俺が美優にプロポーズするまで   作:(TADA)

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最終話になります

最後まで楽しんでいただければ幸いです


これからも

夢をみている。

美優が夢だとわかるのは見ている光景が学校の教室だからだ。

夕暮れの教室、この時は好きな人と一緒に日直だった。

その彼が真剣な眼差しで美優を見つめながら口を開く。

 『俺は三船美優さんが好きです。付き合ってください』

嬉しくて、恥ずかしくて、彼の顔をまともに見ることもできず、自分はこう言ったはずだ

 

その瞬間に目が覚めた

 

 「……ん」

美優はぼーっとした頭でベッドから起き上がる。そして周囲を見渡すといつもと違う部屋であることに気づく。

美優がそう呟いた時に部屋に備え付けのキッチンから周介が顔を出した。

 「お、起きたか。もうすぐ朝食できるぞ」

 「あ、はい。おはようございます」

美優が慌てて頭を下げると周介は苦笑する。

 「おはようさん。とりあえず上隠したほうがいいぞ」

 「へ? キャア!!」

美優が慌てて露わになっている上半身を隠すのとサムズアップしながら周介がキッチンに戻るのは同時であった。

 

 「「いただきます」」

部屋に備え付けられている机で二人は周介の作った朝食をとる。鮭の骨をとる美優をスマホで激写している周介に不思議そうに首を傾げながら美優は口を開く。

 「あの、周介さん」

 「ん? なんだ?」

 「本当に今日も披露宴やるんですか?」

 「社長とココの奴が遠月リゾートを貸し切った時点でマジなんだろうなぁ」

周介の言葉に美優は苦笑する。

世界各国の諜報機関も注目した塩見三兄妹の結婚披露宴は昨日開催され、大盛況のうちに幕を閉じた。

披露宴の途中で武装集団が乱入してきたりそれを参列者が返り討ちにしたり警官隊が突入してきて逮捕者がでたりヘレンがヘリコプターで登場してゲリラライブをやったりしたがおおむね平和に終わったはずであった。

しかし、周子の友人として参加していた三峰ェ!が言い放ったのだ。

 『延長戦やろうぜ!!』

それだけで主に塩見三兄妹の友人一同が悪乗りし、社長とココが札束を遠月リゾートに叩きつけて延長戦が決定した。

そして多くの参列者が不参加の中、塩見三兄妹の友人達は遠月リゾートで大騒ぎをしていた。

 「みなさん大丈夫でしょうか」

美優は心配そうに呟くと周介が笑顔で言い放った。

 「大丈夫、まだ一棟しか爆破されてない」

 「いえ!? 大問題ですよ!?」

美優の言葉に周介は落ち着けというジェスチャーをしてから真剣な表情になる。

 「いいか、美優。集まった面々を思い出してみろ。爆破どころかまだ遠月リゾートが残っている時点で奇跡だと思わないか?」

周介の言葉に何も言い返せない美優。その時、周介のスマホが振動して、周介が電話にでる。

 「どうした? あ? アサルトライフルで武装している見覚えのない連中がいるって? たぶん社長かココの私兵だな。ちょっと待て……ああ、この連中はココの私兵だ。ココに言っとけ。騒ぎを起こしたら『一生懸命に鮭の骨をとる美優の写真』はやらないってな」

