俺が美優にプロポーズするまで   作:(TADA)

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GW回です。なのにいつもより短め。

いつも短い? そんなぁ……


映画デート

ゴールデンウィークである。これが世の中のカップルやご家族だったら連休を使ってどこか遠くに旅行に行ったりするのだろう。

ところが俺は小さいとは言え店の店主。そして恋人の美優はアイドル。導き出される答えはほとんど連休の休みが被らないである。

まぁ連休期間中は俺の家で生活するらしいので、一緒にいることは可能だ。いや、待て。連休中にほとんど一緒に過ごすということはほぼ同棲していると言ってもいいのでわ。そして同棲しているということは結果的に俺と美優は結婚していた……?

 「周子、俺は重大なことに気がついた」

 「なんや? 自分がヘタレのことか?」

 「バカかお前は。そんなことは高校時代から気づいている」

 「自信を持っていることとちゃうで、兄ちゃん」

いつも通りに飯をタカリに来ていた周子と駄弁る。時間は夜。常連さんの高垣さん達も来ていないので今日は本当に閑古鳥が鳴いている状態である。

 「いいか、周子。もうすぐ始まるゴールデンウィーク。美優と俺は半同棲状態になる。それ即ち結婚していると同じじゃないか?」

俺の理路整然とした発言に慈愛の笑みを浮かべる周子。

 「兄ちゃん、疲れとるんやな」

 「そうかもしれん」

周子の言葉に神妙に頷く俺。割と疲れている自覚はあるのだ。

すると周子は持っていたバッグをガサガサとあさり始める。

 「どうした? ついに俺の店でお金を払う気になったか?」

 「あ、それだけはないから安心してや」

 「ちょっとは払う気見せろよ」

俺の言葉に笑顔で否定する周子。こいつに出している料理の材料費も無料ではないのにこの態度。

 「ほい、これあげるわ」

 「? なんだ、これ」

俺の言葉にニンマリと笑う周子。

 「カップルにオススメの映画や。最近見に行けてないやろ? どうせやったら美優さんとデートに行ってきや」

 「……とりあえず映画の題名を聞いておこうか」

 「それは行ってからのお楽しみや」

 

 

 

周子からチケットをもらった数日後、俺と美優は映画館に来ていた。

 「周介さんと映画なんて久しぶりですね」

 「だな。最後が美優の大学四年の時だから……うん、年数なんてどうでもいいよな。今でも二人で居られることが大切なんだ」

俺の言葉に美優は顔を真っ赤にし、俺も恥ずかしいことを言った自覚が出てきて顔が真っ赤になる。

 「そ、それで周子ちゃんは何の映画のチケットをくれたんですか?」

 「そ、そうだな。確認してみるか!!」

美優の話の転換に内心でありがとうと言いながら、封筒に『当日まで秘密♡』と書かれた開封し、中のチケットを確認する。出て来た映画のタイトルは

 『魔の巣』

一度チケットを封筒の中に戻し、一度目をこすってからもう一度取り出す。そうだよ、いくら周子でもあんなクソ映画をデートに勧めたりなんか。

 『魔の巣』

現実は非情だった。

俺は一度だけ大きく深呼吸する。

 「クソ映画じゃねぇか!!」

 「え!? どうしたんですか周介さん!?」

俺がゴミ(チケット)をゴミ箱にダンクしたことに驚く美優。

 「悪い、美優。また周子の嫌がらせだ。映画は今から見られる映画を選んでみよう」

 「そ、それはいいですけど……何の映画だったんですか?」

 「知らない方がいい」

知ったら未来の義姉妹関係にヒビが入りそうだ。

 「え〜と、それだったら今からすぐに見られる映画ですと……」

美優の言葉に俺も一緒に映画館の上映リストを見る

 『魔の巣』『デビルマン(実写版)』『ロボット・モンスター』『ナチスゾンビ/吸血機甲師団』

羅列された映画のラインナップを見て俺は大きく息を吸い込む。

 「クソ映画しかねぇじゃねぇか!!」

 「お、落ち着いてください周介さん!!」

道理で休日なのに人がいないハズだよ!! こんなクソ映画を並べて誰が来るんだ!!

