ、そのなんでもいいですか」
「もちろんだ」
美優の言葉に周介が返すと、美優は思い切った表情で口を開いた。
「ZABADAKの遠い音楽を使いたいです!!」
「使いどころを考えるぞ愚妹ども!!」
「「よっしゃ!!」」
塩見周介
家の一部屋は積みプラで埋まっている
塩見美優
「そんな……ビスマルクとフッドを並べられたらプリンツ・オイゲンとプリンスオブウェールズも必要になっちゃうんじゃ……」
双海詩音
売れっ子作家。最近の息抜きはSDプラモ組み。実は塗装用のガンダムマーカーも買ってる
仲野周子
HG ナイチンゲールは買い損ねた
四条貴音
RG Hi-νガンダムは買えなかった
そんな感じで九月の結婚式準備編です。
何が残念って作者は独身なので結婚式の準備で何をするのかわかっていない問題。
とりあえず場所の確保と流す音楽決めでした。
完全にそれ以前のプラモ談義のほうが長かったですが。
デンマーク海峡海戦のジオラマに釣られちゃう美優さん可愛い。
ちなみに周介くんに着弾予定のプレバン商品は作者の予定商品です。
ずっと待ってたトールギス・フリューゲル!!