そこまで言い切ると周介は電話をきる。だが、美優は顔が真っ赤で固まっている。それを不思議そうに見る周介。

 「どうかしたか?」

 「わ、私が一生懸命に鮭の骨をとっている写真ってなんですか!?」

 「美優さん大好きクラブに送るための写真だが?」

 「悪びれもしない……!?」

自分の夫ながら未だに理解できないことが多い周介に軽く戦慄する美優。

だが、いつものことなのでその後は会話をしながら朝食を終える。

美優が食後のお茶をいれながら周介に話しかける。

 「周介さんは中学時代のことを覚えていますか?」

美優の問いかけに周介は不思議そうに首を傾げる。

 「全裸の奴が全裸で隣町の中学に襲撃かけた奴か?」

 「……そんなこともありましたね」

周介の言葉に美優も苦笑してしまう。

ちなみにその全裸くんは昨日の披露宴で突入してきた警官隊に逮捕されて今は留置場の中である。

 「え~、と、その~……周介さんが私に告白してくれた時のことです」

恥ずかしくて顔を真っ赤にしながら最後は駆け足気味の早口になった美優を周介は激写しながら懐かしそうに口を開く。

 「あ~、あれか。覚えているよ。なんで?」

 「いえ、今朝夢でみまして」

美優の言葉に周介は手で顔を覆う。

 「インパクトのない告白ですまん……!!」

 「いえ!? 告白にインパクトなんて求めていませんよ!? そ、それに私には充分インパクトありましたし」

恥ずかし気にいった美優を見て周介は真顔ですさまじい勢いで鼻血を吹いた。

 「しゅ、周介さん!?」

 「気にしないでくれ。ちょっと美優への愛が鼻から溢れただけだから……!!」

美優には周介が何を言っているかちょっと理解できなかったが、割といつものことなので流す。

 「私はあの言葉だけですごい嬉しかったですよ」

微笑みながらの美優の言葉に周介くんの耳から耳血が噴き出した。

 「周介さん!?」

 「大丈夫、大丈夫……!! この溢れ出る血液は俺の美優への真っ赤な誓いだから……!!」

 「いえ、確かに真っ赤ですけど……」

そう言いながらも床にまで溢れた血液を美優は処理する。本来なら処理の難しい血液をあっさりと処理できるあたり美優も塩見に染まっている。

美優と仲の良い飲兵衛お姉さま集団がいたらそう突っ込んでくれただろうが、この場には残念ながら塩見しかいないので流れる。

そして改めて美優と周介は向かい合って座り会話を続ける。

 「あの時は他の奴に嵌められてなぁ」

 「え? そうなんですか?」

長い付き合いだが初めての事実だ。

美優の言葉を聞いてから周介は懐かしむように口を開く。

 「全裸と社長と俺の三人で駄弁っている時にな。最初に全裸の奴が『じゃあ俺、三船に告白するわ』って言い出して、そしたら社長の奴が『いやいや、俺が三船に告白するわ』って言い出したから俺も『じゃあ、俺が告白するぞ』って言ったら二人が『ど~ぞど~ぞ』って言ってなぁ」

 「ダチョウさん方式……!!」

あの時代から続く古き良き伝統にのっとって告白することを決めたらしい。

 「まぁ、そんな話になったのもハッカーの奴がどこからか『一か月後に三船が転校する』って情報を手に入れてきたからなんだが」

それも覚えている。何せ美優も両親から言われた二日後には友人一同が知っていて『あれ?

 誰にも言ってないはずなのに』と疑問に思ったからだ。

だが、誰にも言っていないはずの情報が全員に知られているという出来事は珍しくもないので美優も深く突っ込まない。

 「それじゃあこうして周介さんと結婚できたのは全裸さんと社長さんのおかげかもしれませんね」

美優がそう言った瞬間に周介が味わい深い表情になる。それを見て美優は不思議そうに首を傾げた。

 「どうかしましたか?」

 「いや、それをあの二人に言ったらどうなるかと思ってな」

そう言われて美優も想像するが、美優の純粋な想像力では全裸が全裸になることと社長がお金を請求してくるくらいしか浮かばなかった。

 「でも、よく考えたら美優とは中学時代から付き合って結婚したのか。長かったって言えるはずの期間なのに短かった気がするな」

 「そうですねぇ」

転勤族の父親の影響で美優は付き合いの長い友人は周介くんと愉快な仲間たちくらいしかない。高校の時に周介くんと愉快な仲間たちが美優に会いに来た時は大騒ぎして警察沙汰になり、最終的に当時美優の住んでいた街に隠れていた凶悪犯を全裸亀甲縛りにしてバイクで走り抜けたくらいだ。

 「どうかしたか?」

 「いえ、改めて思い出すととんでもないことをする方が多いな、と」

改めて思い出さなくても頭のおかしいとんでもしかいいないのだが、聖女・美優はそれに気づかない。

するとこのタイミングで再び周介のスマホが振動した。画面を開いて周介は顔を顰める。

 「どうかしましたか?」

 「いや、全裸の奴が準備できたから大ホールにこいってさ」

 「……あれ? 全裸さんは逮捕されていたはずでは?」

 「警察から『頼むからでていってくれ』と懇願されたみたいだな」

やはりとんでもしかいないのが周介くんの友人関係である。

周介は残っていたお茶を一気に飲みきると椅子から立ち上がる。

 「んじゃ、行くか」

 「あ、周介さん。ちょっと待ってください」

美優の言葉に周介は不思議そうに立ち止まる。美優は一瞬だけ迷ったが、思い切って口を開いた。

 「もう一度あの時の告白をしてくれませんか?」

その言葉に周介の表情が曇る。それを見て美優はへにょりと眉尻を下げた。

 「あ、あの。やっぱりいいで」

美優が最後まで言い切る前に周介は美優の両手を握る。美優がびっくりした表情で周介をみると、周介は覚悟を決めた表情をしている。

 「俺は三船美優さんを愛しています。一生一緒にいてください」

その言葉に美優はびっくりする。あの時と言葉は違うが、真剣さは変わらない。

だから美優も当時と同じ言葉で、しかし気持ちはそれ以上に込めてこたえる。

 「こちらこそ、よろしくお願いします」




塩見周介
愛する人と

塩見美優
ずっと一緒



俺が美優にプロポーズするまで

Fin
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