 「あ、で、でも2時間後にバーフバリがありますよ」

 「バーフバリは名作だな。……あれ? 美優ってバーフバリ見たことあるっけ?」

 「周介さんの部屋でBlu-rayでだったら……」

 「それだったらバーフバリにするか。あ、しかもこれマサラ上映じゃねぇか」

 「マサラ上映ですか?」

不思議そうな表情になる美優。

 「美優は知らないか、マサラ上映」

 「恥ずかしいことに……」

 「いや、別に恥ずかしいことじゃないさ。あ〜、簡単に言うと応援上映や絶叫上映の上位互換だな」

 「上位互換……声出し以外に一体何が……?」

 「一緒に踊ったりとかかな」

 「あ、なるほど一緒に踊り……踊り!?」

驚愕表情の美優。まぁ、わからなくもない。普通は静かに見るべきものを声を出すどころか踊りを踊るとか意味がわからん。

 「まぁ、日本のマサラ上映でそこまではやらないだろうけど、基本的には声出しのほかにはクラッカーを鳴らしたり、紙吹雪をまいたりとかだな」

 「……それって本当に映画を観れているんでしょうか」

 「まぁ、楽しんだもん勝ちみたいなもんだ。時間あるしチケット買ってどっかで昼飯食べてくるか」

 「そうですね。あ、そうだ周介さん」

 「うん? なんだ?」

真面目な表情の美優に俺も真剣な表情になる。

 「いくらマサラ上映とは言え、学生の時みたいな超巨大クラッカーを使ってはいけませんよ」

 「美優に俺の行動が先読みされている……」

 

 

 

バーフバリを見終わったあと。外は見事に暗くなっていた。映画では特に面白いことは起こっていない。美優の存在に気づいたお客さん達が『踊るよね? 踊らないわけないよね?』という視線に美優が負けて、俺と二人でパーフェクトダンスをしただけである。そしてエンドロールでは全員で『バーフバリ!』コール。俺はノリノリだったが美優は恥ずかしそうだった。アイドルになっても目立つことは苦手なようである。まぁ、そこも可愛いんだが。

そして二人で今は夜景を眺めている。綺麗な夜景だ。

 「綺麗ですね……」

 「あぁ」

美優の言葉に俺は頷く。美優のこの顔を見れただけで車でちょっと遠出をした甲斐があったものだ。

 (いや、ちょっと待て。これいい雰囲気じゃね? 100万ドルとまではいかないが綺麗な夜景を見ながらプロポーズ。おぉ! いい感じ!! いい感じですよ!!)

そこまで考えて俺はポケットに入っている指輪を取り出す。指輪を……取り……出す……。取り……

 「ぬわぁ!? 持ってくるのを忘れたぁ!!」

 「え!? きゅ、急にどうしたんですか周介さん?」

 「なんでもない! なんでもないぞ、美優!!」

ここに来てまたも俺の凡ミスでプロポーズ失敗。今回はめっちゃいい空気だったのに……

 「周介さん」

 「なんだ?」

あれか? 俺の気配りのなさについに美優も愛想を尽かしたか? やめてくれ。俺を捨てないでくれ。

 「夏休み。一緒におやすみを取れたら旅行に行きましょうか」

 「……ああ。そうだな。どこに行こうか」

俺の小さな悩みは美優の笑顔に吹っ飛ぶのであった。

 




塩見周介
映画鑑賞が地味に趣味な居酒屋店主。好きな映画はアクション映画。プロポーズのチャンスを指輪を忘れるという凡ミスで逃す。

三船美優
周介の影響で色々な映画を見る。好きな映画はホームドラマ的なもの。プロポーズされていないことを特に気にしていない。早くしてくれたら嬉しいな、くらいの考え。

塩見周子
兄のデートにクソ映画を勧める最悪の存在。『魔の巣』を勧めるとか正気じゃないぞ。

クソ映画
参考文献:シネマこんぷれっくす

バーフバリ
名作。『インド映画ってちょっと……』って思っている人にも是非見てもらいたい。色々な意味で面白いから。


こんな感じでGW(直前)回でした。デートってどこ行きゃわからんからとりあえず映画に行かせてみました。やだ! 作者の恋愛偏差値の低さが露呈しちゃう!!

ちなみに作中にあるクソ映画の大半は作者は見ていません。見たくもありませんしね!!
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